小児看護学(35)(さまざまな状況にある子供と家族への看護) [小児看護学]
8)急性期にある子供と家族
(1)発熱時のアセスメントと看護ケア
(2)脱水時のアセスメントと看護ケア
・ 小児は体重に占める水分の割合が大きく、水分摂取量の減少や排泄量の増加で、容易に脱水になり電解質の異常を生じます。
・ 脱水の看護では、水分補給に努める。嘔吐がみられる時は、嘔吐の治まりをみながら水分を少しずつ与え、悪心がなくなれば十分に欲しがるだけ与えます。
・ 経口で水分を十分に摂取できないと判断したら、医師から経静脈による輸液の指示を得て、内容・速度に注意しながら施行します。 また、水分出納の記録を正確に行う必要があります。
・ 口唇・口腔粘膜などは乾燥して傷つきやすいので、清潔に留意し、ワセリンを塗布して保護します。
[設問] 乳幼児の特徴について、正しいものを一つ選べ。
イ 体重の割に体表面積が小さい。
ロ 筋肉層が薄い。
ハ 皮下脂肪層が多い。
ニ 熱を失いにくい。
正解 (ロ)
[設問] 乳児の脱水症が重度と判定されるのは、体重減少が何%以上減少したときか?
イ 3% ロ 5% ハ 7% ニ 10%
正解 (ニ)
小児看護学(34)(さまざまな状況にある子供と家族への看護) [小児看護学]
7)心身障害のある子供と家族
(1)心身障害の種類と定義
・ 障害者基本法第2条によると障害児(者)とは、「身体障害、知的障害又は精神障害があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう」と定義されています。
・ 障害の概念は、WHOの国際障害分類においては、「身体機能・構造と機能障害」 「活動および活動の制限」 「参加および参加の制約」 の3つのレベルで捉えられています。
(2)心身障害の受容
・ 子供と家族の障害の受け止め方には、障害のレベル、日々の生活環境、地域における人間関係、社会環境、教育環境などが相互に影響します。
・ 親は、子供の障害の原因を親自身の育児の不注意と関連づけて考え、罪悪感や自責の念を抱きやすくなります。
・ 障害のある子供のきょうだいも、家族の生活の変化や親の心理状態・関わりの変化、仲間の行動の変化などに影響を受けて受容する過程が変化します。
(3)経管栄養法
・ 吸綴や嚥下障害、意識障害などのため、経口での栄養摂取が難しい時に、カテーテルを通してミルクや流動物を消化管に入れる栄養法です。
・ 実施には、経鼻カテーテルを使用する時と消化管カテーテル(胃瘻・腸瘻)を使って入れる方法があります。
・ ミルクや流動物を注入する前には、胃内容物を吸引してカテーテルが確実に挿入されているか、消化残渣のの有無・量・性状を確認する。不消化残渣物の量が多い時、血液や胆汁が混入している時は医師に報告します。
・ ミルクや流動物を注入している時の体位は、嘔吐による誤嚥防止や幽門への流れをよくするために、ファウラー位、できるなら右側臥位をとります。
・ 流動物の注入速度は、通常20〜30分/1回量を目安にしますが、児の状態・注入量・注入回数により適宜調節します。
・ 皮膚にカテーテルを固定するため、かぶれを生じやすくなります。 子供に合ったかぶれにくいテープを使って固定を工夫するとともに、皮膚の保清に努めます。
[設問] 新生児の経管栄養で、経鼻胃管の長さの目安となるのは、次のどれか?
