母性看護学(6)(人間の性と生殖) [母性看護学]
4)生殖をめぐる倫理
(1)出生前診断
・ 出生前診断の適応は、胎児の罹患や奇形の確率が出生前診断の危険率より高いことが基準となります。
・ 対象となるのは、母体が高年齢(35もしくは40歳以上)、染色体異常児の出産の既往がある、両親のいずれかが染色体異常の保因者、遺伝病の家族歴がある、X染色体連鎖遺伝子をもち性別診断が有効な診断法である、妊娠中に風疹などに罹患した者である場合などです。
・ 妊娠初期は、羊水細胞や絨毛細胞という胎児の細胞を採取し、染色体異常や遺伝病を診断することができます。
・ 妊娠中期以降は、超音波診断などにより、胎児の奇形や心臓や腎臓の機能も評価でき、胎児治療や出産直後の治療もできるようになってきています。
(2)不妊治療
・ 不妊治療の問題点は、「保険適応外のため治療が高額である」 「治療期間が長期化する傾向にある」 「薬物の副作用がある」 「他人の卵子や精子を使うと親子関係が複雑になる」 「日本の法律では一般的に認められていない治療もあり、海外で治療を受ける場合もある」 ということです。
(3)人工妊娠中絶
・ 妊娠女性の4人に1人が人工妊娠中絶を経験しています。
・ 2011年の人工妊娠中絶の数は約200,000件であり、最近は減少傾向がみられます。
・ 20代以下は未婚女性が多いのですが、30代以上は既婚女性が多くなります。
・ 人工妊娠中絶の時期は7週未満がほぼ半数を占めています。
(4)ハイリスク児の治療
・ ハイリスク児とは、何らかの医療が必要と予測される新生児のことで、出生前に予測される場合と、出生後に判明する場合があります。
・ 児の治療や予後について十分説明し、分娩の時期や治療方法など、両親が決定できるよう看護していく必要があります。
・ ハイリスク児は、出生後は入院が必要となるため母子分離がおこります。 面会時間の制限をなくし、母乳の活用、カンガルーケアの実施など、母子分離の障害を少なくする看護が必要となります。
[設問] 出生前診断の適応となるのは、次のどれか? 一つ選べ。
イ 染色体異常児の出産を妊婦が心配している。
ロ 妊娠中に風を引いた。
ハ 父親が35歳以上である。
ニ 母親が染色体異常の保因者である。
正解 (ニ)
[設問] 人工妊娠中絶について、正しい文を一つ選べ。
イ 近年、増加傾向にある。
ロ 40歳以上の高齢で、増加傾向がある。
ハ 中絶の時期は、15週以降が多い。
ニ 2011年の数は、約20万件である。
正解(ニ)
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