在宅看護論(3)(看護の継続性) [在宅看護論]
2)施設内看護と在宅看護の機能の相違と特徴
(1)場の違いによる看護機能の特徴
・ 1992年の医療法の改正により「医療を受ける者の居宅」が医療提供の場に位置づけられました。
・ 施設内看護を提供する施設は病院であり、急性期の治療を行う一般病院、慢性期の療養治療を行う療養型医療施設、ターミナル期の医療を提供する緩和ケア病棟などがあります。
・ 在宅看護を提供する機関には、訪問看護ステーション、病院の訪問看護部、保健所と市町村保健センターがあります。
・ 病院と療養型医療施設で行う施設内看護では治療が優先され、医師や他部署の専門職とのチーム医療によって提供されますが、在宅看護では、他機関の専門職や住民・ボランテイアとも連携をとって、協同して活動することになります。
(2)生活の場の選択条件
・ 入院施設には、病院と有床診療所があり、病床の種別は急性期の治療を行う一般病床と、慢性期の治療を行う療養病床、精神病床などがあります。 入所施設には、介護老人保健施設、介護老人福祉施設、介護療養型医療施設があります。 在宅として取り扱われる施設には、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、特定施設(有料老人ホーム)などがあります。
・ 医療依存度の高い療養者の在宅療養を支える場合、在宅療養への移行には、「療養者の意思決定」「家族の意思決定」「家族の技術習得」「医療サービスの整備」「保健・福祉サービスとインフォーマルサポートなどの支援体制の整備」「経済的状況の調整」が必要です。
・ 在宅療養の継続には、家族の介護力が必要になることから、家族の健康維持や介護技術を身につけるための指導が必要です。 また、介護力が乏しい場合は、在宅サービスの利用や施設の利用を検討することになります。
[設問] 医療を行う場を規定しているのは、次のどれか?
イ 医師法 ロ 医療法 ハ 薬事法 ニ 介護保険法
正解 (ロ)
[設問] 医療を行う場として認められているのは、病院、診療所、介護老人保健施設の他にどんなものがあるのか? 二つ選べ。
イ 医療を受けるものの居宅
ロ 学校の校庭
ハ 助産所
ニ 医療を受けるものが倒れた公園
ホ 医療を受けるものが倒れた路上 正解 (イ、ハ)
在宅看護論(2)(看護の継続性) [在宅看護論]
2. 看護の継続性
1)施設と在宅を結ぶ看護
(1)退院計画
・ 米国病院協会のガイドラインには、退院計画とは「患者とその家族が、適切な退院後のケアプランをつくるのを助けるために、利用可能でなくてはならない、部門を越えた病院全体としてのプロセス」と定義されています。
・ 退院計画の過程は、「退院後にケアが必要となる患者を早期に特定する」→「患者および家族への教育」→「患者・家族のアセスメント」→「計画の策定」→「計画の調整と実施」→「退院後のフォローアップ」からなるものです。
(2)退院指導
・ 退院指導とは、退院する患者とその家族に対して、退院後の生活が安心・快適に送れるように、入院中に看護職や関係者によって指導することです。
・ 指導内容には「日常生活について」「疾患について」「医療処置について」「社会復帰、社会資源の活用について」などがある。
・ 退院指導は、患者や家族の理解度、能力などに合わせて、わかりやすい言葉で、実習など取り入れて行うと効果的です。
(3)継続看護を担う部署と職種
・ 継続看護では、病院の病棟から外来へ、病院から在宅や福祉施設への移行支援だけでなく、在宅から病院へ、施設から在宅や病院への移行支援も重要です。
・ 地域連携室、地域医療室、看護相談室などが病院内に設置され、継続看護を担う部署とされます。それらの部署は診療所、在宅介護支援センター、訪問看護ステーション、福祉施設などと連絡をとり、連携を図ることになります。
・ 病院内での継続看護を担う職種としては、退院調整看護師が配置され、病棟看護師との連携により退院調整を行います。
・ 生活や経済的な問題に対しては、社会福祉士やソーシャルワーカーが対応することになります。
・ 在宅での継続看護は在宅介護支援センターが行い、在宅介護支援専門員が介護保険制度の活用を中心に関係機関との連携、サービスの調整を図ることになります。
・ 訪問看護ステーションの看護師は、病院の受け持ち看護師と看護サマリーや病棟訪問などで連携をとり、継続看護を実践します。
(4)施設と地域の連携システム
・ 病診連携とは、病院と地域の診療所との施設の共同利用や検査依頼、患者の紹介などを行う連携システムです。在宅看護に関わる内容では、患者の退院時にかかりつけ医の紹介や治療方針、再入院時の調整を図っています。
・ 地域ケアシステム
[設問] 退院指導に関して正しい説明を一つ選べ。
イ 退院指導とは、退院する患者とその家族に対して、退院後の生活が安心・快適に送れるようにするものである。
ロ 退院指導の内容には、医療処置については含まれない。
ハ 退院指導の内容には、日常生活についてのみとする。
ニ 退院指導は、専門用語を使い、間違いのないように伝える必要がある。
正解 (イ)
[設問] 退院後の患者の生活や経済的問題に対して主に業務を行うのはどれか? 一つ選べ。
イ 地域連携室
ロ 退院調整看護師
ハ 社会福祉士やソーシャルワーカー
ニ 在宅介護支援センター 正解 (ハ)
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在宅看護論(1)(在宅看護の対象者とその生活) [在宅看護論]
