疾病の成り立ちと回復の促進 第40回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
b) 種々の呼吸器疾患治療薬
ア) 去痰薬
・ 気道分泌を促進し、痰の粘性を低下させて排出を容易にする目的で使われます。
・ ブロムへキシン、システイン誘導体、蛋白分解酵素(トリプシン、キモトリプシン)、多糖類分解酵素(リゾチーム)などがあります。
イ)呼吸促進薬
・ 呼吸抑制時に使います。
・ ドキサプラム、ジモルフォラミンなど
ウ)鎮咳(ちんがい)薬
・ 対症療法として使われます。
・ 麻薬性鎮咳薬としてコデイン、ジヒドロコデイン、非麻薬性鎮咳薬としてデキストロメトルファン、ノスカピンなどがあります。
エ)肺サーファクタント
・ 未熟児などの呼吸窮迫(きゅうはく)症候群(IRSD)の特効薬として人工サーファクタントが使われます(気管内注入)。
オ)ガス
・ 酸素は低酸素血症の予防と治療に使われます。
・ 二酸化炭素は強力な呼吸興奮作用を持つため、呼吸の回数と深度を増加させるために使われます。
・ 一酸化窒素は強力な血管拡張薬であり、肺高血圧症などに使われることがあります。
[設問] 呼吸促進剤を一つ選べ。
イ ブロムヘキシン
ロ ドキサプラム
ハ コデイン
ニ リゾチーム 正解 (ロ)
[設問] 未熟児の呼吸窮迫症候群の特効薬として使われるのはどれか?
イ ドキサプラム
ロ ノスカピン
ハ サーファクタント
ニ 蛋白分解酵素 正解 (ハ)
[設問] 血管拡張薬として肺高血圧症に使われることがあるのはどれか?
イ サーファクタント
ロ 二酸化炭素
ハ 酸素
ニ 一酸化窒素 正解 (ニ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第39回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
E)呼吸器系に対する薬剤
a) 気管支喘息治療薬
ア)気管支喘息の病態
・ 気管支喘息は、アレルギー反応による可逆的な気道閉塞と遅延性炎症(ちえんせいえんしょう)が生じる病態です。
・ 好酸球主体の慢性気管支炎がみられます。
・ 治療に使われるのは気管支拡張薬とステロイド薬です。
イ) メチルキサンチン薬
・ ホスホジエステラーゼの阻害作用により効果を現します。結果として平滑筋の弛緩がおこり、気管支拡張がみられることになります。
・ この系統の薬剤としては、テオフィリン、アミノフィリンなどがあります。
ウ)β2受容体作動薬
・ 気管支平滑筋のβ2受容体を刺激し、平滑筋を弛緩させます。
・ 発作時にも慢性期の管理にも使われます。
・ 薬剤としては、サルブタモール、プロカテロール、サルメテモール、ホルモテロールなどがあります。
エ)吸入抗コリン薬
・ 喘息に、副交感神経系の亢進による気管支平滑筋の収縮と粘液過剰分泌が関係していることがあるために、使われることがあります。
・ 薬剤としては、臭化イプラトロピウム、臭化フルトロピウム、臭化オキシトロピウムなどの吸入薬があります。
オ)コルチコステロイド薬
・ 炎症、浮腫を改善し、アレルギー反応を抑制します。
・ べクロメタゾン、フルチカゾン、ブデソニドは吸入薬としてよく使われます(吸入ステロイド薬)。
カ) 抗アレルギー薬
[設問] 気管支喘息でみられる気道の炎症は、次のどれによるものか? 一つ選べ。
イ 好中球 ロ 好塩基球 ハ 好酸球 ニ リンパ球
正解 (ハ)
[設問] 気管支喘息の治療に使われるのは気管支拡張薬と何か? 一つ選べ。
イ 抗生物質 ロ ステロイド ハ 去痰薬 ニ 鎮痙薬
正解 (ロ)
[設問] 気管支喘息で使われる薬剤を二つ選べ。
イ ジゴキシン ロ フルチカゾン ハ プロカテロール ニ ニフェジピン ホ タムスロシン
正解 (ロ、ハ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第38回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
D)水・電解質、利尿薬
a) 輸液
ア)栄養輸液薬
・ 糖質輸液薬: ブドウ糖が最も使われます。 等張液は5%ですが、10%、20%、50%液があります。 果糖、キシリトール、ソルビトールなどは糖尿病の患者の場合に利用されます。
・ アミノ酸輸液薬: 複数のアミノ酸を配合した総合アミノ酸液が使われます。
・ 脂肪乳剤: エネルギー源と必須脂肪酸の供給源として利用されます。
