在宅看護論(3)(看護の継続性) [在宅看護論]
2)施設内看護と在宅看護の機能の相違と特徴
(1)場の違いによる看護機能の特徴
・ 1992年の医療法の改正により「医療を受ける者の居宅」が医療提供の場に位置づけられました。
・ 施設内看護を提供する施設は病院であり、急性期の治療を行う一般病院、慢性期の療養治療を行う療養型医療施設、ターミナル期の医療を提供する緩和ケア病棟などがあります。
・ 在宅看護を提供する機関には、訪問看護ステーション、病院の訪問看護部、保健所と市町村保健センターがあります。
・ 病院と療養型医療施設で行う施設内看護では治療が優先され、医師や他部署の専門職とのチーム医療によって提供されますが、在宅看護では、他機関の専門職や住民・ボランテイアとも連携をとって、協同して活動することになります。
(2)生活の場の選択条件
・ 入院施設には、病院と有床診療所があり、病床の種別は急性期の治療を行う一般病床と、慢性期の治療を行う療養病床、精神病床などがあります。 入所施設には、介護老人保健施設、介護老人福祉施設、介護療養型医療施設があります。 在宅として取り扱われる施設には、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、特定施設(有料老人ホーム)などがあります。
・ 医療依存度の高い療養者の在宅療養を支える場合、在宅療養への移行には、「療養者の意思決定」「家族の意思決定」「家族の技術習得」「医療サービスの整備」「保健・福祉サービスとインフォーマルサポートなどの支援体制の整備」「経済的状況の調整」が必要です。
・ 在宅療養の継続には、家族の介護力が必要になることから、家族の健康維持や介護技術を身につけるための指導が必要です。 また、介護力が乏しい場合は、在宅サービスの利用や施設の利用を検討することになります。
[設問] 医療を行う場を規定しているのは、次のどれか?
イ 医師法 ロ 医療法 ハ 薬事法 ニ 介護保険法
正解 (ロ)
[設問] 医療を行う場として認められているのは、病院、診療所、介護老人保健施設の他にどんなものがあるのか? 二つ選べ。
イ 医療を受けるものの居宅
ロ 学校の校庭
ハ 助産所
ニ 医療を受けるものが倒れた公園
ホ 医療を受けるものが倒れた路上 正解 (イ、ハ)
在宅看護論(2)(看護の継続性) [在宅看護論]
2. 看護の継続性
1)施設と在宅を結ぶ看護
(1)退院計画
・ 米国病院協会のガイドラインには、退院計画とは「患者とその家族が、適切な退院後のケアプランをつくるのを助けるために、利用可能でなくてはならない、部門を越えた病院全体としてのプロセス」と定義されています。
・ 退院計画の過程は、「退院後にケアが必要となる患者を早期に特定する」→「患者および家族への教育」→「患者・家族のアセスメント」→「計画の策定」→「計画の調整と実施」→「退院後のフォローアップ」からなるものです。
(2)退院指導
・ 退院指導とは、退院する患者とその家族に対して、退院後の生活が安心・快適に送れるように、入院中に看護職や関係者によって指導することです。
・ 指導内容には「日常生活について」「疾患について」「医療処置について」「社会復帰、社会資源の活用について」などがある。
・ 退院指導は、患者や家族の理解度、能力などに合わせて、わかりやすい言葉で、実習など取り入れて行うと効果的です。
(3)継続看護を担う部署と職種
・ 継続看護では、病院の病棟から外来へ、病院から在宅や福祉施設への移行支援だけでなく、在宅から病院へ、施設から在宅や病院への移行支援も重要です。
・ 地域連携室、地域医療室、看護相談室などが病院内に設置され、継続看護を担う部署とされます。それらの部署は診療所、在宅介護支援センター、訪問看護ステーション、福祉施設などと連絡をとり、連携を図ることになります。
・ 病院内での継続看護を担う職種としては、退院調整看護師が配置され、病棟看護師との連携により退院調整を行います。
・ 生活や経済的な問題に対しては、社会福祉士やソーシャルワーカーが対応することになります。
・ 在宅での継続看護は在宅介護支援センターが行い、在宅介護支援専門員が介護保険制度の活用を中心に関係機関との連携、サービスの調整を図ることになります。
・ 訪問看護ステーションの看護師は、病院の受け持ち看護師と看護サマリーや病棟訪問などで連携をとり、継続看護を実践します。
(4)施設と地域の連携システム
・ 病診連携とは、病院と地域の診療所との施設の共同利用や検査依頼、患者の紹介などを行う連携システムです。在宅看護に関わる内容では、患者の退院時にかかりつけ医の紹介や治療方針、再入院時の調整を図っています。
・ 地域ケアシステム
[設問] 退院指導に関して正しい説明を一つ選べ。
イ 退院指導とは、退院する患者とその家族に対して、退院後の生活が安心・快適に送れるようにするものである。
ロ 退院指導の内容には、医療処置については含まれない。
ハ 退院指導の内容には、日常生活についてのみとする。
ニ 退院指導は、専門用語を使い、間違いのないように伝える必要がある。
正解 (イ)
[設問] 退院後の患者の生活や経済的問題に対して主に業務を行うのはどれか? 一つ選べ。
イ 地域連携室
ロ 退院調整看護師
ハ 社会福祉士やソーシャルワーカー
ニ 在宅介護支援センター 正解 (ハ)
在宅看護論(4) (在宅看護の特徴)へ ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-06-01
在宅看護論(1)(在宅看護の対象者とその生活) [在宅看護論]
1. 在宅看護の対象者とその生活
1)在宅看護の対象者
(1)疾病を持つ人と家族
・ 介護を要する人、または継続して療養が必要となる人が患っている疾病として多いのは、脳血管疾患、糖尿病、心疾患、癌などの生活習慣病となっています。 その他に高齢者には骨粗鬆症や外傷による骨折や認知症が多くみられ、壮年期では神経難病や癌が多くなります。
・ 在宅看護の対象者は、高齢者が多くを占めます。
・ 健康状態は、疾病の回復期、慢性期、リハビリ期、終末期まで、幅広いのが特徴です。
・ 核家族化と少子高齢化により、家族規模が小さくなり、平均世帯人員は1995年以降3人を下回っています。 特に高齢者の夫婦のみの世帯、単独世帯が著しく増加しています。
(2)障害を持つ人と家族
・ 障害者は、身体障害者福祉法で身体障害者、知的障害者福祉法で知的障害者、精神保健福祉法で精神障害者が規定されています。
・ 2006年の18歳以上の在宅の身体障害者数は3,483,000人と推計されています (身体障害者実態調査、厚生労働省)。 種類別では、肢体不自由がトップで50.5%、心臓、肺、腎臓などの内臓の機能障害による内部障害が30.7%、聴覚言語障害が9.8%、視覚障害が8.9%となっており、近年内部障害が増加しています。
