精神看護(37)(精神医療看護の歴史と人権・倫理) [精神看護学]
(C)ルネサンスから近代(鉄鎖からの解放と新たな隔離収容時代)
(D)現代(精神医療の目覚ましい発展・進歩)
・ イギリスのジョーンズらは、1946年に、病院の解放性と民主的運営を基本にした治療的共同社会を実践しました。
・ 1952年の抗精神病薬クロルプロマジンの開発は、従来の治療形態を変化させました。
・ ケネデイ教書では(1963年)では、地域精神衛生活動に重点が置かれ、脱施設化の方向に活動が進められました。現代では、諸外国でも、地域精神医療の推進、社会復帰を図るための様々な取り組みが進められるようになっています。
[設問] 19世紀になって、精神科医療における保護衣や拘束器具を撤廃する、無拘束治療の運動の推進を行ったのは、次のだれか?
イ ピネル ロ テューク ハ コノリー ニ クレぺリン ホ ピアーズ
正解 (ハ)
精神看護(36)(精神医療看護の歴史と人権・倫理) [精神看護学]
5.精神医療看護の歴史と人権・倫理
1)精神医療看護の変遷
(1)欧米における精神科医療の歴史
(A)ギリシャ・ローマ時代(迷信から科学的接近の時代)
(B)中世のヨーロッパ(迫害時代と家庭保護の発生)
・ 中世のヨーロッパは、キリスト教全盛期であり、精神科医療はキリスト教僧侶の支配下に置かれ、精神医学は発展しておらず、暗黒の時代でした。
・ 暗黒時代の中にあっても、精神障害と悪魔との関係を否定した医師(ヨハンマイヤー)や道徳的な治療・看護をした人(ヴァン・サン・ド・ポールやルイス・ド・マリヤック)もいました。
・ 家庭保護の発生: アイルランドの王女デイフィンの遺体に精神障害者が触れると、奇跡的に治癒するといううわさが広まり、王女が亡くなったゲールの地に多くの患者が巡礼してくるようになりました。 そして、その巡礼者たちは民家に宿泊し、家庭的な雰囲気の中で保護や生活訓練を受けられるようになったのです。 この活動は現在も引き継がれています。
[設問] 「精神のありかは脳である」という学説を唱えたのはだれか?
イ ヒポクラテス ロ ガレノス ハ プラトン ニ コペルニクス
正解 (ロ)
[設問] 精神障害を脳の病気と考えたギリシャの学者はだれか?
イ ヒポクラテス ロ ガレノス ハ プラトン ニ コペルニクス
正解 (イ)
精神看護(35)(精神科治療と看護) [精神看護学]
5)活動療法、リハビリテーション療法
(1)作業療法
(2)レクリエーション療法
・ 自発性の開発、情操の維持、生活の調和をもたらすことを目的としています。 集団のゲームやスポーツ、行事などのレクリエーションを病院内外で患者の自主性を尊重しながら行います。 治療者も参加し、時間と場を共有することで現実的な関わりを楽しみながら行うことができます。
(3)芸術療法
・ 絵画、彫刻、陶芸、手芸、音楽などの種々の創作活動を治療手段として用いるものです。 創作活動の中では、言葉で語るよりも無意識的内容が表現されやすいといわれます。 作品に表現されたイメージについて治療者と患者が話し合い、心理的な意味を見いだしていくようにします。 また、創作活動を通して情緒の解放や自尊心の獲得ができるという効果もあります。
6)治療環境
(1)病棟環境の整備
・ 人権への配慮がなされており、プライバシーの保護ができている環境であることが大切です。 また、危険物の保管に注意し、安全で入院患者が安心できる環境を整えます。
・ 閉鎖病棟では施錠されているが、鍵は入院中の患者の安全を守るためのものであり、閉じ込めるものではないことを忘れてはいけません。
・ ホスピタリズムを予防するために、看護者は患者に積極的な関心を寄せ、日常生活への援助や活動への参加を勧めます。 他者との交流を促すなどし、変化のある環境をつくり出す必要があります。
・ 任意入院は開放処遇が原則です。
・ 信書の発信の制限、都道府県および地方法務局、その他の人権擁護に関する行政機関の職員ならびに患者の代理人である弁護士との電話、面会の制限はできません。
・ 12時間を超える保護室への隔離は、精神保健指定医の指示で行われます。
・ 身体拘束は、精神保健指定医の指示で行われます。
(2)チーム医療
・ 医師、看護師、精神保健福祉士(PSW; psychiatric social worker)、臨床心理士、薬剤師、栄養士、作業療法士、民生委員、地域の保健師、訪問看護師、ホームヘルパーなどが関わることになります。 これらの専門職がそれぞれの技術を活かして協力を行う、対象者中心の医療・保健・福祉の統合的サービスといえます。
[設問] 手芸、工作などを行ってもらい、生産意欲、創作性を開発することを目的とする治療は次のどれか?
