人体の構造と機能 第97回(神経系) [人体の構造と機能]
C)間脳
a)視床
・視床は、内側では第3脳室の側壁を構成していて、外側は内包(ないほう)に接しています。
・視床は、いくつかの核(視床前核、視床内側核、中心内側核、背側外側核、視床腹側核、後核)からなっています。
b)視床下部
・視床下部は、多くの核(視索上核、室傍核など)からなっています。
D)中脳・橋・延髄
a)中脳
・中脳は、大脳・間脳と橋をつなぐ位置にあり、小脳とは上小脳脚(じょうしょうのうきゃく)でつながっています。
・中脳の背側である被蓋(ひがい)には上丘(じょうきゅう)と下丘(かきゅう)があります。
・中脳の中央部には、上丘レベルでは動眼神経核・動眼神経副核(エディンガー・ウエストファール核)、赤核(せきかく)があって、下丘レベルでは滑車神経核があります。中央部腹側よりには黒質(こくしつ)があり、腹側には大脳運動野からの下行線維が通っている大脳脚(だいのうきゃく)があります。
・黒質には、メラニンを含む細胞が集まり、黒質の細胞はドパミン産生を行っています。
b)橋
・橋は上は中脳、下は延髄とつながり、後ろは中小脳脚で小脳とつながっています。
・橋は横断面でみると、腹背の2部(橋底部と橋背部)に分かれています。
・橋背部には、脳幹網様体(のうかんもうようたい)、三叉神経の諸核、外転神経核、顔面神経核の大半、内耳神経核の大半があります。
・橋底部には、下行する運動系の神経線維が走っています。
c)延髄
・延髄は、上は橋、下は脊髄につながり、後ろは下小脳脚と小脳でつながっています。
・延髄には、顔面神経核と内耳神経の一部と舌咽神経核、迷走神経核、副神経核の大半、舌下神経核があります。
[設問] 視床の内側にあるのは何か? 一つ選べ。
イ 側脳室 ロ 第三脳室 ハ 第四脳室 ニ 中脳水道
正解 (ロ)
[設問] 中脳と小脳をつなぐのはどれか?
イ 大脳脚 ロ 上小脳脚 ハ 中小脳脚 ニ 下小脳脚
正解 (ロ)
[設問] 延髄にあるのはどれか? 二つ選べ。
イ 動眼神経核 ロ 外転神経核 ハ 動眼神経副核 ニ 舌下神経核 ホ 副神経核
正解 (ニ、ホ)
人体の構造と機能 第96回(神経系) [人体の構造と機能]
2)神経系器官の構造と機能
(1)中枢神経系
《構造》
A)中枢神経系の構成
・中枢神経系は、脳と脊髄からなります。
・脳は頭蓋内に収納され、頭蓋骨の大後頭孔から脊髄につながり、脊髄は脊柱管内を走っています。
・脳は、大脳、間脳(かんのう)、中脳、橋(きょう)、小脳、延髄(えんずい)からなり、中脳、橋、延髄を脳幹(のうかん)と呼びます。
・中枢神経の神経細胞の軸索は、支持細胞の乏突起膠細胞によって髄鞘がつくられています。
B)大脳
・大脳は、大脳縦裂で左右に分かれ、脳梁(のうりょう)が左右の大脳を結んでいます。左右の大脳半球を連結するのが、脳梁(のうりょう)で左右の大脳を結んでいます。左右の大脳半球を連結するのは、脳梁の他に、前交連(ぜんこうれん)があります。
・大脳は、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉、島葉からなっています。
・前頭葉と頭頂葉は中心溝で分かれ、中心溝の前に1次運動野、中心溝の後ろに1次感覚野があります。
・左大脳の1次運動野の下前方にブローカ野(運動性言語中枢)があります。また、側頭葉後上部、頭頂葉下部をまたぐようにウエルニッケ野(感覚性言語中枢)があります。側頭葉には聴覚野(ちょうかくや)があります。
・後頭葉には、視覚野があります。
・大脳深部には大脳基底核があります。基底核のうち尾状核(びじょうかく)と被殻(ひかく)と合わせて線条体、被殻と淡蒼球(たんそうきゅう)を合わせてレンズ核といいます。
[設問] 脳幹を構成するのは橋の他に何があるか? 二つ選べ。
イ 間脳 ロ 中脳 ハ 小脳 ニ 延髄 ホ 大脳
正解 (ロ、ニ)
[設問] 中枢神経に分類されるものを二つ選べ。
イ 顔面神経 ロ 動眼神経 ハ 舌下神経 ニ 小脳 ホ 脊髄
正解 (ニ、ホ)
[設問] 次のうち、大脳の左右を結ぶ役割を持つものを二つ選べ。
イ 間脳 ロ 脳梁 ハ 前交連 ニ 中脳 ホ 視床
正解 (ロ、ハ)
[設問] 一般に、左1次運動野の下前方の前頭葉にあるのは次のどれか?
