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在宅看護論(13 )(在宅における医療管理を必要とする人と看護) [在宅看護論]

5.在宅における医療管理を必要とする人と看護

1)在宅医療と社会制度

(1)在宅医療と診療報酬制度

・ 在宅医療を推進することは、在院日数の短縮、医療機関の機能分化・連携の推進と並ぶ、我が国の医療体制の主要な課題となっています。

・ 医師の訪問診療において算定できる診療報酬には、「寝たきり老人在宅総合診療料」 「在宅療養指導管理料」 などがあります。 「在宅療養指導管理料」 には、在宅自己注射指導管理料、在宅自己腹膜灌流指導管理料などの医療行為を指導・管理する点数が含まれています。

・ 訪問看護ステーション、病院・診療所が行う訪問看護は、「医療保険で行う場合」 [介護保険で行う場合] があり、各々で報酬・利用者負担が異なっています。

(2) 訪問看護師の医療行為

・ 訪問看護は、主治医の指示によるもので、訪問看護指示書の内容に沿ってケアや医療処置が行われます。

・ 訪問看護において看護師が行うことができる医療行為は、保健師助産師看護師法に規定されている 「診療の補助」 となっています。

・ 具体的には、人工呼吸法、中心静脈栄養療法(IVH)、経管栄養法、膀胱留置カテーテルなどに関する医療処置があり、静脈注射も含まれます。

・ 訪問看護は、施設内看護と違い、高度な判断力と知識・技能が求められ、医師との緊密な連携が重要となります。

訪問看護師.png

2)薬物療法

(1)服薬状況の把握

・ 療養者・家族が適切に服薬管理できるよう援助します。

・ 服薬の状況、副作用の有無、重複投与の有無、配合禁忌、投与薬剤に影響する飲食物、などのチェックが必要です。

・ 小児の場合、体重から投与量が計算されるので、定期的な体重測定が必要となります。

・ 高齢者の場合、肝・腎機能が低下しているため副作用が出やすくなっています。また、服用も忘れることが多くなります。そのため、1回量包裝調剤をされることが多くなります。

・ 薬の飲み忘れがある場合は、服薬カレンダーの活用が有効なこともあります。

(2)医師および薬剤師との連携

・ 訪問看護師は、薬剤の効果や副作用、服薬管理に関する問題等について、医師や薬剤師と連携・協同して、安全で効果的な服薬ができるよう援助します。

・ 医療保険・介護保険では、薬剤師による訪問服薬指導(薬剤師居宅療養管理指導)が制度化されています。 これは、医師の許可と療養者もしくは介護者の希望のもと、居宅において在宅医療を受けている療養者宅を訪問し、服薬指導をするというサービスです。

[設問] 訪問看護に関する正しい文を一つ選べ。

イ 訪問看護は、看護師が独自におこなうものでケアや医療処置を行う。

ロ 訪問看護において看護師が行うことができるものは、保険師助産師看護師法に規定されない。

ハ 訪問看護で行う具体的なこととして、静脈注射も含まれる。

ニ 訪問看護は、看護師が独自に行うので、医師との連携は必要ではない。

                           正解 (

[設問] 高齢者は服薬がいい加減になりやすいので、よく行われる対処法はどれか? 一つ選べ。

イ 一回量包装調剤  ロ 隔日投与  ハ 薬剤粉砕による投与  ニ 約束処方

                               正解 (

 

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在宅看護論(12 )(在宅における生活支援の方法と技術) [在宅看護論]

4)移動

(1)日常生活動作(ADL)、手段的日常生活動作(IADL)のアセスメント

・ 療養者の疾患、認知機能、安静度の他、生活環境、生活習慣、活動範囲など社会生活全体に関する情報を収集します。

・ 筋力・筋萎縮の程度、関節拘縮の有無、関節可動域などの運動系、運動負荷時の脈拍の増加、脈圧の低下などの循環器系、血中酸素分圧の低下や呼吸数の増加などの呼吸器系を評価し、移動時の負荷を評価します。

・ 座位・起立・歩行の自立度と障害の程度、転倒の危険性の有無、車椅子利用の有無から、療養者にとって安全な移動方法を検討します。

・ 家屋の構造、居室の広さと段差、エレベーター設置の有無を確認し、移動用具・装具・靴、住宅改修の有無、訪問介護や訪問看護、ボランテイアや近隣の人々など、社会資源の活用についても確認します。

・ IADLとは手段的日常生活動作のことで、交通機関の利用度、買い物や掃除などの家事動作、地域活動への参加度など社会活動も含めたものです。

(2)移動時の安全確保

ベッド.png

・ 杖や歩行器を使う時は、杖の長さや杖先の滑り止めゴムキャップの有無、歩行器では重量、ハンドル、ブレーキなどを確認します。  靴は履きやすく脱げにくいもの、靴底には滑り止めのついたものを薦めます。

