精神看護(22)(看護援助技法) [精神看護学]
(5)幻覚妄想状態
・ 幻覚妄想状態の患者をケアする場合、不可解な行動に対して指摘したり否定するようなことはせず、幻覚妄想を体験している患者の気持を受け入れる必要があります。
(6)意欲減退状態
・ 意欲減退状態とは、自発性や活動性の低下をきたした状態をいいます。
・ 意欲が減退したきっかけや原因を探し、患者の気持を把握するようにします。
・ 日常生活の援助を通して、患者が安心して生活できる環境づくりを行います。
・ レクリエーションや作業などへ参加しやすいように、患者と一緒に行動し、動機づけを図ります。
・ 患者の興味・関心のある事柄を探し、それから勧めてみるようにします。
・ 決して、無理強いはせず、時間をかけて関わるようにします。
(7)不眠状態
・ 不眠状態とは、睡眠の減少によって心身の不調や生活の支障をきたした状態のことです。
・ 睡眠状態を観察し、そこから不眠の原因を把握します。
・ 不眠の訴えに耳を傾け、主観的に不眠の原因を決め付けないようにします。
・ 安心で安楽な就眠環境をつくり、不眠による体力の消耗を最小限にする必要があります。
[設問] 幻覚妄想状態のケアで正しいものを一つ選べ。
イ 不可解な行動に対して、否定するようなことはしない。
ロ 患者の妄想は、極力肯定していく。
ハ 患者の訴えには、取り合わないようにする。
ニ 妄想に関しては、詳しく訊き出すようにする。
正解 (イ)
精神看護(21)(看護援助技法) [精神看護学]
(4)躁状態
・ 躁状態の場合、刺激に敏感で、容易に興奮し、不眠・多弁・多動となりますから、刺激を遠ざけるように環境を調整します。
・ 刺激を避けて、何をするにも、事前に声をかけて、決して脅かさないようにします。
・ 議論や説得をすることは避け、できるだけ聞き手となるようにします。
・ 必要最小限のことを手短に簡潔に伝え、後はできるだけ聞くことに徹します。 また、多人数を避けて、できるだけ1対1で会話を行うようにします。
・ 食事や睡眠がとれなくなることもあるので、休養がとれるように援助します。
・ 一貫した態度で接し、患者のペースに巻き込まれないようにします。
・ 他人に対して、過干渉で、無遠慮・無作法になり、自分勝手な行動をとりがちなので、社会的に逸脱した行動を防ぐ意味での保護が必要な場合もでてきます。
[設問] 躁状態でおこりやすいものを二つ選べ。
イ 寡黙 ロ 多動 ハ 不眠 ニ 過眠 ホ 意欲低下
正解 (ロ、ハ)
精神看護(20)(看護援助技法) [精神看護学]
(3)抑うつ状態
・ まじめで責任感が強いと、自分に対する期待が大きくなりがちであり、それに応えられない自分を経験することをきっかけにして、抑うつ状態に陥りやすくなります。
・ 不安、慢性便秘、自己尊重の慢性的低下を伴うことも多くなります。
・ 安易な励ましは、かえって自信を失わせ孤独感を強め、苦痛を与えるので避けるようにします。
・ 動きが少なくなり、入浴や食事などへの意欲を失いやすいため、清潔の維持や身体状態の変化に留意します。
・ 患者の訴えを根気よく聞き、患者の辛い気持を受け入れて、理解するように努める。患者のペース、声の調子などに合わせるようにする。
・ 軽度のうつ状態あるいは回復期には、自殺企図が多いので安全を図る必要があります。
・ 患者ができたこと、してみたいことを通して関わっていきます。
・ 日常生活の著しい滞りが、生命に関わる程の身体的な影響を患者に与える場合があります。
[設問] 抑うつ状態について正しく記述したものを一つ選べ。
イ まじめで責任感の強い人が陥りやすい。
ロ 慢性の下痢や買い物中毒などがおこりやすい。
ハ 抑うつ状態にある患者に対しては、励ましが有効である。
ニ 抑うつ状態が、日常の活動に影響を与えることは少ない。
正解 (イ)
精神看護(19)(看護援助技法) [精神看護学]
2)精神状態・問題行動と看護援助方法
(1)不安緊張状態
・ 患者の不安を理解するには自我意識として「不安なのは自分の心であることを知っているか(自覚できるか)?」を知ることが重要です。
・ 自我意識障害のない不安は、その原因疾患のほとんどが、心因性・神経症圏の疾患であり、予後は比較的良いとされています。
・ 自我意識障害を伴う不安は、統合失調症によくみられ、予後は比較的悪いといわれます。
・ ケアはまず、患者が不安状態にあることを察知することから始め、不安の程度・状態・原因のアセスメントを行っていきます。
・ ケアの中心テーマは、患者の感情表現を支えることです。
・ 患者の安全を保障し、枠組みを提示し、具体的な行動の動機づけと条件の確保を行います。
・ セルフコントロールと自己決定機能を確かめ、約束した具体的な取り組み課題の達成を確認することによって、自信の回復を図っていきます。
(2)ひきこもり状態
[設問] 不安を感じるのが、自分の心であるというのを自覚できないような(自我意識障害)不安は、次のどの疾患でみられやすいか?
