疾病の成りたちと回復の促進 第7回(病態のいろいろ) [疾病の成り立ちと回復の促進]
(2)細胞・組織の傷害
A)細胞傷害の機序
a)不可逆的細胞傷害と可逆的細胞傷害
・ 細胞は種々の因子によって影響を受け、適応しようとするが、ある限界を超えると傷害を受けることになります。 傷害にも修復され元に戻りうる可逆的(かぎゃくてき)細胞傷害と、元にもどらず細胞死に至る不可逆的(ふかぎゃくてき)細胞傷害があるのです。 可逆的から不可逆的細胞傷害へ移る境目を不帰(ふき)点といい、不帰点は細胞の種類や生理状態によって変わりうるものです。
b)代表的な細胞傷害因子
・ 活性酸素・フリーラジカル: 細胞傷害機構中、最重要因子といわれます。 正常分子を変化させ、蛋白質や核酸を変性・切断し、さらに細胞膜のリン脂質にラジカルを発生させ細胞膜を破壊し細胞の不可逆的傷害をおこします。
B)萎縮
a)萎縮とは?
・ いったん正常に発達した臓器、組織の容積が障害のため縮小することをいいます。
b)全身性の萎縮
・ 加齢や飢餓、消耗性疾患で全身の臓器や組織に萎縮をみることをいいます。
・ 全身性の萎縮の場合、特に脂肪組織、骨格筋、肝臓に萎縮は目立ってみられます。
c)局所性の萎縮
ア)圧迫萎縮: 長期間の圧迫が加わった組織におこるものをいいます。
イ)無為(むい)萎縮: 廃用性萎縮ともいい、長期間使わなかったことによりおこる萎縮のことです。 四肢の骨格筋におこりやすい萎縮です。
ウ)神経原性萎縮: 運動神経の障害により、その支配する骨格筋におこる萎縮のことです。
エ)内分泌性萎縮: ホルモンにより支配されている器官で、ホルモンの低下により刺激が減退しておこる萎縮のことです。
[設問] 細胞傷害における不帰点について正しいものを一つ選べ。
イ 可逆的な細胞傷害の始まりをいう。
ロ 可逆的な細胞傷害の半ばあたりのことをいう。
ハ 可逆的な細胞傷害と不可逆的細胞傷害の境目をいう。
ニ 不可逆的な細胞傷害がある程度進んだ状態をいう。 正解 (ハ)
[設問] 細胞傷害の最重要因子とされるものは次のどれか?
イ 酸素 ロ 二酸化炭素 ハ フリーラジカル ニ 一酸化炭素
正解 (ハ)
[設問] ギプス固定によっておこる局所の筋肉の萎縮はどれか?
イ 圧迫萎縮
ロ 無為萎縮(廃用性萎縮)
ハ 神経原性萎縮
ニ 内分泌性萎縮 正解 (ロ)