・ 高カロリー輸液: 経口摂取が長期間できない患者で、高カロリー輸液製剤が使われ、大静脈内に持続注入することができます。
イ)血液・血漿増量剤
・ 輸血: 新鮮血輸血(供血者から採血してすぐに輸血)、保存血輸血(予め採血し冷蔵後輸血)、成分輸血(必要な成分だけ輸血)、自己血輸血(予め採血した自分の血液を必要時に輸血)
・ 血液代用液・血漿増量剤: 血液が間に合わないときに循環血液量を補う目的で代用液が使われます。 それには、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、ゼラチン製剤、アルブミンなどがあります。
・ 腹膜灌流液と人工腎臓透析液: 腎不全患者で腹膜灌流や透析を行う時に使われます。 細胞外液とほぼ同じ組成となっています。
b) 利尿薬
ア)概念
・ 腎の尿細管でのNa+、水の再吸収を抑制して尿としての排泄を増やす薬物を利尿薬(りにょうやく)といいます。 浮腫(ふしゅ)など細胞外液(さいぼうがいえき)に貯留したNa+、水を排泄させる目的で使われます。 高血圧、心不全の治療、ショック腎の予防にも使われます。
イ)利尿薬のいろいろ
・ ループ利尿薬: フロセミド、アゾセミド などがあります。 肺水腫、心不全、腎不全による浮腫、肝硬変での浮腫などすべての浮腫に使われます。
・ チアジド系利尿薬: クロロチアジド、ヒドロクロロチアジドなどがあります。 Ca2+の排泄は促進しないので腎性高Ca血症をおこすことがあります。
・ 炭酸脱水素酵素阻害薬: アセタゾラミドがある。利尿薬としてはあまり使われず、緑内障の治療に使われます。
・ カリウム保持性利尿薬: スピロノラクトン、エプレレノンがあります。 水、Na+の尿細管での再吸収を抑制するアルドステロンに拮抗して利尿を図るものです。
・ 浸透圧利尿薬: マンニトール、イソソルビド、グリセリン など。細胞外液の浸透圧を上げて組織内の水を引き抜き除く作用があります。
・ ナトリウム利尿ペプチド: もともと体内にあり、増加した体液を減らすために分泌されるホルモンです。 心房性ナトリウムペプチド(ANP)であるカルペプチド、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)であるネシリチドが急性心不全や慢性心不全の急性増悪期に使われます。
[設問] 高カロリー輸液が行われるのは次のどれか? 一つ選べ。
イ 脱水症
ロ アルコール性脳症
ハ 胃切除術後
ニ 嘔吐下痢症 正解 (ハ)
[設問] 脳圧亢進時使われる利尿薬は次のどれか?
イ フロセミド
ロ 濃グリセリン
ハ ヒドロクロロチアジド
ニ スピロノラクトン 正解 (ロ)
[設問] 利尿薬としてより、緑内障やメニエール病などに使われるのはどれか?
イ フロセミド
ロ ヒドロクロロチアジド
ハ アセタゾラミド
ニ マンニトール 正解 (ハ)
[設問] 体内で分泌される利尿作用を持つ物質はどれか? 一つ選べ。
イ アゾセミド
ロ BNP
ハ スピロノラクトン
ニ イソソルビド 設問 (ロ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第37回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
b) 高血圧治療薬
ア)利尿降圧薬(りにょうこうあつやく)
・ Na+と水の尿中への排泄を増すことにより血圧を下げます。
・ 副作用としては、早期では脱力感。長期使用で低カリウム血症、糖尿病、高尿酸血症、高脂血症の悪化があります。
イ)カルシウム拮抗薬(きっこうやく)
・ 末梢血管の抵抗を下げて血圧を下げる。現在最も使われる薬剤の1つです。
ウ)ACE阻害薬(そがいやく)(アンギオテンシン変換酵素阻害薬)とAT1受容体拮抗薬(じゅようたいきっこうやく)
・ レニン(腎から出るホルモン)→アンギオテンシン→アルドステロンのサイクルで血圧が上昇する系になっています。 これを抑制することで、血圧を下げるものがこの群の薬剤です。
・ インスリン感受性の改善効果があるといわれ、使用頻度が高まっています。
・ ACE阻害薬としてはカプトリル、エナラプリル、リシノプリルがあり、AT1受容体拮抗薬としてはロサルタン、バルサルタン、オルメサルタンがあります。
エ)アンギオテンシン変換酵素阻害薬と利尿薬またはCa拮抗薬との合剤
オ)β遮断薬
カ)α1受容体遮断薬
キ)交感神経系抑制薬
c) 心不全治療薬と強心薬
ア)心不全とは?
