基礎看護学(20)(診療に伴う技術) [基礎看護学]
2)治療・処置
(1)治療・処置の看護師の役割と責任、患者の理解
(2)穿刺
・ 穿刺とは、先端の鋭い医療器具(針など)を身体に突き刺すことをいい、検査あるいは治療の目的で行われます。
・ 検査の場合は、採取した体液や細胞・組織の性状を調べる目的で行われます。
・ 治療の場合は、呼吸苦などの症状緩和を図るために体内に貯留した液体や気体を排除、あるいは薬液を注入したりする目的で行われます。 そして、穿刺は、全て無菌操作で行われます。患者の体位は、できるだけ安楽で緊張を緩和できものにします。
・ 急激な体動は、手技に伴う危険性(出血や感染)を増大させます。 そのため、動かないように声かけをして、必要に応じて支えるなど援助を行います。
・ 穿刺部位周辺の不必要な露出を避け、保温に努めます。
・ 局所麻酔薬による副作用が出ることがありますから、その早期発見に努め、実施前・中・後の患者の反応(ショックなど)を確かめます。
・ 胸腔穿刺
・ 腹腔穿刺は、腹膜腔に穿刺し、貯留した腹水を採取あるいは排出するものです。
・ 穿刺部位としては、モンロー・リヒター線の中央かその外側が選択されます。
・ 腹水排除後、圧迫されていた臓器に血液が急に流入してショック症状をおこすことがあるので、それを念頭に置く必要があります。
(3)洗浄
・ 洗浄とは、汚れを取り除き清潔にすることですが、洗浄するための液体を外部から注入・排出させますので汚染の危険があります。 そのため、部位による操作方法の違いを充分に把握する必要があります。
・ 使用する液体の温度によっては、患者は不快に感じるので温度に気を付けます。
・ 胃洗浄では、胃酸があるため細菌は死滅しやすいとはいえ、抵抗力の弱い患者や手術においては無菌的に行う必要があります。 上半身をおこした体位で、嘔吐の防止に努めます。 胃管が確実に胃の中にあることを確認するため、注射器で空気10mLほどすばやく注入してみます。 そのとき上腹部にあてた聴診器で空気音が確認できれば胃管が胃の中にあることが確認されたことになります。 洗浄では、胃に注入した洗浄液の量と排出した量が同じであることを確認します。
・ 膀胱洗浄は無菌操作で行い、洗浄液の温度は37〜38℃にします。 洗浄を行うことで逆に細菌の侵入がおこりやすくなるので十分な注意が必要です。
・ 膀胱洗浄は、カテーテルの閉塞が疑われる時などに行われます。
(4)吸引
・ 吸引には、気道(鼻・口・気管)内の分泌物を除去して気道を確保する一時的吸引と、体腔内、臓器、結合識内に異常に貯留した滲出液、血液、空気を除去する持続吸引があります。
・ 気道内吸引
・ 気管内吸引は無菌操作で行い、使用物品は、鼻・口腔内吸引の場合とは区別します。
・ 気管内吸引を施行する患者には、口腔内の細菌が気管に入らないよう、口腔内ケアは十分に行う必要があります。
・ 吸引瓶は排液量が70〜80%に達したら交換します。
・ 持続吸引法の種類にはウオターシール(水封)式吸引器・低圧持続吸引器があり、開始時の吸引圧は10cmH2O前後とします。
・ 吸引器は、体腔からのチューブとの連結部がゆるまないように密封状態にし、患者の身体が多少動かせるように、チューブと吸引用ゴム管の長さには余裕をもたせます。
(5)酸素吸入
・ 酸素療法の目的は、動脈血酸素分圧(PaO2)が60mmHg以下、SpO2 90%以下、または呼吸困難の状態にある患者に、圧縮酸素を吸入させて低酸素症の改善を図ることです。
・ 投与法には鼻腔カニューラ、フェイスマスク、酸素テントなどを使うものがあり、患者の状態によって選択します。
・ 高濃度の酸素を長時間投与すると、鼻粘膜刺激症状、四肢の知覚異常などの中毒症状が現れることがあるので、注意が必要です。 また粘膜への刺激を防ぐため、投与量によっては酸素を加湿する必要があります。
・ 副作用として、高濃度の酸素吸入による肺障害、酸素中毒、酸素吸入による無呼吸、CO2ナルコーシスなどがあるので、慢性呼吸不全患者に対しては低酸素濃度から始める必要があります。
・ 長期間の高濃度酸素吸入は、肺実質の変化と呼吸機能低下をもたらします。
・ 酸素ボンベは火気厳禁であり、転倒など衝撃が加わらないように安全管理に注意します。
(6)包帯法と創傷の管理
・ 包帯法の目的は、創傷部を覆い保護する被覆、出血や浮腫を予防する圧迫、骨折や脱臼などの時の固定、衛生材料の支持、患部を矯正する牽引などです。
・ 包帯法の実施上の注意点は、包帯の目的に応じて材料を選択すること、感染がおこらないようにすること、不適切な巻き方で循環障害や運動障害をおこさせないこと、苦痛を与えないことです。
・ 巻軸包帯の巻き始めと巻き終わりは、環行帯を行い、包帯がずれないようにします。 また、包帯は循環障害をおこさないように末梢から中枢に向かって巻いていきます。
・ 包帯法のいろいろ: 環行帯、螺旋帯、蛇行帯、折転帯、亀甲帯、麦穂帯
・ 創傷管理では、傷ついた皮膚の障害を改善させることが重要で、そのためには刺激要因を取り除き、皮膚の清潔、保湿、保護を行います。 なお皮膚障害には創傷被覆材を使用します。
[設問] 胸水のための胸腔穿刺では、一般的にどの部位から穿刺されるのか?
イ 第2~4肋間 ロ 第4~6肋間 ハ 第6~8肋間 ニ 第8~10肋間
正解 (ハ)
[設問] 腹腔穿刺の目印となるモンロー・リヒター線は臍とどこを結んだ線か?
イ 左上前腸骨棘
ロ 胸骨の剣状突起
ハ 恥骨結合
ニ 左下前腸骨棘 正解 (イ)
[設問] 膀胱洗浄の場合の、洗浄液の温度は次のどれがよいか?
イ 33~34℃ ロ 35~36℃ ハ 37~38℃ ニ 39~40℃
正解 (ハ)
[設問] 気管内吸引の場合の吸引圧は次のどれがよいか?
イ 100~150mmHg
ロ 200~250mmHg
ハ 250~300mmHg
ニ 300~350mmHg 正解 (イ)
[設問] 気管内吸引の場合の一回あたりの吸引時間はどれがよいか?
イ 30秒前後 ロ 20秒前後 ハ 一分程度 ニ 15秒以内
正解 (ニ)
[設問] 肘関節や膝関節に適した包帯の巻き方は次のどれか?
イ 環行帯 ロ 螺旋帯 ハ 亀甲帯 ニ 麦穂帯
正解 (ハ)
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