人体の構造と機能 第107回(神経系) [人体の構造と機能]
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C)末梢神経系の分類
a)感覚系と運動系
・末梢神経は入力系の感覚神経と運動神経に分けられます。
b)感覚系のいろいろ
・一般体性感覚神経: 手足、頭頸部、体幹の表面からの触覚・温度覚・痛覚・深部感覚(振動覚など)を伝えます。
・特殊体性感覚神経: 脳神経領域の嗅覚・視覚・聴覚・平衡覚を伝えます。
・特殊内臓感覚神経: 味覚を伝えます。
・一般内臓感覚神経: 内臓器官の感覚を伝えます。
c)運動系のいろいろ
・一般体性運動神経: 手足、体幹の骨格筋を支配します。
・特殊内臓運動神経: 咀嚼筋(そしゃくきん)、表情筋、咽頭・喉頭筋を支配しています。
・一般内臓運動神経: 消化管や排泄器官などの内臓器官の平滑筋を支配しています。自律神経のことです。
d)自律神経系
・自律神経の上位中枢は、間脳の視床下部にあります。
・自律神経には交感神経と副交感神経があります。
・交感神経の下位中枢は、脊髄側角(第8頸髄、胸髄、第2、3腰髄)にあり、副交感神経は脳幹と仙髄にあります。
・交感神経は、脊髄側角(節前ニューロン)から節前線維が出て、交感神経幹などで神経節をつくり、節後神経に乗り換えて支配する器官へ向かいます。
・副交感神経系の神経は、支配臓器の近傍にある副交感神経節に入ります。副交感神経系は安静時、睡眠時などに優位となる自律神経です。
・交感神経の節前線維の神経伝達物質はアセチルコリンで、節後線維では、主な器官ではノルアドレナリンです。ノルアドレナリンはカテコーラミン受容体に結合するが、受容体にはα受容体とβ受容体があります。
・副交感神経では、節前線維も節後線維もアセチルコリンです。
[設問] 脳幹にある副交感神経系の神経核はどの神経に属するか? 二つ選べ。
イ 動眼神経 ロ 三叉神経 ハ 外転神経 ニ 舌下神経 ホ 舌咽神経
正解 (イ、ホ)
[設問] 交感神経の節前線維の分泌する神経伝達物質はどれか?
イ ノルアドレナリン
ロ アドレナリン
ハ ドパミン
ニ アセチルコリン 正解 (ニ)
以上で、人体の構造と機能、すべて終了します。 次は、疾病の成り立ちと回復の促進に取り組みます。
人体の構造と機能 第106回(神経系) [人体の構造と機能]
e)主な末梢神経
・横隔神経(おうかくしんけい)は、C3~C5の頸神経から派生するもので、横隔膜の運動を支配しています。
・腋窩神経(えきかしんけい)は、三角筋、小円筋を支配し、上腕の外側と背側の皮膚感覚を支配しています。
・橈骨神経は、上腕三頭筋や腕橈骨筋などの上肢の骨格筋群を支配し、腋窩神経、正中神経、尺骨神経などとともに上肢の皮膚感覚を支配しています。
・正中神経は、前腕の屈側と母指球の筋群を支配し、さらに橈骨神経、尺骨神経とともに上肢の遠位部の皮膚感覚を支配しています。
・尺骨神経は、前腕尺側の筋群を支配し、さらに正中神経、橈骨神経とともに手の遠位部の皮膚感覚を支配しています。
・肋間神経は、12対の胸神経の前枝のことをいいます。肋間筋のほかに、上下後鋸筋、胸横筋、側・前腹筋を支配するとともに、胸部と腹部前面の皮膚感覚を支配しています。
・大腿神経は、腰神経叢の中で最も大きく、腰筋、腸骨筋、恥骨筋、大腿四頭筋などを支配しています。また、下腿や足背などの皮膚感覚にも関与しています。
・上臀神経は中臀筋、小臀筋を、下臀神経は大臀筋を支配しています。
・坐骨神経(ざこつしんけい)は、仙骨神経叢をつくる神経線維の大部分からなっています。坐骨神経は、大腿屈筋などの大腿部の骨格筋群を支配する筋枝を出したあと、膝のあたりで脛骨神経(けいこつしんけい)と総腓骨神経(そうひこつしんけい)に分かれ、さらに分枝を続け、下腿の筋群や皮膚感覚などを支配しています。
[設問] 上肢の三角筋を支配する神経はどれか?
