疾病の成り立ちと回復の促進 第56回(リハビリテーション) [疾病の成り立ちと回復の促進]
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5)その他
(1)リハビリテーション
A)概略
・ 運動器疾患、脳神経系疾患においては、その機能障害に対して回復のためにリハビリテーションが行われます。
・ リハビリテーションには、理学療法(PT)、作業療法(OT)、言語訓練(ST)がある。最近では、視機能の訓練も行われるようになってきています。
・ 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士などによって行われます。
B)理学療法(PT)
・ 理学療法とは、身体に障害のある人に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療のために運動、体操、または電気刺激、マッサージ、温熱などの物理的手段を加えることをいいます。
・ 対象となるのは、整形外科疾患、脳卒中などの脱力を伴う神経内科領域の疾患です。
C)作業療法(OT)
・ 作業療法とは、身体または精神に障害のある人に対し、主としてその応用的動作能力または社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作などの作業を行わせて治療することをいいます。
・ 対象となるのは主に、運動・作業能力が低下した神経内科領域の疾患群となります。
D)言語聴覚療法(ST)
・ 言語訓練とは、言語機能または聴覚、摂食・嚥下機能に障害のある人に対して、その機能の回復、維持、向上を図るために訓練を行い、必要な検査、助言、援助を行うことをいいます。
・ 対象となるのは、失語症、構音障害、嚥下障害を伴う神経内科領域の疾患です。
[設問] リハビリテーションの中で、電気療法、温熱療法、マッサージなどの物理的手段が取り入れられているものはどれか? 一つ選べ。
イ 理学療法 ロ 作業療法 ハ 言語聴覚療法 ニ 視能訓練
正解 (イ)
[設問] 嚥下障害に対する治療が含まれるのは次のどれか? 一つ選べ。
イ 理学療法 ロ 作業療法 ハ 言語聴覚療法 ニ 視能訓練
正解 (ハ)
以上で「疾病の成り立ちと回復の促進」は終了です。次回からは「基礎看護学」です。
疾病の成り立ちと回復の促進 第55回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
M)抗アレルギー薬、免疫抑制薬
a) 抗アレルギー薬
ア) 抗ヒスタミン薬
・ 第一世代: ジフェンヒドラミン、ピリラミン、メクリジン、クロルフェニラミン、プロメタジン
・ 第二世代: メキタジン、セチリジン、フェキソフェナジン、エピナスチン(第二世代は抗コリン作用、中枢神経抑制作用が無く、気管支喘息にも使われ、昼間の使用も可能です)
イ) ケミカルメディエーター遊離抑制薬
・ アレルギー反応で遊離される種々のケミカルメディエーターを抑制します。
・ クロモグリク酸、トラニラスト、ケトチフェン、アゼラスチン、オキサトミド、アンレキサノクス、レピリナスト
ウ) ロイコトリエン拮抗薬
・ 好塩基球、肥満細胞などの炎症細胞で合成されるロイコトリエンの作用を阻止します。
・ ザフィルルカスト、モンテルカストなどがあります。
・ 気管支喘息の治療に使われます。
エ) 糖質コルチコイド
・ 特にIII型、IV型アレルギー反応に有効です。
・ I型アレルギーに属する気管支喘息の治療にも有効です。
・ 糖質コルチコイドの効果発現は緩徐です。
b)免疫抑制薬: 臓器移植後の拒絶反応の予防と自己免疫疾患の治療に使われます。
ア) シクロスポリン
・ T細胞受容体活性化によるリンホカイン遺伝子発現を抑制し、リンホカインの産生・遊離を抑制します。
イ) タクロリスム
ウ) 糖質コルチコイド
エ) 細胞毒性薬
・ アザチオプリン
・ シクロホスファミド
オ) モノクローナル抗体
c)関節リウマチ治療薬
ア) 対症療法として、非ステロイド性抗炎症薬
イ) 免疫抑制薬
ウ) 疾患修飾性抗リウマチ薬: 抗リウマチ薬と呼ばれます。 金製剤、D-ペニシラミン、サラゾスルファピリジン、メトトレキサート などがあります。