イ 不安神経症 ロ パニック障害 ハ 統合失調症 ニ てんかん
正解 (ハ)
精神看護(18)(看護援助技法) [精神看護学]
(7)認知症
・ 認知症とは、いったん獲得された知能が脳の器質的障害によって永続的に低下、または喪失することであり、社会生活上著しい支障をきたすものです。
・ 認知症では、記憶の障害、計算力、思考力、総合的な判断力なども衰え、時間や場所の見当がつかない(見当識障害)、人格水準の低下、生き生きとした感情が失われます。 また、妄想や幻覚、不眠、興奮、徘徊、不潔行動などがみられることもあります。
・ 認知症の原因疾患はいろいろですが、その中で、アルツハイマー型認知症、脳血管障害の頻度が高いといわれます。
・ 脳血管障害による認知症の場合、知能の低下にむらがある 「まだらボケ」 の状態がおこりやすくなります。
・ 認知症は以前は痴呆と呼ばれていましたが、痴呆に代わる名称として、2004年11月の厚生労働省の検討会で 「認知症」 が採用されています。 厚生労働省では、その年の12月に検討報告を受け正式決定、実施としています。
(8)離脱症状(退薬症候群)
[設問] 認知症の症状の中で中核症状に入るものは次のどれか?
イ 判断力の低下 ロ 暴言 ハ 徘徊 ニ 抑うつ ホ 妄想
正解 (イ)
[設問] 認知症の症状の中で、BPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)に入るものはどれか? 二つ選べ。
イ 物忘れ ロ 判断力の低下 ハ 幻覚 ニ 見当識障害 ホ 不潔行為
正解 (ハ、ホ)
精神看護(17)(看護援助技法) [精神看護学]
(5)強迫
・ ある行為自体が苦痛に感じられ、ばかげていると思いながらも行わずにはいられない現象を強迫行為といいます。 自分の意思と関係なく浮かんでくる不快な強迫観念や不安を打ち消すための一種の儀式であるといわれています。
・ 強迫行為は、強迫神経症、うつ病、統合失調症、てんかん、器質性疾患などでみられます。
(6)せん妄
・ せん妄は、アルコールなどの薬物や身体疾患、高齢者など脳の全般的な機能低下を背景におこる意識の異常です。中等度の意識障害に錯覚や幻覚が加わり、強い不安や興奮を伴います。
・ 意識レベルが落ちる夜間に出るものを、夜間せん妄といいます。
[設問] ある行為をばかげていると思いながらも、行わずにはおれない現象がみられる疾患は、次のどれか?
イ 心気神経症 ロ 強迫神経症 ハ 不安神経症 ニ パニック障害
正解 (ロ)
[設問] 入院時の高齢者で、覚醒度が低下した時に混乱した行動がみられるのは、次のどれか?
イ パニック障害 ロ てんかんヒステリー ハ せん妄 ニ 一過性全健忘
正解 (ハ)
精神看護(16)(看護援助技法) [精神看護学]
(4)妄想
・ 妄想は、自分の能力を過小評価する微小妄想、自己を過大評価する誇大妄想、他者から被害を受けていると確信する被害妄想と、大きく3つに分類されます。
[設問] 特別なきっかけがなくて、突然異常な考えが頭に浮かぶのは、次のどれか?
イ 妄想気分 ロ 妄想着想 ハ 妄想知覚 ニ 妄想様観念
正解 (ロ)
[設問] 微小妄想に分類されものは、次のどれか?
イ 「毒を盛られている」
ロ 「夫が浮気をしている」
ハ 「明日から食べていけない」
ニ 「私は、特別な家系の血をひいている」
正解 (ハ)
精神看護(15)(看護援助技法) [精神看護学]
3.看護援助技法
1)症状アセスメント
(1)不安
・ 不安とは、自己の将来におこりそうな危険や脅威、あるいは苦痛の可能性を感じた時におこる、不快な情動現象であり、漠然としてはっきりしない不安定感や無力感、孤立感などの感情を生じさせるものです。
・ 対象がはっきりしている場合に生じる情動反応は、恐怖です。
・ 正常な不安には、行動を動機づけ、促進する作用があります。
・ 病的な不安には、不安発作をおこすような強度の不安と、落ち着かない緊張した状態が続く中等度の不安があります。
・ 強度の不安がある場合、「恐ろしい」 「何か嫌なことがおこりそうな」 などの訴えがあり、そばにいる人に取りすがる、取り乱すなどの行動がみられます。
・ 不安は、交感神経を刺激して、血圧上昇、頻脈、発汗、頻尿、口渇、食欲低下、便秘、下痢などをひきおこします。
(2)抑うつ
・ 抑うつ状態とは、喜びや悲しみなどの自我感情が低下し、自己の過少評価による不安の増強や、思考停止、精神運動抑制による活動性の低下に自律神経症状を伴った状態です。
・ 抑うつ状態は、うつ病、抑うつ神経症、脳の器質的障害、認知症性疾患の初期、甲状腺機能の障害、糖尿病、全身性エリテマトーデス、パーキンソン病、出産後、薬物の副作用(ステロイド、降圧剤、βブロッカーなど)でみられます。
・ 抑うつ状態の契機となるものとして、近親者の死や離婚などの精神的な衝撃や転居、昇進などの環境の変化、身体疾患の発症などが挙げられます。
・ 抑うつ状態には、日内変動があり、朝は気分が悪く離床が困難ですが、午後から夕方にかけて活動性がでてきます。
(3)幻覚
・ 幻覚は知覚の異常であって、ほんとうは実在しない対象を知覚することです。 知覚の対象により、幻聴、幻視、幻臭などがあります。
・ 幻臭とは、他者にはにおわない異臭を感じることです。 てんかんや脳腫瘍など、脳神経外科領域の疾患でよくみられます。
・ 幻触とは、普通には感じられないような奇妙な感覚で、「体に針金が入っている」 「体の中に虫がいる」 などの訴えが認められます。
・ 幻味とは、脳の器質性疾患で酸っぱい、腐っているといった不快な感じとして体験されますが、統合失調症の場合は「毒が入っている」 など妄想との関連が深いものになります。
[設問] レビー小体型認知症でよくみられるものは、次のどれか?
