疾病の成りたちと回復の促進 第19回(病態のいろいろ) [疾病の成り立ちと回復の促進]
B) 自己免疫疾患
a) 自己免疫疾患とは?
・ 自己に対する抗体(自己抗体(じここうたい))が自己の細胞や組織を破壊しおこるものをいいます。
・ 自己の体細胞成分には、本来免疫学的寛容(めんえきがくてきかんよう)が成立していますが、これが破綻しておこるものです。
・ 自己免疫疾患の条件: 体温で反応する自己抗体を検出できること、この自己抗体と特異的に反応する抗原を証明すること、この抗原を用いて実験動物に抗体産生を証明すること、この抗原を用いて実験動物にヒト疾患と類似の病変をつくりうること……が条件となります。
b) 自己免疫疾患のいろいろ
・ SLE、関節リウマチ、リウマチ熱、多発性結節性動脈炎、全身性強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、橋本病、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、潰瘍性大腸炎、若年性糖尿病、大動脈炎症候群(高安病)など
c)膠原病
・ 1942年にクレンペラーによって提唱されたものです。 慢性関節リウマチ(現、関節リウマチ)、SLE、皮膚筋炎、全身性強皮症、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱の6疾患を検討し、膠原線維にフィブリノイド壊死という共通の所見を見つけ、一括して膠原病という病名を提唱しました。 しかし、現在種々の自己抗体が見つかり、自己免疫疾患に統合されています。
[設問] 下記の文の( )に入るべきものを選べ。
・自己免疫疾患は自己の体細胞成分に対する( )が破綻しておこるものである。
イ 自己抗体 ロ 拒絶反応 ハ 抗原 ニ 免疫学的寛容
正解 (ニ)
[設問] 以下より自己免疫疾患を二つ選べ。
イ インフルエンザ ロ 関節リウマチ ハ ライム病 ニ 重症筋無力症 ホ 筋強直性ジストロフィー
正解 (ロ、ニ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第18回(病態のいろいろ) [疾病の成り立ちと回復の促進]
(7)免疫異常
A) アレルギー
a) アレルギーとは?
・ アレルギーとは、ある抗原に対する特異的な抗体が結合し、複雑な種々の反応が加わって局所あるいは全身の細胞・組織の傷害を伴う生体にとって不利な反応をいいます。 アレルギーをおこす抗原をアレルゲンといいます。
b) アレルギーのいろいろ
ア)即時型アレルギー
・ I型アレルギー(アナフィラキシー型アレルギー)
・ II型アレルギー(II型細胞傷害型反応): 細胞表面の抗原が抗体と結合して細胞溶解ないし傷害がおこる反応をII型アレルギーといいます。
・ III型アレルギー(III型免疫複合体による組織傷害): 抗原と抗体が結合した免疫複合体によっておこる組織破壊をいい、これに基づく疾患群を免疫複合体病(めんえきふくごうたいびょう)といいます。 III型アレルギーによる疾患には、糸球体腎炎、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎などがあります。
イ)遅延型アレルギー
・ IV型アレルギー: 即時型では液性抗体が働くのに対し、遅延型ではT細胞がエフェクターとして働き細胞性免疫が関与します。 反応は、抗原曝露後12時間ほどで始まり、24〜48時間でピークに達し、徐々に消えていきます。 ツベルクリン反応や接触性皮膚反応がこれによるものです。
[設問] アナフィラキシーショックはどれに属するものか?
イ I型アレルギー
ロ II型アレルギー
ハ III型アレルギー
ニ IV型アレルギー 正解 (イ)
[設問] 糸球体腎炎はどれによって起こる疾病か?
イ I型アレルギー
ロ II型アレルギー
ハ III型アレルギー
ニ IV型アレルギー 正解 (ハ)
[設問] ツベルクリン反応はどれによるものか?
イ I型アレルギー
ロ II型アレルギー
ハ III型アレルギー
ニ IV型アレルギー 正解 (ニ)