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疾病の成り立ちと回復の促進 第17回(病態のいろいろ) [疾病の成り立ちと回復の促進]

(6)感染症

A)感染症とは?

・ 病原微生物の侵入によっておこる疾患を感染症(かんせんしょう)といいます。 また、感染症がヒトからヒトへと多くのヒトへ伝わっていく場合、伝染病(でんせんびょう)といいます。

B)感染と発症

・ 病原微生物(病原体)が体表面に付着あるいは体内に侵入し病巣を形成するまでを感染といいます。

・ 病巣が基になって一定の臨床症状が現れた場合、発症(はっしょう)といいます。

・ 感染後、発症までの期間を潜伏期(せんぷくき)といいます。

感染と発症.png

・ 感染後発症するのを顕性感染(けんせいかんせん)といい、発症せずに終わるのを不顕性感染(ふけんせいかんせん)といいます。

C)感染経路

a) 水平感染

ア)接触感染: 感染源に接触することによって感染

・ 直接接触: 接吻、性交などによるものです。

直接感染.png

・ 間接接触: 病原体に汚染されたハンカチ、衣類、器物などによるものです。

間接感染.png

イ)伝播体による感染: 病原体に汚染された感染源によるものです。

・ 経口感染: 水、牛乳、食物などの経口摂取による感染をいいます。

・ 経皮感染: 土などの皮膚、傷口への接触による感染をいいます。

・ 経気道感染: くしゃみ、咳などからの喀痰や唾液の小滴、塵埃を吸入することによる感染をいいます。

ウ)媒介体による感染: ノミ(ペスト菌)、蚊(日本脳炎)、犬(狂犬病ウイルス)、野兎(野兎病菌)などによるものです。

b)垂直感染

ア)経胎盤感染: 胎盤を介した母親から胎児への血行感染のことです。

垂直感染.png

イ)経産道感染: 分娩時におこる母親から胎児への感染のことです。

ウ)授乳による感染: 母乳を介した母親から乳児への感染のことです。

D)病原体の体内の蔓延経路

a) 連続的: 組織間隙を連続的に広がるもの。

b) 管内性: 気道、消化管など管状の器官の管腔を広がるもの。

c) リンパ行性: リンパ路を広がるもの。

d) 血行性: 血流を介して広がるもの。

E) 菌血症と敗血症

a) 菌血症: 血液中に病原菌が現れた場合にいいます。

b) 敗血症: 菌血症の状態から進み、宿主が抵抗力を失い重篤な全身症状を呈した場合にいいます。

F) 宿主の抵抗力

a) 自然抵抗力: 

ア)好中球やマクロファージなどの食作用を持つ細胞の貪食能

イ)免疫グロブリン、乳汁、消化管などからの分泌型IgA抗体中の自然抗体、涙や唾液中のリゾチーム、乳汁や唾液のペルオキシダーゼなどの液性因子

ウ)補体(ほたい): 細菌の膜上で補体が活性化されると溶菌がおこります。 また、補体はオプソニンの1つとして微生物に結合し食作用を受けやすくする働きも持っています。

エ)CRP(C反応性蛋白): 細菌と結合し補体の活性化を促します。

オ)皮膚、粘膜などは自然のバリアーの機能を持っています。

b) 獲得抵抗力

・ 獲得免疫(かくとくめんえき)と呼ばれ、再感染時に反応し発病を抑える働きをします。

G) 最近の感染症の動向

・ 公衆衛生の改善、抗生物質などの化学療法の進歩、ワクチンの開発によって法定伝染病(ほうていでんせんびょう)は激減しています。

・ その中で、重症急性呼吸器症候群(SARS)などの外来感染症、動物由来の感染症(西ナイルウイルス、トリ型インフルエンザウイルス感染症)が出現しています。

・ 性行為感染症(せいこういかんせんしょう)では、これまでの性病(淋病、梅毒、軟性下疳、鼠径リンパ肉芽腫症)に加え、非淋菌性尿道炎、陰部ヘルペス、クラミジア、毛ジラミ症、エイズなどの感染症が伝染するようになってきています。

・ その他、MRSAやVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)の出現や腸管出血性大腸菌O157による集団食中毒の発生などが問題となっています。

O-157.png

[設問] 感染症における感染について述べたもので正しいものを選べ。

イ 感染症がヒトからヒトへと多くのヒトへ伝わっていく場合をいう。

ロ 病原体が体表面に付着あるいは体内に侵入した時をいう。

ハ 病原体が体表面に付着あるいは体内に侵入し、病巣を形成するまでをいう。

ニ 病原体が体表面に付着あるいは体内に侵入し、病巣が形成され、それが基になって一定の症状が現れた場合をいう。

                                    正解 () 

[設問] 垂直感染であるものを一つ選べ。

イ 蚊による日本脳炎の感染

ロ 胎盤を介した母親から胎児への感染

ハ 性交による感染

ニ 水の経口摂取による感染     正解 (

[設問] 最近の感染症の動向に関して、ただしいものを一つ選べ。

イ 法定伝染病は増加している。

ロ 重症急性呼吸器症候群(SARS)は、新型のヘルペスウイルスが原因であることがわかった。

ハ 性行為感染症としては、特に新たな感染症が出現していない。

ニ 最近では、MRSAやVREの出現や、腸管出血性大腸菌O157による集団食中毒などの発生が問題となっている。

                           正解 (


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