[設問] 抗ヒスタミン薬が作用するのはどれか? 一つ選べ。
イ IgE受容体
ロ H1受容体
ハ IgE抗体
ニ 抗原 正解 (ロ)
[設問] 抗ヒスタミン薬で、第一世代と比べ、第ニ世代の異なる点を以下より一つ選べ。
イ 鎮静作用がない
ロ H1受容体に作用する
ハ アレルギーによる症状を抑える
ニ 中枢神経系に作用する 正解 (イ)
[設問] 糖質コルチコイドの説明で正しいものを一つ選べ。
イ 特にI型アレルギー反応に有効である。
ロ 気管支喘息には禁忌である。
ハ 効果発現は緩徐である。
ニ 副作用はない。 正解 (ハ)
[設問] 免疫抑制薬な主な用途を以下より二つ選べ。
イ 臓器移植後の拒絶反応の予防
ロ 気管支喘息の治療
ハ 自己免疫疾患の治療
ニ 甲状腺癌の治療
ホ アレルギー性鼻炎の治療 正解 (イ、ハ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第54回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
e) ホルモン、ホルモン拮抗薬
ア) 糖質コルチコイド
・ プレドニソロンが最も使われます。
イ) 性ホルモン
・ アンドロゲンは乳癌に、エストロゲンは前立腺癌に、プロゲステロンは子宮癌に使われます。 LH-RH誘導体の徐放製剤であるリュープロレリンは乳癌、前立腺癌の両方に使われます。
ウ) 性ホルモン拮抗薬
・ エストロゲン受容体の部分アゴニストであるタモキシフェンは、乳癌や子宮癌の治療に使われます。
・ アンドロゲン受容体のアンタゴニストであるフルタミドは、前立腺癌に使われます。
f)生体応答修飾物質(BRM)
ア) インターフェロン(IFN)
・ アルキル化薬とともに慢性骨髄性白血病に使われます。
・ 多発性骨髄腫では長期的寛解を持続させるためにインターフェロンαが使われます。
イ) インターロイキン-2(IL-2)
・ 腫瘍細胞に対するT細胞の反応を誘導、増強します。
・ 進行した悪性黒色腫、腎細胞癌に使われます。
ウ) フィルグラスチム(遺伝子組み換えG-CSF)
・ 癌の化学療法などでおこる顆粒球減少を予防、治療するために投与されます。
エ) サルグラモスチム(遺伝子組み換えGM-CSF)
・ 急性骨髄性白血病の化学療法導入による白血球減少の治療に使われます。
g)分子標的治療薬
ア) イマチニブ
・ 腫瘍細胞の細胞増殖と生存に不可欠なチロシンキナーゼを抑制します。
・ 単独で慢性骨髄性白血病に使われ、顕著な寛解能を示します。
イ) ゲフィチニブ
・ 上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬で、癌細胞の増殖に関与するシグナル伝達を遮断します。
・ 非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌などに有効です。
ウ) モノクローナル抗体
・ ヒト化マウス単クローン抗体、トラスツズマブ、リツキシマブが、乳癌、B細胞リンパ腫に使われます。
エ) その他
・ L-アスパラギナーゼ: 急性白血病,悪性リンパ腫などに使われます。
・ ヒドロキシ尿酸: 悪性黒色腫、慢性骨髄性白血病に使われます。
・ ミトタン: 副腎皮質腫瘍に使われます。
・ トレチノイン: 急性前骨髄球性白血病に使われます。
[設問] 乳癌に使われる性ホルモン拮抗薬は次のどれか? 一つ選べ。
イ プレドニソロン
ロ アンドロゲン
ハ タモキシフェン
ニ フルタミド 正解 (ハ)
[設問] 前立腺癌に使われる性ホルモン受容体アンタゴニストは次のどれか? 一つ選べ。
イ プレドニソロン
ロ タモキシフェン
ハ アンドロゲン
ニ フルタミド 正解 (ニ)
[設問] 乳癌と前立腺癌の両者に使われることのあるものは次のどれか? 一つ選べ。
イ アンドロゲン
ロ エストロゲン
ハ リュープロレリン
ニ プロゲステロン 正解 (ハ)
[設問] 多発性骨髄腫の維持療法に使われるのはどれか? 二つ選べ。
イ プレドニソロン
ロ インターフェロン
ハ メトトレキサート
