精神看護(47)(地域精神保健) [精神看護学]
(C)応急入院
・ 都道府県知事が指定する精神病院の管理者は、ただちに入院させなければ、その者の医療および保護を図る上で著しく支障があると認められる精神障害者については、本人の同意がなくても、入院させることができます。
・ この入院形態は、保護者、扶養義務者の同意が不可能な場合(単身者、身元不明者など)であり、措置入院には該当しないケースで、72時間に限ります。
・ この措置をとった際には、精神病院の管理者は、定められた事項を最寄りの保健所長を経て都道府県知事に届けなければなりません。
(D)措置入院
・ 緊急を要し、通常の手続きがとれない場合には、1人の精神保健指定医が自傷・他害のおそれがあると認めれば入院させることができるが、72時間以内に規定された手続きや診察を行い、措置入院をとるかどうか決定しなければなりません。
・ 都道府県知事は、この入院措置に該当する精神障害者に対し、定められた事項を書面で知らせ、規定の精神病院または指定病院に転送しなければなりません。
[設問] 措置入院は、誰の権限によって行われるのか?
イ 病院長 ロ 保健所長 ハ 診察した医師 ニ 都道府県知事または指定都市の市長
正解 (ニ)
精神看護(46)(地域精神保健) [精神看護学]
6.地域精神保健
1) 精神保健福祉の法制度
(1)精神保健福祉法の基本的な考え
・ 精神保健福祉法は、1995年に精神保健法の改正で成立した。 正式な名称は 「精神保健および精神障害者福祉に関する法律」 です。
・ この法律の目的は、「精神障害者の医療および保護」 「精神障害者の社会復帰の促進」 「精神障害者の自立と社会経済活動への参加の促進」 「精神障害者発生の予防その他国民の精神的健康の保持および増進」 となっています。
・ この法律での 「精神障害者」 とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒またはその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいいます。
・ この法律は、名称変更にみられるように、福祉施策の位置づけを強化しており、社会復帰施設の規定を法律上明記したものです。
・ この法律により、精神障害者保健福祉手帳の制度が創設され、通院医療費公費負担の申請にかかる書類や手続きの簡素化および税制の優遇措置がとられました。
・ よりよい精神医療の確保として、精神保健指定医制度の充実が図られ、医療行為にかかる指定医の配置が強化されています。
(2)精神保健福祉法による入院の形態
(A)任意入院
(B)医療保護入院
注) 平成26年4月1日より精神保健福祉法に改正が加えられています。 保護者制度が廃止されたために医療保護入院の見直しがされています。 保護者の同意要件が外され、家族などのうちのいずれかの者の同意を要件とすることに変わったのです。 家族などに該当するのは、配偶者、親権者、扶養義務者、後見人又は保佐人で、該当者がいない時は、市町村長が同意の判断を行うとなっています。
上のイラストの吹き出しの中の「保護者」は「家族などのうちのいずれかの者」に置き換えて読み取ってください!!
[設問] 精神疾患のあるAさんは、自分で承諾・同意して入院となった。 この場合の入院形態はどれか?