・ 在宅の知的障害児(者)数は、419,000人(2005年現在)、精神障害者保健福祉手帳の取得者数は558,475人(2007年)です。
・ 1998年からヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害(以下エイズ)が身体障害者の範囲に取り入れられました。
・ 在宅看護の対象となる障害者に多い疾患は、脳性小児麻痺、筋ジストロフィー、脳梗塞後遺症、閉塞性肺疾患(以下COPD)、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、エイズなどがあります。
・ 障害者の家族は、長期間にわたって介護を担っていることから、健康管理などの援助の対象者になります。
(3)生活自立が困難な人と家族
・ 生活自立が困難な人とは、疾病や障害あるいは老化により自立が困難な要介護者で、何らかの援助を受けることで自立した生活を営むことができる状態の人々をさします。
・ 介護保険では、要支援1、2や要介護1、あるいは寝たきり度のランクJ、ランクA、痴呆度のランクIあるいはIIの人達です。
・ 生活の状態では、1人暮らしや高齢夫婦世帯の場合は、療養支援とともに生活支援が不可欠になります。
・ 支援が必要となる疾患として多いのは、脳血管疾患の後遺症、神経筋難病、精神障害、軽度の認知症、腰痛や膝関節痛などです。
・ このような状態の人達には早期に適切なセービスや支援を導入して生活自立の維持を目指す必要があり、家族に対してもその方向での指導が必要となります。
2)対象者の生活
(1)生活様式と価値観
・ 適切な運動・身体活動は、生活習慣病の予防やストレスの解消に有効で、運動習慣者(週2回以上かつ1回30分以上の実施で1年以上持続した者)の割合は、男女とも20代と30代で低く、50歳以上では30%程度みられます。
・ 栄養状態は、エネルギーの過剰摂取が問題となる糖尿病や、脂肪のとり過ぎによる肥満、心疾患、また塩分のとり過ぎによる高血圧が問題となっています。
・ 社会生活のストレスによる壮年期のうつ状態や自殺が問題となっています。
・ 個人とその家族の生活は、環境、つまり地域の人口構成、地理的条件、サービス体制などの社会的条件や、その地域特有の生活習慣や信条、人間関係により、大きな影響を受けます。
・ 現代人の生活の価値観は、家の維持存続から、個人の幸福追求へと変化しています。
・ 高齢者とその家族の価値観の変化
[設問] 要介護状態の原因となる疾病で最も多いものを選べ。
イ 認知症 ロ 認知症 ハ 骨折 ニ 脳血管疾患
正解 (ニ)
[設問] 在宅看護における看護援助として最もふさわしいものを一つ選べ。
イ 療養者の日常的介護
ロ 療養者の食事や清潔援助
ハ 介護をする家族の精神的、身体的健康管理と介護負担の解消
ニ 療養者の服薬管理 正解 (ハ)
[設問] 国民栄養調査において、「運動習慣あり」と分類されるのは次のどれか?
イ 1回30分以上、週2回以上、1年以上運動を継続
ロ 1回30分以上、週1回以上、1年以上運動を継続
ハ 1回60分以上、週2回以上、半年以上運動を継続
ニ 1回60分以上、週1回以上、半年以上運動を継続 正解 (イ)
[設問] 2008年の調査で、運動習慣が最も少なかった世代は次のどれか?
イ 20~29歳 ロ 30~39歳 ハ 40~49歳 ニ 50~59歳
正解 (ロ)
在宅看護論(2) (看護の継続性)へ ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-05-30
在宅看護論(4) (在宅看護の特徴)へ ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-06-01
在宅看護論(9) (在宅における生活支援の方法と技術) ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-06-04
在宅看護論(13) (在宅における医療管理を必要とする人と看護) ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-06-07
在宅看護論(19) (在宅療養者の状態別看護) ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-06-11-1
基礎看護学(25)(看護の役割と機能を支える仕組み) [基礎看護学]
5)専門職能団体の活動
(1)専門職集団としての役割と機能
・ 専門職とは、「理論的知識に基づいた知識や技術を有し」 「その獲得のために教育を受けていること」 「国家ないしそれに代わる団体によって行われる試験を通過していること」 「営利を目的とするのでなく、公共の利益を重視してサービスの提供が行われること」 「職業団体があり、倫理綱領などを持ち、集団としての自立性を持つ」 ものをいいます。
・ プロフェッショナルとは、専門職といわれる職業に従事している人で、スペシャリストとは特定の分野において特別な知識や技能を備えている人、専門家をさします。
・ 看護の専門職能団体としては、日本看護協会、国際看護師協会、国際助産師連盟などがあります。
・ 看護の専門職能団体である日本看護協会の役割は、看護実践のための行動 指針や職務の範囲を明確にし、実践の評価の枠組みを提示することです。
6)看護行政
(1)看護職員の確保
・ 看護職員の確保は、国の重要政策の1つです。
・ 現在、国レベルで看護行政を行っているのは、厚生労働省医政局看護課です。
・ 1992年に看護師等の確保を促進する法律「看護師等人材確保法」が施行され、看護職の質・量両面からの充実、強化が始まりました。
・ 再就職促進対策として中央と都道府県にナースセンターを設置し、潜在的看護職員の再就業を就職先の紹介や就職前教育をすることにより支援しています。
(2)看護職員の資質の向上
・ 1996年に保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則の一部が改正され、在宅看護論の新設などによる統合カルキュラムが導入されました。
・ 行政が看護職員資質向上のために実施するものとして、実習指導者講習会、訪問看護師養成講習会、看護教員養成講習会、訪問看護師指導者研修会などがあります。
(3)看護実践の質の向上
・ 1996年より日本看護協会は看護実践のため、専門看護師、認定看護師の資格認定を行っています。
・ 専門看護師は、特定の専門看護分野の知識・技術も高めた看護師で、その役割は、実践、相談、調整、倫理調整、教育、研究とされています。
・ 認定看護師は、特定の分野において、熟練した看護技術と知識を使って水準の高い看護実践を行う看護師で、役割は、実践、指導、相談とされています。
