在宅看護論(14 )(在宅における医療管理を必要とする人と看護) [在宅看護論]
3)在宅酸素療法
(1)療養者
・ 在宅酸素療法(HOT)の対象となるのは、高度慢性呼吸不全、肺高血圧症、チアノーゼ型先天性心疾患で、安定した病態の療養者です。
(2)酸素供給装置
・ 酸素供給装置には、酸素ボンベ、液体酸素、酸素濃縮器の3種類があって、酸素ボンベと液体酸素は携帯用の酸素供給装置があり外出時に使用できます。
・ 最も多く使われているのは、吸着型酸素濃縮器です。
(3) 日常生活の注意と工夫
・ 胃腸が膨らむと横隔膜が下から圧迫され低酸素状態をまねきやすくなります。 予防策として、食事は一回量を腹八分目で4〜5回の分食とし、ガスの発生しやすい食物や炭酸飲料は避けるようにします。 排便時の努責をおさえるために便
秘対策を行い、繊維の多い食事、散歩などの運動をするよう心がけてもらい、必要に応じて下剤を使います。
・ 入浴時は延長チューブを使い、ぬるめの湯に短時間(40℃、10〜15分)とします。 前屈姿勢を避けるため、洗髪時にはシャンプーハットを使用したり、シャワーチェアーやブラシも利用します。急激な温度変化を避けるために、浴室と脱衣室の温度差を調節しておきます。
・ 炊事は腰をかけてするようにし、調理時間が短くてすむ献立を選択します。
・ 酸素消費量を減らすため、リラクゼーションを実施します。
・ 呼吸法として、口すぼめ呼吸、腹式呼吸を実施し、体位ドレナージなどで排痰の促進を行います。
(4) 生活範囲の拡大
・ 宿泊する場合、宿泊先のホテルでは設置型酸素供給装置の使用や酸素ボンベの持ち込みが可能かどうか確認し、酸素ボンベの手配や酸素供給装置の宿泊先への設置を業者に依頼します。
・ 外出時には酸素の残量を確認して出かけるよう指導します。
(5)指導と安全管理
・ 過剰な酸素吸入はCO2ナルコーシスをおこすので要注意です。
・ 医師からの指示を守らせ、低酸素血症・高二酸化炭素血症の症状の観察方法を指導します。
・ 停電や震災、機器の故障などに備えて酸素ボンベ、フィルター、カニューレは予備を備えておくこと、1日2〜3回は酸素の漏れがないかどうかをチェックすること、半年に1回は定期点検を受けること、故障時には携帯ボンベに切り替え、業者に連絡することを説明します。
・ 酸素は、支燃性のガスであり、酸素使用時には2m以内に火の気を置かないこと、アルコールやシンナーなど可燃物を近くに置かないこと、調理には電気調理器具を使用してもらうよう説明します。
・ 同室者にも必ず禁煙してもらうよう指導します。
・ ボンベの転倒に伴う事故や延長チューブにつまづくなどの事故に対して注意を促します。
・ 最寄りの消防署や電力会社に在宅酸素療法を実施していることを伝えておき、災害時の対応をしてもらうよう依頼しておきます。
・ 感染症で発熱すると酸素消費量が増え、低酸素血症を増悪させることを念頭においておきます。 そのため、感染防止に心がけさせます(うがい、マスク、手洗いなど)。
[設問] 在宅酸素療法の適応となる疾患を一つ選べ。
イ 狭心症 ロ 肝硬変 ハ 肺高血圧症 ニ 肺癌
正解 (ハ)
[設問] 在宅酸素療法患者の日常生活の指導で正しいものを一つ選べ。
イ 食事は一回量を十分にとってもらい、食事の回数を減らす。
ロ 入浴はぬるめの湯で、短時間とする。
ハ 負担がかかるので、散歩などは避ける。
ニ 炭酸飲料は胃腸の動きをよくするので、常飲する。
正解 (ロ)
[設問] 在宅酸素療法中の患者の安全管理のため、正しいものはどれか? 一つ選べ。
イ 酸素ボンベ、フィルター、カニューレは予備を備えておく。
ロ 酸素漏れは一週間に一回チェックする。
ハ 定期点検は三年に一度行う。
ニ 調理にはガス調理器具を使用してもらう。 正解 (イ)
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