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疾病の成りたちと回復の促進 第21回(病態のいろいろ) [疾病の成り立ちと回復の促進]

(8)腫瘍

A) 腫瘍とは?

・ 腫瘍とは、生体固有の細胞が無制限かつ不可逆的に増殖し、体表または体内に継続的に新たな体積を占める病変のことです。

B)良性腫瘍と悪性腫瘍

a) 良性と悪性の一般的相違点

ア)発育: 良性は緩徐、悪性は急速

イ)発育の前線: 良性は限局性で境目が明らか、悪性は周囲へ浸潤

ウ)臓器機能: 良性では機能障害は軽度、悪性では高度

エ)転移: 良性ではみられず、悪性では高頻度

オ)全身への影響: 良性では少、悪性では著明

カ)手術による摘除: 良性では容易、悪性では全摘困難

キ)再発: 良性では少、悪性では高頻度

ク)予後: 良性では良好、悪性では不良 

b) 病理学的相違点

ア)肉眼的所見: 良性は表面が平滑で、境界明瞭、単純な膨張性発育、悪性では表面が不規則で、境界不鮮明で、膨張性+浸潤性(しんじゅんせい)発育

良性と悪性.png

イ)組織学的所見: 良性では細胞配列が保たれ(構造異型(いけい)なし)、個々の細胞や核の大きさや形がそろっている(細胞異型なし)のに対し、悪性では細胞配列はくずれ、細胞や核の大きさや形がばらばらです(異型性(いけいせい))。

ウ)細胞学的所見: 

・ 核/細胞比が高いほど未分化(みぶんか)で、悪性度が高くなります。

腫瘍の分化度.png

・ 核分裂像が多いほど、悪性度が高くなります。

・ 核の形が異様で不規則なもの、濃く染まるものほど悪性度が高くなります。

・ 組織内に壊死が見られるほど、悪性度が高くなります。

C) 組織発生に基づく腫瘍の分類

a) 上皮性腫瘍

・ 皮膚、粘膜上皮、腺上皮などから発生した腫瘍をいいます。

・ 上皮性腫瘍で悪性のものを癌腫(がんしゅ)と呼びます。

b)非上皮性腫瘍

・ 筋肉、骨、軟骨、軟部組織(線維、脂肪、神経など)の非上皮性組織から発生した腫瘍をいいます。

・ 非上皮性組織由来の悪性腫瘍を肉腫(にくしゅ)と呼びます。

c)混合腫瘍、その他

・ 2種類以上の異なる組織由来の細胞群からなる腫瘍を混合腫瘍といいます。

・ 乳腺の線維腺腫、唾液腺の多形成腺腫、奇形腫などがあります。

[設問] 以下より悪性腫瘍の特徴を二つ選べ。

イ 周囲へ浸潤する傾向が強い。

ロ 臓器の機能障害は軽度である。

ハ 転移はみられない。

ニ 再発が高頻度である。

ホ 全身への影響はないか、少ない。    正解 (

[設問] 悪性腫瘍の病理学的特徴を二つ選べ。

イ 表面が平滑である。

ロ 境界は不鮮明である。

ハ 細胞配列が保たれている。

ニ 核/細胞比が低い。

ホ 核分裂像が多く、濃く染まる。    正解 () 

[設問] 以下の文で正しいものを一つ選べ。

イ 上皮性腫瘍で悪性のものを肉腫と呼ぶ。

ロ 筋肉から発生した悪性腫瘍は癌腫である。

ハ 2種類以上の異なる組織由来の細胞群からなるのは、混合腫瘍である。

ニ 腺上皮から発生した腫瘍は、混合腫瘍である。

                    正解 (


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