イ ブローカ野 ロ ウエルニッケ野 ハ 聴覚野 ニ 視覚野
正解 (イ)
人体の構造と機能 第95回(神経系) [人体の構造と機能]
14.神経系の構造と機能
1)概念
A)中枢神経と末梢神経
・神経系は、中枢神経と末梢神経からなる階層的でシステマティックな器官です。
B)感覚神経と運動神経・自律神経
・神経系は身体の外と内の情報を感覚神経系を介して集めて、中枢神経の中枢である脳において統合し、体性運動神経と自律神経を介して体外への対応(行動)と内臓の調節に当たっています。
C)神経組織を構成する細胞
・神経組織は神経細胞(ニューロン)と神経膠細胞(グリア)からなるものです。
D)神経細胞の構造
・神経細胞は、細胞体、樹状突起(じゅじょうとっき)、軸索からなっています。
E)シナプス
・ニューロンとニューロンのつなぎ目をシナプスと呼びます。
・運動神経と筋線維のつなぎ目を神経筋接合部(しんけいきんせつごうぶ)と呼びます。
F)神経膠細胞の種類
・神経膠細胞は、上衣細胞(じょういさいぼう)、星状膠細胞(せいじょうこうさいぼう)、乏突起膠細胞(ぼうとっきこうさいぼう)、小膠細胞(しょうこうさいぼう)に分類されます。
・上衣細胞は、脳脊髄液を産生分泌しています。
・星状膠細胞は、神経細胞に栄養素を渡して、老廃物を受け取り、それらを毛細血管とやり取りしています。
・乏突起膠細胞は、中枢神経の軸索を取り囲み、髄鞘(ずいしょう)をつくります。末梢神経では、シュワン細胞が髄鞘をつくっています。
G)血液脳関門
・血液脳関門は、毛細血管の内皮細胞と星状膠細胞で形成され、血液中から神経組織への物質の流入を制限する機構となっています。
[設問] 中枢神経細胞の髄鞘をつくるのは、どれか? 一つ選べ。
イ 上衣細胞 ロ 星状膠細胞 ハ 乏突起膠細胞 ニ 小膠細胞
正解 (ハ)
[設問] 脳脊髄液を産生し分泌しているのはどれか? 一つ選べ。
イ 上衣細胞 ロ 星状膠細胞 ハ 小膠細胞 ニ 神経細胞
正解 (イ)
[設問] 毛細血管の内皮細胞とともに血液脳関門を構成するのはどれか? 一つ選べ。
イ 上衣細胞 ロ 星状膠細胞 ハ 小膠細胞 ニ 乏突起膠細胞
正解 (ロ)
人体の構造と機能 第94回(感覚器系) [人体の構造と機能]
(5)皮膚
《構造》
・皮膚の感覚受容器には、自由神経終末、メルケル触覚細胞、マイスネル小体、ファーターパチニ小体、クラウゼ小体、ルフィニ小体があります。
《機能》
・体性感覚を受容して、体性感覚神経を介して脳へと伝える機能を持っています。
・メルケル触覚細胞は触覚を伝達します。
・自由神経終末では、痛核を受容伝達します。
・マイスネル小体では、触覚を受容伝達します。
・ファーター・パチニ小体では主に圧核を受容伝達します。
・クラウゼ小体とルフィニ小体は温度覚を受容伝達します。
(6)内臓臓器
・深部臓器からの感覚情報を伝えるために、感覚受容器が存在しています。
・これらの受容器で集まられて脳に送られる情報は、深部臓器の調節と管理に利用されています。
[設問] 皮膚感覚の中で、温度覚を受容伝達するのは、次のうちどれか? 二つ選べ。
イ クラウゼ小体
ロ ファーター・パチニ小体
ハ マイスネル小体
ニ 自由神経終末
ホ ルフィニ小体 正解 (イ、ホ)
[設問] マイスネル小体が受容伝達するのはどの感覚か? 一つ選べ。
イ 触覚 ロ 痛覚 ハ 温度覚 ニ 圧覚
正解(イ)
感覚器系はこれで終了です。 次回からは、神経系です。
人体の構造と機能 第93回(感覚器系) [人体の構造と機能]
(4)舌
《構造》
・舌の表面には乳頭があって、それは有郭乳頭(ゆうかくにゅうとう)、葉状乳頭(ようじょうにゅうとう)、茸状乳頭(じじょうにゅうとう)、糸状乳頭(しじょうにゅうとう)に分類されます。
・味蕾(みらい)は、有郭乳頭、葉状乳頭、茸状乳頭にあります。
