疾病の成りたちと回復の促進 第26回(免疫機構) [疾病の成り立ちと回復の促進]
(4)体液性免疫と細胞性免疫
A)体液性免疫
・ ある抗原に対して特異抗体を産生し、その抗体を介する免疫反応を体液性免疫と呼びます。
・ 抗体は、抗原と特異的に反応する糖蛋白(とうたんぱく)(糖と蛋白からなる物質)であり、血清中の免疫グロブリンとして存在しています。
・ 抗体にはIgG、IgM、IgA、IgD、IgMがあります。
・ IgGは血清抗体の主役で、感染防御の中心的役割を果たしており、胎盤を通過する唯一の抗体です。
・ IgMは初感染後、最初に産生される抗体です。
・ IgAの分泌型は、乳汁、唾液、涙、粘液などに含まれ、粘膜の感染防御に役立ち、また母乳中に含まれるため新生児の感染防御に役立っています。
・ IgEはI型アレルギーに関与します。
B)細胞性免疫
・ 活性化したマクロファージは殺菌作用を持ち、さらにさまざまなサイトカインを産生して炎症反応を促進します。
・ 細胞傷害性T細胞は、ウイルスなどの感染した細胞や腫瘍細胞に対し、抗原特異的に(抗原提示により認識した抗原に対し)傷害を与えます。
・ NK細胞はウイルス感染細胞や腫瘍細胞に対し、抗原非特異的に(抗原の種類に関係なく)傷害を与えます。
C)各種病原体に対する免疫系の働き
・ 細菌外毒素: 破傷風毒素やボツリヌス毒素などの外毒素(がいどくそ)に対しては、抗毒素中和抗体(こうどくそちゅうわこうたい)が働きます。
・ 細胞外の細菌: 黄色ブドウ球菌などの感染では、まず粘膜面で分泌型IgAが細菌の付着を妨げます。 他方、病原体に対する抗体がオプソニンとして働き、サイトカインによって好中球や活性化したマクロファージが集められ貪食、殺菌が行われます。 これに補体が加わって殺菌の効率が上がるのです。
・ 細胞内の細菌: マクロファージの中で増殖する結核菌などには、抗体がつくられても感染には役に立ちません。 そのため、細胞傷害性T細胞が感染マクロファージを破壊し、病原体を追い出し、活性化マクロファージが貪食、殺菌します。 また、活性化マクロファージや活性化T細胞は肉芽腫(にくがしゅ)をつくり、病原体を閉じ込めます。
・ ウイルス: インターフェロンが細胞に働きウイルスの増殖を抑制し、細胞傷害性T細胞やNK細胞を活性化し、ウイル
ス感染細胞を破壊することによってウイルスの増殖の場を無くします。
[設問] 抗体はどんな物質か? 以下より選べ。
イ 糖脂質 ロ 糖蛋白 ハ リン脂質 ニ ペプチド
正解 (ロ)
[設問] 胎盤を通過する抗体は次のどれか?
イ IgG ロ IgM ハ IgA ニ IgD ホ IgE
正解 (イ)
[設問] 初感染後、最初につくられる抗体は次のどれか?
イ IgG ロ IgM ハ IgA ニ IgD ホ IgE
正解 (ロ)
[設問] 母乳中に含まれ、新生児の感染防御に役立つのはどれか?
イ IgG ロ IgM ハ IgA ニ IgD ホ IgE
正解 (ハ)
[設問] 粘膜面で黄色ブドウ球菌の付着を妨げるのはどれか?
イ 形質細胞 ロ 細胞傷害性T細胞 ハ B細胞 ニ マクロファージ ホ 分泌型IgA
正解 (ホ)
[設問] 細胞外にある細菌を貪食、殺菌するのは次のどれか?
イ 形質細胞 ロ 細胞傷害性T細胞 ハ B細胞 ニ マクロファージ ホ NK細胞
正解 (ニ)
[設問] 感染マクロファージを壊して病原体を追い出すのはどれか?
イ 形質細胞 ロ 細胞傷害性T細胞 ハ B細胞 ニ 好中球 ホ 好酸球
正解 (ロ)
[設問] ウイルス感染細胞を破壊してウイルスの増殖の場をなくすのはどれか? 二つ選べ。
イ 形質細胞 ロ 細胞傷害性T細胞 ハ B細胞 ニ NK細胞 ホ インターフェロン
正解 (ロ、ニ)
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