イ 横隔神経 ロ 腋窩神経 ハ 橈骨神経 ニ 正中神経
正解 (ロ)
[設問] 母指球と前腕部の屈側の筋群を支配するのは、どれか?
イ 腋窩神経 ロ 橈骨神経 ハ 正中神経 ニ 尺骨神経
正解 (ハ)
[設問] 上腕三頭筋を支配するのは、どれか?
イ 腋窩神経 ロ 橈骨神経 ハ 正中神経 ニ 尺骨神経
正解 (ロ)
[設問] 大腿四頭筋を支配するのはどれか?
イ 大腿神経 ロ 上臀神経 ハ 坐骨神経 ニ 下臀神経
正解 (イ)
[設問] 坐骨神経から直接分かれた神経はどれか? 二つ選べ。
イ 脛骨神経 ロ 上臀神経 ハ 下臀神経 ニ 総腓骨神経 ホ 腓腹神経
正解 (イ、ニ)
人体の構造と機能 第105回(神経系) [人体の構造と機能]
B)脊髄神経
a)脊髄神経のレベルによる分類
・脊髄神経は8対の頸神経、12対の胸神経、5対の腰神経、5対の仙骨神経、1対の尾骨神経からなっています。
b)脊髄神経の前枝と後枝
・脊髄神経は腹側に向かう前枝と背側に向かう後枝に分かれます。
c)神経叢(しんけいそう)
・脊髄神経が複雑にからみあってできるのが神経叢で、それには、頸神経叢、腕神経叢、腰神経叢、仙骨神経叢、陰部神経叢があります。
・腕神経叢は、第5~8頸神経の前枝と第1胸神経の前枝からなっています。
・腰神経叢は、第12胸神経の前枝と第1~4腰神経の前枝からなっています。
・仙骨神経叢は、第4、5腰神経と第1~3仙骨神経の前枝からなっています。
・陰部神経叢は、第2~4仙骨神経で形成されています。
d)馬尾
・腰神経、仙骨神経、尾骨神経からなるものです。
[設問] 脊髄神経は何対あるか?
イ 20対 ロ 28対 ハ 31対 ニ 36対 正解 (ハ)
[設問] 脊柱管内にあり、感覚神経細胞が集まった場所はどれか・
イ 後角 ロ 後索 ハ 後根 ニ 脊髄神経節 正解 (ニ)
[設問] 腕神経叢を形成するのは脊髄神経のどのレベルか・
イ C3 ~ C7
ロ C4 ~ C8
ハ C5 ~ Th1
ニ C6 ~ Th2 正解 (ハ)
人体の構造と機能 第104回(神経系) [人体の構造と機能]
f)内耳神経(ないじしんけい、第8脳神経)
・内耳神経には、前庭神経と蝸牛神経があって、前者が平衡感覚、後者が聴覚を司っています。
・前庭神経は、三半規管と前庭の有毛細胞への刺激を平衡感覚として中枢へ伝えます。蝸牛神経は、ラセン器(コルチ器)の有毛細胞への刺激を聴覚として中枢へ伝えます。
・前庭神経と蝸牛神経は、内耳道で合流して内耳神経となって橋に入ります。
・蝸牛神経は、橋の蝸牛神経腹側核と背側核でニューロンを乗り換え、視床の内側膝状体に到達します。内側膝状体でニューロンを乗り換えたあと、聴覚路は側頭葉の聴覚野へと向かい、到達します。
・前庭神経は、一部は直接小脳へ至るものもあれば、橋、延髄の前庭核群に終わり、ニューロンを乗り換えて小脳や脊髄などへ至る系もあります。
g)舌咽神経(ぜついんしんけい、第9脳神経)・迷走神経(めいそうしんけい、第10脳神経)
・舌咽神経・迷走神経の核は、延髄にあって、延髄から出ています。
・舌咽神経は、耳介・外耳道の感覚を司る体性感覚系の機能、咽頭粘膜、舌の後部などの内臓感覚系の機能、舌の後ろ1/3の味覚という特殊感覚系、耳下腺の分泌を支配する自律神経系(副交感神経系)の機能、咽頭・喉頭筋群の支配などの多彩な機能を迷走神経とともに行っています。