・ 心不全とは何らかの原因で心臓のポンプ機能が低下して心臓の拍出量が減少した状態をいいます。
イ)強心配糖体(きょうしんはいとうたい)、ジギタリス
・ 代表はジゴキシン、ジギトキシンで、ジギタリスという植物の葉に含まれる物質です。
・ 代謝: ジゴキシンは90%近くがそのまま腎臓から排泄されます。 ジキトキシンは肝臓でグルクロン酸抱合を受け胆汁中に排泄されますが、腸内細菌によってグルクロン酸がはずれ、再び腸から吸収されます(腸肝循環〈ちょうかんじゅんかん〉)。 このためジギトキシンの血中半減期は約7日と長くなります。
・ 薬理作用: 心筋収縮力の増強、徐脈。
・ 適応: うっ血性心不全、不整脈
・ ジギタリス中毒: 不整脈(2段脈、徐脈)、重篤なものとして多源性心室性期外収縮、心室頻拍、心室細動などへの移行があります。 消化器症状(食欲減退、悪心、下痢など)も伴うことがあります。
ウ)その他の強心薬
・ イソプロテレノール、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドパミン、ドブタミンなどのβアゴニストは急性心不全、心原性ショックには使われます。
・ ホスホジエステラーゼ阻害薬
d) 不整脈治療薬
ア)I群(Na+チャンネル遮断薬)
・ Ia群: キニジン、プロカインアミド など
・ Ib群: リドカイン、メキシレチン など
・ Ic群: プロパフェノン、フレカイニド など
イ)II群(β受容体遮断薬): プロプラノロール など
ウ)III群(K+チャンネル遮断薬): アミオダロン など
エ)IV群(血管選択性のないCa拮抗薬): ベラパミル など
[設問] 末梢血管の抵抗を下げて血圧を降下させる薬剤を一つ選べ。
イ 利尿降圧薬
ロ カルシウム拮抗薬
ハ ACE阻害薬
ニ AT1受容体拮抗薬
ホ β遮断薬 正解 (ロ)
[設問] AT1受容体拮抗薬であるものを一つ選べ。
イ ヒドロクロロチアジド
ロ カプトリル
ハ ロサルタン
ニ カルべジロール
ホ アムロジピン 正解 (ハ)
[設問] 腸肝循環にのるため、半減期が長くなる強心薬はどれか? 一つ選べ。
イ ジギトキシン
ロ ジゴキシン
ハ インドメタシン
ニ クロルプロマジン 正解 (イ)
[設問] 不整脈治療に使われるNa+チャンネル遮断薬はどれか?
イ プロプラノロール
ロ アミオダロン
ハ べラパミル
ニ プロカインアミド 正解 (ニ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第36回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
C)循環器系に対する薬剤
a) 虚血性心疾患の治療薬
ア)硝酸薬(しょうさんやく)
・ 投与方法と代謝: 硝酸薬ニトログリセリンは舌下(ぜっか)投与されます。 経口投与すると門脈により肝臓に運ばれ速やかに脱ニトロ化されグリセリンに代謝され無効となります。 この場合、血中半減期は2〜8分と極めて短いものです。 テープ剤の形で皮膚から吸収させる方法もとられています。
・ 作用機序
・ 臨床効果: 狭心症の発作時の治療に有効。テープ剤では、狭心症の予防効果があり、また血圧上昇を抑える作用も持っています。
イ)β遮断薬: 心臓のβ受容体を遮断し、心拍数と収縮力を減少させ、心筋酸素消費量を抑える作用を持っています。 労作性狭心症(ろうさせいきょうしんしょう)に使われることが多いようです。
ウ)カルシウム拮抗薬
・ カルシウム拮抗薬の作用: 心筋のCa2+電流を抑制する作用を持っています。 冠動脈拡張作用、全身血管を拡張して血圧を下げる作用も強い薬剤群です。
・ カルシウム拮抗薬のいろいろ: ベラパミル、ニフェジピン、ジルチアゼム、フルナリジンなどが第1世代のカルシウム拮抗薬です。 ニカルジピン、ニソルジピンなどが第2世代のカルシウム拮抗薬で第1世代に比べて副作用が減り、効力が高くなっています。 アムロジンなどは第3世代のカルシウム拮抗薬で、作用発現が緩徐で作用時間が長くなります。
・ 臨床応用: 狭心症、高血圧症、冠動脈・脳動脈硬化症に有効です。
エ)その他の狭心症治療薬
・ ジピリダモール、ジラゼプ、トラピジル などがあります。
[設問] ニトログリセリンが舌下投与されるのはなぜか? 正しいものを一つ選べ。
イ 胃で吸収されにくいから
ロ 副作用として、消化器症状が出やすいため
ハ 胃腸で吸収されると門脈で肝臓に運ばれ、速やかに脱ニトロ化され無効となるため
ニ 嚥下障害の患者でも服用しやすい剤形につくられたため
正解 (ハ)
[設問] ニトログリセリンの投与で、最終的に血管拡張作用を持つのは次のどれか?