イ 任意入院 ロ 医療保護入院 ハ 応急入院 ニ 措置入院
正解 (イ)
精神看護(45)(精神医療看護の歴史と人権・倫理) [精神看護学]
(4)誤薬
(A)誤薬の原因
(B)誤薬の防止法
(C)誤薬が生じた場合
・ 誤薬した場合、ただちに医師に報告し、必要時には催吐剤の投与や胃洗浄により薬物を除去します。
・ 誤薬に至った経緯、誤薬内容やその処置、患者の状態、患者への説明など事実を記録し、事故を未然に防止するための資料とします。
精神看護(44)(精神医療看護の歴史と人権・倫理) [精神看護学]
(2)転倒
(A)転倒の誘因
・ 精神運動興奮や不穏など精神症状が著しい時。
・ 薬物の副作用による起立性低血圧、めまい、ふらつきなど。
・ パーキンソン症状がみられる場合。
・ 高齢者での筋力低下や視聴覚機能低下。
・ 環境要因: 薄暗い照明、段差、床面の濡れ、機材や物品などの管理不備など
(B)転倒予防
・ 興奮・不穏などで明らかに転倒が予測される場合は、安全を最優先し、医師の指示により抑制します。
・ 事故がおこった場合は、管理システムを再検討し、次への予防に活かしていきます。
(3)誤飲
(A)誤飲の原因
・ 誤飲とは飲食物が気管に入り、気道を閉塞し、無気肺・窒息をおこす状態のことです。
・ 抗精神病薬の副作用や病状変化による嚥下不良、摂食行動の異常 (盗食、異食、むちゃ食い、頬張る食行動)、高齢者の加齢にともなう嚥下力の低下が、誤飲の原因となります。
(B)誤飲の予防
・まず、個々の患者の嚥下能力、摂食行動を把握します。
・ そして、個々の患者の嚥下能力に応じた食事内容(粥食、きざみ食、とろみ剤の使用など)と与え方を工夫します。
・ 飲食事の姿勢は座位にして、嚥下時は頸部を前屈し、誤嚥を防ぐようにします。
・ 嚥下状態を観察し、落ち着いた場所でゆっくりと摂取できるよう環境を整えることも必要です。
・ 危険性を回避しようとするあまり、食欲や食べる楽しみを損なわないように接することも大切です。
(C)誤飲した場合
・ 誤飲や窒息状態を発見した場合、ただちに医師や看護者の応援を求め、同時に指を口に入れて取り出します。 取り出せない場合、背中を叩いたり、背部から抱きかかえたりして心窩部をすばやく内上方に圧迫するように押し上げ、吐き出させます(ハイムリック法)。
・ 窒息に備え、吸引器や気道確保の準備を常時しておくようにします。
[設問] 誤飲の予防について、適切な記述を一つ選べ。
イ 食事は、患者の嚥下能力に応じたものにし、与え方も工夫する。
ロ 食事の姿勢は座位で、嚥下時は頸部を後屈し、誤嚥を防ぐ。
ハ 食事を摂るのに、場所や環境を特に考慮する必要はない。
ニ 誤飲の危険がある患者では、食事の楽しみは犠牲にしても仕方がない。
正解 (イ)
精神看護(43)(精神医療看護の歴史と人権・倫理) [精神看護学]
3)リスクマネジメント
(1)自殺・自殺企図
・ 自殺や自殺企図を防ぐには、指示された精神安定剤を投与し、薬物の効果および副作用を観察し、ゆっくり休めるような環境づくりをします。
・ 自殺企図のあった患者は、特に再度の自殺の危険性が高いので、患者と関わる中で希死念慮の有無を把握し、自殺を未然に防ぐ必要があります。
・ 自殺はその患者だけの問題に終わらず、他者への影響も大きく、短期間に新たな自殺企図を誘発しますので、注意が必要です。
・ 自殺企図があった場合、気道を確保し、窒息防止をただちに行います。
[設問] 自殺企図が最も多い疾患は次のどれか?
イ そう状態 ロ うつ状態 ハ てんかん ニ 不安神経症 ホ 認知症
正解 (ロ)
精神看護(42)(精神医療看護の歴史と人権・倫理) [精神看護学]
(3)隔離室の使用
(A)隔離の目的
・ 隔離は、制裁や懲罰、見せしめのために行ってはいけません。
(B)隔離室とは
・ 内側から患者本人の意思によっては出ることができない部屋の中へ1人だけ(1人1室の原則)入室させることにより、当該患者を他の患者から遮断する行動制限のことで、12時間を超えるものをいいます(精神保健福祉法第36条第3項)。
(C)隔離を行うにあたっての遵守事項
・ 隔離を行うにあたっては、隔離を行う理由をよく説明し、隔離を行ったことおよびその理由、隔離を始めた日時を記録・記載します。
・ 定期的な会話などによる注意深い精神状態および身体的観察を行い、適切な医療および保護を確保します。
・ 洗面、入浴、掃除など患者および部屋の衛生を確保します。
・ 隔離が漫然と行われないように、医師は少なくとも毎日1回は診察を行うようにします。
[設問] 隔離はある時間を超える場合には、精神保健指定医の判断が必要なことになっていますが、それは何時間を超える場合か?