7)国際協力
(1)国際交流
・ 広義の国際協力の中に、国際交流と狭義の国際協力があり、国際交流には、2国間交流と多国間交流があります。
・ 国際交流とは、行政上の調整、技術・情報交換、人的交流などを行うことです。
・ 2国間交流では、米国、ドイツ、イギリス、フランス、中国などとそれぞれ人材交流、情報提供、共同研究などを行っています。
・ 多国間交流では、国際連合(UN)、世界保健機関(WHO)、国際癌研究機関、国際労働機関(ILO)、経済協力開発機構(OECD)、国連児童基金(UNICEF)などを通じて、行われています。
(2)国際協力
・ 国際協力とは、開発途上国に対して、我が国が有する人的・物的・技術的資源を提供し、当該国での向上を図ることです。
・ 開発途上国に対する協力としては、政府、民間のそれぞれが中心となる国際保健医療協力があり、これには国際協力事業団(JICA)による青年海外協力隊などの専門員の派遣などが含まれます。 その他、国際赤十字にる国際協力もあります。
・ 国際機関への協力は、世界保健機構(WHO)を通じて、伝染病対策、プライマリーヘルスの行動計画、エイズ蔓延防止活動、予防接種事業等に協力しています。 経済協力開発機構(OECD)を通じては環境問題、消費者保護、社会保障などの分野で協力しており、国際看護婦協会(ICN)にも加盟し(1949年)、協力しています。
基礎看護学(24)(看護の役割と機能を支える仕組み) [基礎看護学]
6.看護の役割と機能を支える仕組み
1) 看護活動の場
(1)地域における看護活動
(2)医療施設における看護活動
・ 医療の場とは、病院、診療所、助産所などで、そこでの看護活動における看護職の役割は、常に患者の近くにいて医師や他の専門職と連携して看護を提供することです。
・ 看護職の業務とは、法律により規定された範囲内で、かつ、看護倫理に基づいて看護職が実践することです。
・ 看護業務を行う資格と業務の範囲については、保健師助産師看護師法(保助看法)によって規定されています。
2) 継続看護
(1)施設内から在宅への継続
・ 病院や施設において、患者・入所者の病状・状態などの変化によって他の病棟や重症治療室、手術室などへ移行する場合にも看護の継続性が必須です。
・ 患者・入所者にとって必要な看護が移行先においても適切に提供されるよう、看護サマリーなどで情報を提供し看護を継続することが重要です。
・ 在宅医療の進展により医療機器を装着したまま、あるいは障害を持って在宅へ移行する場合は、特に継続看護が必要となります。
・ 看護サマリー(看護要約)などを用いて看護師は患者の情報を伝達し共有します。
(2)退院計画および退院指導
・ 退院計画および退院指導は、入院早期から退院後の生活を想定して計画的に進める必要があります。
・ 退院計画の立案は、家族側の介護要員数や時間などの介護力を勘案して行います。
(3)経時的変化に対する継続看護
・ 看護は1日24時間、365日継続して、看護サービスを継続するが、そのめには、看護チームのどの看護師が担当しても統一した看護ができるようにする情報伝達システムがあります。
・ 地域においても家族、訪問看護師、保健師、ホームヘルパーなど在宅ケアに関わる医療・福祉チームが連携し、継続したケアを提供します。
3)保健医療福祉の連携
(1)他職種の役割
・ 保健医療福祉の分野には、看護職以外の多くの職種がある。医師、歯科医師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、衛生検査技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士、臨床工学技士、義肢装具士、救急救命士、歯科衛生士、歯科技工士、管理栄養士、栄養士、調理師、社会福祉士、介護福祉士などがあります。
・ 主な保健・医療関係者の職種別構成は、看護師30.2%、保健師1.7%、助産師1.1%となっています(2000年厚生労働省統計情報部)。
(2)他職種との連携
・ 患者などの医療福祉サービスを受ける対象者にベストなケアを提供するには、保健医療福祉関係のあらゆる職種との連携が必要です。
・ 病院の機能分化も進み、医療機関の間での連携も重要性を増しています。
4)看護管理
(1)看護提供システム
・ チームナーシング
・ プライマリーナーシング
・ 機能別看護とは、患者を受け持つのでなく、検温、処置、与薬、注射などの業務を分担して受け持つ方式です。
(2)クリニカルパス
・ クリニカルパスは、作業工程管理の方法を医療に応用したものです。
・ クリニカルパスは、医療における診療計画・実施プロセスの標準化の手段で、医療の質を保障するために用いられます。
・ クリニカルパスは、インフォームドコンセントを得る過程でも利用されます。
(3)リーダーシップとメンバーシップ
・ リーダーシップとは、集団に目標達成を促すよう牽引あるいは影響を与える力です。
・ メンバーシップとは、チームのメンバーとして役割を果たすことです。
・ 特性理論とは、リーダーシップを発揮するためにリーダーに必要とされる特性を見いだそうとする理論です。
・ リーダーシップのスタイルは、独裁的リーダーシップ、協議的リーダーシップ、参加的リーダーシップ、民主的リーダーシップ、放任的リーダーシップがあります。
・ リーダーが持つべき能力は、専門的能力、対人的能力、概念化能力です。
・ 状況適応型リーダーシップとは、ハーシーとブランチャードが提唱したもので、メンバーの仕事に関する成熟度の度合いによるリーダーの関わり方を示唆するリーダーシップの方法です。
(4)自己管理・防止システム
・ 医療事故とは、医療に関わる場所で、医療の全過程において発生する人身事故の一切を包含し、廊下での転倒事故も含まれる。被害者は医療従事者も含まれる。医療の場で使われる「アクシデント」は医療事故と同義語です。
・ 医療過誤とは、医療事故の発生原因に医療機関や医療従事者の過失がある場合です。
・ インシデントとは、謝った医療行為などが患者に実施される前に発見されたもの、あるいは誤った医療行為などを実施したが、結果として患者に影響を及ぼすには至らなかったものをいいます。
・ インシデント・レポートは、ヒヤリ・ハット報告書と同義語です。
・ 医療安全を推進するために、都道府県毎に医療安全推進センターが設置されています。
・ 特定機能病院では、2003年から専任の医療安全管理者(リスクマネージャー)を置くことが義務づけられました。
[設問] 地域における看護活動は、地域で生活し、多様なライフスタイルや健康レベルにある人々を対象とするが、その目的を次の中から一つ選べ。
イ QOLの向上
ロ ADLの向上
ハ 疫学調査
ニ 疾病の予防 正解 (イ)
[設問] 看護業務を行う資格と業務の範囲を規定するのは次のどれか?