・迷走神経は、舌咽神経とともに咽頭・喉頭筋群の支配、咽頭・喉頭粘膜の内臓感覚系の機能を行うほか、腹胸部臓器の内臓感覚系と遠心性の自律神経系(副交感神経系)の機能を持っています。
・嚥下運動、構音機能などは、この2つと舌下神経(ぜっかしんけい)が行っています。
h)副神経(ふくしんけい)
・副神経は、神経核は半分は延髄にありますが、残りは脊髄にあって、延髄根と脊髄根に分かれて延髄と脊髄から出ています。
・三叉神経核の大半と、外転神経核、顔面神経核と内耳神経核の大半は橋にあります。そして、これらは、三叉神経を含め、いずれも橋から脳を出ています。
・副神経は、胸鎖乳突筋、僧帽筋を支配しています。
i)舌下神経(ぜっかしんけい)
・舌下神経の神経核は延髄にあって、体性運動神経に属し、舌の筋肉を支配しています。
[設問] 右耳からの聴覚の主たる伝導路で正しいものを選べ。
イ 右蝸牛 → 右蝸牛神経 → 右の蝸牛神経核 → 左の内側膝状体 → 左下丘 → 左聴覚野
ロ 右蝸牛 → 右蝸牛神経 → 右の蝸牛神経核 → 左の内側膝状体 → 左上丘 → 左聴覚野
ハ 右蝸牛 → 右蝸牛神経 → 右の蝸牛神経核 → 左下丘 → 左の内側膝状体 → 左聴覚野
ニ 右蝸牛 → 右蝸牛神経 → 右の蝸牛神経核 → 左上丘 → 左の内側膝状体 → 左聴覚野
正解 (ハ)
[設問] 下記の文で、正しい記述を一つ選べ。
イ 内耳神経は、単一の脳神経であり、聴覚刺激を伝える。
ロ 聴覚刺激は、蝸牛神経、上丘、内側膝状体を経て大脳の聴覚野へ至る。
ハ 舌咽神経は、舌の前2/3の味覚を司る。
ニ 副神経の核は、半分は延髄にあり、残り半分は脊髄にある。
正解 (ニ)
人体の構造と機能 第103回(神経系) [人体の構造と機能]
c)動眼神経(どうがんしんけい、第3脳神経)、滑車神経(かっしゃしんけい、第4脳神経)、外転神経(がいてんしんけい、第6脳神経)
・動眼神経核、滑車神経核は中脳にあり、外転神経核は橋にあります。
・動眼神経は、中脳の前方から脳を出て、滑車神経は後方から出ます。外転神経は橋から脳を出ます。
・動眼神経、滑車神経、外転神経の3者によって眼球運動は行われています。
・動眼神経副核は副交感神経系であって、毛様体神経節を経て瞳孔括約筋の働きで、縮瞳をおこします。
d)三叉神経(第5脳神経)
・三叉神経の核は、中脳、橋、延髄、脊髄にわたっていて、脳神経中最も大きい神経核です。脳幹を出て、三叉神経節をつくると、そこから三本に分岐します。
・三叉神経は、顔面・口腔・鼻腔下部・鼻咽頭などの感覚、咬筋・側頭筋などの筋群を支配しています。
e)顔面神経(第7脳神経)
・顔面神経の核には橋にある運動核の他、副交感神経系の上唾液核(じょうだえきかく)、味覚を司る孤束核(こそくかく)があり、顔面筋の他、涙や唾液の分泌、舌前2/3の味覚を支配しています。
[設問] 次の脳神経の脳幹の核で、自律神経の核を含むものはどれか? 二つ選べ。
イ 動眼神経 ロ 滑車神経 ハ 外転神経 ニ 三叉神経 ホ 顔面神経
正解 (イ、ホ)
[設問] 下記の脳神経核の中で、最も大きいものはどれか?
イ 動眼神経 ロ 外転神経 ハ 三叉神経 ニ 顔面神経
正解 (ハ)
[設問] 唾液腺、涙腺を支配する脳神経は、次のうちどれか?