イ 理学療法 ロ 作業療法 ハ 言語療法 ニ レクレーション療法
正解 (ロ)
精神看護(34)(精神科治療と看護) [精神看護学]
(2)電気けいれん療法
・ 50〜60Hz、約100Vの電流を2〜3秒間通電し、人工的に強直および間代性のけいれんをおこさせる治療法で、精神病薬が開発されるまで主要な精神科治療法として普及しました。
・ 適応: 躁うつ、統合失調症の緊張型、興奮や昏迷が著明で抗精神病薬が効果ない症例などに行われます。
・ 副作用: 骨折、脱臼、記憶障害などがあります。
4)精神療法
・ 内観療法とは、修養法として吉本伊信によって開発された内観法を応用したものです。 わが国の文化を背景にして、「恩」 「報恩」 の間の罪への気づきに注意を向け、過去から現在に至る個人の内的世界の無意識の部分に焦点を当てるものです。 つまり、患者が自分の内面に目を向け、観察し、自らの心の病を治療するための精神療法です。 アルコール依存症、薬物依存、摂食障害、心身症、抑うつ、神経症などで効果が報告されています。
・ 森田療法は、森田正馬が創始した神経症患者に対する精神療法であり、現実の不安や葛藤をあるがままに認めて、直面していることについて目的本意の態度がとれるようにしていくことです。 いわば、「悟り」の境地に至る過程をたどるような精神療法です。 森田療法のキーワードは「あるがまま」です。
・ 自律訓練法は、注意の集中と自己暗示によって全身を弛緩させるように訓練し、これを通して自分の力で心身の調整ができるようにすることを目的としています。
・ 個人精神療法とは、治療対象である患者が1人の場合の精神療法です。
・ 集団精神療法は、医師あるいは医師とコメデイカルスタッフが数人のグループを作り、病気についての質問や、治療への示唆、おこっている問題は何か、家庭や職場での振る舞い方などを話し合うものです。 個人のみで得られないような相互作用を利用して、治療させていくのが目的です。 集団精神療法には、生活技能訓練(SST)やアルコール依存症の自助グループAA(alcoholics anonymous)などがあります。
・ 家族精神療法は、患者個人の病としてではなく、家族全体の人間関係の病理としてとらえ、家族の相互交流パターンに介入し、家族システムの変容を目標とする治療手段です。
[設問] 患者が、自分の内的世界の無意識部分に焦点をあてて、こころの病を治療していくのはどれか?