イ 二酸化炭素 ロ 酸素 ハ 一酸化窒素 ニ 一酸化炭素 ホ 二酸化窒素
正解 (ハ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第35回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
n) 筋弛緩薬
ア)中枢性筋弛緩薬: ベンゾジアゼピン系の薬剤、バクロフェンなどがあります。これらの薬剤は、中枢神経を抑制することによって筋弛緩をおこします。
イ) 神経筋接合部遮断薬:
・ 運動神経からの刺激が骨格筋側に伝わる部位である神経筋接合部(しんけいきんせつごうぶ)の伝達を遮断する薬剤が神経筋接合部遮断薬(しんけいきんせつごうぶしゃだんやく)となります。
・ 神経筋接合部のアセチルコリン受容体はニコチン受容体であり、ニコチン受容体に神経筋接合部遮断薬は結合します。
・ 薬剤としては、ツボクラリン、パンクロニウム、スキサメトニウムなどがあります。
o) 局所麻酔薬
ア)局所麻酔薬とは?
・ 意識をなくさせず、痛みだけを感じさせなくするものが局所麻酔(きょくしょますい)薬です。
イ)局所麻酔の様式のいろいろ
・ 表面麻酔: 粘膜の麻酔で使われる。粘膜表面に麻酔薬を塗布し感覚受容器を麻痺させます。
・ 浸潤麻酔(しんじゅんますい): 皮下注射でその周辺部の感覚神経を麻痺させます。
・ 伝達麻酔(でんたつますい): 感覚神経の周囲に注射して感覚神経の伝導を遮断します。
・ 硬膜外麻酔(こうまくがいますい): 脊髄の硬膜の外に注入して後根(こうこん)に作用させます。
・ 脊椎麻酔: 脊髄のくも膜下腔に注入して後根(こうこん)に作用させます。 腰椎部でのことが多いので、その場合腰椎麻酔(ようついますい)といいます。
ウ)局所麻酔薬のいろいろ
・ コカイン: 表面麻酔に使われる。眼科で点眼液として、耳鼻科で塗布薬として使われます。
・ プロカイン: 浸潤麻酔、腰椎麻酔に使われます。 誤って血管内に入ると中枢神経を興奮させ、けいれんをおこすことがあります。
・ リドカイン: プロカインより強力。表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔、腰椎麻酔のいずれにも使用可能です。
エ)局所麻酔薬の効果の出方
・ 効果は神経線維の無髄の細いものから発現していきます。 交感神経→感覚神経→運動神経の順で、感覚神経では、痛覚や温度覚が早期に、触覚や深部感覚は後期に効果は現れます。
オ)副作用
・ 交感神経が麻痺し、血管拡張がおこるためにショックがおこることがあります。
p) 解熱鎮痛抗炎症薬
ア)非ステロイド性抗炎症薬
・ アスピリン: 酸性抗炎症薬であり、体内でサリチル酸とアセチル基に分解し、サリチル酸として作用します。 また、シク
ロオキシゲナーゼ(COX)の活性部位であるセリン残基をアセチル化することにより、シクロオキシゲナーゼを阻害する作用も持っています。
・ インドメタシン: インドメタシンは最も強力なシクロオキシゲナーゼ阻害作用を持ち(アスピリンの薬20倍)、内服、坐薬、軟膏、パップ剤などとして使われます。
・ 塩基性抗炎症薬: チアラミドが塩基性抗炎症薬の代表。酸性抗炎症薬のような強い副作用はありません。
・ 解熱鎮痛薬: アミノピリン、スルピリンはピリン系解熱鎮痛薬といわれます。 アセトアミノフェンは非ピリン系解熱鎮痛薬であり、解熱鎮痛作用は強いが抗炎症作用は弱く、アスピリンが副作用のため使えない人、小児の短期間の解熱鎮痛薬のファーストチョイスとされます。
[設問] 麻酔薬の投与法と麻酔の種類の説明で正しいものを一つ選べ。
イ 粘膜表面に麻酔薬を塗布して感覚受容器を麻痺させるのは表面麻酔である。
ロ 感覚神経の周囲に麻酔薬を注射して神経伝導を遮断するのは浸潤麻酔である。
ハ 皮下へ麻酔薬を注射し周辺部の感覚神経を麻痺させるのは伝達麻酔である。
ニ 脊髄の硬膜の外に麻酔薬を注入して後根を麻痺させるのは脊椎麻酔である。
正解 (イ)
[設問] 表面麻酔に使われる麻酔薬を二つ選べ。
イ コカイン ロ リドカイン ハ プロカイン ニ 笑気 ホ ハロセン
正解 (イ、ロ)
[設問] 局所麻酔薬の効果の出方の正しい説明文を一つ選べ。
イ 効果は、有髄神経の径が大きいものから発現する。
ロ 感覚神経よりも交感神経の方が効果が早く出る。
ハ 感覚神経よりも運動神経の方が効果が早く出る。
ニ 感覚神経では、深部感覚が最も効果は早く出る。 正解 (ロ)
[設問] 局所麻酔薬によるショックは、以下のどれの麻痺によるものか?
