母性看護学(12)(周産期にある人々の看護) [母性看護学]
(2)妊婦の心理
・ 妊娠初期は気分の変動が著しく、アンビバレントな感情がおこりやすい状態となっています。
・ 妊娠中期はプロゲステロンの影響を受けて、自己陶酔的な状態となります。 また、胎動自覚・他者からの注目をより心地よく感じるようになります。
・ 妊娠後期は腹部増大に伴う身体的変化の影響により、気持が内向的になります。 また、出産への不安が集中する時期でもあります。
・ 妊娠期の心理・社会的特徴は、親役割獲得過程への準備期であり、母親役割モデルの有無や妊娠の受容もこれに関係してきます。
・ 胎動による胎児との愛着形成によって、母親としての自己像が形成されていきます。
・ 妊娠期は、受容的ニードが高まっています。
(3)妊娠と不快症状
・ マイナートラブルとは、ホルモン動態変化や子宮増大によって生じる種々の不快症状のことです。 それは、精神的因子に影響されることもあり、症状や感じ方、出現頻度には個人差があります。
・ 妊娠初期には、つわり・めまい・立ちくらみ・頻尿・便秘・乳房増大・帯下の増加がおこりやすくなります。
・ 妊娠中期には、湿疹や掻痒感がおこりやすくなります。
・ 妊娠末期は、頻尿・腰背部痛・浮腫・下肢けいれん・静脈瘤・痔・胸やけがおこりやすくなります。
(4)妊婦の日常生活とセルフケア
・ 全期間を通して便秘になりやすいので、食事や排便習慣など生活の工夫が必要となります。
・ 日常の家事は、正しい姿勢で疲労しない程度にします。 また転倒予防と腹圧をかけない工夫をします。
・ 妊婦に望ましい運動は、全身運動で有酸素運動かつ楽しいものがよいとされます。 それには、散歩、妊婦体操、妊婦水泳、マタニテイビクスなどがあります。 妊婦体操は妊娠12週頃から始めて、16週以降は習慣的に行うようにします。
・ 旅行は妊娠中期の安定した時期にはOKです。 旅行前には受診してもらい、同伴者をつけ、無理のない日程とします。 また、母子手帳と保険証を携帯するようにします。
・ 睡眠時間や休息は十分にとるようにします。 睡眠不足がおきた場合は昼寝で補うようにします。
・ 妊娠中は発汗・帯下の増量がおこるので清潔に努めます。 また、う歯と歯肉炎が発生しやすくなっていますので口腔の清潔をこころがける必要があり、妊娠中期には歯科を受診するとよいとされます。
・ 性交に通常制限はありませんが、感染予防などのためコンドーム使用が勧められます。 ただし流早産の兆候や既往がある場合、性交は控えるようにします。
・ 妊娠期の衣生活は、サイズ調整ができ吸湿性・通気性の良いものとします。
・ 勤労妊婦は、労働基準法・男女雇用機会均等法や健康保険法で就業や経済的支援が定められています。 これらは、妊婦自身の申請を必要とします。
(5)出産・育児の準備
・ 分娩・産褥・育児の必要物品は妊娠22週頃までに準備します。
・ 里帰り分娩の場合は、妊娠中期に、分娩する施設の受診をしておくことが望ましいでしょう。 また、妊娠経過の記録を紹介状として持参するようにします。
・ 分娩準備教育とは、分娩経過の理解、分娩への不安緩和、分娩の意欲を養うなど、妊婦の心身の準備を目的とするものです。
・ 妊娠24週以降は、呼吸法・リラクゼーションの練習を行います。
・ バースプランとは、妊婦および家族の出産およびその後の育児を含めた過ごし方について、希望や要望を盛り込んだ計画書のことです。
・ 妊娠期に乳房の生理的変化や母乳哺育の利点欠点を説明して、積極的に母乳育児に取り組めるようにします。 乳房ケアに関しては、乳房変化に合わせた締め付けないブラジャーを着用してもらい、妊娠20週頃より乳頭の清潔保持に努めます。 妊娠36週以降は、乳管開通マッサージを行います。
(6)親役割の準備
・ 子供を育てることは母親のみが行うものでありません。 子育てとは、父親・母親ともに親になる過程を経ながら、子供の成長に関わっていくことです。 夫婦間の調整や親役割獲得、家族関係の再構成が課題となります。 父親役割・きょうだい役割・祖父母役割・夫婦間の調整・家族関係の再構成について話し合いを促すことも大切です。
・ 地域や施設での両親学級や祖父母学級などへの参加や、先輩父母との交流の機会を通して、親としての自覚を育てるようにします。
[設問] 妊娠中期に、胎動自覚や他者からの注目を心地よく感じるのは、何によるものか?
イ エストロゲン ロ プロゲステロン ハ 絨毛性ゴナドトロピン ニ 胎盤性ラクトーゲン
正解 (ロ)
[設問] 妊娠中におこる不快症状をまとめて何というか?
イ マイナートラブル
ロ マタニティブルー
ハ 妊娠中毒症
ニ 妊娠合併症 正解 (イ)
[設問] 妊婦の日常生活とセルフケアについて、正しいものを一つ選べ。
イ 妊娠中は下痢になりやすいので、食事には気をつける。
ロ 日常の家事は、全期間通じてしないようにする。
ハ 妊婦に望ましい運動は、全身を使う有酸素運動で、楽しいものがよい。
ニ 旅行は、妊娠初期にはかまわないが、中期以降が避ける。
正解 (ハ)
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