・ 住宅改修は、療養者の安全確保だけでなく、機能維持に役立つかどうか、先々の身体状況の変化に対応できるかどうか、など考慮に入れて行います。

・ 使う道路は、なるべく車の通行量の少ない安全な道路を選択するようにします。

(3)移動補助用具

・ 畳からの立ち上がりを補助する電動昇降座椅子や起立を補助するベッド柵取り付け型起立バーや電動昇降椅子、昇降便座などがあります。

・ 歩行の際の補助用具には、杖(T字杖、4点杖、ロフトランドなど)と歩行器(キャスター付き歩行器、固定型歩行器、椅子型歩行器)などがあり、療養者の歩行能に合わせて選択します。

杖.png

・ 車椅子の場合、ベッドから車椅子への移動に関して、移動用リフトとスライデイングボードがあり、移動用リフトではリフトベルトが適切に着用されているか、機械操作は理解されているかなど確認します。

・ 社会資源の利用を考慮する移動補助用具は、「福祉用具の給付と貸与制度」の対象となるのか、自己負担部分について十分に説明しておきます。

[設問] 手段的日常生活動作(IADL)にあたるものを二つ選べ。

イ 入浴  ロ 整容  ハ 掃除  ニ 排泄  ホ 買い物

                      正解 (

[設問] 一本の脚、体重を支えるグリップ、腕を固定するカフを備えた杖は何というか?

イ T字型杖  ロ ロフストランド杖  ハ 松葉つえ  ニ L字形杖  ホ 四点杖

                              正解 (


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在宅看護論(11 )(在宅における生活支援の方法と技術) [在宅看護論]

3)清潔

(1)清潔のアセスメント

清潔のアセスメント.png

(2)入浴

・ できる限り入浴させるべきであるが、全身状態、入浴に対するニーズ、身体的負担を考慮して決めます。入浴が困難と思われる場合は、部分浴で対応します。

・ 入浴の過程では、まず浴室への移動です。療養者のADLを考慮して、歩行、車椅子移動、シャワーキャリーの使用などから移動法を選択します。

シャワーキャリー.png

・ 療養者のADLと浴室の構造上、入浴が無理な場合は、住宅改造、入浴リフト、訪問入浴サービスの利用など社会資源の利用を考慮します。

・ 入浴用の椅子やシャワーチェアーなど入浴補助用具も活用し、自分でできるところは自分でしてもらうようにしながら援助していきます。

シャワーチェア.png

・ 浴室での自己を防ぐため、浴槽に手すりをつけたり、腰掛け板を利用したり、滑り止めマットを使ったりと、安全面にも気を配ります。

・ 入浴時間は10〜15分程度の短時間とし、入浴後は水分補給、爪のケアなど実施します。

(3)清拭

・ 全身状態、治療方針などから入浴ができない時は、清拭を行います。

・ 清拭には、全身清拭と部分清拭があり、療養者の疲労度などをみながら全身か部分かを決めて行います。

・ 在宅での清拭では、自宅のタオルを使い、お湯や電子レンジで蒸しタオルをつくるなどして行い、療養者にも自分でできるところは自分でやってもらうようにします。

・ 不必要な露出はできる限りさけてプライバシーに配慮する必要があります。

・ 訪問看護師が一人ではできないような場合、家族やヘルパーと一緒に行って清拭を指導します。

(4)足浴

・ 部分浴の一つで、爽快感は提供できます。

足浴.png

・ 足に白癬などがある場合は、看護者はゴム手袋を着用し、看護者への2次感染を防止します。 また、療養者が通所介護などの社会資源を利用している場合は、処置方法を通知し連携を図り、他の事業所のスタッフなどへの2次感染を防止します。

・ 足浴で使う防水シートは、ゴミ袋やピクニックシートで代用することもできます。

(5)口腔ケア

・ 口腔ケアは、う歯や歯周病を予防し、口腔内が清潔となり、その結果肺炎の予防にもつながります。

・ 義歯の装着があればはずしてもらい、口腔内はうがいで洗浄し、歯肉用歯ブラシで歯肉をブラッシングし、綿棒、スポンジなども使って口腔全体をケアします。

・ 口腔ケアは、療養者が安楽で安全な体位で行い、うがいが不可能な場合は吸引しながら行います。

・ う歯や歯周病がある場合は、訪問歯科診療サービス導入を考慮し、訪問歯科医や歯科衛生士と連携し、最適な口腔ケア方法と用具について検討します。

[設問] 在宅療養者の入浴に関して正しいものを一つ選べ。

イ 入浴は療養者のQOLを高めるので、マンパワーを動員してでも行うようにする。

ロ 療養者の浴室への移動では、ADLに関係なく、安全を考慮して車椅子移動で行う。

ハ 入浴中は、安全第一で、介護者と看護者がすべて対処するようにする。

ニ 入浴時間は10~15分程度の短時間とする。

                                 正解 (


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在宅看護論(10 )(在宅における生活支援の方法と技術) [在宅看護論]

2)排泄

(1)排泄障害のアセスメント

・ 家屋の構造、居室からトイレまでの距離、トイレ様式、床上排泄やおむつ着用の有無、褥瘡感染やスキントラブルの有無を確認します。

・ 排泄障害の原因となる既往歴をチェックします。

・ 排尿障害には、排尿困難と尿失禁があり、尿失禁にはトイレに着くまでがまんできない機能性尿失禁や尿意がなく膀胱にある程度尿が溜まると漏れる反射性尿失禁などがあります。