イ 森田療法 ロ 内観療法 ハ 自律訓練法 ニ 個人精神療法
正解 (ロ)
精神看護(33)(精神科治療と看護) [精神看護学]
(D)抗不安薬の作用と副作用
・ 作用: 抗不安作用
・ 適応: 神経症レベルの不安、統合失調症の不安・焦燥、躁うつ病のうつ状態の不安や焦燥の緩和が対象となります。
・ 副作用: 筋弛緩・眠気・血圧低下・依存性などがあります。
・ ジアゼパム(商品名セルシン、ホリゾン)の静脈注射時は、呼吸抑制に留意することが大事です。
(E)抗てんかん薬の作用と副作用
・ 作用: てんかん発作の抑制、気分安定作用
☆ 最近使われるようになった抗てんかん薬: ガバペンチン(商品名:ガバペン)、トピラマート(商品名:トピナ)、ラモトリギン(商品名:ラミクタール)、レべチラセタム(商品名:イーケプラ)
(F)その他の薬物
・ 睡眠薬は、作用時間の長さや、作用の強さによって使い分けられています。 副作用として、筋弛緩、血圧低下、眠気、依存性、睡眠時無呼吸症候群があります。
・ アルコール依存症の治療薬として、シアナミド(商品名シアナマイド)などの抗酒薬があります。 服用後アルコールを摂取すると、顔面紅潮、悪心、めまいなど不快な症状がおこります。
[設問] 抗不安薬の副作用に該当するものを二つ選べ。
イ 筋弛緩 ロ 血圧低下 ハ けいれん ニ 不眠 ホ 不穏
正解 (イ、ロ)
[設問] 抗てんかん薬の中で、副作用として振戦がおきることがあるのはどれか?
イ カルバマゼピン ロ クロナゼパム ハ バルプロ酸 ニ フェニトイン
正解 (ハ)
精神看護(32)(精神科治療と看護) [精神看護学]
(B)抗うつ薬の作用と副作用
・ 作用: 抑うつ気分改善、抗不安・焦燥作用、意欲亢進・抑制除去作用などがあります。 抗うつ薬の中には、デュロキセチン、アミトリプチリンなど、慢性疼痛(頭痛など)に効果がみられるものがあります。
デュロキセチン: 商品名 サインバルタ
・ 適応: 躁うつ病のうつ状態、強迫神経症の強迫症状などに対して使います。
・ 副作用: 抗コリン作用による症状、循環器症状、躁転、老人の場合せん妄などの意識障害をおこすことがあります。
・ モノアミン酸化酵素阻害薬サフラジン(商品名サフラ)は頭痛、意識障害、高血圧発作などの副作用があり、また、他の薬やチーズなどの食物の相互作用で副作用を出すことがあります。 三環系抗うつ薬との併用は禁忌です。
(C)抗躁薬の作用と副作用
・ 作用: 抗躁作用・気分安定薬としての作用があります。
・ 適応: 躁状態・躁うつ病・統合失調症の気分高揚状態に使われます。
・ 副作用: 炭酸リチウム(商品名リーマス)の副作用には、振戦・下痢・悪心・複視・腎障害などがあります。 炭酸リチウムは有効域と危険量の間が狭く、中毒域に達しやすいため、血中濃度に注意し、定期的に測定する必要があります。
[設問] 抗うつ薬を飲んでいる患者が、身体のふるえや発汗過多などを訴えている。 何を考えるべきか?
イ 悪性症候群 ロ セロトニン症候群 ハ メタボリック症候群 ニ 禁断症状
正解 (ロ)
精神看護(31)(精神科治療と看護) [精神看護学]
3)身体療法
(1)薬物療法
(A)抗精神病薬の作用と副作用
[設問] 抗精神病薬服用中で摂食不良となっていた患者が、高熱が出て、血液検査でCPKの著明な上昇がみられた。 何が疑われるか?