イ 運動神経
ロ 感覚神経
ハ 交感神経
ニ 副交感神経 正解 (ハ)
[設問] 小児でよく使われる解熱鎮痛薬は以下のどれか? 一つ選べ。
イ アミノピリン ロ スルピリン ハ アスピリン ニ インドメタシン ホ アセトアミノフェン
正解 (ホ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第34回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
k) 交感神経に作用する薬剤
ア)アドレナリン作動薬(交感神経興奮薬): カテコールアミンなど。
・ カテコールアミン: ノルアドレナリン、アドレナリン、ドパミン、ドブタミン、イソプロテレノールがあります。
・ ノルアドレナリン: 昇圧作用が強い薬剤です。 心拍出量や組織の血流が正常なときは有効です。 しかし、ショック時には無効です。
・ アドレナリン: β2受容体刺激作用が強いため気管支喘息に有用です。 また、ショックにも使用できます。
・ イソプロテレノール: β受容体刺激作用が強いため気管支喘息の発作時の吸入薬として用いられます。
・ ドパミン: ショックなどで昇圧効果がみられます。
・ その他のアドレナリン作動薬: フェニレフリン、クロニジン、ドブタミン、チラミン など
イ)交感神経遮断薬(抗アドレナリン薬)
・ α受容体遮断薬: α作用を持った交感神経興奮物質と競合的拮抗をします。 高血圧治療薬として利用されることが
多い薬剤です。
・ β受容体遮断薬: 心拍数を減少、収縮力を低下させて心拍出量を減少させるので、心筋の酸素需要が減少します。
不整脈治療薬や高血圧治療薬として使われます。 プロプラノロールは代表的なβブロッカーです。 βブロッカーは、気管支喘息、糖尿病性アシドーシス、高度の徐脈、心原性ショック、急性心不全などには禁忌になります。
・ 交感神経終末抑制薬: レセルピンは、アドレナリン作動性神経終末においてカテコールアミンを枯渇(こかつ)させます。
l) 副交感神経に作用する薬物
ア)副交感神経作動薬
・ コリン作動薬: アセチルコリン、メタコリン、ベタネコール、ムスカリン、ピロカルピンなどがあります。
・ コリンエステラーゼ阻害薬: フィゾスチグミン、ネオスチグミン、エドロフォニウム などがあります。
イ)抗コリン薬(副交感神経遮断薬)
・ アトロピンが代表的な抗コリン薬であり、アセチルコリンの結合する受容体(ニコチン受容体とムスカリン受容体の2種類)のうちムスカリン受容体に競合的に結合することで副交感神経を遮断します。 投与により頻脈、口渇、腸管機能の抑制などがおこります。 散瞳薬としても使われます。
m) 自律神経節に作用する薬物
ア)神経節興奮薬(刺激薬)
・ アセチルコリンと同じようにニコチン受容体と結合して自律神経節を興奮させる物質をいいます。
・ 代表的な神経節興奮薬がニコチンです。
・ ニコチンは血圧上昇、腸管運動の亢進をおこし、骨格筋では少量で収縮を促進し多量では後期に麻痺させます。
イ)自律神経節遮断薬
・ 自律神経節遮断薬はアセチルコリンが結合するニコチン受容体に先回りして結合して作用します。
・ 自律神経節は交感神経系も副交感神経もあるため、臓器では優位に支配している方の抑制効果が出ます。 消化管は副交感神経優位のため蠕動運動の減少が、心臓でも副交感神経が優位のため頻脈に、細動脈では交感神経系が優位ですので血圧は下降します。
[設問] 以下より交感神経興奮薬を一つ選べ。
イ アセチルコリン
ロ レセルピン
ハ プロプラノロール
ニ イソプロテレノ―ル 正解 (ニ)
[設問] 副交感神経作動薬で重症筋無力症の診断に使われるものはどれか?