1. 在宅看護の対象者とその生活
1)在宅看護の対象者
(1)疾病を持つ人と家族
・ 介護を要する人、または継続して療養が必要となる人が患っている疾病として多いのは、脳血管疾患、糖尿病、心疾患、癌などの生活習慣病となっています。 その他に高齢者には骨粗鬆症や外傷による骨折や認知症が多くみられ、壮年期では神経難病や癌が多くなります。
・ 在宅看護の対象者は、高齢者が多くを占めます。
・ 健康状態は、疾病の回復期、慢性期、リハビリ期、終末期まで、幅広いのが特徴です。
・ 核家族化と少子高齢化により、家族規模が小さくなり、平均世帯人員は1995年以降3人を下回っています。 特に高齢者の夫婦のみの世帯、単独世帯が著しく増加しています。
(2)障害を持つ人と家族
・ 障害者は、身体障害者福祉法で身体障害者、知的障害者福祉法で知的障害者、精神保健福祉法で精神障害者が規定されています。
・ 2006年の18歳以上の在宅の身体障害者数は3,483,000人と推計されています (身体障害者実態調査、厚生労働省)。 種類別では、肢体不自由がトップで50.5%、心臓、肺、腎臓などの内臓の機能障害による内部障害が30.7%、聴覚言語障害が9.8%、視覚障害が8.9%となっており、近年内部障害が増加しています。
・ 在宅の知的障害児(者)数は、419,000人(2005年現在)、精神障害者保健福祉手帳の取得者数は558,475人(2007年)です。
・ 1998年からヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害(以下エイズ)が身体障害者の範囲に取り入れられました。
・ 在宅看護の対象となる障害者に多い疾患は、脳性小児麻痺、筋ジストロフィー、脳梗塞後遺症、閉塞性肺疾患(以下COPD)、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症、エイズなどがあります。
・ 障害者の家族は、長期間にわたって介護を担っていることから、健康管理などの援助の対象者になります。
(3)生活自立が困難な人と家族
・ 生活自立が困難な人とは、疾病や障害あるいは老化により自立が困難な要介護者で、何らかの援助を受けることで自立した生活を営むことができる状態の人々をさします。
・ 介護保険では、要支援1、2や要介護1、あるいは寝たきり度のランクJ、ランクA、痴呆度のランクIあるいはIIの人達です。
・ 生活の状態では、1人暮らしや高齢夫婦世帯の場合は、療養支援とともに生活支援が不可欠になります。
・ 支援が必要となる疾患として多いのは、脳血管疾患の後遺症、神経筋難病、精神障害、軽度の認知症、腰痛や膝関節痛などです。
・ このような状態の人達には早期に適切なセービスや支援を導入して生活自立の維持を目指す必要があり、家族に対してもその方向での指導が必要となります。
2)対象者の生活
(1)生活様式と価値観
・ 適切な運動・身体活動は、生活習慣病の予防やストレスの解消に有効で、運動習慣者(週2回以上かつ1回30分以上の実施で1年以上持続した者)の割合は、男女とも20代と30代で低く、50歳以上では30%程度みられます。
・ 栄養状態は、エネルギーの過剰摂取が問題となる糖尿病や、脂肪のとり過ぎによる肥満、心疾患、また塩分のとり過ぎによる高血圧が問題となっています。
・ 社会生活のストレスによる壮年期のうつ状態や自殺が問題となっています。
・ 個人とその家族の生活は、環境、つまり地域の人口構成、地理的条件、サービス体制などの社会的条件や、その地域特有の生活習慣や信条、人間関係により、大きな影響を受けます。
・ 現代人の生活の価値観は、家の維持存続から、個人の幸福追求へと変化しています。
・ 高齢者とその家族の価値観の変化
[設問] 要介護状態の原因となる疾病で最も多いものを選べ。
イ 認知症 ロ 認知症 ハ 骨折 ニ 脳血管疾患
正解 (ニ)
[設問] 在宅看護における看護援助として最もふさわしいものを一つ選べ。
イ 療養者の日常的介護
ロ 療養者の食事や清潔援助
ハ 介護をする家族の精神的、身体的健康管理と介護負担の解消
ニ 療養者の服薬管理 正解 (ハ)
[設問] 国民栄養調査において、「運動習慣あり」と分類されるのは次のどれか?
イ 1回30分以上、週2回以上、1年以上運動を継続
ロ 1回30分以上、週1回以上、1年以上運動を継続
ハ 1回60分以上、週2回以上、半年以上運動を継続
ニ 1回60分以上、週1回以上、半年以上運動を継続 正解 (イ)
[設問] 2008年の調査で、運動習慣が最も少なかった世代は次のどれか?
イ 20~29歳 ロ 30~39歳 ハ 40~49歳 ニ 50~59歳
正解 (ロ)
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在宅看護論(9) (在宅における生活支援の方法と技術) ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-06-04
在宅看護論(13) (在宅における医療管理を必要とする人と看護) ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-06-07
在宅看護論(19) (在宅療養者の状態別看護) ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-06-11-1