イ 耳朶から鼻の先端を経て剣状突起までの長さ
ロ 眉間から剣状突起までの長さ
ハ 鼻の先端から剣状突起までの長さ
ニ 大泉門から剣状突起までの長さ
正解 (ロ)
小児看護学(33)(さまざまな状況にある子供と家族への看護) [小児看護学]
(3)計画手術と緊急手術
・ 子供の手術では、緊急性の高いものと、予定を立てて計画的に手術に臨むケースがあり、前者を緊急手術、後者を計画手術といいます。
・ 緊急手術では、説明して理解を得る時間がないため、母子ともに心理的な準備ができずに手術に臨み、強い不安と動揺を余儀なくされます。 術後は、子供の発達に合わせてわかりやすい言葉で説明し、子供と家族の持つ不安の軽減を図ることが重要です。
・ 計画手術では、予め手術について子供にわかりやすく説明を行い、幼少児にもウソをついたりはしないようにします。
(4)日帰り手術
・ 近年、子供の日帰り手術が多く行われるようになり、子供と家族のQOLや入院期間の短縮にとっての利点が認められています。
・ 日帰り手術は、外鼠径ヘルニアや扁桃肥大、扁桃炎などが代表的な疾患です。 日帰り手術は、術当日の朝に入院し、同日夕方に退院、帰宅します。 そのため、術前に必要な諸検査を実施した上で、家族および子供には術前日から当日にかけての絶飲食などについて十分に説明します。
・ 日帰り手術後は、痛みや出血など、異常の早期発見のための観察点を説明するとともに、退院時に家庭での処置や食事、安静、入浴などの日常生活上の諸注意についてわかりやすく説明しておくことが必要です。
(5)子供と家族の準備状態の把握とプリパレーション
・ 子供は、手術前に不安になっている母親の気持を敏感に感じ取ります。 したがって、母親や家族の不安な気持をよく理解して不安の軽減に努め母親が少しでも落ち着いた気持で子供と接することができるように援助します。
・ 病室は、大部屋にして、子供同士の関係をつくるようにし、早期から入院環境に慣れることができるように努めます。
・ 麻酔医や手術室あるいはICUの看護師が病室を訪れて、子供と家族に直接説明することで、手術前後の不安感を和らげることができるように配慮する場合もあります。
(6)周手術期における子供の安全・安楽への援助と家族への援助
・ 共通する術前指示として絶飲食があります。 最終の水分摂取以降に誤って飲食することがないように注意します。
(7)退院への指導・援助と継続看護
・ 退院は、必ずしも、その疾患の全治を意味するわけではなく、次回の手術までの家庭での養育期間として、数ヶ月あるいは数年間を外来通院という形で継続していかなければならないケースもあります。
・ 手術によって、全治あるいは早期に全治が期待される場合は、創部の消毒、安静や食事、入浴、あるいは、外出や通園・通学など退院後の生活上の注意点について詳しく説明します。
・ 継続看護では、入退院を繰り返すことを余儀なくされる子供とその家族に対する入院中の看護と、退院後の外来を中心とした看護との連携が特に重要になってきます。
[設問] 予定を立てて計画的に手術に臨む場合、何というか?
イ 緊急手術 ロ 予定手術 ハ 計画手術 ニ 日帰り手術
正解 (ハ)
[設問] 入院期間の短縮や子供の家族のQOLにとって利点があるのは、次のどれか?
イ 緊急手術 ロ 予定手術 ハ 計画手術 ニ 日帰り手術
正解 (ニ)
小児看護学(32)(さまざまな状況にある子供と家族への看護) [小児看護学]
6)手術を受ける子供と家族
(1)子供の手術の特徴
・ 子供の場合には、先天性疾患の占める割合が高く、新生児期に緊急手術を必要とするケースが多くなります。
・ 手術を受ける子供の看護・ケアは、疾患の種類によって異なります。
・ 手術を受ける子供の特徴として、手術に対する反応がその発達段階によって異なることです。 子供は心理的にも、手術に対する家族、特に母親の精神状態に大きく影響を受けます。
・ 小児の手術は、侵襲の小さいものでも、全身麻酔下で行われます。 そのため、全身麻酔に伴う呼吸抑制、脱水や電解質異常、低体温などの合併症がおきる危険性があります。
(2)手術を要する健康障害と手術の時間
・ 乳幼児期に手術が行われる疾患としては、外鼠径ヘルニア、肥厚性幽門狭窄症、腸重積症、先天性胆道閉鎖症、骨髄移植、先天性心疾患などがあります。
・ 幼児期以降に手術が行われる疾患としては、扁桃肥大および扁桃炎、唇裂・口蓋裂などの形成外科系疾患、先天性心疾患などがあります。
[設問] 先天性心疾患は新生児の約何%の頻度か?
