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疾病の成りたちと回復の促進 第24回(修復と再生) [疾病の成り立ちと回復の促進]

2. 回復の促進

1)総論

・ 疾病の回復に働く因子にも内因と外因がある。

・ 内因: 生体に本来備わっている再生・修復機能、免疫機構 など

・ 外因: 薬物療法、栄養、環境因子 など

2)修復と再生能

(1)概論

・ 修復とは、変性、壊死(退行性変化)によって組織傷害や欠損がおこった場合に、周辺の正常細胞の細胞分裂、増殖によって健常な細胞、組織に置換、補填されることをいいます。

・ 再生とは、生体の一部が欠損した場合、その部位が固有の細胞、組織で補われる現象をいいます。

修復.png

(2) 細胞分裂と増生

A)  細胞の細胞分裂の可能性から分類

a) 分裂を繰り返す細胞: 表皮基底細胞、血液幹(かん)細胞、精祖細胞 など。この場合、分裂前と分裂後の細胞が同じで変化がありません。

b)  分裂と分化を繰り返す細胞: 前赤芽球、骨髄芽球など。 この場合、分裂を繰り返しながら段階的に分化していきます。

c) 分化した細胞で、正常では分裂しないが、分裂能は持っている細胞: 肝細胞、腺上皮細胞など。

d) 分裂能を失った細胞: 神経細胞、心筋細胞、赤血球など。

(3) 再生

・ 一般に、個々の細胞の脱落に対しては隣接する細胞が分裂することによって再生する過程が生理的に行われています。 (皮膚、粘膜の重層扁平上皮、消化管粘膜の円柱上皮、腺上皮)

・ 病的な状態で細胞分裂により再生が行われる臓器もあります。(肝臓、膵臓)

・ 欠損が大きいと、完全再生は不可能で、部分再生、あるいは肉芽による修復の結果、瘢痕となります。

(4) 肥大

A)  肥大とは?

・ 肥大とは、機能的需要の増大に反応して、組織、臓器が容積を増す状態のことです。

・ 生理的肥大と病的状態に続いておこる病的肥大に分けることがあります。

B)作業性肥大

・ アスリートのスポーツ心、発達した骨格筋(生理的肥大)、高血圧による肥大した心筋(病的肥大)などをいいます。

筋肥大.png

C)内分泌性肥大

・ 授乳期の乳腺肥大(生理的肥大)、子宮内膜増殖症(病的肥大)、成長ホルモン過剰による末端肥大症(病的肥大)などがあります。

D)仮性肥大

・ 筋ジストロフィーの腓腹筋の肥大などがあります。

かせい肥大.png

(5)化生

・ 化生(かせい)とは慢性の刺激に反応して、分化、成熟した細胞が異なる形態や機能を示すに至る状態をいいます。

・ 子宮頸管上皮や気道上皮の扁平上皮化生(腺上皮または線毛円柱上皮→扁平上皮)、逆流性食道炎での腺様化生(扁平上皮→腸上皮)、慢性胃炎での腸上皮化生(腸上皮型の単細胞腺の出現)などがあります。

(6)肉芽

・ 肉芽(にくげ)とは、組織欠損、組織傷害、異物の侵入に反応して間葉系組織の強い新生、特に線維芽細胞の増生によって形成される組織のことをいいます。

・ 肉芽の役割としては、創傷治癒、器質化(線維化、瘢痕化)、被包化(ひほうか)(異物などの周囲に肉芽が新生して結節状になること)があります。

肉芽.png

(7)創傷治癒

・ 1次性治癒: 創傷が大きな組織の欠損を伴わず、創面を外科的に容易に密着させうる場合におこる治癒機転で、肉芽形成は少ないものです。

・ 2次性治癒: 創傷が大きい場合、欠損部位の補填のために比較的大きな肉芽を形成し、瘢痕形成、周辺組織の再生などみられる場合をいいます。

・ ケロイド: 修復に際し、肉芽形成が過剰におこると周囲より盛り上がって瘢痕化します。 これをケロイドと呼びます。

[設問] 次の細胞の中で、分裂能を失ったものを一つ選べ。

イ 表皮基底細胞  ロ 骨髄芽球   ハ 肝細胞   ニ 赤血球

                                正解 (

[設問] アスリートの発達した骨格筋は次のどれにあたるか?