イ アセチルコリン
ロ ピロカルピン
ハ エドロフォニウム
ニ アトロピン 正解 (ハ)
[設問] 散瞳薬として使われるのはどれか?
イ アトロピン
ロ アセチルコリン
ハ レセルピン
ニ ドパミン 正解 (イ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第33回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
e) 全身麻酔薬
ア)吸入麻酔薬と静脈内麻酔薬
・ 吸入麻酔薬: 笑気(しょうき)は無臭のガス。その他の吸入麻酔薬は揮発性液体なので気化させて使います。 以前はハロタンが使われていましたが、最近ではエンフルラン、メトキシフルラン、イソフルラン、セボフルランなどがよく使われます。
・ 静脈内麻酔薬: バルビタール誘導体、ケタミン、ベンゾジアゼピン系薬剤、プロプフォル、エトミダートなどがあります
イ)麻酔深度
f) 抗てんかん薬
ア)小発作治療薬
・ エトスクシミド: 小発作第1選択薬
・ バルプロ酸: 小発作にも大発作にも有効
・ クロナゼパム: ベンゾジアゼピン系で最も抗けいれん作用が強い薬物です。
イ)大発作治療薬
・ フェニトイン: 抗けいれん作用は強いが、運動失調や精神症状をおこすことがあります。
・ カルバマゼピン: 複雑部分発作の第1選択薬
・ フェノバルビタール: 古くから使われ、安全性が高いことが利点です。
・ プリミドン: 代謝されてフェノバルビタールとなって作用します。
ウ)新規の治療薬
・ レべチラセタム: 部分発作に対する併用薬
・ ラモトリギン: 部分発作と全般発作の併用薬
・ ガバペンチン: 部分発作に対する併用薬
g) 麻薬性鎮痛薬と拮抗薬
ア)麻薬性鎮痛薬
・ 麻薬性鎮痛薬オピオイドは、意識をなくすことなく痛みを和らげるが、同時に多幸感が生じ、連用により習慣性をおこす1群の化合物です。
・ 代表的オピオイドは、アヘンから抽出されるモルヒネ、ヘロイン、コデインの三つです。
・ 麻薬性鎮痛薬は副作用として呼吸抑制があります。
・ 合成麻薬性鎮痛薬としては、ペンタゾシンがある。
イ)麻薬拮抗薬
・ ナロキソンやナルトレキソンは、麻薬拮抗作用があるので、急性麻薬中毒の呼吸抑制に有効です。
h) 中枢神経興奮薬
ア)カフェイン: キサンチン類の1つで合法的な中枢神経興奮薬です。1杯のコーヒーにやく100mg、カフェインが含まれており、1日6杯以上(600mg以上)で軽い身体的依存がおこります(無気力、頭痛など)。
イ) ニコチン: ニコチンは中枢神経興奮薬であり、依存を生じます。
ウ) コカイン: コカの葉に含まれる。コカの葉を噛んでも量が少なく、中毒にはなりません。 精製されてコカインとなります。
エ) メタンフェタミン: 覚醒剤として使われます。
i) 幻覚剤、その他
ア)LSD: 麦角(ばっかく)アルカロイドから合成される幻覚剤の1つです。
イ)大麻: 大麻成分のカンナビノイドにより、多幸感、幻覚をおこします。
j) アルコール
・ エタノールは中枢神経系を抑制します。
・ 一気飲みによる急性アルコール中毒は非常に危険です。
・ 慢性アルコール中毒により、禁断症状(きんだんしょうじょう)として振戦せん妄(しんせんせんもう)(意識混濁、振戦、幻覚)をおこし死に至ることもあります。
[設問] 通常の外科手術が行われる麻酔深度は、以下のどれか?
イ 意識不完全、痛覚低下
ロ 意識消失、見かけ上興奮
ハ 反射抑制、骨格筋弛緩
ニ 呼吸停止、血圧低下 正解 (ハ)
[設問] 本邦で複雑部分発作の第一選択薬として使われる抗てんかん薬はどれか?
