疾病の成り立ちと回復の促進 第41回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
F)消化器系に対する薬剤
a) 消化性潰瘍治療薬
ア)消化性潰瘍の病態
・ 攻撃因子と防御因子のバランスのくずれが原因ともいわれます。
・ 治療には攻撃因子を抑え、防御因子を増強させればよいということになります。
イ)攻撃因子抑制薬
・ H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー): 壁細胞のヒスタミンH2受容体に対しヒスタミンと拮抗し、酸分泌を抑制する。シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、ロキサチジン、ニザチジンなどがあります。
・ プロトンポンプ阻害薬: 壁(へき)細胞のH+分泌の最終段階のプロトンポンプ(H+-K+ATPase)を特異的に阻害します。 オメプラゾール、ランソプラゾールなどがあります。
・ 選択的ムスカリン受容体拮抗薬: ピレンゼピン。
・ 制酸薬: 炭酸水素ナトリウム(重曹)、Mg、アルミニウム、Ca製剤があります。
ウ)防御因子増強薬
・ プロスタグランジン製剤: 低容量で防御因子増強、高容量で胃酸分泌抑制作用を持っています。
・ 粘膜保護・組織修復促進薬: スクラルファートは、潰瘍面に付着して保護します。
・ 抗ドパミン薬: スルピリドは視床下部や交感神経中枢に作用し、胃血流を改善します。
・ 消化管ホルモン: セクレチンは、ガストリンの分泌と酸分泌を抑制します。
b)制吐(せいと)薬と催吐(さいと)薬
ア)制吐薬のいろいろ
・ メトクロプラミド: ドパミンD2受容体遮断作用により、消化管運動の促進と制吐作用を持っています。
・ ドンペリドン: ドパミンD2受容体遮断作用により作用します。
・ 5-HT3受容体拮抗薬: 嘔吐中枢を抑制します。 この群の薬剤には、オンダンセトロン、グラニセトロン などがあります。
イ) 催吐薬: アポモルヒネ、エメチン、食塩水など
c)下痢・便秘治療薬
ア)止痢薬・整腸薬
・ 収斂(しゅうれん)薬: タンニン酸アルブミン、次硝酸(じしょうさん)ビスマスなど。粘膜を覆い、組織蛋白と結合し、分泌、蠕動を抑制します。
・ 吸着薬: 珪酸(けいさん)アルミニウム、薬用炭。有害物質、水を吸着し粘膜を保護します。
・ 抗コリン薬: 腸の蠕動を抑制します。
・ アヘンアルカロイド類とロペラミド: 蠕動を抑制し、消化液の分泌も抑制します。
・ 乳酸菌製剤: 乳酸菌は糖分解により乳酸、酢酸を産生し、病原菌の増殖、異常発酵(いじょうはっこう)、腐敗(ふはい)などを抑制します。
・ ベルベリン: 腸内殺菌作用を持っています。
・ ポリカルボフィルカルシウム: 下痢と便秘の両者を鎮める作用を持ち、過敏性大腸症候群に使われます。
[設問] 消化性潰瘍の因子と言われるものを一つ選べ。
イ 大腸菌 ロ 緑膿菌 ハ ピロリ菌 ニ 黄色ブドウ球菌
正解 (ハ)
[設問] 消化性潰瘍の薬剤として使われるものを二つ選べ。
イ カルシウム拮抗薬
ロ H2受容体拮抗薬
ハ プロトンポンプ阻害薬
ニ 抗ドパミン薬
ホ 5-HT3受容体拮抗薬 正解 (ロ、ハ)
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