イ 0.1% ロ 0.5% ハ 1% ニ 3%
正解 (ハ)
[設問] ファロー四徴症で四徴とされるのは、次のどれか? 二つ選べ。
イ 左心室肥大 ロ 右心室肥大 ハ 肺動脈狭窄 ニ 大動脈狭窄 ホ 心房中隔欠損
正解 (ロ、ハ)
小児看護学(31)(さまざまな状況にある子供と家族への看護) [小児看護学]
5)先天的な問題をもつ子供と家族
(1)先天異常の種類と特徴
・ 先天異常には、胎児期の死亡や発育遅滞、先天奇形、機能・知能障害、生殖障害などがあります。
・ 先天異常の原因は、遺伝要因と環境要因との相互作用によるものが約60%、遺伝子疾患および染色体異常が約30%、環境要因が約10%です。
・ 先天異常の頻度は、およそ5〜10%と推定されており、そのうち形態異常を示すものを奇形といいます。
・ 妊娠期間における異常の発生時期によって、胚芽病と胎児病とに分けられます。 前者は妊娠初期(3ヶ月あるいは12週までの胎芽期)での異常の発生、後者はそれ以降のものをいいます。
・ 出世前診断では、羊水検査、臍帯血、胎児血検査による遺伝子・染色体検査、超音波検査、母体血清マーカー試験(AFP)などによって様々な出生前診断が可能となっています。 さらには、体外受精での受精卵診断や胎児治療も行われるようになっています。
(2)家族の健康障害への理解と子供の受容に対する看護
・ 出生前診断を行う場合、疾患の種類や症状、成長・発達などに関しての正確な情報の提供と説明が行われ、家族が十分に理解できるようにする必要があります。
・ 早期からの子供との面会、抱っこや触れるなどのスキンシップを促すことが大切です。 しかし、あくまでも両親の気持を十分に配慮、尊重した上で、焦らずにその意思を確認しながら進めていかなければなりません。
(3)子供の養育に必要な家族の心理的準備とケア技術獲得への援助
・ 家族が子供を養育するにあたって看護師は、受容に至るプロセスの各段階で両親の理解を確認・調整し、医師による説明の場を設ける。 そして、必要に応じて説明を加えるなどの調整役を果たし、精神的なサポートを行うことで家族の心理的準備を援助します。 また、近年では、遺伝相談の場や遺伝カウンセラーとして看護職が臨床心理士など、他のスタッフと協力してサポートにあたることが増えています。
・ 子供に異常があるとわかった後の両親、特に母親への精神的なサポートは、長期的な視点に立って取り組む必要があります。 子供の病気の原因に対する自責の念は、医療者をはじめ他者に向けられることもありますが、両親との信頼関係を築き、感情の表出ができるような関係づくりに努めます。
[設問] 受精後3週から12週(8週)までを何と呼ぶか? 下より選べ。
イ 受精卵期 ロ 胚芽期 ハ 胎芽期 ニ 胎児期
正解 (ハ)
[設問] 胎児期の造血は、主にどこで行われるか?