ニ ブスルファン
ホ ブレオマイシン 正解 (イ、ロ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第53回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
L)抗悪性腫瘍薬
a) アルキル化薬 (代表的なものを列挙)
b)代謝拮抗薬(主な薬剤を列挙)
c)抗腫瘍性抗生物質:
ア)アントラサイクリン系
・ アドリアマイシン、ダウノルビシン
イ)アクチノマイシンD
ウ)ブレオマイシン: 扁平上皮癌に使われます。
エ)マイトマイシン
オ)ミトキサントロン: 急性骨髄性白血病、乳癌に有効。
d) 植物アルカロイド
ア) ビンカアルカロイド
・ 腫瘍細胞の細胞分裂を障害します。
・ 薬剤としては、ビンプラスチン、ビンクリスチンがあります。
イ) ポドフィロトキシン
・ エトポシド、テニポシド。
・ エトポシドは睾丸腫瘍、小細胞癌、前立腺癌に使われます。
ウ) カンプトテシン
・ 腫瘍細胞のDNAに障害を与えます。
・ トポテカン、イリノテカンがあり、大腸、直腸の癌に使われます。
エ) タキサン化合物
・ 腫瘍細胞の細胞分裂を障害します。
・ パクリタキセル、ドセタキセル などがあり、卵巣癌、進行乳癌に使われます。
[設問] アルキル化薬とは癌細胞のDNAをアルキル化させてダメージを与えるものであるが、以下よりアルキル化薬を一つ選べ。
イ メトトレキサート
ロ メルカプトプリン
ハ シクロホスファミド
ニ ブレオマイシン 正解 (ハ)
[正解] 代謝拮抗薬とは腫瘍細胞の核酸代謝を阻害して抗腫瘍効果を示すものであるが、以下より一つ選べ。
イ メトトレキサート
ロ シクロホスファミド
ハ シスプラチン
ニ ブレオマイシン 正解 (イ)
[設問] 微生物が産生するもので、抗腫瘍効果を発揮するものを抗腫瘍性抗生物質と呼ぶが、以下より一つ選べ。
イ メトトレキサート
ロ ブレオマイシン
ハ ブスルファン
ニ フルオロウラシル 正解 (ロ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第52回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
K)感覚器・皮膚科治療薬
a) 緑内障治療薬
ア) 眼薬理学
・ 眼球内は一定の圧に保たれていますが、眼内圧に大きな影響を及ぼしているのは眼房水(がんぼうすい)です。 眼房水は毛様体上皮から分泌され、虹彩とレンズの間を通って後眼房から前眼房に出て、大部分は隅角(ぐうかく)にある線維柱帯を通ってシュレム管から排出されます。 一部はぶどう膜強膜(まくきょうまく)流出路から排出されています。
イ) 副交感神経作動薬
・ 眼房水の流出促進によって眼内圧を下げます。
・ 副交感神経作動薬としては、ムスカリン作動薬のメタコリン、カルバコール、ピロカルピン、コリンエステラーゼ阻害薬のフィゾスチグミン、エコチオフェート、ジスチグミンがあります。
ウ) βブロッカー
・ 毛様体からの眼房水の産生・分泌を抑制して眼内圧を下げます。
・ チモロール、ベタキソロール、カルテオロールなどがあります。
エ) プロスタグランジン誘導体
・ 眼房水の流出促進により眼圧を下げます。
・ ウスプロストンの点眼液が使われます。
オ) 利尿薬
・ 眼房水の量を減少させて眼圧を下げます。
カ) αアゴニスト
・ 眼房水産生の抑制と眼房水流出の増大により眼圧を下げるのではないかといわれています。
b)耳鼻科疾患治療薬
ア) メニエール病治療薬
・ めまい発作: ジフェンヒドラミン、メトクロプラミド、NaHCO3の注射薬が使われます。
・ 発作予防と難聴治療: 抗不安薬(ロラゼパム、イチゾラム)、浸透圧利尿薬(イソソルビド)、抗ヒスタミン薬(ベタヒスチン)、ビタミンB12などが使われます。
イ) アレルギー性鼻炎治療薬
・ 抗アレルギー薬
・ 抗ヒスタミン薬
・ ステロイド薬
c)皮膚科疾患治療薬
ア) アトピー性皮膚炎
・ 抗ヒスタミン薬
・ 抗アレルギー薬
・ ステロイド薬
[設問] 縮瞳をおこして、眼房水の排出を促進するものはどれか?
