疾病の成り立ちと回復の促進 第32回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
B)神経系に対する薬剤
a) 抗精神病薬(こうせいしんびょうやく)
・ 抗精神病薬は主に統合失調症(とうごうしっちょうしょう)でおこる幻覚、妄想などの陽性症状に有効です。
・ 抗精神病薬には、フェノチアジン系、チオキサンチン系、ブチロフェノン系などがあります。
・ 副作用として急性期には抗コリン作用(口渇、発汗の減少、尿閉、便秘、目のかすみ)、長期服用時に遅発性(ちはつせい)ジスキネジア(不随意運動の1種)、まれに重篤なものとして悪性症候群(あくせいしょうこうぐん)(高熱、筋強剛、血清CPKの上昇、昏睡、ときに死亡)があります。
b) パーキンソン病治療薬
ア)レボドーパ製剤
・ パーキンソン病で欠乏するドパミンの補充の目的で、前駆物質であるレボドーパ製剤が投与されます。
・ 副作用として、初期には消化器症状(嘔吐など)、後期には幻覚(げんかく)やジスキネジアなどがおこってきます。
・ 現在よく使用されるレボドーパ製剤には末梢組織で脱炭酸されないように、末梢性脱炭酸酵素阻害薬が配合されています。
イ)アマンタジン
・ ドパミン神経終末からのドパミンの遊離を促進する作用を持っています。
ウ)ドパミン受容体アゴニスト
・ ドパミンの作用する受容体を直接刺激する作用を持っています。
エ)中枢性抗コリン薬
・ パーキンソン病では、ドパミン系が弱くなってアセチルコリン系が優位となっているため、アセチルコリン系を抑制する作用が治療に使われます。
c) 抗うつ薬
・ 抗うつ薬としては、三環系(さんかんけい)抗うつ薬(イミプラミン、アミトリプチリン、クロミプラミンなど)、四環系(よんかんけい)抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み抑制薬)、やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み抑制薬)があります。
d) 躁病(そうびょう)治療薬
・ 炭酸リチウムが使われます。
e) 抗不安薬、催眠薬
・ 抗不安薬は不安を取り除き鎮静作用を持っています。
・ 催眠薬(さいみんやく)は眠気をおこし睡眠へと導く作用を持っています。
・ 代表的なものがベンゾジアゼピン系の薬物とバルビタール酸誘導体であり、GABAの神経伝達に作用します。
・ ベンゾジアゼピン系薬物: ジアゼパム、クロルジアゼポキシド、ニトラゼパム、フルニトラゼパム、トリアゾラムなどがあります。
・ 新しい抗不安薬: ブスピロン
[設問] 抗精神病薬でよくみられる副作用を二つ選べ。
イ 遅発性ジスキネジア
ロ 悪性症候群
ハ 起立性低血圧
ニ 躁症状
ホ 幻覚 正解 (イ、ロ)
[設問] パーキンソン病治療薬で、ドパミン神経終末からのドパミンの遊離促進作用を持つものはどれか?
イ レボド―パ製剤
ロ アマンタジン
ハ ドパミン受容体アゴニスト
ニ 抗コリン薬 正解 (ロ)
[設問] 躁病治療薬を一つ選べ。
イ イミプラミン ロ 炭酸リチウム ハ レボド―パ ニ ジアゼパム
正解 (ロ)