イ 骨髄 ロ 卵黄嚢 ハ 肝臓 ニ 膵臓
正解 (ハ)
小児看護学(30)(さまざまな状況にある子供と家族への看護) [小児看護学]
(3)子供の身体・情緒・発達面を考慮した日常生活への援助
・ 子供が寂しさや孤立感を克服できるように、看護師はできるだけ頻回に訪室し傍にいて話を聞き、遊びなどを一緒に行う機会をつくります。
・ ガラス窓越しに外が見える、好きなおもちゃが置いてあり1人でも遊ぶことができるなど、寂しさを緩和できる環境を整えます。
・ 家庭、地域、学校での生活との連続性を保たせるよう工夫します。
・ 子供の理解に応じて、隔離の必要性、清潔の大切さや感染予防の知識について説明し、子供自身で行える部分を増やせるように指導します。
・ 易感染状態にある子供は、出血傾向に気をつけながら、含嗽や歯磨きなど十分な口腔ケアを行います。
(4)家族の面会・付き添い時の指導と支援
[設問] 隔離された子供の日常生活への援助で正しいものを一つ選べ。
イ 隔離された子供の場合、看護師の訪室はできるだけ控えるようにする。
ロ 隔離された子供の場合、学校や家庭、地域との連続性を保つのは難しいことを覚悟する。
ハ 子供の理解に応じて、隔離の必要性、清潔の大切さなどについて説明する。
ニ 出血傾向がある場合、含嗽や歯磨きは禁止とする。
正解 (ハ)
小児看護学(29)(さまざまな状況にある子供と家族への看護) [小児看護学]
4)隔離が必要な子供と家族
(1)隔離の目的・方法
・ 隔離には、他の子供への伝播を防ぐ目的で行われる隔離と、自身が易感染状態のために感染源から守るために行われる逆隔離(清潔隔離)があります。
・ 院内感染の防止を目的に、隔離のための陰圧室、清潔隔離のための陽圧室といった空調設備も普及してきていますが、まだ限られていますので、環境の浄化、感染経路の遮断への努力が必要になります。
・ 汚染の疑いのある寝具、排泄物、検査検体などは、消毒や滅菌処理を行います。 消毒剤抵抗菌の出現も定期的に検査を行い、機械器具の消毒や殺菌処理を適切に行えるようにします。
・ 親や家族、医療者は、隔離室への出入り時には手洗いを励行し、必要に応じてガウン、手袋、マスクを着用して、媒介者にならないように気をつけます。
・ 紫外線殺菌灯が備えられている隔離室であれば、ガウンを2回以上使用する時は、その間、殺菌を行います。 紫外線殺菌灯の備えがない時は、デイスポーザブルのガウンを使用することが望ましいのですが、それが難しい時はガウンテクニックをしっかり行って対応します。
・ 隔離室で使用する体温計、聴診器、血圧計、膿盆などの物品・器具は隔離室専用としておきます。
・ 隔離室に持ち込んだ玩具類を隔離室から外へ出す時は、所定の消毒処理を行う必要があります。
(2)身体的・心理社会的影響
・ 家族や医療者のマスク、ガウンの着用や隔離操作があると、日常と異なるため、乳幼児では不安やストレスを生じることがあります。
・ 隔離室によっては、ガラス張りなどでプライバシーを守るのが難しい時があります。 そのため、学童高学年や思春期の小児が入室する時は、スクリーンやカーテンなどの使用を考慮する必要があります。
[設問] 清潔隔離(逆隔離)の対象となる疾患を、一つ選べ。
イ 流行性耳下腺炎 ロ 水痘 ハ 麻疹 ニ 白血病
正解 (ニ)
小児看護学(28)(さまざまな状況にある子供と家族への看護) [小児看護学]
(3)動けない子供と動けるのに動いてはいけない子供のストレス対処への支援
・ 全身の安静が必要なのか、身体の一部の固定が必要なのか、どの年齢で、どの発達段階にいるのかを適切に評価・判断する必要があります。
・ 子供の不安を軽減するために、部屋の飾り付けを工夫し、自由に手に取り見ることのできる絵本やおもちゃを備えて、動ける範囲内で遊んで感情を出すことのできる環境を整えます。
・ 乳児には、感覚器官を刺激するおもちゃなどを使って話しかけながら遊び・微笑み返し・喃語に応えるようにします。
・ 幼児の場合
・ 学童期・思春期には、生活上の意思決定や参加を促して仲間との助け合いの機会を設けます。
・ 保育者や家族との密な関わり、仲間との交流を図り、子供が寂しさや疎外感を軽減できるようにします。
