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疾病の成り立ちと回復の促進 第16回(病態のいろいろ) [疾病の成り立ちと回復の促進]

(5)炎症

A)炎症とは?

・ 炎症は病態の一つですが、傷害因子または傷害された組織に対する局所の一連の防御反応なのです。

( 細胞や組織は傷害を受けると、局所の変性、壊死などの退行性病変や循環傷害をおこす。その後に被害を最小限にとどめようと傷害因子を除き、損傷を修復、再生しようとする。これらの一連の防御反応を炎症といいます)

・ 炎症の4徴: 局所では、発赤、発熱、腫脹、疼痛がみられますが、これを炎症の4徴といいます。 機能喪失(きのうそうしつ)を加えると5徴となります。

炎症の4徴.png

・ 全身性の変化: 発熱、頻脈、白血球増多、赤血球沈降速度の亢進がみられます。

B)炎症の原因

・ 物理的因子、化学的因子、生物学的因子、その他の因子があります。

・ その他の因子には、局所の循環傷害、免疫複合体、種々の異物などががあります。

・ 上記の因子により細胞が破壊されると、ライソソームなどから酵素が放出され、多くの分解産物が生じケミカルメデイエーターとなります。

C)炎症に関与する細胞と機序

・ ケミカルメデイエーターの産生→血管透過性の亢進→血漿成分の滲出→白血球の遊走→白血球による貪食→肉芽組織による修復→瘢痕化

・ 炎症に関与する細胞の主たるものは血液細胞と間葉系細胞である。

D)炎症の分類

a)臓器による分類

・ 肺炎、肝炎、脳炎など

b)経過による分類

・ 急性炎症: 発症から数日〜半月程度でピークに達します。 組織学的には好中球を中心とした滲出現象が顕著です。

・ 慢性炎症: 急性炎症から移行する場合と、初めからゆっくりと数ヶ月〜数年の経過をとる場合があります。 組織学的にはリンパ球、形質細胞が出現し、線維芽細胞などの結合組織の増殖が著明となり肉芽形成、壊死などを伴っています。

・ 亜急性炎症: 急性炎症と慢性炎症の中間にあるものです。

c)炎症とケミカルメデイエーター

・ 炎症の急性期には局所の血管透過性の亢進と滲出液の流出と白血球の遊走がおこります。 これらを惹起するのが白血球遊走因子と呼ばれるケミカルメデイエーターです。

・ 血管透過性の亢進は早期の30分以内と、発症4〜5時間後の2つのピークがあり、1〜2日続きます。 最初のピークではヒスタミンが、2番目のピークではキニン類が働きます。

炎症の経過.png

・ サイトカイン: 抗原などで刺激を受けた細胞が産生する液性因子(えきせいいんし)をサイトカインと呼びます。 リンパ球が免疫反応に際して産生するサイトカインは、リンホカインといいます。 リンホカインは抗体は含んでいません。 サイトカインは産生細胞の近くにある細胞や自身に作用するものです。 炎症に際して産生され機能するサイトカインを炎症性サイトカインと呼びます。 細菌感染でおこる好中球増加や核左方移動、炎症細胞の浸潤などは、その炎症性サイトカインの作用によるものです。

[設問] 炎症の4徴の組み合わせで正しいものを選べ。

イ 発赤・冷感・腫脹・疼痛

ロ 蒼白・発熱・萎縮・しびれ

ハ 発赤・発熱・腫脹・疼痛

ニ 蒼白・冷感・萎縮・しびれ     正解 (

[設問] 炎症に際して、ある細胞内小器官から酵素が放出されて分解産物をつくり、それがケミカルメディエーターとなるが、その細胞内小器官を選べ。

イ ミトコンドリア  ロ ぺルオキシソーム  ハ ゴルジ装置   ニ ライソソーム

                                         正解 (

[設問] 炎症における血管透過性の亢進には二つのピークがみられるが、最初のピークは何によるか?

