疾病の成り立ちと回復の促進 第31回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
b)化学療法薬
ア) 抗菌薬
・ 微生物が産生する物質で抗菌作用を示すものを抗生物質、化学的に合成された抗菌作用を示す物質を合成抗菌薬といいます。
・ βラクタム系抗生物質: 構造中にβラクタムと呼ばれる4員環を持つものをいいます。また、この4員環が抗菌活性を担っているのです。
ペニシリン系 ベンジルペニシリン、メチシリン、アンピシリン など
セフェム系 第1世代: セファゾリンなど(グラム陽性菌に有効、 緑膿菌には無効)
第2世代: セフォチアムなど(グラム陰性菌に対する抗菌力が高い、緑膿菌には無効)
第3世代: セフォタキシムなど(緑膿菌、セラチアにも有効)
第4世代: セフピロムなど(黄色ブドウ球菌や緑膿菌にも有効)
カルバパネム系 イミペネム など
モノバクタム系 アズトレオナム など
・ ホスホマイシン: 放線菌が産生するホスホエノールピルビン酸と類似の構造を持つ薬剤です。
・ グリコペプチド: バンコマイシンが代表的なもので、グラム陽性菌に対してのみ抗菌作用を持ちグラム陰性菌には無効。MRSAに対する第1選択薬となっています。
・ アミノグリコシド系抗生物質: アミカシン、ゲンタマイシンなどがあり、主にグラム陰性菌感染症に対して使われます。
・ テトラサイクリン系抗生物質: クロルテトラサイクリン、オシキテトラサイクリンなどがあり、広い抗菌作用を持ち、グラム陽性菌、グラム陰性菌に対して静菌的に作用します。
・ クロラムフェニコール: 毒性が強く、腸チフス、パラチフスなどの治療に限られています。
・ マクロライド系抗生物質: エリスロマイシン、ジョサマイシンなどと、ニューマクロライド系と呼ばれるクラリスロマイシン、ロキシスロマイシンなどがあります。
・ リンコマイシン、クリンダマイシン
・ 合成抗菌薬には、キノロン類とスルフォンアミド類(サルファ剤)、ST合剤(スルファメトキサゾールとトリメトプリムの合剤)があります。
イ)抗結核薬
・ 結核菌は癩菌(らいきん)とともに代表的な抗酸菌(こうさんきん)であり、他の細菌といろんな点で異なる細菌です。 抗結核薬は長期に投与されるため副作用の発現に注意が必要です。
・ 薬剤としては、イソニアジド(INH)、リファンピシン、エタンブトール、ストレプトマイシン、ピラジナミドがあります。
ウ)抗ウイルス薬
・ 抗ウイルス薬は、抗ウイルス作用と同時に投与される患者の生体細胞にも大きな影響があり、重篤な副作用をおこすことがあります。
・ 現在使われている抗ウイルス薬の多くは、核酸の合成を阻害する作用を持っています。
・ アマンタジン: インフルエンザAや風疹ウイルスに対して使われます。
・ アシクロビル: 単純ヘルペスウイルスや水痘ウイルスに対し有効です。
・ ガンシクロビル: サイトメガロウイルス感染症の治療・予防に使われます。
・ イドキシウリジン: 単純ヘルペス性角膜炎に使われます。
・ ビダラビン: 単純ヘルペス脳炎、免疫不全患者で発症した帯状疱疹、水痘に使われます。
・ ホスカルネット: ヘルペスウイルス、水痘ウイルス、HIVに抑制的に作用します。
・ リバビリン: C型慢性肝炎にインターフェロンα–2bとともに使われます。
・ オセルタミビル: インフルエンザA、B型ウイルスの両者に有効です。
・ インターフェロン: 抗ウイルス、免疫機能修飾、抗細胞増殖作用を持った強力なサイトカインです。 B、C型慢性肝炎などの治療に使われます。
・ レトロウイルス感染症治療薬: アジドチミジン、ジダノシン、ラミブジン、サニルブジン、ザルシタビン、アバカビルなどのヌクレオシド逆転写酵素阻害薬(ぎゃくてんしゃこうそそがいやく)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬などがあります。
エ)抗真菌薬
・ 深在性真菌症治療薬: アンホテリシンB、フルシトシン、グルセオフルビンなど
・ 表在性真菌症治療薬: ナイスタチンなど
[設問] 抗菌薬に関する以下の文で正しいものを一つ選べ。
イ 微生物が産生する物質で抗菌作用を示すものを抗生物質という。
ロ βラクタム系抗生物質には、ホスホマイシンも含まれる。
ハ アミノグルコシド系抗生物質には、クロルテトラサイクリンも含まれる。
ニ バンコマイシンはグラム陰性菌にのみ抗菌作用を持つ。
正解 (イ)
[設問] 以下より、抗結核剤を二つ選べ。
イ アンピシリン
ロ セファゾリン
ハ リファンピシン
ニ ストレプトマイシン
ホ エリスロマイシン 正解 (ハ、ニ)
[設問] サイトカインであり、B,C型慢性肝炎に使われるのはどれか?
イ アシクロビル
ロ アマンタジン
ハ インターフェロン
ニ ビダラビン 正解 (ハ)