小児看護学(39)(さまざまな状況にある子供と家族への看護) [小児看護学]
10)痛みのある子供と家族
(1)子供の痛みの受け止め方
・ 新生児や乳児は、痛みをあまり感じないという考えが優勢な時代もありましたが、近年では、痛みを感じており、年少児が年長児よりも強い痛みを知覚することもあるといわれています。
・ 長期に及ぶ慢性的な疼痛は、子供にとって 「深い苦痛」 となり、抑うつ感を強め、行動発達の遅れを生じることがあるといわれています。
・ 子供は、痛みと病気の関連性を理解できずに 「自分が悪いことをした罰」 であると受け止めることがあります。
・ 看護師は、「痛みの程度は、痛みを経験している子供本人が正確に知っている」 ことを忘れてはいけません。
・ 子供は 「痛み」 で病気を知覚します。 また、痛みのために生命や生活を脅かされて、安全感や安心感を失い怯えます。
(2)痛みの表現法
・ 子供は痛みを啼泣、表情、体幹や上下肢の動きで表現します。
・ 乳児では、 触られると嫌がって泣く、 激しく泣いた後、しばらく泣き止むが、すぐに泣き出すといったパターンを繰り返す、 どんなにあやしても泣き止まないなどの時は、痛みを感じている可能性があります。
・ 年少児程、痛みの程度、状況を言葉で表現するのは難しいのですが、不機嫌になる、 「ウー、タ、タ、タ」 など痛みをその子供なりの言語で表現することができます。
(3)痛みの客観評価
・ 新生児の痛みの評価は、難しいとされていましたが、最近になって、その信頼性と妥当性が検証されたものが海外から出てきています。それには、呼吸様式、顔の表情、啼泣状態、腕の動き、足の動き、睡眠覚醒状態などの指標項目からなるNIPS(Neonatal Infant Pain Scale), PIPP(Premature Infant Pain Profile), FSPAPI(Face Scale for Pain Assessment of Preterm Infants), NIAPAS(Neonatal Infant Acute Pain Assessment scale) などがあります。
・ 乳幼児の場合、家族から子供の痛みに関する経験や認識についての情報を得て、アセスメントを行うことも必要です。
・ 言葉で表現することの難しい子供のセルフレポートとして、フェイススケール、単純記述スケールなどの開発が行われています。
・ 鎮痛剤を使用している時は、呼吸数、脈拍、意識レベル、鎮静レベル、悪心・嘔吐、などの観察を行います。 この場合、使用している鎮痛剤の副作用を念頭に観察する必要があります。
(4)痛みの緩和の援助
・ 学童高学年や思春期では、疼痛が強度で長時間に及ぶ時には、鎮痛薬の持続静脈内注射による、子供自身がボタンを押して鎮痛薬の投与量を痛みに応じて増やす患者自己調節鎮痛法(PCA)による疼痛緩和が行われることもあります。
・ 鎮痛・鎮静療法を行っている時には、子供の機嫌、顔の表情、運動障害が生じていないか、まわりのことに興味を示しているか、集中できるか、睡眠障害が生じていないか、回りのことに興味を示しているか、集中できるか、睡眠障害はないかなどを観察します。
・ 子供自身による痛みへの対処行動について、子供や家族と話し合い、その対処行動を修正、あるいは促進して痛みの緩和を図ります。
・ 子供の体験している痛みを理解し、子供が痛みの意味や関連性、痛みの緩和についての見通しをもてるようにします。
・ 子供の注意を痛みからそらして、他のことに集中できるようにします。
・ 学童高学年、思春期になれば、子供が自分でできる注意転換法やリラクゼーション法などの対処法を勧めます。
・ 反復して痛みを伴う処置を必要とする時は、辛い処置に耐えている子供の思いを慰めます。 また、なぜ処置を必要とするのか、子供の理解できる言葉で説明します。
[設問] 子供の痛みの受け止め方に関する説明で、正しいものを一つ選べ。
イ 新生児や乳児では、痛みはあまり感じていないといわれている。
ロ 長期にわたる慢性疼痛は、子供の行動の発達の遅れを引き起こす可能性がある。
ハ 子供は、痛みと病気の関連性を理解している。
ニ 子供は、痛みを経験していても痛みの程度を評価できない。
正解 (ロ)
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