・ 排便障害では、下痢、便秘、便失禁の有無や、便の性状、便意や下剤服用の有無について確認し、排便習慣や随伴症状などについての情報を収集します。

・ 排泄行動の一連の動作

排泄行動.png

・ 水分摂取量、食事量と食事内容、意識状態・精神状態からも排泄障害に関係する要因がないかどうかを検討します。

・ 排泄障害があると、家族への依存度が高くなるため、家族の介護力や介護者との関係、排泄に関する価値観なども確認します。

(2)排泄補助用具

・ トイレまでは行けるが、便座からの起立動作が不安定で転倒の危険性がある場合は、補高便座を使用し、トイレ内に手すり設置を考慮します。

・ 冬期での寒冷刺激を軽減するためには、便座やトイレ内の温度調節ができる設備が望ましいかと。

・ ポータブルトイレと手持ち式尿器

ポータブルトイレ.png

・ 男性で、夜間頻尿や尿が常時排出される場合は、コンドーム型収尿器を使用するとよいのですが、皮膚のかぶれ予防のためにも1日以上の装着は避け、交換時は陰部洗浄をする必要があります。

・ 寝たきりで尿意がある時は、受尿蓄尿部別体型収尿器の使用を検討します。

・ 歩行可能で、自分でトイレに行くことができるが、下着を汚す頻度が高い療養者には、パンツ式オムツが適しています。

・ 関節可動域に制限があり、寝たきり度が高い療養者には、テープ式オムツが適しており、オムツの尿漏れを予防するために尿取りパッドを併用することもあります。

(3)尿失禁時の援助

・ 尿失禁とは、不随意にあるいは抑制できずに排尿される状態をいい、療養者の自信を喪失させやすいため、心理的配慮が必要です。

・ 尿失禁により陰部や寝具、寝衣の洗濯物が増え、家族の介護負担は増加するため、着脱しやすい衣服やトイレへの導線の短縮を図るよう援助が必要です。

・ 尿失禁を気にして活動範囲が狭まらないように、吸収性が高く消臭効果のあるパッド類や失禁パンツなどを活用します。

・ 腹圧性尿失禁のリハビリテーションとして、骨盤底筋群収縮訓練があります。

・ 切迫性尿失禁や機能性尿失禁には、失禁前に定期的にトイレ誘導する定期排尿法が適しています。

・ プライバシーの保護に努め、消臭剤や換気などに留意します。

(4)便失禁時の援助

・ 便失禁とは、便やガスが不随意に肛門から排出される状態です。

・ 便失禁は、羞恥心を伴い精神的苦痛も大きいため、プライバシーが守られる環境を確保し、療養者に対する精神的援助を行います。

・ スキントラブルを予防するために、入浴や清拭、陰部洗浄、更衣、皮膚保護剤の使用など、便が付着した皮膚に清潔援助が必要です。

・ 肛門括約筋機能訓練 

バイオフィードバック.png

・ 一定時間にトイレに行き排便習慣が獲得できるように誘導し、生活リズムを調整することは、便失禁だけでなく、便秘改善のための援助にもなります。

・ 水分摂取量は控えずに、規則的な食事摂取と脱水予防のためにも水分やスポーツドリンクなど電解質の補充に留意します。

・ 薬物の内服による作用・副作用による便失禁の場合は、便の性状を観察し、主治医と効果的な与薬を検討します。

[設問] 歩行可能で自分でトイレに行くことはできるが、下着を汚す頻度が高い療養者に適した排泄補助用具は次のどれか? 一つ選べ。

イ ポータブルトイレ  ロ 手持ち式収尿器  ハ コンドーム型収尿器  ニ パンツ式オムツ

                                  正解 (

[設問] 骨盤底筋群収縮訓練が適応となるのは次のどれか? 一つ選べ。

イ 腹圧性尿失禁  ロ 切迫性尿失禁  ハ 機能性尿失禁  ニ 反射性尿失禁

                                  正解 (


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在宅看護論(9)(在宅における生活支援の方法と技術) [在宅看護論]

4.在宅における生活支援の方法と技術

1)食

(1)食事摂取能力のアセスメント

・ 療養者の全身状態や認知機能、体重減少や栄養状態、原疾患や合併症の有無などを把握します。

・ 療養者の食事内容や食事環境、摂食時の姿勢、調理する人などについて、情報を収集します。

・ 摂食行動

摂食行動.png

・ 先行期では、座位耐久性や摂食姿勢、上肢機能などをアセスメントし、準備期は咀嚼機能だけでなく、口唇の閉鎖不全・歯牙欠損・義歯の状態などを観察します。

・ 口腔期の障害で、口腔の閉鎖不全があると、いつまでも食塊が口腔内に残ります。 咽頭期の障害では、嚥下時にむせや咳嗽があります。 鼻に食物が入る場合は、鼻咽腔の閉鎖不全の可能性があります。