・味蕾には味覚受容器があって、全体で約1万個あるといわれています。味蕾は加齢とともに減少します。
・味蕾は、支持細胞、基底細胞で構成され、基底膜側から神経線維が入っています。
《機能》
・味覚を受容して味覚を司る神経線維を介して脳へ伝えます。
・舌の前2/3の味覚は、顔面神経、後ろ1/3の味覚は舌咽神経の支配を受けています。
[設問] 舌の構造と機能について、正しいものを一つ選べ。
イ 舌の乳頭には、有郭乳頭、葉状乳頭、茸状乳頭、糸状乳頭があっていずれにも味蕾がある。
ロ 味蕾は加齢とともに減少する。
ハ 味蕾には基底膜と反対側から神経線維が入ってくる。
ニ 舌の前1/2の味覚は顔面神経、後ろ1/2の味覚は舌咽神経の支配をうけている。
正解 (ロ)
人体の構造と機能 第92回(感覚器系) [人体の構造と機能]
(3)鼻
《構造》
・鼻腔粘膜には匂いを感受する黄褐色の嗅部があります。
・嗅粘膜上皮には嗅細胞、支持細胞、基底細胞があります。
・嗅細胞には繊毛があります。
・嗅細胞の中枢側の突起が脳底面にある嗅球に連絡しています。
《機能》
・嗅覚が受容し、脳へ伝える機能を持っています。
・嗅細胞の中枢側の突起が嗅神経と呼ばれますが、嗅細胞は感覚細胞でもあります。
[設問] 正しい記述を一つ選べ。
イ 鼻粘膜には匂いを感受する黄褐色の嗅部がある。
ロ 嗅粘膜上皮に、嗅細胞以外にあるのは支持細胞だけである。
ハ 嗅細胞の中枢側に繊毛がある。
ニ 嗅粘膜の末梢側に基底膜はある。
正解 (イ)
人体の構造と機能 第91回(感覚器系) [人体の構造と機能]
《機能と生理》
A)全体
・音をとらえ、聴覚情報として脳に伝える機能と、空間的感覚情報を脳に伝える機能を併せ持っています。
B)平衡感覚
・三半規管の膨大部稜(ぼうだいぶりょう)と卵形嚢と球形嚢の感覚上皮が感覚受容器です。感覚細胞の上にゼラチン状の構造物であるクプラが乗っていて、身体がゆれるとクプラと内リンパは静止しているので感覚毛(または平衡毛)がよじれて有毛細胞(ゆうもうさいぼう)が興奮して刺激となり、前庭神経に伝わるしくみです。
C)聴覚
・音は外耳道を経て、鼓膜を振動させ、振動は耳小骨を経て前庭窓(ぜんていそう)に伝わり、蝸牛菅内の内リンパ液の波動が、ラセン神経節のニューロンを興奮させ、蝸牛神経を経て脳へと伝えられます。
[設問] 下記の文で正しいものを一つ選べ。
イ 聴覚情報を脳に伝えるのが蝸牛神経で、平衡感覚情報を脳に伝えるのが前庭神経である。
ロ 平衡感覚の感覚上皮は、三半規管の膨大部稜のみにある。
ハ 身体が揺れると、クプラと内リンパが動き、感覚毛がよじれて有毛細胞が興奮する。
ニ アブミ骨から音の振動を受けるのは正円窓あるいは蝸牛窓といわれるものである。
正解 (イ)
人体の構造と機能 第90回(感覚器系) [人体の構造と機能]
(2)耳
《構造》
A)全体
・耳が外耳、中耳、内耳から構成されています。
B)外耳
・外耳は、耳介(じかい)と外耳道(がいじどう)からなるものです。外耳道の長さは、約2.5cmでS字状に曲がっています。
・外耳と中耳を仕切るように鼓膜があります。鼓膜は、厚さが約0.1mm、直径が約9mmの卵形の線維性の膜です。
C)中耳
・中耳は、側頭骨の中にあって、鼓室(こしつ)とも呼ばれます。3個の耳小骨(じしょうこつ)が連なっていて、鼓膜の振動は、この耳小骨を介して前庭窓で内耳のリンパ液に伝わります。
・中耳は、上咽頭とつなぐ耳管(じかん)、またの名をエウスタキオ管という管と連絡があります。
D)内耳
・内耳には、蝸牛、前庭(蝸牛と三半規管の間にあって卵形嚢と球形嚢が中にあります)、三半規管があります。
・聴覚受容器は蝸牛に、平衡感覚器は前庭・三半規管にあります。
[設問] 耳小骨を音が伝わる順序で正しいのはどれか?