イ 病的肥大  ロ 作業性肥大  ハ 内分泌性肥大   ニ 仮性肥大

                                正解 (

[設問] 化生についての説明で正しいものを一つ選べ。

イ 慢性の刺激に反応して、分化、成熟した細胞が異なる形態や機能を示すことをいう。

ロ 機能的需要の増大に反応して、容積が増すことをいう。

ハ 周辺の正常細胞の細胞分裂、増殖によって健常な細胞、組織に置換、補填されることをいう。

ニ 生体の一部が欠損した時、固有の細胞、組織で補われる現象をいう。

                             正解 (

 

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疾病の成りたちと回復の促進 第23回(病態のいろいろ) [疾病の成り立ちと回復の促進]

E) 腫瘍の内因・外因・発生機序

a)  内因(腫瘍素因)

ア) 臓器: 臓器によって腫瘍のできやすさに差があります。 十二指腸には癌が少なく、心臓・脾臓には原発性腫瘍は稀です。

イ) 年齢: 中年以降に悪性腫瘍の発生頻度は加速度的に増加していきます。 若年者や小児には白血病、神経系腫瘍、肉腫の割合が多いとされています。

ウ) 性: 悪性腫瘍全体の頻度は男性で高いのですが、乳癌、胆嚢癌、甲状腺癌は女性に多いといわれます。

エ) 人種: 欧米では生殖器(前立腺、子宮)や乳癌が多く、日本では消化器、特に胃癌が多いといわれています。

オ) 遺伝: 家族性に発生する腫瘍としては網膜芽腫、家族性大腸ポリポーシス、多発性神経線維腫(フォン・レックリン
グハウゼン病)があります。

b) 外因

ア) 化学的因子: ベンゾピレン(タバコの煙、排気ガスに含まれる)、アニリン誘導体、ジメチルアミノアゾベンゼン、ナイト
ロジェンマスタード、ポリ塩化ビフェニル、ベンゼン
ヘキサクロライド など

イ)物理的因子: 

・ 機械的刺激 舌癌

・ 高温ないし火傷: 皮膚癌

・ 光線・紫外線: 皮膚癌

・ 放射線: 白血病、肺癌、口腔癌、甲状腺癌 など

ウ)生物学的因子

・ ウイルス 

エ)癌遺伝子

・ 原型癌遺伝子(げんけいがんいでんし)(癌原(がんげん)遺伝子): もともとは正常の細胞が受精発育、分化成長していく過程では必要不可欠な遺伝子なのに、細胞を癌化する能力のある遺伝子のことをいいます。

・ ウイルス癌遺伝子: 腫瘍発生にかかわる、ウイルスが内蔵する癌遺伝子のことです。

オ)癌抑制遺伝子

・ 正常な遺伝子で、癌化を抑制する働きのあるもののことです。

カ)発癌のしくみ

・ 発癌は癌遺伝子の活性化に始まります。 これをイニシエーションといい、ひきおこす因子をイニシエーターといいます。  また、癌化した細胞を増殖させる因子をプロモーターといいます。

発ガンの仕組み.png

[設問] 癌の発生が最も少ないものを選べ。

イ 食道   ロ 胃   ハ 十二指腸  ニ 大腸        正解 (

[設問] 家族性に発生するものを一つ選べ。

イ 乳癌  ロ 肺癌   ハ 白血病  ニ 多発性神経線維腫    正解 (

[設問] 因子と発生する腫瘍の組み合わせで正しいものを一つ選べ。

イ 機械的刺激 --- 肺癌

ロ 紫外線 --- 胃癌

ハ 放射線 --- 甲状腺癌

ニ アルコール --- 脳腫瘍      正解 (


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