イ 社会福祉法
ロ 保健師助産師看護師法
ハ 医療法
ニ 健康保険法 正解 (ロ)
[設問] どのライフステージにある人にも、その時に合った看護を適切に継続提供する概念を何というか?
イ 在宅看護
ロ 継続看護
ハ 訪問看護
ニ ホスピスケア 正解 (ロ)
[設問] 一人の看護師が患者を入院時から退院時まで一貫して担当する方式を何というか?
イ チームナーシング
ロ パートナーシップナーシング
ハ プライマリーナーシング
ニ 固定チームナーシング 正解 (ハ)
[設問] 元々作業工程管理の方法で、医療に応用され、医療における診療計画・実施プロセスの標準化の手段で、医療の質を保障するために用いられているのは次のどれか?
イ 看護計画
ロ 包括医療制度
ハ オーダリングシステム
ニ クリニカルパス 正解 (ニ)
[設問] 医療事故と同義語は次のどれか?
イ アクシデント
ロ インシデント
ハ ヒヤリハット
ニ リスク 正解 (イ)
基礎看護学(23)(診療に伴う技術) [基礎看護学]
(4)保温
・ 熱量の産生と放出のバランスがくずれた時、体温異常がおこります。
・ 温熱刺激により、末梢循環の改善がみられます。
・ やせた人、虚弱者などは低い温度に影響されて体熱を失いやすいので、保温に注意します。
・ 出血性ショックでは低体温になるので、患者の安静と保温に注意します。
・ 低体温では、心拍出量の低下、血圧下降、徐脈がみられます。
・ 低体温に対しては、寝具・寝衣の調節、室温の調節、温罨法、マッサージ、暖かい飲み物などによって体温の回復を図ります。
・ 悪寒のある発熱初期には、体表面からの放熱を防ぐ意味で保温を十分にします。
(5)罨法
・ 皮膚感覚の分布では、冷点の方が温点より密度が高くなっています。大腿部と胸部は特に温熱刺激に対して鈍感なので、温罨法の際には注意します。
・ 寒冷刺激によっておこる身体反応として、血管収縮と血流減少、組織代謝の低下がみられます。
・ 温熱刺激は、痛みの原因になる筋肉の緊張を緩和し、鎮痛・鎮静効果をもたらします。
・ 細菌感染や出血傾向がある場合は、炎症を増強したり血管を拡張するので、温罨法は避けます。
・ ゴム製の湯たんぽには60℃程度、金属製の湯たんぽには80℃程度の湯を用います。ゴム製の湯たんぽの場合、湯量は2/3程度とします。
・ 温罨法では、熱傷を避けるため、カバーを付けて身体から10cm以上離して貼用します。
・ 空気の入った氷枕は熱伝導の効率が悪いので、空気を抜きます。
・ 罨法の種類には湿性と乾性があり、湿性の方が熱伝導率がよいため、皮膚温との差をより強く感じます。
(6)心肺蘇生法
・ 舌根沈下予防のため、下顎挙上、頭部後屈、頤挙上して気道を確保します。
・ 努力様呼吸がみられる時は、口腔内の喀痰・分泌物の除去をしてから気道を確保します。
・ 救急時の脈拍の触知は、成人では頸動脈、1歳以上の小児では頸動脈か大腿動脈、乳幼児では上腕動脈が適しています。
・ 人工呼吸
・ 心臓マッサージの圧迫部位は、胸骨のした半分とします。 一方の手掌基部を置きもう一方の手を重ねて、毎分100回以上のスピードで、成人の場合胸骨が5cm以上沈むように垂直に押します。 加圧と除圧は等間隔で行い、胸骨から手を離さないようにします。
・ 患者が成人の場合、心臓マッサージ30回、人工呼吸2回の割合で繰り返します。 ただ、最近では、心臓マッサージのみでも同等以上の効果があると言われています。
・ 8歳未満の小児に対する心臓マッサージは片手で行います。 乳児に対する人工呼吸は、口と鼻を一緒に覆って行います。 二人で対処する場合は心臓マッサージ15回、人工呼吸2回の割合で、一人で対処する場合は成人と同じとします。また、小児の胸骨圧迫は胸の厚みの1/3までしっかりと行います。
・ 心臓マッサージは硬い平らな場所で行うようにします。
(7)止血法
・ 外傷などにより全血液量の1/3が休息に失われると、ショックに陥ります。
・ 一時的止血法には、創部を直接圧迫する「直接圧迫止血法」と主な動脈を圧迫して止血する「間接圧迫止血法」があります。
・ 止血法の第一選択は「直接圧迫止血法」で、次ぎに「間接圧迫止血法」を試みます。 四肢の場合、第三選択として創部より心臓よりを縛る止血帯法を試みます。
・ 永久止血法は、厳重な消毒のもと手術器具を用いて止血する方法です。
・ 重度外傷の動脈性出血の時は、出血量を最小限にとどめる迅速な応急止血が重要です。
・ 処置時には感染防止のため、直接血液に触れないようにします。
5)災害看護
(1)トリアージ
・ トリアージとは、災害発生時など多数の傷病者が発生した場合に、傷病の緊急度に応じて、適切な搬送や治療の優先順位を決定することをいいます。
・ トリアージを行う際には、色分けされたタグをかけて識別します。(下表)
・ トリアージの基準は、医療者の数、傷病者の数、搬送方法のバランスななどによって変わりうるもので、繰り返し行う必要があります。
・ トリアージは原則として一人で行うべきです。決定するものは、医師に限らず、看護師、救急救命士の場合もあります。
[設問] 低体温でみられる徴候の組み合わせを選べ。
イ 心拍出量の低下・血圧上昇・徐脈
ロ 心拍出量の低下・血圧低下・徐脈
ハ 心拍出量の増加・血圧低下・頻脈
ニ 心拍出量の増加・血圧上昇・頻脈 正解 (ロ)
[設問] 罨法について正しい記述を一つ選べ。
イ 皮膚感覚の分布は、冷点の方が温点より密度が低い。
ロ 温熱刺激は、筋緊張を緩和し、鎮痛・鎮静効果をもたらす。
ハ 細菌感染や出血傾向があっても、温罨法は避ける必要はない。
ニ 罨法では、湿性より乾性の方が熱伝導率がよいので、乾性では皮膚温との差を大きく感じる。
正解 (ロ)
[設問] 救急時の脈拍の触知は、乳児ではどこで行うのがよいか?
