疾病の成り立ちと回復の促進 第15回(病態のいろいろ) [疾病の成り立ちと回復の促進]
C)ショック
a)ショックとは?
・ 循環血液量の低下により全身の末梢循環障害がおこり、これにより全身臓器が高度の酸素不足から機能低下をおこす結果生じる症候群です。
・ 循環血流量の低下には、大量出血で血管内の血液が激減した場合と、血圧低下などである一定の時間に流れる血液量が激減した場合があります。
・ 臨床的には、顔面蒼白(がんめんそうはく)、冷汗、刺激に対する反応性低下、血圧低下を示します。
b)神経原性ショック
・ 強い精神的な刺激、強い痛みなどで全身の毛細血管の拡張がおこり有効循環血液量(心臓に戻ってくる血液の量)の低下のため重要臓器の酸素不足が生じておこるものです。
c)心原性ショック
・ 心筋梗塞など心拍出能力が高度に低下したときにおこります。
d)低容量性ショック
・ 何らかの原因による出血、脱水、下痢など大量の体液が喪失したときにおこるものである。
e)敗血症性ショック(エンドトキシンショック)
・ 細菌(特にグラム陰性桿菌)により放出されるエンドトキシン(菌体内毒素)によりおこるものです。
f)アナフィラキシーショック
・ IgEを介したI型アレルギー反応によっておこるショックのことです。
g)ショックによる臓器障害
・ ショック腎: ショックによる腎血流量の低下により尿量減少がおこります。場合によっては尿細管壊死に至ることもあります。
・ ショック肺: ショックによって肺胞壁が障害され、間質性肺炎がおこります。重症化、慢性化すると呼吸不全をきたし死に至ることもあります。
・ DIC(播種性血管内凝固症候群): 血液凝固系の亢進のため全身の細小血管に血栓が形成され、多臓器不全をおこします。
D)高血圧による臓器障害
a)脳と心臓の血管系の障害
ア)脳血管障害
・ 高血圧性脳症: 血圧が急激に上昇すると脳水腫などがおこり、頭痛、悪心(おしん)、けいれん、意識障害などをきたすものです。
・ 脳内出血: 長年の高血圧などにより細小動脈の壁の脆弱化をきたし、さらに血圧が上昇したときに血管壁が破綻しておこるものです。
・ くも膜下出血: 高血圧などのために、もともと動脈壁の脆弱な部位に瘤ができ、血圧上昇の際に破綻しておこるものです。
イ) 心・血管系の障害
・ 心拡大: 高血圧が続くと左心室肥大→肺うっ血→右心室肥大へと進行していきます。
・ 大動脈瘤の形成
・ 冠状動脈やその他の細小動脈の動脈硬化の促進
・ 悪性高血圧: 高血圧が臓器障害をおこし、それによる脳、心臓、腎臓などの臨床症状を伴う場合をいいます。
E)動脈硬化症に伴う障害
・ アテローム硬化: アテローム硬化は大動脈(弾性動脈)と中動脈(筋性動脈)の内膜に平滑筋細胞、脂質、結合組織
が進行性に蓄積する病態をいいます。 この病態は心筋梗塞や脳梗塞の発症につながっていきます。
[設問] ショックで見られるものを二つ選べ。
イ 顔面蒼白
ロ 高血圧
ハ 冷や汗
ニ 過呼吸
ホ 精神的高揚 正解 (イ、ハ)
[設問] 強い痛み刺激でおこるショックはどれか?
イ 神経原性ショック
ロ 心原生ショック
ハ エンドトキシンショック
ニ アナフィラキシーショック 正解 (イ)
[設問] 脳内出血の原因として最も多いのはどれか?
イ 動脈瘤破裂 ロ 血管腫からの出血 ハ 高血圧 ニ 糖尿病
正解 (ハ)
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