イ 動眼神経 ロ 滑車神経 ハ 三叉神経 ニ 顔面神経
正解 (ニ)
人体の構造と機能 第102回(神経系) [人体の構造と機能]
(2)末梢神経系
《構造と機能》
A)脳神経(12対)
a)嗅神経(きゅうしんけい、第1脳神経)
・匂いの分子が感覚細胞である嗅細胞の細胞膜にある嗅覚受容体であるG蛋白共役受容体と結合し、嗅覚刺激となり→ 嗅細胞の中枢側の突起が篩板を貫いて嗅球の僧帽細胞に刺激を伝え→僧帽細胞の軸索が集まった嗅索を通って視床下部、大脳皮質の嗅覚野へと刺激は伝わることになります。つまり、嗅神経は嗅覚を司り、匂いを脳へ伝える機能を持っているわけです。
b)視神経(ししんけい、第2脳神経)
・網膜の神経節細胞の神経軸索が伸びて有髄の視神経となります。視神経は、視交叉を経て視索となり、視床の外側膝状体と中脳の上丘などの1次視覚中枢に達します。視神経の髄鞘は、中枢神経の髄鞘をつくる乏突起膠細胞によってつくられます。
追)視神経は、末梢神経に分類されていますが、実は髄鞘は中枢神経の細胞によってつくられるので、中枢神経系の経路、つまり、視覚路といった方が正確なのかもしれません。
・視神経→外側膝状体→視放線→大脳皮質視覚野、という順で、視覚刺激が伝わっていきます。
・視神経→上丘→中脳の動眼神経副核と視覚刺激が伝わり、対光反射の入力系となり、そのあとは動眼神経副核→毛様体神経節→瞳孔括約筋と刺激が伝わって縮瞳がおこる出力系となります。
[設問] 嗅球にある細胞は次のどれか?
イ 嗅細胞 ロ 僧帽細胞 ハ 双極細胞 ニ G蛋白共役受容体
正解 (ロ)
[設問] 次の文で正しいものを一つ選べ。
イ 網膜の神経節細胞の神経軸索が伸びて無髄の視神経となる。
ロ 視神経は視床の内側膝状体に終る。
ハ 視神経は視交叉を経て視索となる。
ニ 視交叉ではすべての神経線維が交叉する。
正解 (ハ)
[設問] 対光反射の経路で正しいものを選べ。
イ 網膜 → 視神経 → 上丘 → エディンガー・ウエストファール核 → 毛様体神経節
ロ 網膜 → 視神経 → 上丘 → 毛様体神経節 → エディンガー・ウエストファール核
ハ 網膜 → 視神経 → 下丘 → エディンガー・ウエストファール核 → 毛様体神経節
ニ 網膜 → 視神経 → 下丘 → 毛様体神経節 →エディンガー・ウエストファール核
正解 (イ)
人体の構造と機能 第101回(神経系) [人体の構造と機能]
C)間脳
a)視床の機能
・視床は感覚の下位中枢であり、上行性の感覚神経路が終始していて、視床からはさらに大脳皮質の感覚野へと神経線維を送っています。
・視床は、錐体外路系や小脳、大脳感覚野などの中継基地の役割も果たしています。
・視床は、大脳辺縁系や小脳、大脳運動野などの中継基地の役割も果たしています。
・視床は、大脳辺縁系の一部としての機能も持っています。
b)視床下部の機能
・視床下部は、本能の脳ともいわれ、最も古い脳です。
・視床下部は、内分泌機能、摂食、概日リズム、ホメオスターシス維持などに大きな役割を果たす。つまり、各器管系を管理・調節する機能を持っています。
・前視床下部には、浸透圧受容器があって、血漿浸透圧の調節に関わっています。
・視床下部の視索上核と室傍核は、バゾプレッシンとオキシトシンの産生を行い、下垂体後葉に送って分泌しています。
・視床下部の腹内側核は満腹中枢、外側核は摂食中枢で、摂食行動には連動して関与します。
D)中脳・橋・延髄の機能
・上は大脳・間脳、下は脊髄、後ろは小脳があって、それぞれとの連絡路や上行、下行神経路の通り道となっています。
・第3~12脳神経の核があって、それぞれの支配器官の運動と感覚機能を司っています。眼球運動、表情筋の運動、嚥下・咀嚼運動、構音機能など重要な運動と、顔面・口腔・咽頭領域の感覚、味覚、聴覚、平衡感覚などの感覚に関わっています。
・延髄には呼吸中枢があります。
・脳幹には、網様体があり、意識レベルを維持するために重要な役割を果たしています。
E)脊髄の機能
・脊髄は、上は延髄と連結し、脊髄神経(末梢神経)の出入りする箇所となっています。
・白質には、感覚系の上行路と運動系の下行路が走っています。
・分節ごとに前角に存在する下位運動ニューロンには、大脳皮質からきた上位運動ニューロンの神経線維がシナプスで接続し、下位運動ニューロンからは前根を経て脊髄神経(運動神経)が出ていきます。
・後角には、温・痛覚の感覚神経細胞があって、末梢からきた温・痛覚を伝える感覚神経細胞の神経線維がシナプスを介して接続し、後角の2次感覚神経細胞から出た神経線維は交叉して、反対側の側索を上行します。
・深部感覚を伝える末梢からきた感覚神経線維は、そのまま同側の後索を上行します。
・脊髄は、脊髄反射の中枢で、反射弓は入力系が末梢からの感覚神経、出力が運動神経です。
[設問] 脊髄後角にあって神経線維を視床に送っているのは、何を伝える神経細胞か?