イ 頸動脈 ロ 大腿動脈 ハ 上腕動脈 ニ 橈骨動脈
正解 (ハ)
[設問] 心臓マッサージは毎分何回くらいで行うのがよいか?
イ 60回 ロ 80回 ハ 90回 ニ 100回以上
正解 (ニ)
[設問] トリアージにおいて、ただちに処置を行えば救命可能の状態の場合、タグの色はどれか?
イ 赤 ロ 黄 ハ 緑 ニ 黒 正解 (イ)
基礎看護学(22)(診療に伴う技術) [基礎看護学]
4)生命の危機に関わる技術
(1)生命徴候のアセスメントと援助方法
・ 客観的意識レベルの評価にはJCSの3-3-9度方式とグラスゴー・コーマ・スケール(GCS)の2つがよく用いられます。(既述)
・ 瞳孔は、大きさ、形、左右差に注意する。対光反射は、健常であれば一側に光を当てると両眼に縮瞳がおこり、光を当てた方におこるものを直接反射、もう一方におこるのを間接反射といいます。
・ 脳圧亢進の一症状として、徐脈がみられることがあります。
・ 呼気の延長は、慢性閉塞性肺疾患である肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息の増悪時にみられます。
・ クスマウル呼吸(既述)は、糖尿病性昏睡などのアシドーシスでみられます。
・ 循環血液量減少によるショックでは、血圧下降、脈拍微頻脈、呼吸速拍、皮膚蒼白などの症状が出現します。
・ チアノーゼは低酸素血症で出現しますが(還元型ヘモグロビン3〜5g/dL以上)、貧血があると出現しにくので注意が必要です。
・ 意識障害患者の観察では、意識レベル、バイタルサインの他、頭痛、嘔吐、けいれん、麻痺、尿・便失禁などの随伴症状のチェックも必要です。
・ 重度外傷患者の救急処置として、気道確保、血管確保が行われます。
(2)呼吸を楽にする姿勢・呼吸法
・ 体動や会話は酸素消費量が増えるため、呼吸困難時には配慮が必要です。
・ 主に横隔膜の運動による腹式呼吸の方が、主に肋間筋の運動による胸式呼吸より換気効率はよくなります。
・ 高度の気胸,無気肺、胸水などがあると、患者肺を下にした側臥位をとることが多くなります。
・ 呼吸理学療法の目的は、肺の換気とガス交換を改善させることで、呼吸訓練、排痰法、リラクゼーションの援助と指導を行います。
・ 腹式呼吸と口すぼめ呼吸を組み合わせると、効率的な呼吸が可能となります。 口すぼめ呼吸は、吸気は鼻から行い、呼気は口をすぼめてゆっくりと少しずつ吐き出す方法で、吸気と呼気の比は、1:2〜5程度とします。
・ 体位ドレナージは、重力を利用して分泌物を排出させる方法です。 分泌物(喀痰)の貯留している部位を上にした体位をとらせます。
・ 排痰を促進させる手技としては、スクイージング、バイブレーション、 ハフィング、タッピングなどがあります。
(3)循環管理
・ 循環動態不良を示す症状として、血圧低下、頻脈、徐脈、不整脈、チアノーゼの出現、皮膚温の低下、時間尿量の低下などがあります。
・ 循環機能低下をきたす要素として「心臓のポンプ機能の低下」「血管拡張、血管抵抗の減弱」「循環血液量の減少」があります。
・ ショックとは、末梢組織への血液供給が急激・広範かつ異常に不足するために全身の組織機能が障害された状態をいいます。
・ 大量出血によるショックでは、著明な血圧下降がおこるので、止血と同時に、輸血・輸液による失血の補充を行います。
・ 中心静脈圧が低い場合、循環血液量の不足が考えられます。
・ うっ血性心不全では、中心静脈圧は上昇します。
・ 熱傷では、血漿中の水・電解質、および多量の血漿蛋白が喪失します。
・ 広範囲の第2、第3度の熱傷に対しては、体液管理とともに感染予防に努めます。
・ 小児や老人は、熱傷の受傷範囲が狭くてもショックをおこすことがあります。
[設問] 脳圧亢進の一症状とされるのはどれか? 一つ選べ。
イ 頻脈 ロ 心房細動 ハ 徐脈 ニ 二段脈 正解 (ハ)
[設問] 呼気の延長がみられるのは次のどれか? 一つ選べ。
イ 肺気腫 ロ 過換気症候群 ハ 脳腫瘍 ニ 肺梗塞
正解 (イ)
[設問] 出血によるショックで起こる症状の組み合わせで正しいものを一つ選べ。
イ 血圧下降・徐脈・呼吸速拍
ロ 血圧下降・微頻脈・呼吸速拍
ハ 血圧下降・徐脈・クスマウル呼吸
ニ 血圧下降・微頻脈・呼吸数減少 正解 (ロ)
[設問] チアノーゼが貧血では出現しにくいのはなぜか?