・ 動けるのに動いてはいけない子供は、日頃は自分でできることを他の人に頼まなければならないことや、動きたい衝動を抑えなければならないので自己コントロール感を失い、葛藤を抱きやすくなっています。 子供の理解に合わせて、活動制限の目的、部位、制限期間の目安を説明して、子供の自律感を保てるようにします。 また、活動制限の目的に応じて固定部位・固定時間・固定期間を最小にする工夫を検討します。
・ 筋力低下や関節可動域の障害などで動けない子供は、理学療法士や作業療法士との連携の下に、筋力低下や関節拘縮を予防するリハビリテーションを日常生活動作の中に取り入れた遊びを展開できるようにします。
(4)子供の日常生活に関わる家族への支援
[設問] 身体的な活動制限がかかっている子供への支援で、正しいものを、一つ選べ。
イ 部屋の内装はモノトーンで、飾りつけなどは避けるようにする。
ロ 乳児には、おもちゃなどを使って話しかけながら遊び、ほほ笑み返しなどを行う。
ハ 幼児期には、退行を避けるために、キャラクターを使った「ごっこ遊び」は行わせない。
ニ 学童・思春期には、劣等感がめばえやすいので、他との交わりは避けさせる。
正解 (ロ)
小児看護学(27)(さまざまな状況にある子供と家族への看護) [小児看護学]
3)活動制限が必要な子供と家族
(1)活動制限の目的
・ 臓器への負担を軽減して機能の回復を促進するために、治療の一環として身体の安静を目的にベッド上・室内・病棟内など行動範囲や運動量の制限が行われます。
・ 活動制限を必要とする主な疾患には、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、心筋症、細菌性心内膜炎、急性肝炎、増殖網膜症などがあります。
・ 体重の負荷で軟骨・骨組織を圧迫するのを防いで造骨作用を促す、あるいは整復・変形の予防や矯正の目的で固定が行われます。 主な疾患としては、リーメンビューゲル法やギプス固定、牽引の治療が行われる先天性股関節脱臼、ペルテス病、骨折などがあります。
・ 手術後の創部の安静保護、治療上必要なカテーテルやドレーン類の抜去を防ぐ目的で行われます。
(2)身体的・心理社会的影響
(A)乳児期
・ 活動制限や固定が長期に及ぶと、身の回りにあるものをつかみ、口に入れて試し、吸い、這い回って探索し、学習する経験を失うこととなります。
(B)幼児期
・ 幼児前期の子供にとって活動制限は、子供の探索世界を狭くし、他児とのやりとりの機会を少なくし、保育者との相互調整を学ぶ機会を奪い、子供の自律・自己統制能力などを喪失することにつながりかねません。
・ 幼児後期の子供は、ひたすら遊びに邁進し、熱中して想像力を膨らませ、好奇心、探求心を貪欲に満たしながら社会規範を学ぶなどの経験を積み重ねています。 自発的な活動を常に制限される、あるいは遊びを禁止され罰せられることで生き生きとした自発性を抑圧し、罪悪感を強める危険性があります。
(C)学童期
(D)思春期
・ 真剣に自分に関心を向け、主観的・自己中心的なものの考え方をしながら、親子の分離や自己同一性の獲得をする途上です。 不安や不満、怒りや絶望、焦りを克服している時期の活動制限は、これらの感情を強め、ストレスを増し、自暴自棄や無気力を生じかねません。 しかし、活動制限や固定で生じたストレスに対処し、葛藤を乗り越えた時には、自分自身の健康管理法を身につけ、自信がつき、友人・家族、日常生活の価値を再認識する機会にもなります。
(E)小児の全時期に共通する影響
・ 長期に及ぶ臥床や同一部位の固定は、不適切に固定されたりケアが不十分な時は、皮膚の損傷・循環障害・神経麻痺・筋力の低下や関節障害などを生じる危険があります。
・ 子供は、活動して遊び、親や他児と関わることで感情や衝動の調節を行っています。 活動制限は、ストレスを増し、子供のために保育者や家族にも危機を生じる可能性があります。 一方、これまでの日常生活で当然のことであった家族のサポートや対処法の価値を見直し、絆を強め、新たな対処法を見いだし、互いへの思いやりや自信をつける機会にもなるのです。
[設問] 遊びに熱中し、想像力を膨らませ、好奇心、探究心を貪欲に満たしながら社会規範を学ぶなどの経験を積み重ねる時期は、次のどれか?