イ 6時間 ロ 10時間 ハ 12時間 ニ 16時間 ホ 24時間
正解 (ハ)
精神看護(41)(精神医療看護の歴史と人権・倫理) [精神看護学]
(2)行動制限
(A) 通信、面会について
(B)身体的拘束について
・ 身体的拘束は、当該患者の生命の保護および重大な身体損傷を防ぐために、精神保健指定医が必要と判断した場合の制限ですが、身体的拘束以外によい代替方法がない場合に行われます。
・ 身体的拘束を行うと、患者は医療者を自分の人権を侵害するものととらえることがあります。 身体的拘束の必要性をよく説明し、同意が得られるような普段からの患者との信頼関係づくりが重要となります。
・ 身体的拘束を行った場合、拘束を行ったこと、その理由、始めた日時を記録・記載することになります。
[設問] 精神障害の患者の身体的拘束の必要性を判断するのは、次のだれか?
イ 担当看護師 ロ 病棟看護師長 ハ 精神保健指定医 ニ 精神衛生鑑定医
正解 (ハ)
精神看護(40)(精神医療看護の歴史と人権・倫理) [精神看護学]
(3)精神医療における看護師の役割
2)患者の権利
(1)インフォームドコンセント
(A)説明を受けた上での同意
・ インフォームドコンセントは「医療の主人公は患者である」との考え方を背景に、患者の医療上の自己の真実を知る権利と自己決定権の尊重を基盤にしています。
・ インフォームドコンセントとは、医師は患者に病状、それに応じた検査や治療法について、わかりやすく説明し、患者は十分に理解し、納得した上で、誰にも強制されることなく自由な立場で同意し、医師はその同意に基づいて医療を行うという意味のものです。
(B)精神科看護とインフォームドコンセント
・ 精神障害者の場合、医療者が病状や治療の説明をしても、適切な受け止めができない場合もあるが、どのような場合にも、「患者の状態と今行っている医療と看護行為について」伝える必要があります。
・ 看護者がインフォームドコンセントを得るようにすると、その過程で患者との信頼関係が形成され、そのことを通して、患者が他者との関係のあり方を学習し、自己の健康問題と対峙することになり、自立と社会復帰への支援につながっていきます。
[設問] 精神医療のおける患者の権利について正しいものを一つ選べ。
イ インフォームドコンセントは「医療の主人公は患者である」との考え方を背景にしており、これは精神医療のおいても同様である。
ロ 精神障害者の場合、適切な受け止めはできないので、必ずしも医療行為について伝える必要はない。
ハ 精神医療の場では、インフォームドコンセントを得ても、患者との信頼関係は築けない。
ニ 精神医療の場では、インフォームドコンセントを得ると、患者は混乱し、自己の健康問題と対峙することはできない。
正解 (イ)
精神看護(39)(精神医療看護の歴史と人権・倫理) [精神看護学]
(C)明治〜大正時代
・ 明治の初期になって、公立の精神病院が設立されます(1875年京都府癲狂病院、1879年東京府癲狂病院)。 しかし、専門知識のない看護人が患者の世話にあたり、不潔な環境で隔離・拘束の処遇でした。
(D)現代
・ 精神保健および精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法、1995年): 精神保健法は障害者保健法、地域保健法などの成立を受けて1995年に精神保健福祉法に改められ、ノーマライゼーションの理念のもと、福祉施策の充実、手帳制度の創設、社会復帰施設の設定などが加えられました。
[設問] 1950年に制定された、私宅監置の廃止、都道府県に精神病院の設置義務、措置入院、同意入院形態の導入などが盛り込まれた法律は次のどれか?
イ 精神衛生法 ロ 精神保健法 ハ 精神保健福祉法 ニ 精神病院法
正解 (イ)
精神看護(38)(精神医療看護の歴史と人権・倫理) [精神看護学]
(2)日本における精神科医療の歴史
(A)江戸時代以前(加持祈祷および家庭看護の発生)
・ 家庭看護の起源: 岩倉村大雲寺の境内の霊泉の飲用が、第71代後三条天皇の第3皇女の精神疾患を癒したという伝説から、ベルギーのゲールに似た家庭看護が、この岩倉村で自然発生的におこっています。
(B)江戸時代
・ 桶伏せ、座敷牢などに、患者は放置・監禁され、悲惨な状況に置かれていました。
・ 何らかの治療を受けている者は少数で、主として行われていた治療は、仏閣での水治療法、加持祈祷、漢方薬使用などの民間療法でした。
[設問] 精神病治療のために、18世紀の始めころから参詣されるようになったの次のどれか?
イ 京都天竜寺 ロ 京都南禅寺 ハ 京都大徳寺 ニ 京都大雲寺
正解 (ニ)