イ 副交感神経作動薬
ロ プロスタグランジン誘導体
ハ βブロッカー
ニ 利尿薬 正解 (イ)
[設問] 眼房水の産生を抑制する薬物群はどれか?
イ 副交感神経作動薬
ロ プロスタグランジン誘導体
ハ βブロッカー
ニ αアゴニスト 正解 (ハ)
[設問] めまい発作時に最もよく使われる注射薬はどれか?
イ 炭酸水素ナトリウム
ロ ジアゼパム
ハ ビタミンB12
ニ ベタヒスチン 正解 (イ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第51回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
c)排尿障害治療薬
ア) αブロッカー
・ 前立腺肥大や脊髄腫瘍での膀胱頸部の筋緊張による排尿障害の治療に使われます。
・ α1ブロッカーとして、プラゾシン、テラゾシン、タムスシンなどがあります。
イ) ムスカリン受容体遮断薬(抗コリン薬)
・ オキシブチニンが代表的な薬剤です。
ウ) 副交感神経作動薬
・ 手術後や脊髄損傷後にみられる尿閉の治療にコリン作動薬としてベタネコール、コリンエステラーゼ阻害薬としてネオスチグミンが使われます。
エ) 抗アンドロゲン薬
・ 前立腺肥大の抑制を目的に使われます。 黄体ホルモン誘導体のクロルマジノン、ゲストノロン、アリルエストレノールが使われます。
d)性機能障害治療薬
ア) 陰茎勃起(いんけいぼっき)の生理
・ 陰茎海綿体(いんけいかいめんたい)と陰茎海綿体に血流を供給する海綿体動脈が弛緩することによって陰茎勃起(いんけいぼっき)がおこります。 この弛緩に関与するのは非アドレナリン作動性、非コリン作動性(NANC)神経とされています。 この神経はNOを伝達物質とするNO作動性といわれています。 NOが遊離されると海綿体平滑筋細胞内のcGMPが上昇することで海綿体は弛緩し勃起がおこるのです。
イ)EDの治療薬
・ シルデナフィル、塩酸バルデナフィル、タダラフィルは陰茎海綿体のcGMPを分解する酵素であるホスホジエステラーゼV(PDE-V)の選択的阻害薬です。 これによりcGMPが上昇し陰茎海綿体の弛緩を増強することで勃起障害を改善します。 PDE-Vは血管平滑筋にも存在するのでニトログリセリンなどの硝酸薬との併用は過度の血圧低下をきたすことがあり、禁忌です。
[設問] 排尿に関するαブロッカーの作用を一つ選べ。
イ 排尿筋の収縮
ロ 内尿道括約筋の弛緩
ハ 外尿道括約筋の収縮
ニ 排尿筋の弛緩 正解 (ロ)
[設問] 排尿に関する抗コリン薬の作用を一つ選べ。
イ 排尿筋の収縮
ロ 外尿道括約筋の収縮
ハ 内尿道括約筋の収縮
ニ 外尿道括約筋の弛緩 正解 (ハ)
[設問] 排尿に関する副交感神経作動薬の作用を二つ選べ。
イ 排尿筋の収縮
ロ 内尿道括約筋の収縮
ハ 内尿道括約筋の弛緩
ニ 排尿筋の弛緩
ホ 外尿道括約筋の弛緩 正解 (イ、ハ)
[設問] 陰茎の海綿体動脈の弛緩に関与するのは次のどれか?