イ 振動覚 ロ 痛覚 ハ 位置覚 ニ 関節覚
正解 (ロ)
[設問] 視床下部の機能を二つ選べ。
イ 内分泌機能
ロ 感覚情報の中継
ハ 錐体路を構成
ニ 摂食行動への関与
ホ 視床と連動した運動の調節 正解 (イ、ニ)
[設問] 中脳・橋・延髄にあるものを二つ選べ。
イ 摂食中枢
ロ 顔面神経核
ハ 満腹中枢
ニ 呼吸中枢
ホ 情動中枢 正解 (ロ、ニ)
[設問] 脊髄後索を上行するのは、どの感覚を伝える神経線維か? 一つ選べ。
イ 痛覚 ロ 振動覚 ハ 嗅覚 ニ 温度覚 正解 (ロ)
人体の構造と機能 第100回(神経系) [人体の構造と機能]
《機能と生理》
A)中枢神経系の機能
・感覚神経によって集まる刺激・情報を統合し、外界への対応を決定し、指令を末梢神経(運動神経)を介して端末の器官(主に骨格筋)へ送ります。また、身体の中にある器官の調節を自律神経を介して行っています。
B)大脳の機能
a)新皮質と大脳辺縁系
・大脳には、新皮質といわれる理性を司る脳が表面にあって、内部には大脳辺縁系といわれる情動の中枢があります。
b)主な5つの機能
・大脳の機能には、認識、運動のプログラムの作成・制御、意識、感情・情動、記憶・学習があります。
c)大脳の機能局在
・大脳には機能局在があって、前頭葉では、運動野は骨格筋の随意運動(体性運動神経系)の中枢、ブローカ野は運動性言語中枢(発語に関与)、前頭前野は物事の計画や判断を行う最高中枢を担っています。
・頭頂葉では、体性感覚野は体性感覚の中枢、頭頂連合野は体性感覚、視覚、聴覚情報を連結して処理する中枢です。
・後頭葉の視覚野は視覚の中枢、側頭葉の聴覚野は聴覚の中枢、頭頂葉と側頭葉にまたがるウエルニッケ野は感覚性言語中枢(言語の理解などに関与)である。
e)大脳の交叉支配
・片方の大脳半球は、大半の機能において、身体の反対側を支配しています。
・小脳との連携においても交叉があって、小脳と身体では同側支配となっています。
f)大脳辺縁系の機能
・情動、記憶などに関与しています。
・側頭葉深部にある海馬(かいば)は、記憶と学習の中枢で、記憶の元となる情報が入り、短期記憶に関与しています。
g)大脳基底核の機能
・大脳基底核は、錐体外路系(すいたいがいろけい)の中枢で、錐体路(体性運動野と皮質脊髄路などで構成)や小脳と協同で、円滑な運動の遂行に大きな役割を果たしています。
[設問] 側頭葉にあるのは、次のどれか? 一つ選べ。
イ ブローカ野 ロ 視覚野 ハ 聴覚野 ニ 体性感覚野
正解 (ハ)
[設問] 次の文で、正しいものを一つ選べ。
イ 右大脳半球はアナログ脳、左大脳半球はデジタル脳と言われる。
ロ 頭頂葉と側頭葉にまたがるウエルニッケ野は運動性言語中枢である。
ハ 左小脳は、身体の右側を支配している。
ニ 大脳基底核は、錐体路を構成する。 正解 (イ)
人体の構造と機能 第99回(神経系) [人体の構造と機能]
G)髄膜
・脳と脊髄は、外から硬膜、クモ膜、軟膜で被われています。
・硬膜は、強い結合識性の膜で、大脳半球を左右に分ける大脳鎌(だいのうかま)、小脳と大脳を隔てる小脳テント、小脳半球を左右に分ける小脳鎌をつくっています。
・クモ膜と軟膜の間には、脳脊髄液で満たされるクモ膜下腔があります。
F)脳室系と脳脊髄液
