疾病の成りたちと回復の促進 第20回(病態のいろいろ) [疾病の成り立ちと回復の促進]
C)免疫不全症候群
a) 免疫不全症候群とは?
・ 免疫不全症候群とは抗体産生細胞の機能不全あるいは器質的障害に基づく症候群のことです。
b) 原発性免疫不全(げんぱつせいめんえきふぜん): 液性抗体の欠乏によるもの(無ガンマグロブリン血症など)、細胞性免疫の欠陥によるもの(重症免疫不全症など)、免疫系の欠陥以外に特徴のある異常を伴うもの(ウイスコット・アルドリック症候群など)に分類されます。
c) 続発性免疫不全(ぞくはつせいめんえきふぜん): 何らかの原因あるいは疾患によって2次的に引き起こされた免疫不全(リンパ系組織の腫瘍、免疫抑制療法後など)のことです。
D)エイズ(AIDS)
・ エイズはHIVというレトロウイルスの感染によっておこります。
・ HIVは外被糖蛋白gp120によってCD4陽性T細胞と結合し、細胞内に入ります。 ウイルスは逆転写酵素(ぎゃくてんしゃこうそ)を使ってRNAを鋳型としてDNAがつくり、ウイルス粒子が出芽していきます。 出芽したウイルスのgp120によってCD4陽性細胞が細胞融合をおこし、細胞は膜機能が失われ死滅ます。 この結果免疫不全がおこるのです。
・ HIV感染から抗体ができるまでの期間をウインドウ・ピリオドと呼び、この期間の検査では抗体が陰性となります。 抗体は殺ウイルス作用が弱く、またリンパ球内のウイルスには無力です。
E) 免疫細胞増殖症候群
・ 免疫細胞増殖症候群とは、抗体産生に関わる細胞の腫瘍性増殖または非腫瘍性増生をきたす疾患のことです。
・ B細胞性免疫増殖症候群とT細胞性免疫増殖症候群があります。
・ B細胞性免疫増殖症候群では免疫グロブリン産生細胞の単一クローンの増殖によりM蛋白の増加が認められます。
・ B細胞性免疫増殖症候群の代表的な疾患としては、多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)(形質細胞腫)があります。
F)移植免疫
・ 臓器移植とは臓器の供与者(ドナー)の1部(移植片、グラフト)を他者(受容者レシピエント)に植え付けることです。
・ 移植片が受容者(または宿主、ホスト)に生着するか拒絶されるかは、組織適合抗原(そしきてきごうこうげん)によって決まります。 供与者と受容者の組織適合抗原が一致するか包含されると移植片は生着することになります。
・ 組織適合抗原の中に際立って強い移植免疫をひきおこす抗原があり、これを主要組織適合抗原と呼びます。 ヒトの場合、HLA(human leukocyte antigen)がそうです。
・ 移植拒絶反応を行うのは、細胞性免疫であり、T細胞が重要な役割を担っています。 T細胞は移植片の組織適合抗原を認識し、キラーT細胞が移植片の破壊を行います。
[設問] 原発性免疫不全に属するのはどれか? 一つ選べ。
イ エイズ ロ リンパ系の腫瘍 ハ 無ガンマグロブリン血症 ニ 白血病
正解 (ハ)
[設問] 免疫細胞増殖症候群に属するものはどれか? 一つ選べ。
イ 多発性骨髄腫 ロ エイズ ハ 重症免疫不全症 ニ 真性多血症
正解 (イ)
[設問] 移植拒絶反応においてT細胞が重要な役割を担うが、移植片を破壊するのはどれか? 一つ選べ。
イ ヘルパーT細胞
ロ キラーT細胞
ハ レギュラトリーT細胞
ニ NK細胞 正解 (ロ)