イ アドレナリン作動性神経
ロ コリン作動性神経
ハ GABA作動性神経
ニ NO作動性神経 正解 (ニ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第50回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
J)泌尿・生殖器作用薬
a) 子宮収縮薬
ア) オキシトシン
・ オキシトシンはペプチドなので胃腸で分解されるため、経口投与では無効です。
・ オキシトシンは分娩誘発、微弱陣痛(びじゃくじんつう)、弛緩性子宮出血などに使われます。
イ) プロスタグランジン
・ プロスタグランジンに対する子宮の感受性は、オキシトシン同様に増大します。
・ 妊娠末期の陣痛誘発、促進、分娩促進、分娩後の子宮弛緩、産褥(さんじょく)時の出血に対して使われます。
ウ) 麦角アルカロイド
・ 麦角アルカロイドの子宮平滑筋の収縮に関与するのは、主に5-HT受容体です。
・ 子宮平滑筋の運動性を増強します。
・ 分娩後の弛緩出血、産褥時の出血の調節や子宮復古(ふっこ)促進目的で使われます。
b)子宮運動抑制薬(子宮弛緩薬)
ア) アドレナリン作動性β2受容体刺激薬
・ 切迫流産、早産などに使われる。リトドリン、イソクスプリンが経口、注射で使われます。
イ) 硫酸マグネシウム
・ β2受容体刺激剤が使えないときに利用されます。
ウ) Ca拮抗薬
・ オキシトシンで誘発された収縮を抑制します。 早産の治療にニフェジピンの舌下投与が行われます。
[設問] 分娩誘発に使われるものを二つ選べ。
イ オキシトシン
ロ プロスタグランジン
ハ 麦角アルカロイド
ニ Ca拮抗薬
ホ 硫酸マグネシウム 正解 (イ、ロ)
[設問] 切迫流産に使われるのはどれか? 一つ選べ。
イ オキシトシン
ロ 麦角アルカロイド
ハ 抗コリン薬
ニ β2受容体刺激薬 正解 (ニ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第49回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
c)カルシウム代謝調節薬
ア) 活性型ビタミンD3
・ ビタミンD補充の目的で投与されます。 副作用は過剰症で、高Ca血症、多尿、腎石灰化症、異所性石灰化、腎不全、腎結石などをきたします。 血中Ca2+濃度は、[Ca2+]×[無機リン]が一定になるように調節されています。
イ) 副甲状腺ホルモン
・ 副甲状腺ホルモンは破骨細胞を活性化し、骨吸収を増加させます。 また、腎臓でのCaの再吸収を刺激し、リン酸の排泄を促進します。
ウ) カルシトニン
・ 高Ca血症と骨粗鬆症に適用されます。 カルシトニンの注射が骨疼痛に持続的な鎮痛効果を示します。
エ) 骨粗鬆症治療薬
・ Ca製剤: 血中Ca値を回復し、副甲状腺ホルモンの分泌を抑え骨吸収を抑制します。
・ カルシトニン: 骨吸収抑制と鎮痛作用があります。
・ ビタミンD: 老人性骨粗鬆症のファーストチョイスです。
・ エストロゲン: 骨吸収抑制作用があります。
・ イプリフラボン: カルシトニンの合成と分泌を促進します。
・ ビスホスホネート系薬物: 破骨細胞の骨吸収を抑制します。
・ ビタミンK
・ チアジド系利尿薬: 腎遠位尿細管でのCaの再吸収を高めます。
・ PTHパルス療法
d)ビタミン
ア) 水溶性ビタミン
イ) 脂溶性ビタミン
[設問] 骨訴訟症治療薬の組み合わせの正しいものを一つ選べ。
イ Ca製剤・ビタミンD・カルシウム拮抗薬
ロ ビタミンD・エストロゲン・ビスホスホネート
ハ カルシトニン・ステロイド・ビタミンD
ニ ビタミンD・ビスホスホネート・ニコチン酸誘導体
正解 (ロ)
[設問] 水溶性ビタミンと適応症の組み合わせで正しいものを一つ選べ。