・ 流涎は、嚥下障害を示していることが多く、随意的な咳ができるかどうかを確認することは重要です。 なぜなら、咳ができれば、誤嚥時に食塊を喀出できることになるからです。

・ 食後の咳嗽や喀痰の増加、声質が変わる、発熱などは不顕性誤嚥のサインのことがあります。

(2)摂食障害時の援助

・ 摂食意欲が低下している人には、身体面と精神面の両方からアプローチを行います。 食欲は、食物の形、味、香り、温度、外見、量、本人の嗜好などによって左右されます。

自助具.png

・ 食具、一口の量、口に運ぶ間隔などが療養者に適しているかどうかを含め、介護者の技術を確認します。

・ 療養者自身あるいは介護者が調理できない時は、ホームヘルパー制度や配食サービスの活用など社会資源について情報を提供していきます。

(3)嚥下障害時の援助

・ 嚥下障害には、腫瘍術後や食道狭窄などの構造的嚥下障害と、動きや感覚に障害がある場合の機能的嚥下障害があります。

・ 嚥下障害をもつ療養者の多くは、脳梗塞などによる仮性球麻痺患者です。

・ 咽頭期の障害があると咽頭反射が遅いため、液体は誤嚥の危険性が高く、むせやすくなります。

・ 食塊としてまとまりやすい食品を利用し、きざみ食・軟らかい食事・増粘剤を使用したとろみのある食事など調理方法を工夫します。

・ 嚥下障害があれば、パサパサした食物や粘稠度の高い食物(もちなど)は避けるのが賢明です。

嚥下障害の体位.png

・ 嚥下機能を改善するには、 口を閉じたり突き出したり、頬をふくらませたりする口唇・頬の運動や、 舌を上下・左右に動かす舌の運動、 嚥下反射を誘発させるための喉のアイスマッサージなどの対策があります。

・ 口腔ケアには、口腔内細菌の繁殖を抑制し、誤嚥性肺炎を予防する効果があります。

[設問] 食事の時にむせや咳がみられる場合、摂食行動のどの時期の障害か?

イ 先行期(認知期)  ロ 準備期(咀嚼期)  ハ 口腔期  ニ 咽頭期  ホ 食道期

                                      正解 (

[設問] 最近、食後に咳が出て痰がからみ、ごろごろした声に変わっているとの介護者からの報告があった。何を疑うか? 一つ選べ。

イ 咽喉頭炎  ロ 不顕性誤嚥  ハ 慢性閉塞性肺疾患  ニ 逆流性食道炎

                                     正解 (

[設問] 嚥下障害の要因となる仮性球麻痺の原因疾患は次のどれが多いか? 一つ選べ。

イ ALS  ロ 脊髄小脳変性症  ハ 多発脳梗塞  ニ ベル麻痺

                                     正解 (

[設問] 咽頭のアイスマッサージは何が目的か?

イ 口腔清拭  ロ 口腔乾燥の防止  ハ 嚥下機能の改善  ニ 構音障害の改善

                                   正解 ()   

 

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在宅看護論(8)(在宅看護の特徴) [在宅看護論]

5)チームケアの重要性

(1)在宅チームケアの意義

・ 療養者・家族のニーズは生活全般にわたっており、多様です。それに応えるには保健・医療・福祉の専門職、地域住民、ボランテイアなど多くの人の参加と協力によるチームケアが必要となります。

チームケアの説明.png

(2)他職種との連携・協同

・ 地域で療養する人を支える職種としては、医師、歯科医師、歯科衛生士、保健師、看護師、助産師、介護支援専門員、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、精神保健福祉士、ホームヘルパー、社会福祉士などがあります。

・ 連携とは、異なる組織や職種が1つの目標に向かって、互いに連絡を取り協力し合うことで、協同とは同じ目標に向かって協力して働くことです。

・ ケアチームのメンバーは、ケアの目標や療養者・家族の状況についての情報を共有していくことが重要です。

・ 情報を共有し、サービスの調整・統合を図っていく方法として、療養者の居宅に連絡ノートを設置して各々のサービス提供時に記入する、電話で相談・報告する、必要時にはカンファレンスを開催するなどの方法があります。

6)ケアマネジメントと看護の役割

(1)ケアマネジメントの概念

・ ケアマネジメントとは、療養者・家族のニーズに応じて必要なサービスを調整することであるが、広義には既存のサービスを改善する、必要なサービスを開発するなど地域の包括的なケアシステムの構築までもが含まれることもある。ケースマネジメント、ケアコーデイネーションは、類義語、同義語です。

・ ケアマネジメントが目指すものは、療養者・家族が社会資源を効果的に活用することで、QOLの高い自立した生活を送れるよう援助することです。

(2)ケアマネジメントの過程



 

ケアマネジメントのプロセス.png

(3)社会資源の利用

・ 社会資源とは、生活上の諸要求の充足や問題解決を目的として、利用できる各種の制度・施設・機関・団体および人々の知識、技術などの物的・人的諸要素を総称したものです。

