疾病の成りたちと回復の促進 第22回(病態のいろいろ) [疾病の成り立ちと回復の促進]
D) 悪性腫瘍の進展と生体への影響
a) 浸潤と転移
・ 浸潤とは腫瘍細胞が周期の組織の隙間に割り込んで連続性に発育することをいい、転移とは腫瘍細胞が原発巣(げんぱつそう)とは離れた場所に非連続的な発育を行って新たな増殖巣(ぞうしょくそう)をつくることをいいます。
b)転移の種類
ア)リンパ行性転移: 癌組織の所属リンパ節からリンパ管を経由して転移する場合をいいます。 胃癌などがリンパ管→胸管を経由して左鎖骨上窩(さこつじょうか)リンパ節に転移した場合、これを特にウイルヒョウの転移と呼びます。
イ)血行性転移: 血管内に侵入した腫瘍細胞が、腫瘍細胞栓子として遠くに運ばれ、着床(ちゃくしょう)し増殖して場合をいいます。 一般に肉腫はリンパ行性転移より血行性転移が多いといわれます。
ウ)播種(はしゅ): 胸膜、腹膜、髄膜などに沿って表面を種をまくように小転移巣が広がる場合をいいます。 進行するにつれ滲出液が貯留します。 癌性胸膜炎、癌性腹膜炎、癌性髄膜炎などもこの範疇に入ります。 胃癌などがダグラス窩(直腸膀胱)に播種した場合シュニッツラーの転移と呼びます。
エ)その他: 気管支癌などでは、管腔内転移がおこります。
c)全身的影響
ア)循環障害: 腫瘍の機械的な圧迫による血行障害、腫瘍塞栓、低蛋白血症のための浮腫、末期にはDICなどがおきます。
イ)感染症: 腫瘍そのものによる免疫能の低下に加え免疫抑制作用のある治療のため免疫不全がおこり、日和見(ひよりみ)感染症などもおこりやすくなります。
ウ)悪疫質: 蛋白質の消費が多くなり、免疫能の低下、栄養不良などのため体力の消耗が進み顕著なやせがおこります。
d)ラテント癌とオカルト癌
[設問] ウイルヒョウの転移はどれに属するか?
イ リンパ行性転移
ロ 血行性転移
ハ 播種
ニ 管腔内転移 正解 (イ)
[設問] 癌性腹膜炎はどれによる転移か?
イ リンパ行性転移
ロ 血行性転移
ハ 播種
ニ 管腔性転移 正解 (ハ)
[設問] シュニッツラーの転移はどれによるものか?
イ リンパ行性転移
ロ 血行性転移
ハ 播種
ニ 管腔性転移 正解 (ハ)
コメント 0