成人看護学(81)(排泄機能障害を持つ患者の看護) [成人看護学]
(5)脊髄損傷による排尿障害への訓練と援助
(A)脊髄損傷による膀胱機能への影響
・ 脊髄損傷直後の急性期は膀胱の反射が消失するため、膀胱は弛緩したままで排尿不能となります。
・ 排尿障害は損傷された部位で相違であり、S2からS4より上では、自動性膀胱、それより以下では自律性膀胱となります。
(B)排尿障害への援助
・ 急性期には、恥骨上穿刺による膀胱瘻の造設または尿道カテーテル留置による排尿管理となるため、無菌操作、挿入部の清潔保持、十分な尿量確保などによる感染予防が重要です。
・ 自動性膀胱の場合、下腹部周囲や大腿を刺激して排尿を促し、自律性膀胱の場合、用手的排尿を促します。
・ 尿道カテーテルを長期に留置すると、感染の危険が高くなりますので、早期に間欠的導尿法に移行します。
・ 排尿状態を観察するために、患者に水分摂取量と排尿量を記録してもらいます。
・ 尿道周囲組織の強化のため、膣・直腸を収縮・弛緩させる訓練を行います。
・ 腎・尿路系の結石を予防するために多量の水分を摂取し、1日2000mL以上の尿量が確保されるように指導します。
(6)腹圧性尿失禁の運動訓練と生活指導
・ 腹圧性尿失禁は、経産婦や中高年の肥満女性におこりやすい失禁の型です。
・ 腹圧性尿失禁の原因は、骨盤底筋群の筋力低下であるとされます。
・ 腹圧性尿失禁は、咳・くしゃみ・体動による腹圧が上昇したときにおこります。
・ 効果的な運動訓練には、骨盤底筋訓練があります。 毎日数回肛門と膣を数秒間縮めたり緩めたりすることを繰り返し行います。
・ 便秘や肥満は、尿失禁を悪化させるので、改善するよう指導します。
(7)間欠的自己導尿法
(A)間欠的自己導尿法とは
・ 間欠的自己導尿とは、カテーテルを使って、患者自ら膀胱に貯留している尿を定期的に排出する方法です。
・ これを行うには、患者が自分の疾患を受け入れ、導尿の目的を理解していることが必要です。
・ 間欠的自己導尿の長所は、自然排尿の可能性の拡大、社会生活の拡大、2次的な皮膚障害の予防ができることです。
(B)間欠的自己導尿法の実際
・ 導尿する前には、必ず流水と石鹸で手を洗います。
・ カテーテル挿入時には、潤滑剤を使用します。
・ 男性の場合は、ペニスの先端を消毒して上向きにさせ、カテーテルを挿入します。
・ 女性では、小陰唇を広げ、尿道口を確認してからカテーテルを挿入します。
・ カテーテル挿入後は、尿が出なくなるまで、下腹部を圧迫します。
・ 自己導尿セットを使うときは、導尿終了後カテーテルを消毒薬に浸しておきます。
・ カテーテルを浸した消毒薬は適宜交換し、カテーテルは1、2週間に1度ガス滅菌します。
[設問] 胸髄損傷でおこる排尿障害は次のどれか?
イ 自動性膀胱
ロ 自律性膀胱
ハ 自発性膀胱
ニ 自主性膀胱 正解 (イ)
[設問] 腎・尿路系の結石を予防するためには、一日尿量はどれくらいがよいか?
イ 1000mL前後
ロ 1200mL前後
ハ 1500mL前後
ニ 2000mL以上 正解 (ニ)
[設問] 腹圧性尿失禁がおこりやすいのは次のどれか?
イ 幼児
ロ 思春期の肥満女性
ハ 20歳代の痩せた女性
ニ 経産婦や中高年の肥満女性 正解 (ニ)