小児看護学(27)(さまざまな状況にある子供と家族への看護) [小児看護学]
3)活動制限が必要な子供と家族
(1)活動制限の目的
・ 臓器への負担を軽減して機能の回復を促進するために、治療の一環として身体の安静を目的にベッド上・室内・病棟内など行動範囲や運動量の制限が行われます。
・ 活動制限を必要とする主な疾患には、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、心筋症、細菌性心内膜炎、急性肝炎、増殖網膜症などがあります。
・ 体重の負荷で軟骨・骨組織を圧迫するのを防いで造骨作用を促す、あるいは整復・変形の予防や矯正の目的で固定が行われます。 主な疾患としては、リーメンビューゲル法やギプス固定、牽引の治療が行われる先天性股関節脱臼、ペルテス病、骨折などがあります。
・ 手術後の創部の安静保護、治療上必要なカテーテルやドレーン類の抜去を防ぐ目的で行われます。
(2)身体的・心理社会的影響
(A)乳児期
・ 活動制限や固定が長期に及ぶと、身の回りにあるものをつかみ、口に入れて試し、吸い、這い回って探索し、学習する経験を失うこととなります。
(B)幼児期
・ 幼児前期の子供にとって活動制限は、子供の探索世界を狭くし、他児とのやりとりの機会を少なくし、保育者との相互調整を学ぶ機会を奪い、子供の自律・自己統制能力などを喪失することにつながりかねません。
・ 幼児後期の子供は、ひたすら遊びに邁進し、熱中して想像力を膨らませ、好奇心、探求心を貪欲に満たしながら社会規範を学ぶなどの経験を積み重ねています。 自発的な活動を常に制限される、あるいは遊びを禁止され罰せられることで生き生きとした自発性を抑圧し、罪悪感を強める危険性があります。
(C)学童期
(D)思春期
・ 真剣に自分に関心を向け、主観的・自己中心的なものの考え方をしながら、親子の分離や自己同一性の獲得をする途上です。 不安や不満、怒りや絶望、焦りを克服している時期の活動制限は、これらの感情を強め、ストレスを増し、自暴自棄や無気力を生じかねません。 しかし、活動制限や固定で生じたストレスに対処し、葛藤を乗り越えた時には、自分自身の健康管理法を身につけ、自信がつき、友人・家族、日常生活の価値を再認識する機会にもなります。
(E)小児の全時期に共通する影響
・ 長期に及ぶ臥床や同一部位の固定は、不適切に固定されたりケアが不十分な時は、皮膚の損傷・循環障害・神経麻痺・筋力の低下や関節障害などを生じる危険があります。
・ 子供は、活動して遊び、親や他児と関わることで感情や衝動の調節を行っています。 活動制限は、ストレスを増し、子供のために保育者や家族にも危機を生じる可能性があります。 一方、これまでの日常生活で当然のことであった家族のサポートや対処法の価値を見直し、絆を強め、新たな対処法を見いだし、互いへの思いやりや自信をつける機会にもなるのです。
[設問] 遊びに熱中し、想像力を膨らませ、好奇心、探究心を貪欲に満たしながら社会規範を学ぶなどの経験を積み重ねる時期は、次のどれか?
イ 乳児期 ロ 幼児期 ハ 学童期 ニ 思春期
正解 (ロ)
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