疾病の成り立ちと回復の促進 第35回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
n) 筋弛緩薬
ア)中枢性筋弛緩薬: ベンゾジアゼピン系の薬剤、バクロフェンなどがあります。これらの薬剤は、中枢神経を抑制することによって筋弛緩をおこします。
イ) 神経筋接合部遮断薬:
・ 運動神経からの刺激が骨格筋側に伝わる部位である神経筋接合部(しんけいきんせつごうぶ)の伝達を遮断する薬剤が神経筋接合部遮断薬(しんけいきんせつごうぶしゃだんやく)となります。
・ 神経筋接合部のアセチルコリン受容体はニコチン受容体であり、ニコチン受容体に神経筋接合部遮断薬は結合します。
・ 薬剤としては、ツボクラリン、パンクロニウム、スキサメトニウムなどがあります。
o) 局所麻酔薬
ア)局所麻酔薬とは?
・ 意識をなくさせず、痛みだけを感じさせなくするものが局所麻酔(きょくしょますい)薬です。
イ)局所麻酔の様式のいろいろ
・ 表面麻酔: 粘膜の麻酔で使われる。粘膜表面に麻酔薬を塗布し感覚受容器を麻痺させます。
・ 浸潤麻酔(しんじゅんますい): 皮下注射でその周辺部の感覚神経を麻痺させます。
・ 伝達麻酔(でんたつますい): 感覚神経の周囲に注射して感覚神経の伝導を遮断します。
・ 硬膜外麻酔(こうまくがいますい): 脊髄の硬膜の外に注入して後根(こうこん)に作用させます。
・ 脊椎麻酔: 脊髄のくも膜下腔に注入して後根(こうこん)に作用させます。 腰椎部でのことが多いので、その場合腰椎麻酔(ようついますい)といいます。
ウ)局所麻酔薬のいろいろ
・ コカイン: 表面麻酔に使われる。眼科で点眼液として、耳鼻科で塗布薬として使われます。
・ プロカイン: 浸潤麻酔、腰椎麻酔に使われます。 誤って血管内に入ると中枢神経を興奮させ、けいれんをおこすことがあります。
・ リドカイン: プロカインより強力。表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔、腰椎麻酔のいずれにも使用可能です。
エ)局所麻酔薬の効果の出方
・ 効果は神経線維の無髄の細いものから発現していきます。 交感神経→感覚神経→運動神経の順で、感覚神経では、痛覚や温度覚が早期に、触覚や深部感覚は後期に効果は現れます。
オ)副作用
・ 交感神経が麻痺し、血管拡張がおこるためにショックがおこることがあります。
p) 解熱鎮痛抗炎症薬
ア)非ステロイド性抗炎症薬
・ アスピリン: 酸性抗炎症薬であり、体内でサリチル酸とアセチル基に分解し、サリチル酸として作用します。 また、シク
ロオキシゲナーゼ(COX)の活性部位であるセリン残基をアセチル化することにより、シクロオキシゲナーゼを阻害する作用も持っています。
・ インドメタシン: インドメタシンは最も強力なシクロオキシゲナーゼ阻害作用を持ち(アスピリンの薬20倍)、内服、坐薬、軟膏、パップ剤などとして使われます。
・ 塩基性抗炎症薬: チアラミドが塩基性抗炎症薬の代表。酸性抗炎症薬のような強い副作用はありません。
・ 解熱鎮痛薬: アミノピリン、スルピリンはピリン系解熱鎮痛薬といわれます。 アセトアミノフェンは非ピリン系解熱鎮痛薬であり、解熱鎮痛作用は強いが抗炎症作用は弱く、アスピリンが副作用のため使えない人、小児の短期間の解熱鎮痛薬のファーストチョイスとされます。
[設問] 麻酔薬の投与法と麻酔の種類の説明で正しいものを一つ選べ。
イ 粘膜表面に麻酔薬を塗布して感覚受容器を麻痺させるのは表面麻酔である。
ロ 感覚神経の周囲に麻酔薬を注射して神経伝導を遮断するのは浸潤麻酔である。
ハ 皮下へ麻酔薬を注射し周辺部の感覚神経を麻痺させるのは伝達麻酔である。
ニ 脊髄の硬膜の外に麻酔薬を注入して後根を麻痺させるのは脊椎麻酔である。
正解 (イ)
[設問] 表面麻酔に使われる麻酔薬を二つ選べ。
イ コカイン ロ リドカイン ハ プロカイン ニ 笑気 ホ ハロセン
正解 (イ、ロ)
[設問] 局所麻酔薬の効果の出方の正しい説明文を一つ選べ。
イ 効果は、有髄神経の径が大きいものから発現する。
ロ 感覚神経よりも交感神経の方が効果が早く出る。
ハ 感覚神経よりも運動神経の方が効果が早く出る。
ニ 感覚神経では、深部感覚が最も効果は早く出る。 正解 (ロ)
[設問] 局所麻酔薬によるショックは、以下のどれの麻痺によるものか?
イ 運動神経
ロ 感覚神経
ハ 交感神経
ニ 副交感神経 正解 (ハ)
[設問] 小児でよく使われる解熱鎮痛薬は以下のどれか? 一つ選べ。
イ アミノピリン ロ スルピリン ハ アスピリン ニ インドメタシン ホ アセトアミノフェン
正解 (ホ)
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