イ カルバマゼピン ロ バルプロ酸 ハ フェニトイン ニ クロナゼパム
正解 (イ)
[設問] 合成麻薬性鎮痛薬は次のどれか?
イ モルヒネ ロ ヘロイン ハ コデイン ニ ペンタゾシン
正解 (ニ)
[設問] 急性麻薬中毒の呼吸抑制に有効なのは次のどれか?
イ ペンタゾシン ロ カルバマゼピン ハ クロナゼパム ニ ナロキソン
正解 (ニ)
[設問] 慢性アルコール中毒の禁断症状は次のどれか?
イ 悪性症候群
ロ パニック障害
ハ 振戦せん妄
ニ 多幸症 正解 (ハ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第32回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
B)神経系に対する薬剤
a) 抗精神病薬(こうせいしんびょうやく)
・ 抗精神病薬は主に統合失調症(とうごうしっちょうしょう)でおこる幻覚、妄想などの陽性症状に有効です。
・ 抗精神病薬には、フェノチアジン系、チオキサンチン系、ブチロフェノン系などがあります。
・ 副作用として急性期には抗コリン作用(口渇、発汗の減少、尿閉、便秘、目のかすみ)、長期服用時に遅発性(ちはつせい)ジスキネジア(不随意運動の1種)、まれに重篤なものとして悪性症候群(あくせいしょうこうぐん)(高熱、筋強剛、血清CPKの上昇、昏睡、ときに死亡)があります。
b) パーキンソン病治療薬
ア)レボドーパ製剤
・ パーキンソン病で欠乏するドパミンの補充の目的で、前駆物質であるレボドーパ製剤が投与されます。
・ 副作用として、初期には消化器症状(嘔吐など)、後期には幻覚(げんかく)やジスキネジアなどがおこってきます。
・ 現在よく使用されるレボドーパ製剤には末梢組織で脱炭酸されないように、末梢性脱炭酸酵素阻害薬が配合されています。
イ)アマンタジン
・ ドパミン神経終末からのドパミンの遊離を促進する作用を持っています。
ウ)ドパミン受容体アゴニスト
・ ドパミンの作用する受容体を直接刺激する作用を持っています。
エ)中枢性抗コリン薬
・ パーキンソン病では、ドパミン系が弱くなってアセチルコリン系が優位となっているため、アセチルコリン系を抑制する作用が治療に使われます。
c) 抗うつ薬
・ 抗うつ薬としては、三環系(さんかんけい)抗うつ薬(イミプラミン、アミトリプチリン、クロミプラミンなど)、四環系(よんかんけい)抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み抑制薬)、やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み抑制薬)があります。
d) 躁病(そうびょう)治療薬
・ 炭酸リチウムが使われます。
e) 抗不安薬、催眠薬
・ 抗不安薬は不安を取り除き鎮静作用を持っています。
・ 催眠薬(さいみんやく)は眠気をおこし睡眠へと導く作用を持っています。
・ 代表的なものがベンゾジアゼピン系の薬物とバルビタール酸誘導体であり、GABAの神経伝達に作用します。
・ ベンゾジアゼピン系薬物: ジアゼパム、クロルジアゼポキシド、ニトラゼパム、フルニトラゼパム、トリアゾラムなどがあります。
・ 新しい抗不安薬: ブスピロン
[設問] 抗精神病薬でよくみられる副作用を二つ選べ。
イ 遅発性ジスキネジア
ロ 悪性症候群
ハ 起立性低血圧
ニ 躁症状
ホ 幻覚 正解 (イ、ロ)
[設問] パーキンソン病治療薬で、ドパミン神経終末からのドパミンの遊離促進作用を持つものはどれか?