イ 還元ヘモグロビンが5g/dL以上になりにくいため
ロ 酸化ヘモグロビンが5g/dL以上になりにくいため
ハ 還元ヘモグロビンが8g/dL以上になりにくいため
ニ 酸化ヘモグロビンが8g/dL以上になりにくいため 正解 (イ)
[設問] 以下の文で正しいものを一つ選べ。
イ 換気効率は腹式呼吸より胸式呼吸の方がよい。
ロ 高度の気胸、無気肺などでは、健側肺を下にした側臥位をとることが多い。
ハ 口すぼめ呼吸は、吸気で口をすぼめて少しずつ吸い、呼気は鼻から行う方法である。
ニ 体位ドレナージでは、分泌物の貯留した部位を上にした体位をとらせる。
正解 (ニ)
[設問] 広範囲の熱傷(第2、3度)で、体液管理とともに必要なのは何か? 一つ選べ。
イ 保温 ロ 解熱 ハ 感染予防 ニ 精神的ケア
正解 (ハ)
基礎看護学(21)(診療に伴う技術) [基礎看護学]
3)薬剤についての知識と取り扱い
(1)薬剤の作用・投与量・投与法(薬物治療に伴って生じる生活への影響を含む)
(A)作用
・ 経口からの薬剤は、胃腸で分解され、小腸・胃から吸収されます。その後、門脈を経て肝臓に入り、一部そこで代謝されます。代謝されなかったものは大静脈に入り、組織へ分布し、主に腎臓から尿中に排泄されることになります。
・ 薬剤の作用には個人差があります。 これは、「吸収のされ方」「身体各部への分布量」「肝臓での代謝による活性喪失分」「尿・胆汁・汗・涙その他の排泄状況」に個人差があるからです。
(B)投与量
・ 投与量は、年齢・体重・病態・体質・耐性・排泄機能などの患者側の条件と与薬方法によって決まります。
・ 薬物治療は患者の日常生活へ影響があるので、与薬前後の生活の変化をアセスメントする必要があります。
(C)投与法
・ 投与法には、経口、注射(皮内、皮下、筋肉内、静脈内)、塗布、点眼、吸入、経直腸などがあります。 注射の吸収速度は、静脈内→筋肉内→皮下→皮内の順です。
(2)薬剤の取り扱い
・ 薬剤は種類別に区別して整理します。
・ 毒薬、劇薬は他の薬物とは別な場所に保管し、麻薬は鍵のかかる場所に保管します。
・ 変質しやすい薬物は、冷蔵庫に保管します。
(3)与薬法
(A)経口与薬
・ カプセル薬は、食道などに貼り付いて粘膜潰瘍をおこすことがあるので、多めの水で服用させます。
・ 舌下錠は、口腔粘膜から吸収され、門脈を介さず大静脈系に入ることで薬効を発揮するので、飲み込まないよう指導します。
・ 徐放薬は、小腸で吸収され血中濃度が一定に保たれることになっているので、噛み砕いたり、すりつぶしたりしてはいけません。
(B)注射
・ 皮内注射は、皮膚で抗原抗体反応をみる際に使われる。ツベルクリン反応や薬剤テストなどがあります。
・ 皮下注射では刺入部位の皮膚をつまみ、皮膚面と10〜30℃の角度で刺入します。
・ 筋肉注射では、皮下組織と筋肉層の厚みを考慮し、筋層まで針が達するように刺入します。 薬液注入後は一部を除いて、吸収促進のためマッサージを行います。
・ 抗癌剤は、血管外に漏れると組織の壊死をおこす危険性があるので、注射針の固定を確実に行います。
(C)塗布
・ 塗布、貼付薬は経皮吸収であり、角質層を透過するものと、毛穴などの付属器官を通るものの2つの経路で行われます。吸収率は個人によって異なります。
(D)点眼
・ 滅菌された製剤を用い、容器の先端が手や眼瞼結膜に触れないようにします。
(E)吸入
・ 薬液吸入は、座位または半座位で行い、薬液が気道に届くように腹式呼吸を行ってもらいます。 粒子が大きいものは口腔内に沈着する場合があるので、たまった薬液は吐き出すよう指導し、吸入後はうがいを促します。
(F)経直腸
・ 薬剤は直腸粘膜から吸収され、体循環に入ります。
(4)副作用とその徴候、禁忌
・ 副作用は、薬剤の吸収・分布・代謝・排泄に関する生体の条件や機能と、薬剤の用量・用法、薬剤の相互作用などが要因となります。
・ 副作用の徴候は、主に中毒とアレルギー反応であり、前者は肝・腎機能障害として、後者は蕁麻疹などの皮膚反応、発熱、血管障害として現れます。
[設問] 注射の吸収速度の速い順を正しく記したものを選べ。
イ 静脈内→皮下→筋肉内→皮内
ロ 静脈内→筋肉内→皮下→皮内
ハ 静脈内→筋肉内→皮内→皮下
ニ 静脈内→皮内→筋肉内→皮下 正解 (ロ)
[設問] 薬剤の取り扱いについて正しいものを一つ選べ。
イ 薬剤は種類別に区別して整理する。
ロ 毒薬は他の薬剤とは別な場所に保管し、劇薬と麻薬は鍵のかかる場所に保管する。
ハ 毒薬、劇薬、麻薬はすべて鍵のかかる場所に保管する。
ニ すべての薬剤は変質を避けるため冷蔵庫保管とする。
正解 (イ)
[設問] ニトログリセリンを飲み込むのは、なぜだめなのか? 一つ選べ。
イ 胃液で変質するため
ロ 胃腸で吸収されて門脈系で肝臓に運ばれて、そこで脱ニトロ化されて無効となるため
ハ 胃腸では吸収されないため
ニ 副作用が強いため 正解 (ロ)
[設問] 皮内注射の刺入角度は次のどれくらいか?