イ 肺炎 ロ 腎盂腎炎 ハ 悪性症候群 ニ 髄膜炎
正解 (ハ)
精神看護(30)(精神科治療と看護) [精神看護学]
2)臨床検査
(1)脳波検査
・ 頭皮上から導出される脳の電気活動は、数十μVで微小電位ですが、これを100万倍くらいに増幅して記録した波形が脳波です。
・ 健常成人の安静、覚醒、閉眼時の脳波は、主にα波とβ波から成り立っています。
(2)知能検査
・ 知能検査は、発達障害や知的障害を鑑別するのに用いられる心理検査です。
・ 年齢からみた知能の発達の度合いを把握する指数として知能指数(IQ)が使われます。
・ 日本では、田中ビネー式テスト、鈴木ビネー式テスト、それにウエクスラー成人知能検査(WAIS-R)といった知能検査がよく使われます。
・ 認知症の診断が適切に行われる簡便な認知症評価スケールが開発されていて、長谷川式簡易知能評価スケールや国立精研式痴呆スクリーニングテストなどが知られています。
(3)記銘力検査
・ 記銘力検査は、記銘についての検査で、ベントン記銘力検査などがあります。
(4)人格検査
・ 人格検査は、心理テストを使って、その人の性格特性や病理について調べるもので、質問紙法と投影法があります。
・ 質問紙法では、性格の全体的傾向をとらえる谷田部—ギルフォード性格テスト(Y—Gテスト)や、人格を多面的にとらえるミネソタ多面人格目録(MMPI)がよく使われます。
・ 投影法には、木を描かせるバウムテスト、インクのしみのような図版を見せて反応を求めるロールシャッハ法、空欄の文章を補う文章完成法(SCT)などがあります。
[設問] 脳波で、健常者が覚醒安静にし、閉眼時に後頭部中心にみられるものは次のどれか?
イ アルファ波 ロ ベータ波 ハ シータ波 ニ デルタ波
正解 (イ)
[設問] 人格検査に使わるものを、一つ選べ。
イ 田中ビネー式テスト
ロ ロールシャッハ法
ハ 鈴木ビネー式テスト
ニ WAIS-R 正解 (ロ)
精神看護(29)(精神科治療と看護) [精神看護学]
(8)てんかん
・ てんかんは、てんかん発作を主症状とし、慢性に発作を反復する脳障害です。 確定診断には脳波検査が使われますが、100%てんかん脳波が検出されるわけではありません。
(9)心身症
・ 身体症状であっても、発症に心理的因子が重要な意味を持つ場合を心身症と呼びます。
・ 代表的な心身症として、過敏性大腸症候群、過換気症候群、蕁麻疹、円形脱毛症、高血圧、偏頭痛などがあります。
・ 心理的原因が同じようなものであっても、人により症状の出る器官が異なり、ある人は呼吸器系に、別の人には消化器系に症状が現れます。 これを器官選択といいます。
[設問] てんかん発作が短い間隔で、しかも長時間に及ぶ状態を何というか?
イ 全般発作 ロ 強直間代発作 ハ 欠神発作 ニ てんかん重積発作
正解 (ニ)
[設問] てんかん発作後に手足に麻痺が一過性に生じるものを何というか?
イ トッド麻痺 ロ ベル麻痺 ハ 単麻痺 ニ ラムゼイ・ハント症候群
正解 (イ)
[設問] 心身症の範疇に入るものの組み合わせとして正しいものを、一つ選べ。
イ 過敏性大腸症候群・円形脱毛症・脳梗塞
ロ 円形脱毛症・ベル麻痺・じんましん
ハ 過敏性大腸炎・過換気症候群・円形脱毛症
ニ 過換気症候群・クローン病・潰瘍性大腸炎
正解 (ハ)
精神看護(28)(精神科治療と看護) [精神看護学]
(6)ストレス関連障害
・ 急性ストレス反応とは、災害や事故などで自分では対処できない外傷的ストレスをこうむった時、意識に狭窄が生じたり失見当を伴う困惑を抱いたりすることをいいます。
・ 心的外傷ストレス障害(PTSD:post-traumatic stress disorder)
(7)器質性精神疾患
・ 器質性精神疾患とは、脳そのものに病変や損傷が生じることにより器質的な変化がおこり、そのために精神症状が生じるものをいいます。
・ 脳器質性精神障害の共通症状として、急性期では意識障害、慢性期では認知症や人格水準の低下が挙げられます。
・ 進行麻痺、パーキンソン病、一酸化炭素中毒、脳炎、脳腫瘍、頭部外傷、脳血管障害などがあります。
[設問] 災害や事故など外傷的ストレスを被ったあと、時間が経ってから、小さな刺激にも驚いたり、現実感が持てなかったり、外傷体験がフラッシュバックするのを何というか?
イ 急性ストレス反応 ロ 心的外傷ストレス症候群(PTSD) ハ 心因反応 ニ せん妄
正解 (ロ)