イ 乳児期 ロ 幼児期 ハ 学童期 ニ 思春期
正解 (ロ)
小児看護学(26)(さまざまな状況にある子供と家族への看護) [小児看護学]
(9)与薬
・ 子供にとっての服薬は、その発達を考慮した安全で確実な方法の選択が最も大切です。
・ 経口与薬の際は、子供の発達段階、薬の副作用、薬の代謝、管理方法などの特性を理解した上で、本人かどうか、アレルギー歴の有無、指示量を確認し、わかりやすく説明して誤嚥のないよう十分に注意して与えるようにします。
・ 乳児への散剤の与薬は、少量の白湯で溶かし、乳首、スポイト、スプーンを用いて与え、ミルクや離乳食には混ぜないようにします。
・ 坐薬は、下剤として、あるいは、解熱、鎮痛などを目的として使われます。 体位は左側臥位(乳児は仰臥位)で膝を曲げて口呼吸を促しながら、潤滑油をつけた坐薬を静かに先端から挿入します。 そのままガーゼなどで1、2分押さえた後、安楽な体位にもどします。
・ 坐薬挿入は、最終排便を確認し、排便後に行います。 プライバシーには十分配慮します。
(10)注射
・ 皮内注射は、主に抗原抗体反応テスト(アレルゲンテスト、抗生物質のアレルギー検査、ツベルクリン反応)を目的としています。
・ 皮下注射は、インスリンやワクチン接種、アレルギーの減感作療法などの治療を目的とし、針の刺入角度は20〜30度です。
・ 筋肉注射は、大腿四頭筋短縮症の危険があるため、子供では上臀筋に行い、刺入角度は90度とします。
(11)輸液療法
・ 静脈内持続点滴の目的には、経口的に水分摂取が困難な時、あるいは下痢、嘔吐による体液喪失がある時に体液を補正してバランスが崩れるのを予防することと、抗生物質などの薬液を持続的に注入する場合とがあります。
・ 点滴の部位は、肘関節静脈、手背静脈、足背静脈が多く選択されます。 確実な固定と子供の活動制限とのバランスが選択のポイントになります。
・ 活動制限の大きい利き手を避けて、抑制範囲を最小限にして子供の苦痛を少なくします。
・ 点滴施行中は、指示された点滴の注入量および注入速度、接続部からの漏れなど輸液ルートや水分バランスに異常がないかを時間毎にチェックします。 また、子供のバイタルサイン、全身状態、固定テープによる皮膚障害、循環障害、刺入部の発赤、腫脹、疼痛の有無を観察します。
・ IVHは経口摂取、あるいは経管・経腸栄養が困難で栄養を十分に摂取できない場合に、長期にわたり栄養状態の維持、改善を行い、生命を維持して成長発達を促進させることを目的に施行されます。
[設問] 乳児への坐薬の投与の際の体位は次のどれか?
イ 右側臥位 ロ 腹臥位 ハ 仰臥位 ニ 半座位
正解 (ハ)
[設問] 小児への筋肉注射はどの部位になされるのが一般的か?
イ 臀筋 ロ 大腿四頭筋 ハ 三角筋 ニ 前脛骨筋
正解 (イ)