疾病の成り立ちと回復の促進 第28回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
F)薬剤の吸収経路
・ 舌下: ニトログリセリンなどは舌下投与され、口腔粘膜下の静脈は門脈を介せず、直接全身循環に入ります。
・ 腸: 経口投与された薬剤は腸粘膜のリン脂質二重層のバリアーを通り抜け、門脈から肝臓へ送られます。 ここでは、疎水性(親油性)物質または輸送系を利用できる薬剤のみが吸収されます。
・ 気道: 気道の線毛上皮細胞のリン脂質二重層バリアーがあるが、ガスや揮発性の吸入麻酔薬などは肺胞からすみやかに吸収されます。
・ 直腸: 直腸粘膜下の静脈叢から門脈を経ず、直接全身循環に入るので吸収効率のよい経路です。 各種坐薬がこの経路から吸収されることになります。
・ 皮膚: 局所作用を目的として軟膏剤やクリーム剤、全身作用を期待してニトリグリセリンのテープ剤や軟膏が、この経路から投与されます。
G)血液組織関門
・ 薬剤は毛細血管で組織間液に移行するが、この毛細血管が血液組織関門となります。 そのため、すべての物質がここを通り抜けられるわけではありません。
・ 脳や脊髄といった中枢神経では、毛細血管の内皮細胞に小孔がなく物質移送がより制限されたものとなっています。 これを血液脳関門といいます。 この血液脳関門を通過できる薬剤はごく限られたものとなります。
H)薬剤の代謝と排泄
・ 薬剤の代謝では、肝臓の酵素が最も重要な役割を演じています。 代謝されたものは、血液中か胆汁中に分泌されます。
・ 薬剤は代謝産物かそのままの形で、主に腎臓を介して排泄されます。 これを腎性排泄と呼びます。
I)薬剤の血中濃度
・ 薬剤の血中濃度が半減する時間を半減期といいます。
[設問] 門脈を経由する吸収経路は次のどれか? 一つ選べ。
イ 舌下 ロ 小腸 ハ 直腸 ニ 気道 正解 (ロ)
[設問] 薬物代謝で最も重要な役割を果たす臓器を一つ選べ。
イ 肺 ロ 腎臓 ハ 心臓 ニ 肝臓 正解 (ニ)
[設問] 血液組織関門となるのは次のどれか?
イ 大動脈 ロ 中小動脈 ハ 毛細血管 ニ 静脈 正解 (ハ)