・ 社会資源をその供給主体からみると、行政や社会福祉協議会などの営利を目的としない機関、民間の企業、および地域の組織や団体によって提供される 「フォーマルな社会資源」 と家族や親戚、友人、近隣、ボランテイアによって提供される 「インフォーマルな社会資源」 に分類できます。

・ 援助者は、療養者の居住地域の社会資源について内容や、利用者負担額、手続きの方法などの詳細を知っておく必要があります。      

・ 社会資源の利用についての最終的な意思決定は、療養者・家族が行うため、援助者は療養者・家族の望む生活を把握し、それを支える社会資源の内容や利用条件を明確に提示します。

(4)サービスの調整

・ 療養者・家族に多様な関係機関や職種が関わっている場合、各サービス提供者がばらばらにサービスを提供するのではなく、連携・統合した形での提供が重要です。

・ そのためには、ケアチームの中でケアマネジメントを行う担当者(ケアマネジャー)を明確にする必要があります。

ケアマネージャー.png

・ サービスの調整は、 療養者・家族が初めてサービスを活用する場合、 モニタリングの結果、療養者・家族の状況が変化した時、 ニーズが充足されていないことが発見された場合 に行います。

・ 調整するのは、サービスケアの内容、サービスの利用回数・時間・曜日、サービス提供者の役割分担などです。ケアマネジアーは、療養者・家族のニーズを各サービス提供者に正確に伝え、意見交換しながらこれらの調整にあたります。

・ サービス調整の場として、カンファレンスを開けば、専門職、ボランテイアなど関係者が情報を共有することができて、良好なチームワークを構築する機会ともなります。

(5)介護保険との関連

・ 介護保険制度では、法律で制度化された介護支援専門員がケアマネジャーとしての役割を果たすことになります。

・ 介護保険制度における「ケアマネジメント」は、対象者が要支援または要介護認定を受けた人に限定され、利用できる社会資源も介護保険制度の中で規定され、本来の「ケアマネジメント」の概念より狭いものとなっています。

・ 介護支援専門員は、定期的に利用者と面接を行い、居宅サービス計画の立案時やその他適宜サービス担当者会議を開き、利用者の状態の把握とサービスの調整、評価を行っていきます。

[設問] 在宅チームケアについて正しい説明を一つ選べ。

イ チームケアを行うためには、チーム内での対等な協力関係が必要である。

ロ チームケアでは、専門職に限った連携が必要となる。

ハ チームケアのメンバーが療養者の情報を共有することは重要ではない。

ニ チームケアのメンバーには原則として医師は入らない。

                         正解 (

[設問] 狭義のケアマネジメントとは何か? 最もふさわしいものを以下より選べ。

イ 医療機関からの情報の入手

ロ 療養者と家族へのサービスの調整

ハ 訪問看護ステーションへの紹介

ニ 療養者の苦情処理                          正解 (


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在宅看護論(7)(在宅看護の特徴) [在宅看護論]

4)家族介護者の理解と健康支援

(1)家族介護者のアセスメント

家族のアセスメント.png

・ 家族介護者のアセスメントは、次の視点から行います。 「療養者が必要としているケア」 「家族介護者が実施しているケアの内容や量と介護負担感」 「家族介護者の背景」 「家族介護者の健康・生活問題」 「家族構成、家族関係、他の家族員の理解や協力の有無」 「フォーマルまたはインフォーマルサポートの状況」

(2)家族関係の調整

・ 家族システム理論では、家族を 「家族成員は互いに循環的・円環的に影響を及ぼし合う」 「家族全体の力は単なる総和以上のもの」 ととらえます。

・ 家族の中に健康問題を持つ家族成員が生じると、家族成員それぞれの役割や生活の再調整が必要となります。

・ 援助者は、家族成員がどのように影響を及ぼしあっているかを捉え、家族の中でおこる悪循環や問題があれば、調整を行う必要があります。

・ 家族関係の調整が必要な場合とは、家族成員の1人に介護の負担が偏っている、療養者の希望と家族の意向に乖離が生じている、家族成員の間で介護に関する考え方に違いがある、暴力が生じている場合などです。

・ 家族関係の調整としては、家族成員がお互いの感情や関心を伝え合うことができるようにします。 そして、家族の労をねぎらい、努力を褒める、社会資源の導入を検討するなどがあります。

(3)介護方法の指導

・ 病院から在宅療養に移行する場合は、在宅で必要な介護知識・技術の指導は入院中に行われることが望まれます。

・ 在宅療養を行うためには、療養者と家族が、生活全般(食事、排泄、入浴、寝衣交換、体位交換など)や医療処置(経管栄養法や膀胱留置カテーテル、人工呼吸器などに関連するケアなど)、病状、健康管理、リハビリテーションの知識・技術を習得することが必要となります。

・ 指導においては、療養者・家族の理解度や知識・技術の習得状況を把握しながら、療養者・家族が実施可能な方法をともに考え、療養者・家族の持つ力が発揮できるような方向で援助を行うことが重要です。