イ ビタミンB1 --- ペラグラ
ロ ビタミンB6 --- 壊血病
ハ ビタミンB12 --- 末梢神経炎
ニ ビタミンC --- アルコール性神経障害 正解 (ハ)
[設問] 脂溶性ビタミンと適応症の組み合わせで正しいものを一つ選べ。
イ ビタミンA --- 夜盲症
ロ ビタミンD --- 不妊症
ハ ビタミンE --- 出血傾向
ニ ビタミンK --- 骨軟化症 正解 (イ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第48回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
I)代謝・栄養疾患治療薬
a) 高脂質血症治療薬
ア) リポ蛋白の構造と種類
・ 血清脂質にはコレステロール、コレステロールエステル、中性脂肪(主にトリグリセリド)、リン脂質、遊離脂肪酸があり、すべてリポ蛋白の形で存在します。
・ リポ蛋白は、比重により分けられ、HDL(高比重リポ蛋白)、LDL(低比重リポ蛋白)、IDL(中間型リポ蛋白)、VLDL(超低比重リポ蛋白)、カイロミクロンがあります。
・ カイロミクロンは食餌によって摂取した中性脂肪の輸送を行います。
・ LDLは主にコレステロールエステルを肝臓から末梢組織へ輸送しています。
・ HDLは主に末梢のコレステロールをコレステロールエステルの形で肝臓に運ぶ役割を担っています。
イ) 高脂血症治療薬
・ HMG-CoA還元酵素阻害薬: プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチンなどがあり(スタチン類)、肝臓でのコレステロール合成を抑制します。 LDL低下作用が強い薬剤群です。 副作用としては肝障害、ミオパチーなどがあります。
・ フィブラート系:クロフィブラート、べザフィブラート、フェノフィブラート、クリノフィブラートがあり、主に中性脂肪を減らします。
・ EPA製剤: 魚油から精製された脂肪酸エイコサペンタエン酸で、主に中性脂肪を減らします。
・ 小腸コレステロール吸収阻害薬: エゼチミブ。小腸壁での食事性コレステロールの吸収を阻害する作用を持っています。
・ 胆汁酸吸収阻害薬: コレスチラミン。LDL低下作用を持っています。
・ ニコチン酸誘導体: LDLとVLDLの低下、HDLの上昇作用を持っています。
b)痛風・抗尿酸血症治療薬
ア) コルヒチン
・ 痛風発作の予防効果がみられ、発作予兆期に使われます。 現在は関節炎発作治療のファーストチョイスではありません。
イ) 非ステロイド性抗炎症薬
・ アリール酢酸系: インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム、スリンダク
・ プロピオン酸系: ケトプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン
ウ) 尿酸排泄薬: 尿細管での尿酸再吸収を阻害して、排泄促進します。 ベンズブロマロン、プロベネシド、スルフィンピラゾンがあり、尿酸排泄低下型高尿酸血症の治療に使われます。
エ)尿酸生成抑制薬: アロプリノール、フェブキソスタットがあり、尿酸産生過剰型高尿酸血症の治療に使われます。
エ) 尿アルカリ化薬: pHが低いほど尿酸は尿に溶けにくくなるため、使われます。クエン酸カリウムとクエン酸ナトリウムなどがあります。尿酸排泄促進薬を使う場合は、併用する必要があります。
[設問] HMG‐CoA還元酵素阻害薬を選べ。
イ クロフィブラート
ロ コレスチラミン
ハ プラバスタチン
ニ エゼチミブ 正解 (ハ)
[設問] コレステロール吸収を担う小腸コレステロールトランスポーターに結合し、コレステロールの吸収を阻害するものはどれか? 一つ選べ。