イ レボド―パ製剤
ロ アマンタジン
ハ ドパミン受容体アゴニスト
ニ 抗コリン薬 正解 (ロ)
[設問] 躁病治療薬を一つ選べ。
イ イミプラミン ロ 炭酸リチウム ハ レボド―パ ニ ジアゼパム
正解 (ロ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第31回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
b)化学療法薬
ア) 抗菌薬
・ 微生物が産生する物質で抗菌作用を示すものを抗生物質、化学的に合成された抗菌作用を示す物質を合成抗菌薬といいます。
・ βラクタム系抗生物質: 構造中にβラクタムと呼ばれる4員環を持つものをいいます。また、この4員環が抗菌活性を担っているのです。
ペニシリン系 ベンジルペニシリン、メチシリン、アンピシリン など
セフェム系 第1世代: セファゾリンなど(グラム陽性菌に有効、 緑膿菌には無効)
第2世代: セフォチアムなど(グラム陰性菌に対する抗菌力が高い、緑膿菌には無効)
第3世代: セフォタキシムなど(緑膿菌、セラチアにも有効)
第4世代: セフピロムなど(黄色ブドウ球菌や緑膿菌にも有効)
カルバパネム系 イミペネム など
モノバクタム系 アズトレオナム など
・ ホスホマイシン: 放線菌が産生するホスホエノールピルビン酸と類似の構造を持つ薬剤です。
・ グリコペプチド: バンコマイシンが代表的なもので、グラム陽性菌に対してのみ抗菌作用を持ちグラム陰性菌には無効。MRSAに対する第1選択薬となっています。
・ アミノグリコシド系抗生物質: アミカシン、ゲンタマイシンなどがあり、主にグラム陰性菌感染症に対して使われます。
・ テトラサイクリン系抗生物質: クロルテトラサイクリン、オシキテトラサイクリンなどがあり、広い抗菌作用を持ち、グラム陽性菌、グラム陰性菌に対して静菌的に作用します。
・ クロラムフェニコール: 毒性が強く、腸チフス、パラチフスなどの治療に限られています。
・ マクロライド系抗生物質: エリスロマイシン、ジョサマイシンなどと、ニューマクロライド系と呼ばれるクラリスロマイシン、ロキシスロマイシンなどがあります。
・ リンコマイシン、クリンダマイシン
・ 合成抗菌薬には、キノロン類とスルフォンアミド類(サルファ剤)、ST合剤(スルファメトキサゾールとトリメトプリムの合剤)があります。
イ)抗結核薬
・ 結核菌は癩菌(らいきん)とともに代表的な抗酸菌(こうさんきん)であり、他の細菌といろんな点で異なる細菌です。 抗結核薬は長期に投与されるため副作用の発現に注意が必要です。
・ 薬剤としては、イソニアジド(INH)、リファンピシン、エタンブトール、ストレプトマイシン、ピラジナミドがあります。
ウ)抗ウイルス薬
・ 抗ウイルス薬は、抗ウイルス作用と同時に投与される患者の生体細胞にも大きな影響があり、重篤な副作用をおこすことがあります。
・ 現在使われている抗ウイルス薬の多くは、核酸の合成を阻害する作用を持っています。
・ アマンタジン: インフルエンザAや風疹ウイルスに対して使われます。
・ アシクロビル: 単純ヘルペスウイルスや水痘ウイルスに対し有効です。
・ ガンシクロビル: サイトメガロウイルス感染症の治療・予防に使われます。
・ イドキシウリジン: 単純ヘルペス性角膜炎に使われます。
・ ビダラビン: 単純ヘルペス脳炎、免疫不全患者で発症した帯状疱疹、水痘に使われます。
・ ホスカルネット: ヘルペスウイルス、水痘ウイルス、HIVに抑制的に作用します。
・ リバビリン: C型慢性肝炎にインターフェロンα–2bとともに使われます。
・ オセルタミビル: インフルエンザA、B型ウイルスの両者に有効です。
・ インターフェロン: 抗ウイルス、免疫機能修飾、抗細胞増殖作用を持った強力なサイトカインです。 B、C型慢性肝炎などの治療に使われます。
・ レトロウイルス感染症治療薬: アジドチミジン、ジダノシン、ラミブジン、サニルブジン、ザルシタビン、アバカビルなどのヌクレオシド逆転写酵素阻害薬(ぎゃくてんしゃこうそそがいやく)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬などがあります。
エ)抗真菌薬
・ 深在性真菌症治療薬: アンホテリシンB、フルシトシン、グルセオフルビンなど
・ 表在性真菌症治療薬: ナイスタチンなど
[設問] 抗菌薬に関する以下の文で正しいものを一つ選べ。
イ 微生物が産生する物質で抗菌作用を示すものを抗生物質という。
ロ βラクタム系抗生物質には、ホスホマイシンも含まれる。
ハ アミノグルコシド系抗生物質には、クロルテトラサイクリンも含まれる。
ニ バンコマイシンはグラム陰性菌にのみ抗菌作用を持つ。
正解 (イ)
[設問] 以下より、抗結核剤を二つ選べ。
イ アンピシリン
ロ セファゾリン
ハ リファンピシン
ニ ストレプトマイシン
ホ エリスロマイシン 正解 (ハ、ニ)
[設問] サイトカインであり、B,C型慢性肝炎に使われるのはどれか?
イ アシクロビル
ロ アマンタジン
ハ インターフェロン
ニ ビダラビン 正解 (ハ)