家族への説明.png

・ 訪問看護では、施設看護と違い、24時間援助できないので、予防的な視点から指導を行うことが必要となります。

(4)家族介護者の健康

・ 在宅での看護においては、療養者のみではなく家族成員の健康状態や発達課題にも目を向けることが大事です。

・ 家族介護者自身も慢性疾患を抱えていたり、高齢であったりする場合もあります。また、介護者、特に主介護者は、睡眠不足、人間関係上のストレス、家事の負担などから健康問題を生じやすくなっています。

・ 家庭介護者の健康管理に向けた援助としては、訪問時に介護者の話を傾聴すること、介護の工夫や食事・運動方法の指導、社会資源の導入、レスパイトケアの活用などがあります。

[設問] 家族システム理論について正しいものを一つ選べ。

イ 一人の家族メンバーの変化は家族全体に影響する。

ロ 家族一人一人は社会とつながらないが、家族全体ではつながっている。

ハ 家族は維持しようとする力のみを持つ。

ニ 家族がまとまってもその力は、家族のメンバーを合わせた以上のものにはならない。

                                   正解 (


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在宅看護論(6)(在宅看護の特徴) [在宅看護論]

(4)閉じこもりの防止

とじこもり.png

・ 閉じこもりの要因は、歩行障害、視聴覚障害、尿失禁などの身体的要因、うつ状態や意欲の低下、転倒への恐怖心など心理的要因、家屋の構造上の問題や道路の不整備、介護者の不足などの環境要因が複合的に影響しています。

・ 閉じこもりの予防には、「家庭内での役割が持てるようにする」 「生活リズムを整える」 「活動しやすいように環境を整える」 「地域や近隣住民との交流が持てるようにする」 「外出を援助する」 「社会資源を活用する」 などの対策法があります。

(5)虐待の防止

・ 我が国では、1999年に「児童虐待の防止等に関する法律」が施行され、国および地方公共団体に、早期発見、人材確保、通告義務などの責務が課せられました。

・ 虐待は 「身体的虐待」 「心理的虐待」 「性的虐待」 「養育・介護の放棄または怠慢」 の大きく4つに分類され、高齢者虐待の場合はこれに 「経済的虐待」 が加わります。

・ 家庭訪問の際は、療養者に不自然な外傷はないか、皮膚や衣類などが不潔でないか、怯えて緊張していないか、家族・介護者が療養者を無死したり、責めたりしていないかなどの虐待の発生を疑う徴候を観察し、虐待の予防・早期発見につなげることが重要です。

・ 虐待のリスクを予測するために、介護者・養育者の身体的・精神的・経済的負担、元々の人間関係、介護や育児協力者の有無などを把握していきます。

もうしません.png

・ 虐待がおこりそうだと予測される、あるいは虐待がおこっている場合には、被虐待者の保護や家族関係の調整に行き、社会資源を活用し、介護者・育児者が休息できるように援助したりするなどのタイムリーな援助が必要となります。

・ 虐待の予防、早期発見・対応は地域の関係機関が連携し、ネットワークの中で援助していくことが重要です。

(6)災害時の被災予防

・ 高齢者や子供、病気を抱えた在宅家族は「災害弱者」であり、災害の犠牲になりやすくなっています。

・ 平常から 「少なくとも3日分の非常食や水・医薬品、電源、携帯燃料」 酸素療法や人工呼吸器を使用している家庭では、「携帯酸素ボンベ・人工呼吸器の内部バッテリー、予備の機器、手動式蘇生バック、機器に付属する消耗品」などの備えが必要となります。

・ 人工透析者、インスリン自己注射、在宅酸素療法、人工呼吸器装着などは、平常から主治医や医療機器業者、市町村の防災担当者と医薬品・医療の確保方法を相談するように助言します。 また、連絡先の一覧をわかるところに貼っておくようにします。

・ 医療機器は定期的に保守点検し、災害時に使用できるよう家族・近隣の協力者に指導します。

箪笥の転倒.png

・ 災害時に療養者をどうやって運び出すか、避難場所・方法を家族と確認しておくことが必要です。

・ 1人暮らしの高齢者の場合、災害時に家族のだれと連絡をとるのか、近隣の協力員は誰にするかなど、あらかじめ取り付けておけるように援助します。

(7)介護力不足の予測

・ 家族の小規模化に伴い、家族だけで介護を担うことが困難になってきています。

・ 援助者は、家族の介護力を判断・評価し 「介護力を向上させる」 「介護力の不足を補う」 方向での援助を行います。

・ 家族介護者の介護力が低下すると、療養者のケアが不十分となるため、家族介護者の疲労や健康問題に対して予防的に援助を行うことが重要です。

・ 家族の介護力のアセスメントは 「家族の理解力・判断力」 「介護知識・技術」 「体力・健康状態・介護負担」 「就労の有無」 「療養者と主介護者との関係」 「他家族員の協力」 「介護意欲」 「社会資源の活用」 といった視点から行っていきます。

