成人看護学(52)(感染症の看護) [成人看護学]
2)感染症の看護、援助
(1)感染経路に対応した感染予防
・ 感染経路には、空気感染、飛沫感染、接触感染などがあります。
・ 空気感染は、結核、麻疹、水痘などでおこるものです。 空気中に浮遊する直径5μm以下の粒子に付着した微生物によって伝播します。 空気感染の危険がある場合、原則として患者を陰圧の個室に配置します。 1時間に6〜12回の換気を行い、ヘパフィルターを通して排気します。 肺結核の患者に接する時は、N95マスクを使います。
・ 飛沫感染は、インフルエンザ、髄膜炎、風疹、ムンプス、マイコプラズマ肺炎、ウイルス肺炎などでおこります。 くしゃみ、咳、会話、吸引時などに排出される直径5μm以上の粒子に付着した微生物による感染です。
・ 接触感染は、MRSA、VREなどの多剤耐性菌による胃腸炎、肺炎、腸管出血性大腸炎O157、ロタウイルス、疥癬、しらみなどがあります。 接触感染は患者との直接接触、または汚染された医療器具からの間接接触による感染です。 患者は個室に配置するのが望ましいのですが、感染のリスクが高くない場合は、大部屋も患者配置に注意すれば可能です。
・ レジオネラ菌は、給水・空調設備の汚染により感染がおこりますから、設備の管理が必要となります。
[設問] 飛沫感染により感染するものを二つ選べ。
イ 結核 ロ インフルエンザ ハ 風疹 ニ MRSA感染症 ホ マイコプラズマ肺炎
正解 (ロ、ハ)
[設問] 給水や空調設備の汚染より感染することが知られているものを一つ選べ。
イ ロタウイルス ロ 疥癬 ハ レジオネラ菌 ニ 結核菌
正解 (ハ)
成人看護学(51)(感染症の看護) [成人看護学]
16.感染症の看護
1)感染症の観察とアセスメント
(1)熱型、身体所見、分泌・排泄物、血液所見
・ 疾患によっては、特徴的な熱型のものがあります。
(2)感染部位、原因、程度
・ 消化管の感染症では、原因はウイルスによるものが多く(ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス)、次いで細菌(病原性大腸菌、サルモネラ、腸炎ビブリオ)などの食中毒によるものが多く、嘔吐・下痢をおこします。
・ 術後感染症では、創感染、手術臓器自体の感染、術後肺炎、尿路感染の頻度が高くなっています。
・ 性感染症では、クラミジア感染症が最も多く、男子では尿道炎、女子では子宮頸管炎をおこします。
・ 熱傷部位には、緑膿菌とブドウ球菌感染が多いといわれています。
・ 老人保健施設でしばしば集団感染をおこすのは、疥癬虫による疥癬であり、接触感染で広がります。
(3)心身・日常生活への影響
・ 感染力が強い時は、患者は隔離されるため、孤独感や拘束感を感じることになります。そのため、運動不足にもなりやすくなります。
・ 精神的なストレスが溜らないよう工夫した看護を行い、可能な範囲で運動を指導します。
・ 隔離患者には、手洗いの励行、部屋から出る場合はガウン着用をするよう説明と指導が必要になります。 家族、面会者にも感染源とならないように指導します。
[設問] 38℃以上の発熱で、一日中の体温の差が1℃以内のものを何というか?
イ 弛張(しちょう)熱 ロ 稽留(けいりゅう)熱 ハ 間欠(かんけつ)熱 ニ 波状(はじょう)熱
正解 (ロ)
[設問] 間欠熱がみられる代表的疾病は次のどれか? 一つ選べ。
イ 腸チフス ロ 膠原病 ハ 敗血症 ニ マラリア 正解 (ニ)
[設問] 熱傷部位でおこりやすい感染症はどれか? 一つ選べ。
イ 肺炎球菌感染 ロ 溶連菌感染 ハ ブドウ球菌感染 ニ 大腸菌感染
正解 (ハ)
[設問] 老人保健施設でしばしば集団感染を起こすことで知られているのはどれか? 一つ選べ。
イ 疥癬 ロ 白癬 ハ 肺炎球菌感染 ニ トリコモナス感染
正解 (イ)
成人看護学(54) (感覚機能障害を持つ患者の看護)へ ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-08-04-1
成人看護学(50)(生体防御機能の障害を持つ患者への看護) [成人看護学]
(3)膠原病の生活指導と援助
・ 膠原病の増悪因子である過労、感染、ストレス、寒冷、紫外線などを回避させます。
・ 再燃時の徴候として、発熱、関節痛、皮膚症状、筋痛、脱力、レイノー症状などがあることを患者に説明しておきます。
・ 適度な活動と安静のバランスがとれるように指導します。
・ 服薬指導では、自己判断で中止しないように指導します。
・ ステロイドや免疫抑制剤などの投与が行われ、その副作用で易感染状態にあるので、感染予防行動を指導します。
・ 定期的な受診の重要性を説明しておきます。
・ 慢性関節リウマチ患者では、関節の変形・拘縮がおこるため、自助具や補助具の活用と、関節の可動性と筋力の維持のため適度な運動を行うよう指導します。
・ 全身性硬化症患者では、手指の皮膚潰瘍に2次感染がおきやすいので、清潔を保つよう指導し、家事のとき洗剤の使用は避けるようにしてもらいます。
(4)アレルギー疾患の生活指導と援助
・ アレルゲンが何か、回避するにはどうすればよいのか、などを指導します。
・ ステロイド内服が行われている時は、易感染状態であることを説明し、感染予防行動を指導します。
・ 生活面で、過労やストレスを避けるように指導します。
・ 気管支喘息では、空気汚染のある場所を避け、感染予防を指導します。
・ アレルギー性鼻炎では、外出時のマスクや眼鏡の使用で予防してもらい、季節がわかっていれば、予防あるいは症状軽減のための服薬を指導します。
・ アトピー性皮膚炎では、皮膚の保護と2次感染の予防に注意を払ってもらいます。
・ シックハウス症候群では、空気清浄機の使用や定期的な換気によって対応してもらいます。
(5)HIV感染症/エイズの生活指導と援助
・ HIV感染症に関する知識や経過、治療方法、感染経路などについて理解できるよう促し、定期受診や抗HIV薬の内服の必要性を説明し、服薬の方法は、生活パターンに合うように主治医と相談して調整します。 抗HIV薬の副作用についても十分に説明しておくようにします。
・ カウンセリングや社会資源の活用についても説明します。
・ 他人への2次感染を防ぐため、歯ブラシやカミソリは共用しないこと、性行為時はコンドームを使うこと、妊娠・出産に関しても知っておくべきことを説明しておきます。
・ 日和見感染症の症状、感染予防行動などについての指導を行う。
[設問] 紫外線が増悪因子になる膠原病は次のどれか? 一つ選べ。
イ SLE ロ 慢性関節リウマチ ハ 高安病 ニ 全身性硬化症
正解 (イ)
[設問] エイズなどの免疫不全状態で起こりやすいものは次のどれか? 一つ選べ。
イ 心筋梗塞 ロ 脳出血 ハ 高脂血症 ニ 日和見感染 ホ メタボリック症候群
正解 (ニ)