イ キヌタ骨→ツチ骨→アブミ骨
ロ キヌタ骨→アブミ骨→ツチ骨
ハ ツチ骨→キヌタ骨→アブミ骨
ニ ツチ骨→アブミ骨→キヌタ骨
正解 (ハ)
[設問] 内耳の構成物は次のうちどれか? 二つ選べ。
イ 蝸牛 ロ 耳小骨 ハ 三半規管 ニ 耳管 ホ 鼓膜
正解 (イ、ハ)
人体の構造と機能 第89回(感覚器系) [人体の構造と機能]
B)眼球内容物の機能と生理
・眼房水は毛様体でつくられて後眼房(こうがんぼう)から前眼房(ぜんがんぼう)へ流れて、角膜と水晶体に栄養を与え、眼内圧を維持する役割を担っています。
・水晶体はレンズの役割を果たし、網膜に当たる像のピントを合わせる機能を持っています。
・硝子体は、眼球の形と弾性を保ち、光の通路にもなっています。
・虹彩は、瞳孔散大筋と瞳孔括約筋で、瞳孔に入る光の量を調節しています。
C)内眼筋と外眼筋の機能
・内眼筋(ないがんきん)には、瞳孔を開く瞳孔散大筋(どうこうさんだいきん)と、縮める瞳孔括約筋(どうこうかつやくきん)があります。瞳孔散大筋は交感神経支配で、瞳孔括約筋は動眼神経副核から出る副交感神経の支配を受けています。
・外眼筋(がいがんきん)は、眼を動かす筋肉で、動眼神経、滑車神経、外転神経の支配を受けています。
[設問] 下記の文で正しいものを一つ選べ。
イ 眼房水は角膜と水晶体を栄養し、さらに眼内圧を維持する役割を持っている。
ロ 硝子体は光の通路となり、さらに網膜にあたる像のピントを合わせる機能を持っている。
ハ 瞳孔括約筋は、瞳孔を開く機能を持つ。
ニ 瞳孔括約筋は交感神経の支配を受けている。
正解 (イ)
人体の構造と機能 第88回(感覚系) [人体の構造と機能]
《機能と生理》
A)視覚情報の伝達
・眼は、光を視覚情報としてとらえて脳へと送る機能を持っています。
・光は、角膜→水晶体→硝子体→網膜の順に到達します。
・網膜にある感覚器は、視細胞(しさいぼう)です。
・網膜の視細胞は、400~700μmの可視光線を感じることがでます。
・明るいところでは、光感受性の鈍い錐状体優位に、暗い所では光感受性の高い杆状体が優位に働いています。
・感光性の色素であるロドプシンは杆状体の外節の円板膜にあって、不活性型オプシンと11‐シス‐レチナールが結合したものです。
・神経節細胞の神経線維は、視神経乳頭から眼球を出て視神経となります。
[設問] 下記の文で正しいものを一つ選べ。
イ 光は目に入ると、角膜、硝子体、水晶体、網膜の順に到達していく
ロ 明るい所で主に働くのは視細胞の錐状体であり、暗い所では主に杆状体が働く
ハ ロドプシンは活性型オプシンと11‐シス‐レチナールが結合したものである
ニ 双極細胞の線維は視神経乳頭から眼球を出ると視神経になります
正解 (ロ)