・ 家族の介護力を高めるために介護知識・技術の教育、家族関係の調整、社会資源の活用の仕方の指導、精神的サポートなどの援助を行います。

・ 家族の負担軽減のため、ショートステイの利用などによるレスパイトケアサービスの拡充が望まれています。

[設問] 虐待の防止について正しい文を一つ選べ。

イ 1999年に施行された「児童虐待の防止などに関する法律」が施行され、国および地方公共団体に、早期発見、人材確保、通告義務などの責務が課せられた。

ロ 高齢者虐待は「身体的虐待」と「心理的虐待」の二つに分類される。

ハ 介護者と信頼関係を保つため、家庭訪問で療養者に虐待を受けている徴候がないかを観察するのは避けるようにする。

ニ プライバシーの問題があるので、介護者の経済的負担などには干渉しないようにする。

                                        正解 (

[設問] 在宅療養者の介護について、以下の文で正しいものを一つ選べ。

イ 介護は家族だけで行うように指導する。

ロ 援助する場合、家族には全力をあげて介護をやるように精神面で指導する。

ハ 家族介護者の披露や健康問題に対して、予防的に援助を行うことも重要である。

ニ ショートステイの利用などのレスパイトケアサービスは一過性の効果しかないので、意義は少ない。

                              正解 (


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在宅看護論(5)(在宅看護の特徴) [在宅看護論]

2)病状・病態変化の予測と予防

(1)病状経過の予測

・ 寝たきりへの予防、合併症の悪化防止のために身体面のアセスメントを行います。

・ アセスメントのためには、身体の視診、触診、打診、聴診による観察を行い情報をとる必要があります。

・ 急変時には、バイタルサインのチェックが必要です。

・ 急変時の対応策も前もって整えておく必要があります。

(2)感染防止

在宅免疫低下.png
在宅感染看護.png

3)生活の中で起こる問題の予測と予防

(1) 転倒防止

・ 転倒は、在宅でも施設入所でも、高齢者によくおこる事故で、死亡原因の上位を占めています。

・ 高齢者の転倒は、骨折や寝たきりにつながる大きな要因です。

・ 転倒による骨折は約10%に発生し、大腿骨頸部骨折、橈骨末端骨折、上腕骨頸部骨折、椎体圧迫骨折が多くみられます。

・ 高齢者の転倒の要因には、身体的要因と環境要因があり、予防のためのケアや指導は、身体的要因対策として 「筋力やバランス感覚を高める運動プログラムを行う」 「適切な衣類や履物の選択や動作方法の指導」 を、環境要因対策として「家の中のバリアフリー化を進める」 などを行うことが必要です。

(2)窒息の防止

・ 高齢者は咀嚼・嚥下機能の低下のため、食物などを誤嚥して、容易に窒息をおこします。

・ 特に脳血管疾患、パーキンソン病などの脳神経系の疾患があると、誤嚥をおこしやすくなります。

・ 高齢者の誤嚥・窒息の予防法としては、「食事時には十分覚醒させる」 「食前に嚥下体操を行う」 「対象者にあった食事の形態を選ぶ」 「誤嚥しにくい姿勢をとる」 などがあります。

・ 窒息がおきた際は、以下のような初期の応急処置が重要です。「意識・呼吸・循環状態の観察・判断」 「救急車を呼ぶ」「咳を続けさせる」 「異物を指で除けそうな時は速やかに除く」 「背部叩打法、上腹部圧迫法などを試す」 「掃除機での吸引」 「心肺蘇生法」

・ 乳児の場合、うつぶせ寝や布団・毛布での鼻塞ぎが多く、幼児の場合アメ玉やピーナツなどの豆類の誤嚥が多くみられます。

・ 乳幼児の場合、うつぶせ寝を避ける、ベッド内にタオルやぬいぐるみなどを置かない、誤嚥の原因となりやすいピーナツなどの豆類は与えないなどの予防策が必要です。

(3)熱傷の防止

家事.png

・ 火災や熱傷の予防には、「調理中に袖口の広い衣服を着ない」 「台所に消化器を備えておく」 「火災報知器を設置する」 などがあり、高齢者とその家族への指導を行います。 自治体によっては、高齢者世帯または1人暮らしの高齢者に対して火災報知器、電磁調理器具、消化器などの貸与を行っています。

・ 健康に問題のある高齢者は、痛覚や温度覚が鈍っているため、熱湯に足をつけても気づかず、熱湯熱傷をおこしやすくなります。 湯沸かし器のお湯の設定温度を下げるなどの対策で予防する必要があります。

・ 高齢者は、電気あんかや湯たんぽ、懐炉などでの低温熱傷もおこしやすいので、長時間の使用をしないようにしてもらい、タオルを巻いて直接肌に当たらないように指導します。

・ 子供の熱傷は、ポットや炊飯器の蒸気、ストーブやアイロン、コンセントに触れる、電気あんかや湯たんぽによる低温熱傷、熱い食べ物や飲み物をひっくり返すなどの事故によっておこります。 子供の年齢に応じた予防対策が必要です。

[設問] 在宅療養患者でおこることのある疥癬の原因となるのはつぎのどれか?