イ 0~15度
ロ 10~30度
ハ 45~60度
ニ 65~90度 正解 (ロ)
基礎看護学(20)(診療に伴う技術) [基礎看護学]
2)治療・処置
(1)治療・処置の看護師の役割と責任、患者の理解
(2)穿刺
・ 穿刺とは、先端の鋭い医療器具(針など)を身体に突き刺すことをいい、検査あるいは治療の目的で行われます。
・ 検査の場合は、採取した体液や細胞・組織の性状を調べる目的で行われます。
・ 治療の場合は、呼吸苦などの症状緩和を図るために体内に貯留した液体や気体を排除、あるいは薬液を注入したりする目的で行われます。 そして、穿刺は、全て無菌操作で行われます。患者の体位は、できるだけ安楽で緊張を緩和できものにします。
・ 急激な体動は、手技に伴う危険性(出血や感染)を増大させます。 そのため、動かないように声かけをして、必要に応じて支えるなど援助を行います。
・ 穿刺部位周辺の不必要な露出を避け、保温に努めます。
・ 局所麻酔薬による副作用が出ることがありますから、その早期発見に努め、実施前・中・後の患者の反応(ショックなど)を確かめます。
・ 胸腔穿刺
・ 腹腔穿刺は、腹膜腔に穿刺し、貯留した腹水を採取あるいは排出するものです。
・ 穿刺部位としては、モンロー・リヒター線の中央かその外側が選択されます。
・ 腹水排除後、圧迫されていた臓器に血液が急に流入してショック症状をおこすことがあるので、それを念頭に置く必要があります。
(3)洗浄
・ 洗浄とは、汚れを取り除き清潔にすることですが、洗浄するための液体を外部から注入・排出させますので汚染の危険があります。 そのため、部位による操作方法の違いを充分に把握する必要があります。
・ 使用する液体の温度によっては、患者は不快に感じるので温度に気を付けます。
・ 胃洗浄では、胃酸があるため細菌は死滅しやすいとはいえ、抵抗力の弱い患者や手術においては無菌的に行う必要があります。 上半身をおこした体位で、嘔吐の防止に努めます。 胃管が確実に胃の中にあることを確認するため、注射器で空気10mLほどすばやく注入してみます。 そのとき上腹部にあてた聴診器で空気音が確認できれば胃管が胃の中にあることが確認されたことになります。 洗浄では、胃に注入した洗浄液の量と排出した量が同じであることを確認します。
・ 膀胱洗浄は無菌操作で行い、洗浄液の温度は37〜38℃にします。 洗浄を行うことで逆に細菌の侵入がおこりやすくなるので十分な注意が必要です。
・ 膀胱洗浄は、カテーテルの閉塞が疑われる時などに行われます。
(4)吸引
・ 吸引には、気道(鼻・口・気管)内の分泌物を除去して気道を確保する一時的吸引と、体腔内、臓器、結合識内に異常に貯留した滲出液、血液、空気を除去する持続吸引があります。
・ 気道内吸引
・ 気管内吸引は無菌操作で行い、使用物品は、鼻・口腔内吸引の場合とは区別します。
・ 気管内吸引を施行する患者には、口腔内の細菌が気管に入らないよう、口腔内ケアは十分に行う必要があります。
・ 吸引瓶は排液量が70〜80%に達したら交換します。
・ 持続吸引法の種類にはウオターシール(水封)式吸引器・低圧持続吸引器があり、開始時の吸引圧は10cmH2O前後とします。
・ 吸引器は、体腔からのチューブとの連結部がゆるまないように密封状態にし、患者の身体が多少動かせるように、チューブと吸引用ゴム管の長さには余裕をもたせます。
(5)酸素吸入
・ 酸素療法の目的は、動脈血酸素分圧(PaO2)が60mmHg以下、SpO2 90%以下、または呼吸困難の状態にある患者に、圧縮酸素を吸入させて低酸素症の改善を図ることです。
・ 投与法には鼻腔カニューラ、フェイスマスク、酸素テントなどを使うものがあり、患者の状態によって選択します。
・ 高濃度の酸素を長時間投与すると、鼻粘膜刺激症状、四肢の知覚異常などの中毒症状が現れることがあるので、注意が必要です。 また粘膜への刺激を防ぐため、投与量によっては酸素を加湿する必要があります。
・ 副作用として、高濃度の酸素吸入による肺障害、酸素中毒、酸素吸入による無呼吸、CO2ナルコーシスなどがあるので、慢性呼吸不全患者に対しては低酸素濃度から始める必要があります。
・ 長期間の高濃度酸素吸入は、肺実質の変化と呼吸機能低下をもたらします。
・ 酸素ボンベは火気厳禁であり、転倒など衝撃が加わらないように安全管理に注意します。
(6)包帯法と創傷の管理
・ 包帯法の目的は、創傷部を覆い保護する被覆、出血や浮腫を予防する圧迫、骨折や脱臼などの時の固定、衛生材料の支持、患部を矯正する牽引などです。
・ 包帯法の実施上の注意点は、包帯の目的に応じて材料を選択すること、感染がおこらないようにすること、不適切な巻き方で循環障害や運動障害をおこさせないこと、苦痛を与えないことです。
・ 巻軸包帯の巻き始めと巻き終わりは、環行帯を行い、包帯がずれないようにします。 また、包帯は循環障害をおこさないように末梢から中枢に向かって巻いていきます。
・ 包帯法のいろいろ: 環行帯、螺旋帯、蛇行帯、折転帯、亀甲帯、麦穂帯
・ 創傷管理では、傷ついた皮膚の障害を改善させることが重要で、そのためには刺激要因を取り除き、皮膚の清潔、保湿、保護を行います。 なお皮膚障害には創傷被覆材を使用します。
[設問] 胸水のための胸腔穿刺では、一般的にどの部位から穿刺されるのか?
イ 第2~4肋間 ロ 第4~6肋間 ハ 第6~8肋間 ニ 第8~10肋間
正解 (ハ)
[設問] 腹腔穿刺の目印となるモンロー・リヒター線は臍とどこを結んだ線か?
イ 左上前腸骨棘
ロ 胸骨の剣状突起
ハ 恥骨結合
ニ 左下前腸骨棘 正解 (イ)
[設問] 膀胱洗浄の場合の、洗浄液の温度は次のどれがよいか?
イ 33~34℃ ロ 35~36℃ ハ 37~38℃ ニ 39~40℃
正解 (ハ)
[設問] 気管内吸引の場合の吸引圧は次のどれがよいか?
イ 100~150mmHg
ロ 200~250mmHg
ハ 250~300mmHg
ニ 300~350mmHg 正解 (イ)
[設問] 気管内吸引の場合の一回あたりの吸引時間はどれがよいか?
