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在宅看護論(15 )(在宅における医療管理を必要とする人と看護) [在宅看護論]

4)在宅人工呼吸法

(1)療養者

・ 肺線維症や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺疾患、筋ジストロフィーや筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経筋疾患で、医師によって在宅人工呼吸療法が必要を判断された患者が対象となります。

・ 非侵襲性陽圧換気(NPPV)は、インターフェイスを用いた自発呼吸の補助換気であるため、療養者に呼吸中枢の障害がなく、自発呼吸が保たれていることが絶対条件です。

・ 一般に、動脈血酸素分圧(PaO2)が50mmHg以下の場合、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)が70mmHg以上に蓄積する場合、酸素療法によって呼吸状態が改善しない時は人工呼吸法の適応となります。

酸素分圧.png

・ 睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、「閉塞型」「中枢型」「混合型」に分類され、閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の患者は、経鼻的持続陽圧呼吸療法の対象となります。

(2)人工呼吸器の構造と使い方

・ 在宅人工呼吸器療法には、気管切開後に気管内チューブ挿入による侵襲的陽圧換気(IPPV)と鼻マスクやフェイスマスクなどによる非侵襲的陽圧換気(NPPV)があります。

・ 人工呼吸器には、従量式(一定の送気量を設定)と従圧式(一定の気道内圧を設定)、従量式と従圧式の両機能を備えたものの3種類があり、在宅では携帯型人工呼吸器が普及しています。

人工呼吸器.png

(3)気道内のケア

・ 吸引前には、肺音の聴取を行います。

・ 看護者は、介護者とともに吸引を行い、介護者の手技が正しいものかどうかを確認します。

・ 療養者のカフエアの固定は医師の指示に従います。過剰なエア注入はカフ内圧を上昇させ、気道の圧迫壊死をひきおこす危険性があるので注意が必要です。

・ 気管切開部の発赤・腫脹・肉芽や出血、膿の有無を観察し、消毒とガーゼ交換を1日1回し、汚染が強い時はその都度実施し、皮膚トラブルや感染を予防します。

・ 気管の上流にあたる口腔内のケアも重要です。

(4)指導と安全管理

・ 在宅人工呼吸療法の開始前には、療養者・家族の意志や受け入れ状況を確認します。

・ 非侵襲的陽圧換気(NPPV)では、療養者の顔に最適のインターフェイス(鼻マスク、フェイスマスク)を選択します。

・ トラブル発生時の対処方法、アンビューバッグによる用手換気法、病院や訪問看護ステーションなど関連機関への連絡方法について指導します。

・ 在宅訪問時には、訪問時と退室時に呼吸器の管理と点検を行います。アラーム設定内容、気道内圧や換気量、回路や回路破損、回路内の貯留水、設定酸素吸入濃度、加温加湿器の滅菌蒸留水量などのチェックを行います。

(5)QOLの向上

・ 枕やスポンジなどを利用して安楽なポジショニングを工夫します。

・ 自動・他動運動を行い、関節可動域の維持、関節拘縮・筋力低下の予防を図ります。

・ 療養者の状態を観察しながら、なるべく音楽やテレビを活用し、外出も行ってもらうよう指導します。

・ 発語ができない場合は、非言語的コミュニケーション手段として、ホワイトボードや透明文字盤、コンピュータなどを利用します。

文字盤.png

・ 在宅人工呼吸器装着中の患者の場合、精神的ストレスが強いので精神面でのケアが必要です。

(6)社会資源の活用

・ 在宅人工呼吸法は、1994年から医療保険適応となり、1998年には非侵襲的陽圧換気(NPPV)が医療保険適応となっています。

・ 在宅の筋萎縮性側索硬化症では、家族の負担軽減のためヘルパーによる痰の吸引が、2003年から認められるようになり、2005年からは遷延性意識障害や筋ジストロフィーなどの在宅療養患者でも可能となっています。

・ 人工呼吸療法が必要と判断された原疾患が特定疾患の場合は、特定疾患医療費公費負担制度が利用できます。

・ 慢性呼吸不全などの呼吸器疾患に起因する人工呼吸療法の療養者は、「呼吸器機能障害」 の身体障害者手帳の交付を受けることができ、脳血管障害に起因する呼吸器機能障害で人工呼吸療法が必要な療養者は、 「肢体不自由」と 「呼吸器機能障害」 の両方の手帳の交付を、障害の程度に応じて受けることができます。

・ 認定を受けると、障害の区分により医療費の助成だけでなく、吸引器やネブライザーなどは日常生活用具の給付、もしくは世帯所得に応じた一部負担で購入することができます。

・ 特定疾患による在宅人工呼吸療法の療養者への訪問看護は、在宅人工呼吸器使用特定疾患患者訪問看護治療研究事業も併用して活用できます。

[設問] 在宅人工呼吸法について正しい記述を一つ選べ。

イ 対象となるのに、医師の判断は必要でない。

ロ 非侵襲性陽圧換気(NPPV)を使う場合、呼吸中枢の障害がなく、自発呼吸が保たれていることが絶対条件となる。

ハ 動脈血酸素分圧が50mmHg以下、動脈血二酸化炭素分圧が70mmHg以上になれば、すぐに人工呼吸の適応となる。

ニ 意識がなくても、NPPVは適応となる。

                                            正解 (

[設問] 人工呼吸器使用患者の気道内のケアについて、正しいものを一つ選べ。

イ 吸引前には肺音の聴取を行う。

ロ カフのエアを入れ過ぎても、特に問題はない。

ハ 気管切開部のガーゼ交換は週一回行う。

ニ 気管切開を行っていれば、口腔内のケアは特に必要ない。 

                                正解 (


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