イ ヒゼンダニ  ロ ササラダニ  ハ コナダニ  ニ ニキビダニ

                           正解 (

[設問] 高齢者の転倒でおきる骨折で寝たきりの原因となりやすいのは次のどれか? 一つ選べ。

イ 橈骨末端骨折  ロ 上腕骨頸部骨折  ハ 頭蓋骨骨折  ニ 大腿骨頸部骨折

                          正解 (

[設問] 誤嚥をおこしやすい高齢者の疾患は次のどれか?

イ 狭心症  ロ パーキンソン病  ハ 肺気腫  ニ 肝硬変

                          正解 (

[設問] 住宅火災での死者で多いのは次のどれか?

イ 乳幼児  ロ 幼児  ハ 更年期の女性  ニ 高齢者

                          正解 (



 


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在宅看護論(4)(在宅看護の特徴) [在宅看護論]

3. 在宅看護の特徴

1) 生活の自立支援

(1)役割の確立

役割の再調整.png

(2)自己決定

・ 自己決定とは、療養者自身が自分で治療や療養、生活に関することについての意思決定を行うことです。 療養における自己決定には、自立への支援が欠かせません。

・ 自己決定を支える支援には、「公正な情報の提供と療養者・家族の理解の確認」 「意思決定に際しては、他から強制されることがないようにすること」 「状況の変化に応じて、意思決定内容の確認をする」 「療養者と家族の独立した意思決定の促しを行う」 ことなどが重要となります。

・ 自己決定されるものは、療養の方針、療養場所の選択、利用するサービスの内容、さらに医療処置管理の受療、延命治療の選択などがあげられます。

・ 療養者と家族との人間関係や介護力によっては、必ずしも自立的な意思決定がなされないことがあります。 特に療養場所の選択は家族が決定することが多くなるので、療養者の意向を尊重できるような家族調整が必要となります。

自己決定.png

(3)セルフケア

・ セルフケアとは、生命、健康、安寧の維持を目的とし、自己の療養上に必要な行為を自分で行う能力のことです。 そして、その行為は意図的に行われ学習されるものです。

・ 家族の機能の中のヘルスケア機能とは、具体的には健康問題が生じた時に適切に対応することと、日常生活における保健習慣や健康なライフスタイルを維持向上させることです。

・ 要介護状態や医療依存度が高い療養者でも、なるべく残存機能を活用したセルフケアを確立するための援助を行う必要があります。

(4)自立支援

・ 要介護者の自立支援には、日常生活動作(ADL)や手段的日常生活活動(IADL:instrumental activity of daily living)の維持や回復は欠かせない援助となります。

・ 療養者の「できる活動」と「している活動」との違いを把握して、残された能力を最大限に発揮させ、日常生活が自立できるように援助していきます。

・ 日本家屋は、要介護者が療養生活を営む上では多くの障害があります。たとえば、段差、浴室やトイレの使いにくさ、廊下の狭さなど安全性、利便性に問題があります。 これらの問題を解決するため家屋改造の援助も重要な自立支援となります。

トイレ支援.png

・ 要介護状態であっても、地域社会の一員として様々な活動に参加し、ある部分では自立した生活ができるよう支援していきます。

・ 支援の過程では、できるだけ形成されてきた人間関係、価値観、ライフスタイルを尊重していきます。

(5)物品の利用と工夫

・ 在宅看護には、施設内看護と異なり、設備、機材、スタッフも限られていますので、看護援助には工夫が必要となります。

・ 在宅看護では、かかりつけ医との連携を図り、医療処置に必要な衛生材料や薬剤などを療養者の居宅に配置しておくようにします。

・ 医療依存度の高い療養者の場合、医療機器の供給や管理について関係機関との調整をおこない、トラブル時の対応体制を明確にしておく必要があります。

・ 介護保険制度などでは、ベッドや車椅子などの福祉用具の貸与やポータブルトイレなどの購入費、てすりの設置などの住宅改善費の援助も受けられるので、それらのサービスを利用できるように援助します。

(6)権利擁護(アドボカシー)

・ 権利擁護は人々の人権を守るための活動であり、元々、アドボカシーは「権利」「擁護」「唱道」などと訳される言葉です。

・ 在宅看護の対象者は、自ら権利を守る能力に欠けていることが多く、家族や社会による権利擁護の支援も必要となります。

・ 権利擁護の対象の基本となるのは、療養方針と利用サービス選択の自己決定権です。

・ 看護者および関係者には、プライバシーの保護のため守秘義務があります。

・ 認知症や要介護の高齢者の権利を保護するために成年後見制度があります。 また、判断能力が一定以上ある人に対しては、生活支援員が金銭管理やサービスの利用援助を行う地域福祉権利援護事業も実施されています。

[設問] 療養者の自己決定が家族によってなされることが特に多いのは、次のどれか? 一つ選べ。

イ 療養の方針  ロ 療養場所  ハ 利用するサービスの内容  ニ 医療処置管理の受療

                                     正解 (

 

 在宅看護論(9) (在宅における生活支援の方法と技術)へ ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-06-04

 

 


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