イ 30秒前後 ロ 20秒前後 ハ 一分程度 ニ 15秒以内
正解 (ニ)
[設問] 肘関節や膝関節に適した包帯の巻き方は次のどれか?
イ 環行帯 ロ 螺旋帯 ハ 亀甲帯 ニ 麦穂帯
正解 (ハ)
基礎看護学(19)(診療に伴う技術) [基礎看護学]
5.診療に伴う技術
1)診察・検査
(1)診察・検査時の看護師の役割
(A)診察時の役割
・ 患者の不安や苦痛を最小限にし、診察を受けやすい雰囲気をつくるように努めます。
・ 患者のニーズを看護師なりに把握し、医師の業務を補助します。
(B)検査時の役割
・ 患者に具体的な検査の説明をし、協力が得られるようにします。
・ 患者の検査時の身体的苦痛を最小限にとどめるように配慮します。
・ 検査が正しく行えるよう介助します。
・ 検査後の症状を観察し、異常があればただちに医師に報告し対処します。
・ 検査成績の結果を正しく読み取り、患者の状態の変化を予測し、回復過程を推定しながら、より適切なケアを計画・実践します。
(2)患者の心理
・ 患者は、診察・検査の結果によってその後どうなっていくのか不安を抱いています。検査の中には不快感や苦痛が伴うものがあるので、診察・検査の内容を理解するのを助け、援助していく必要があります。
(3)検査時の看護
(A)尿検査
・ 新鮮尿は、早朝起床後に採取します。
・ 尿沈渣検査には新鮮尿を使うため、前部尿道の細菌などの混じる最初の尿は捨てさせ、その後に出る中間尿を採取することになります。
・ 蓄尿の場合、開始時までの尿は捨て、それ以後の24時間の尿をすべて集めます。全尿をよく攪拌し、その一部を提出します。
(B)便検査
・ 潜血検査の場合、検出する血液は糞便中に均等に分布しているわけではないので、糞便の複数の部分から採取し母指頭大とします。
・ 一般に肉を多く摂取した場合はアルカリ性に傾き、糖質・脂質を多く摂取した場合に酸性に傾いています。
(C)喀痰検査
・ 起床時に、含嗽(うがい)をして口腔内の食物残渣や常在菌が混入するのを防いでから、咳とともに喀出したものを採取します。
(D)血液検査
・ 血液学的検査・生化学的検査・血清学的検査・細菌学的検査などがあります。
・ 血液培養検査は、血液中の病原微生物を同定するために行うので、無菌的に採取し、採取後はただちに検査に出します。検体は孵卵器(37℃)に保存します。
(E)腰椎穿刺検査
・ 腰椎穿刺は、クモ膜下腔に穿刺し、脳脊髄液を採取する検査です。
・ 穿刺部位は、腸骨稜がL4-5棘突起間の高さであることを目安に、L3-4またはL4–5で穿刺します。
・ 髄液採取後は、頭部を水平にして安静を保ってもらいます。
(F)X線検査(消化管造影)
・ 上部消化管造影: 検査前12時間は禁飲食となります。
・ 下部消化管造影(注腸造影): 前日は低残渣食、その後検査まで12時間は禁飲食とし、下剤を投与します。脱水予防と排便を促す目的で1L以上の水分補給を促します。
(G)CT検査
・ 腹部CTの場合や造影剤使用のCTの場合は、検査前禁食となります。
・ 検査時は ヘアピン、メガネ、義歯、装飾品、補聴器などを外します。
・ 造影剤を点滴投与しながらCT検査を行う場合は、造影剤に対する過敏症の既往やヨードテストを確認します。
(H)MRI検査
・ ヘアピン、メガネ、義歯、装飾品などの金属類を外してもらいます。
(I)内視鏡検査(消化管内視鏡検査)
・ 上部消化管(胃): 前日の21時以降、禁飲食、咽頭麻酔をした場合、誤嚥防止のため検査終了後2時間は禁飲食とします。
・ 下部消化管(大腸): 3日前から繊維の少ない食事にし、前日は低残渣食、その後検査まで12時間は禁飲食とし下剤を投与します。脱水予防と排便を促す目的で、1L以上の水分補給を促します。
(J)心電図検査
・ 深呼吸や会話は基線の動揺を招くので避けてもらいます。
・ 緊張したり、無理な体位をとったり、寒さで震えたりすると筋電図が記録されてしまいます。
(K)超音波検査
・ 腹部の検査の場合、前日21時から絶食(水分可)にする場合があります。
・ 泌尿器科の検査の場合、排尿を我慢してもらい膀胱に尿を充満させて検査します。
(L)呼吸機能検査
・ 呼吸困難や咳嗽が激しい患者で、検査に耐えられない場合には医師に報告します。
・ 立位が無理な場合は座位で行い、その旨を記録します。
[設問] 検査時の看護者の役割について正しいものを一つ選べ。
イ 患者に対して、検査の具体的な説明は避ける。
ロ 検査時の患者の苦痛に対しては、医師の指示を待ち、自ら苦痛を和らげるような働きかけはしない。
ハ 検査後の症状を観察し、異常があれば医師に直ちに報告して対処する。
ニ 検査結果を読み取り、患者の状態変化を予測するようなことは避ける。
正解 (ハ)
[設問] 尿検査について正しいものを一つ選べ。
イ 入院患者の新鮮尿は早朝起床後に採取する。
ロ 尿沈渣検査では、前部尿道の細菌などの混じる最初の尿を採取する。
ハ 畜尿では開始時までの尿は捨て、それ以後の12時間の尿をすべて集める。
ニ 尿沈渣検査では、排尿する全尿を採取する。
正解 (イ)
[設問] 腰椎穿刺について正しい記述を一つ選べ。
イ 腰椎穿刺では、クモ膜下腔に穿刺する。
ロ 腰椎穿刺の部位は、L1‐2とする。
ハ 髄腋採取後に安静は特に必要ない。
ニ 腰椎穿刺では、下肢を伸展し、背中はそらす体位をとらせる。
正解 (イ)
基礎看護学(24) (看護の役割と機能を支える仕組み)へ ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-05-28-1