人体の構造と機能 第104回(神経系) [人体の構造と機能]
f)内耳神経(ないじしんけい、第8脳神経)
・内耳神経には、前庭神経と蝸牛神経があって、前者が平衡感覚、後者が聴覚を司っています。
・前庭神経は、三半規管と前庭の有毛細胞への刺激を平衡感覚として中枢へ伝えます。蝸牛神経は、ラセン器(コルチ器)の有毛細胞への刺激を聴覚として中枢へ伝えます。
・前庭神経と蝸牛神経は、内耳道で合流して内耳神経となって橋に入ります。
・蝸牛神経は、橋の蝸牛神経腹側核と背側核でニューロンを乗り換え、視床の内側膝状体に到達します。内側膝状体でニューロンを乗り換えたあと、聴覚路は側頭葉の聴覚野へと向かい、到達します。
・前庭神経は、一部は直接小脳へ至るものもあれば、橋、延髄の前庭核群に終わり、ニューロンを乗り換えて小脳や脊髄などへ至る系もあります。
g)舌咽神経(ぜついんしんけい、第9脳神経)・迷走神経(めいそうしんけい、第10脳神経)
・舌咽神経・迷走神経の核は、延髄にあって、延髄から出ています。
・舌咽神経は、耳介・外耳道の感覚を司る体性感覚系の機能、咽頭粘膜、舌の後部などの内臓感覚系の機能、舌の後ろ1/3の味覚という特殊感覚系、耳下腺の分泌を支配する自律神経系(副交感神経系)の機能、咽頭・喉頭筋群の支配などの多彩な機能を迷走神経とともに行っています。
・迷走神経は、舌咽神経とともに咽頭・喉頭筋群の支配、咽頭・喉頭粘膜の内臓感覚系の機能を行うほか、腹胸部臓器の内臓感覚系と遠心性の自律神経系(副交感神経系)の機能を持っています。
・嚥下運動、構音機能などは、この2つと舌下神経(ぜっかしんけい)が行っています。
h)副神経(ふくしんけい)
・副神経は、神経核は半分は延髄にありますが、残りは脊髄にあって、延髄根と脊髄根に分かれて延髄と脊髄から出ています。
・三叉神経核の大半と、外転神経核、顔面神経核と内耳神経核の大半は橋にあります。そして、これらは、三叉神経を含め、いずれも橋から脳を出ています。
・副神経は、胸鎖乳突筋、僧帽筋を支配しています。
i)舌下神経(ぜっかしんけい)
・舌下神経の神経核は延髄にあって、体性運動神経に属し、舌の筋肉を支配しています。
[設問] 右耳からの聴覚の主たる伝導路で正しいものを選べ。
イ 右蝸牛 → 右蝸牛神経 → 右の蝸牛神経核 → 左の内側膝状体 → 左下丘 → 左聴覚野
ロ 右蝸牛 → 右蝸牛神経 → 右の蝸牛神経核 → 左の内側膝状体 → 左上丘 → 左聴覚野
ハ 右蝸牛 → 右蝸牛神経 → 右の蝸牛神経核 → 左下丘 → 左の内側膝状体 → 左聴覚野
ニ 右蝸牛 → 右蝸牛神経 → 右の蝸牛神経核 → 左上丘 → 左の内側膝状体 → 左聴覚野
正解 (ハ)
[設問] 下記の文で、正しい記述を一つ選べ。
イ 内耳神経は、単一の脳神経であり、聴覚刺激を伝える。
ロ 聴覚刺激は、蝸牛神経、上丘、内側膝状体を経て大脳の聴覚野へ至る。
ハ 舌咽神経は、舌の前2/3の味覚を司る。
ニ 副神経の核は、半分は延髄にあり、残り半分は脊髄にある。
正解 (ニ)
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