イ 幻視 ロ 幻聴 ハ 幻触 ニ 幻味
正解 (イ)
[設問] アルコール依存症でみられる幻視で多いのは、次のどれか?
イ 大人の男性 ロ 大人の女性 ハ 子供 ニ 虫や小動物
正解 (ニ)
精神看護看護(25)(精神科治療と看護) ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-12-03
精神看護(14)(精神看護の基本概念) [精神看護学]
4)看護モデル
(1)人間関係論
・ ペプロウは、看護を、治療的な対人関係のプロセスであり、患者と看護師の双方にとって、成熟する力を育む教育的な手段である、と定義しました。
・ ペプロウの人間関係論は、看護師が患者にどのような関わりをすれば、発達を促進するかについての方向を示したものです。
・ 看護師—患者関係の第1局面とは、方向付けの段階になります。 患者は看護師が自分に何をしてくれるのかを知ろうとし、看護師の側は患者のニーズを知り、意図的に関わりをもつことが求められる時期です。
・ 第2の局面は、同一化の段階で、看護師の関わりで患者は心の安らぎを覚えることにより、看護師に近づこうとする時期で、看護師の側は感情に巻き込まれないよう注意を要します。
・ 第3の局面は、開拓利用の段階である。患者は看護師との相互関係が深まることで、自分の問題に気付いて対処方法が理解されてくる時期です。
・ 第4の局面は、問題解決の段階で、患者が独立していく時期です。 看護師の側はサポートの保障を行い、患者に達成感をもたせることで患者の自我を高めていく必要があります。
(2)プロセスレコード
・ 看護師がコミュニケーション能力を高め、また、看護師の自己洞察を深めることを目的として、看護場面を再構成したものをプロセスレコードといいます。
・ ペプロウHEは、看護師と患者の反応を分けてプロセスレコードに記録しました。
・ オーランドIJは、プロセスレコードを看護師の応答能力の訓練のために活用しました。
・ ウイーデンバックEは、看護師の自己洞察のためにプロセスレコードを活用しました。
(3)セルフケア論
・ 看護が必要になるのは、個人が健康上の問題でセルフケアを自分自身で実施できないからであって(セルフケアの欠如の理論)、セルフケアニードとセルフケア能力がアンバランスをきたすからです。
・ アンダーウッドは、患者のセルフケアに関する〈自己決定能力〉を援助することが、看護の最も重要な機能であるとしました。
[設問] ぺプロウによって提唱され、看護の臨床の現場での看護者と患者の間の相互作用に関する文書による記録されるものを何と呼ぶか?
イ 看護記録 ロ ヒヤリハット ハ プロセスレコード ニ 自己評価項目
正解 (ハ)
精神看護(13)(精神看護の基本概念) [精神看護学]
(4)壮年期における発達危機
・ 壮年期とは、30代から老年期までの間をさし、身体的能力は少しずつ落ち始めるものの、社会的役割は大きくなり、心理的には最も充実した時期であるとされます。
・ 壮年期の発達課題は、「生殖性」 が 「停滞」 を上回って獲得されることです。
・ 「生殖性」とは、親が子を生み、育てるということに典型的な意味がありますが、広い意味では、次世代の人々が育っていくことに興味を持つことをいいます。
・ 「生殖性」の発達が阻まれると、壮年期の発達危機が現れ、自分の世界のみに関心が集中し、人間関係が貧しくなって 「停滞」 の感覚を強めることになります。
(5)老年期における発達危機
[設問] 壮年期の発達課題とは次のどれか?
イ 生産性 ロ 親密さ ハ 生殖性 ニ 完全性
正解 (ハ)
[設問] 老年期の心理社会的危機とは、次のどれか?
イ 罪悪感 ロ 停滞 ハ 絶望・嫌悪 ニ 同一性拡散
正解 (ハ)