一つ選べ。

イ ヒスタミン   ロ ブラジキニン   ハ セロトニン   ニ アドレナリン

                                     正解 (


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疾病の成り立ちと回復の促進 第15回(病態のいろいろ) [疾病の成り立ちと回復の促進]

C)ショック

a)ショックとは?

・ 循環血液量の低下により全身の末梢循環障害がおこり、これにより全身臓器が高度の酸素不足から機能低下をおこす結果生じる症候群です。

・ 循環血流量の低下には、大量出血で血管内の血液が激減した場合と、血圧低下などである一定の時間に流れる血液量が激減した場合があります。

・ 臨床的には、顔面蒼白(がんめんそうはく)、冷汗、刺激に対する反応性低下、血圧低下を示します。

ショックの臨床.png

 

b)神経原性ショック
・ 強い精神的な刺激、強い痛みなどで全身の毛細血管の拡張がおこり有効循環血液量(心臓に戻ってくる血液の量)の低下のため重要臓器の酸素不足が生じておこるものです。
c)心原性ショック
・ 心筋梗塞など心拍出能力が高度に低下したときにおこります。
d)低容量性ショック
・ 何らかの原因による出血、脱水、下痢など大量の体液が喪失したときにおこるものである。
e)敗血症性ショック(エンドトキシンショック)
・ 細菌(特にグラム陰性桿菌)により放出されるエンドトキシン(菌体内毒素)によりおこるものです。
f)アナフィラキシーショック                       
・ IgEを介したI型アレルギー反応によっておこるショックのことです。

アナフィラキシ―.png

g)ショックによる臓器障害

・ ショック腎: ショックによる腎血流量の低下により尿量減少がおこります。場合によっては尿細管壊死に至ることもあります。

・ ショック肺: ショックによって肺胞壁が障害され、間質性肺炎がおこります。重症化、慢性化すると呼吸不全をきたし死に至ることもあります。

・ DIC(播種性血管内凝固症候群): 血液凝固系の亢進のため全身の細小血管に血栓が形成され、多臓器不全をおこします。

D)高血圧による臓器障害

a)脳と心臓の血管系の障害

ア)脳血管障害 

・ 高血圧性脳症: 血圧が急激に上昇すると脳水腫などがおこり、頭痛、悪心(おしん)、けいれん、意識障害などをきたすものです。

・ 脳内出血: 長年の高血圧などにより細小動脈の壁の脆弱化をきたし、さらに血圧が上昇したときに血管壁が破綻しておこるものです。

・ くも膜下出血: 高血圧などのために、もともと動脈壁の脆弱な部位に瘤ができ、血圧上昇の際に破綻しておこるものです。

脳卒中.png

イ) 心・血管系の障害

・ 心拡大: 高血圧が続くと左心室肥大→肺うっ血→右心室肥大へと進行していきます。

・ 大動脈瘤の形成

・ 冠状動脈やその他の細小動脈の動脈硬化の促進

・ 悪性高血圧: 高血圧が臓器障害をおこし、それによる脳、心臓、腎臓などの臨床症状を伴う場合をいいます。

E)動脈硬化症に伴う障害

・ アテローム硬化: アテローム硬化は大動脈(弾性動脈)と中動脈(筋性動脈)の内膜に平滑筋細胞、脂質、結合組織
が進行性に蓄積する病態をいいます。 この病態は心筋梗塞や脳梗塞の発症につながっていきます。

[設問] ショックで見られるものを二つ選べ。

イ 顔面蒼白

ロ 高血圧

ハ 冷や汗

ニ 過呼吸

ホ 精神的高揚      正解 (

[設問] 強い痛み刺激でおこるショックはどれか?

イ 神経原性ショック

ロ 心原生ショック

ハ エンドトキシンショック

ニ アナフィラキシーショック      正解 () 

[設問] 脳内出血の原因として最も多いのはどれか?

イ 動脈瘤破裂   ロ 血管腫からの出血   ハ 高血圧   ニ 糖尿病

                              正解 (


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