イ クロフィブラート
ロ コレスチラミン
ハ シンバスタチン
ニ エゼチミブ 正解 (ニ)
[設問] 中性脂肪低下作用の強いものを一つ選べ。
イ フェノフィブラート
ロ プラバスタチン
ハ エゼチミブ
ニ シンバスタチン 正解 (イ)
[設問] 痛風関節炎の治療にファーストチョイスとして使われるのはどれか? 一つ選べ。
イ コルヒチン
ロ 非ステロイド系抗炎症薬
ハ 尿酸排泄促進薬
ニ 尿酸生成抑制薬 正解 (ロ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第47回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
d)甲状腺機能異常治療薬
ア) 甲状腺機能低下症の治療薬
・ 甲状腺ホルモン: チロキシン(T4)
イ) 甲状腺機能亢進症の治療薬
・ 抗甲状腺薬: 甲状腺ホルモンの生合成を抑制します。 チアマゾール、メチマゾール、プロピルチオウラシル。 副作用として無顆粒球症、蕁麻疹などが出ることがあります。
・ 無機ヨード
・ β遮断薬: 甲状腺機能亢進症に対する交感神経系の興奮による症状を改善します。
e) 性腺ホルモン
ア) GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)
・ 視床下部ホルモンの一つで、下垂体前葉からのゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)の分泌を調節しています。
・ ゴナドトロピン低分泌性性腺機能低下による不妊症の治療に自動間欠注入ポンプを使って、排卵促進をねらって投与されます。
イ) FSH(卵胞刺激ホルモン)
・ 男性でも卵胞刺激ホルモンと呼ばれます。 男性では、精巣のセルトリ細胞に作用し精子形成を促します。
・ 女性では卵胞の発育を促進します。
ウ) LH(黄体形成ホルモン)
・ 男性でも黄体形成ホルモンと呼ばれます。 男性では精巣間質にあるライディヒ細胞に働いてアンドロゲンの分泌を促します。
・ 女性では、卵胞を包む内莢膜細胞に作用してエストロゲンの分泌を刺激します。 排卵1日前のLH分泌のピークにより排卵を誘発します。 黄体形成後は黄体からのプロゲステロンを分泌させます。
・ ゴナドトロピン欠乏症による精子形成不全には、製剤のHCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン:LH)とHMG(下垂体性性腺刺激ホルモン:FSH)が使われます。
エ) 女性ホルモン
・ 女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)はホルモン性避妊、ホルモン補充療法、月経異常、流産防止に使われます。
オ) 経口避妊薬
・ 副作用として、静脈血栓症のリスクが増加します。
カ) アンドロゲン
・ テストステロンはジヒドロテストステロンに代謝されてアンドロゲン受容体に結合し作用します。 テストステロンは肝臓での代謝速度が速く、経口投与には不適です。
キ) 抗アンドロゲン薬
・ シプロテロンはテストステロンの競合的拮抗薬であり、前立腺肥大症や前立腺癌に対し、女性の男性化徴候に対して使われます。
[設問] 甲状腺機能低下症について正しい記述を一つ選べ。
イ 甲状腺機能低下症では、治療薬として甲状腺ホルモンが使われる。
ロ 甲状腺機能低下症では頻脈になる。
ハ チアマゾールは甲状腺機能低下症に使われる薬剤である。
ニ 甲状腺機能低下症では体重が減ることが多い。 正解 (イ)
[設問] 経口避妊薬に含まれるものを二つ選べ。
イ アンドロゲン
ロ エストロゲン
ハ プロゲステロン
ニ 卵胞刺激ホルモン
ホ 黄体形成ホルモン 正解 (ロ、ハ)