・脳の中には脳室があり、大脳半球内にある左右の側脳室、間脳の中心部にある第3脳室、橋にある第4脳室があります。それらは、連絡孔や中脳水道で連絡していて、脳脊髄液が流れています。
・脳脊髄液は、脳室系にある脈絡叢(みゃくらくそう)で産生され、脳室系から第4脳室の正中口と外側口からクモ膜下腔うに出て、大脳縦裂周囲のクモ膜顆粒から吸収されます。
G)脳の血管
・脳には、4本の動脈(左右の内頸動脈と椎骨動脈)が灌流しています。
・内頸動脈は、中大脳動脈、前大脳動脈に分かれ、大脳の前方部を灌流します。
・左右の椎骨動脈は、合流して脳底動脈となり、脳幹、小脳に分枝を送り、そのあと、左右の後大脳動脈に分かれ、後頭葉中心に大脳後方部を灌流します。
・内頸動脈系の動脈と椎骨動脈系の動脈は、脳底部の上部で、前交通動脈、後交通動脈を介してウイリスの動脈輪(どうみゃくりん)をつくっています。
[設問] 脳を覆う膜で外側から中に向かう順の正しいものを選べ。
イ 硬膜 → クモ膜 → 軟膜
ロ クモ膜 → 硬膜 → 軟膜
ハ 硬膜 → 軟膜 → クモ膜
ニ クモ膜 → 軟膜 → 硬膜 正解 (イ)
[設問] 大脳と小脳を隔てるものはどれか? 一つ選べ。
イ 大脳鎌
ロ 小脳鎌
ハ 小脳テント
ニ クモ膜 正解 (ハ)
[設問] 正中口と外側口があるのはどこか?
イ 側脳室 ロ 第3脳室 ハ 第4脳室 ニ 中脳水道
正解 (ハ)
[設問] ウイリスの動脈輪において、左右の脳循環を結ぶ動脈はどれか? 一つ選べ。
イ 前大脳動脈 ロ 前交通動脈 ハ 後交通動脈 ニ 中大脳動脈
正解 (ロ)
人体の構造と機能 第98回(神経系) [人体の構造と機能]
E)小脳
・小脳は、後頭蓋窩(こうずがいか)の脳幹の後ろにあって、上・中・下小脳脚とつながる。
・小脳は、細くなった中央部の虫部(ちゅうぶ)と左右に膨大した小脳半球からなるものです。
F)脊髄
・脊髄の始まりは、頭蓋骨の大後頭孔を出たところで、脊柱管内を通って、第1腰椎レベルで終わります。長さは40~45㎝です。
・脊髄は、頸髄、胸髄、腰髄、仙髄、尾髄からなっています。
・脊髄の横断面では、中央部に神経細胞の集まりである灰白質(かいはくしつ)、周辺部に神経線維が通る白質(はくしつ)があります。
・脊髄の灰白質には、前角(ぜんかく)、側角(そくかく)、後角(こうかく)があります。
・前角には、下位運動ニューロン(下位運動神経細胞)があり、側角には交感神経の節前ニューロンがあります。後角には、痛覚・温度覚の感覚神経細胞があります。
・脊髄には、運動神経が出る前根(ぜんこん)と感覚神経が入る後根(こうこん)があります。
・脊髄の白質は、前索(ぜんさく)、側索(そくさく)、後索(こうさく)に分けられます。
・前索には、前皮質脊髄路(錐体路、下行線維)、外側脊髄視床路(感覚系、上行線維)、前・後脊髄小脳路などがあります。
・後索には、薄束(はくそく)と楔状束(きつじょうそく)という感覚系の上行線維があります。内側が薄束、外側が楔状束です。
[設問] 小脳の中央部にあるのは、次のどれか? 一つ選べ。
イ 小脳半球 ロ 小脳虫部 ハ 上小脳脚 ニ 中小脳脚
正解 (ロ)
[設問] 脊髄下端はどのレベルか?
イ 第12胸髄 ロ 第1腰髄 ハ 第3腰髄 ニ 第5腰髄
正解 (ロ)
[設問] 脊髄後索を通るのは次のどれか? 二つ選べ。
イ 錐体路 ロ 脊髄視床路 ハ 薄束 ニ 楔状束 ホ 脊髄小脳路
正解 (ハ、ニ)