基礎看護学(15)(基本的日常生活援助技術) [基礎看護学]
4)身体の清潔の援助技術
(1)清潔行動のアセスメントと援助方法
・ 清潔行動の必要性と妨げる要因をアセスメントして、患者に必要な援助内容、実施場所、使用する看護用具を考え、援助方法を選択します。
(2)身体各部の清潔援助方法
・ 全身の清潔法には、入浴・シャワー浴・全身清拭があり、さらに全身清拭を部分に分けて行う部分清拭(洗髪、洗面、口腔ケア、手浴、足浴、陰部清拭・洗浄)があります。
・ 清拭は、治療上入浴が許可されないときに行われます。入浴よりも疲労が少なく、マッサージ効果で血行が促進され、自他動運動を併用すると廃用症候群の予防ともなります。 また、看護者と患者とのコミュニケーションの場にもなります。
・ 全身清拭を行う際は、室温を22〜26℃に保ち、強い気流による冷感を感じさせないように、窓は閉め、湿った皮膚を露出する時間を短くします。 皮膚にあてる清拭布の表面の温度は50℃が適切とされるので、55〜70℃の湯を準備します。 また、プライバシーへの配慮も行う必要があります。
・ 四肢では血管の走行に従って拭きます。 腹部では腸の走行に従い「の」の字を描くように拭きます。 清拭布は肌から一旦離すと温度が下がるので密着させながら動かすようにします。
・ 就床患者の洗髪法には、 a) ベッド上で、ケリーパッドを使って行う方法 b) ベッド上で洗髪車を使って行う方法 c) 洗面所または浴室で仰臥位か前屈位で行う方法がありますが、エネルギー消費は、a)が最も少なく、c)で前屈位の場合が最大となります。
・ 患者の状態により洗髪法と湯水の使用量を決め、目や耳に湯水を入れないこと、頭皮を傷つけないこと、頭に振動を与えないこと、体位および頸部は可能な限り安楽にして疲労させないようにすること、などに注意します。
・ 口腔内は、唾液による自浄作用が備わっていますが、発熱・絶食では乾燥し、細菌が繁殖しやすくなります。 自力で口腔清掃ができない場合には、できるだけ歯ブラシによる口腔清掃を援助します。 意識のない患者は、誤嚥による肺炎をおこす可能性が高いので、体位や使用物品を工夫して口腔内の清掃を行います。
・ 足浴は保清の他に、血液循環の促進、入浴に近い爽快感が得られる効果もあり、入眠を促すイブニングケアとして就眠前に行われることもあります。
・ 陰部洗浄(清拭)は、不安や羞恥心を最小限にする配慮が必要で、下腹部や下肢をバスタオルなどで覆い、不必要な露出を避けるようにします。 女性の場合、洗浄・清拭は、肛門周囲の大腸菌による感染を防ぐ目的で、尿道口から肛門の方向へ向かって行います。
(3)褥瘡の予防・処置
[設問] 患者の入浴について正しいものを一つ選べ。
イ 入浴の湯の温度は43~45℃とする。
ロ 入浴時間は20~40分と比較的長時間にする。
ハ 消化機能が悪くなるので食前または食後1時間以上たってからとする。
ニ 短時間の入浴は、疲れの原因となるだけである。
正解 (ハ)
[設問] 清拭に関する正しい文を一つ選べ。
イ 清拭は入浴よりも疲労が大きい。
ロ 全身清拭を行う場合は、窓を開け、風を入れるようにする。
ハ 清拭布の表面温度は、37℃が最適をされる。
ニ 四肢の清拭は、血管の走行に沿って行う。
正解 (ニ)
[設問] 褥瘡の発生要因の組み合わせを一つ選べ。
イ 圧迫・摩擦・低栄養・保温・乾燥
ロ 圧迫・摩擦・低栄養・不潔・湿潤
ハ 圧迫・乾燥・低体温・不潔・摩擦
ニ 摩擦・圧迫・湿潤・高体温・低栄養
正解 (ロ)
[設問] 仰臥位での褥瘡好発部位の組み合わせを選べ。
イ 仙骨部・肩甲骨部・後頭部
ロ 仙骨部・肩峰部・大転子部
ハ 仙骨部・尾骨部・坐骨部
ニ 仙骨部・腸骨稜部・腓骨頭部 正解 (イ)
[設問] 褥瘡で真皮までにとどまるのは、NPUAPステージ分類では次のどれか?
イ I ロ II ハ III ニ IV
正解 (ロ)
基礎看護学(14)(基本的日常生活援助技術) [基礎看護学]
3)排泄の援助技術
(1)排泄行動のアセスメントと援助方法
・ 排泄行動の自立度については、尿意・便意の自覚、移動動作、排泄時の衣服の着脱、姿勢の保持、排泄後の始末などをアセスメントして判断します。
・ 排泄行動を自立させるための援助は、患者の意思を確認しながら段階的に進めるようにします。
・ 排泄には、年齢・性別、食事や水分摂取、運動、薬物の使用、環境の変化、ストレスなどが影響します。心理的ストレスなどは軽減できるよう援助し、他の要因にも配慮しながら生理的な排泄リズムに転換できるように援助します。
・ 高齢者や長期臥床の患者で、起立性的血圧や転倒の危険があると考えられる時はトイレまでの歩行に付き添うようにします。
・ 差し込み便器を使用する場合、排泄時に尿が飛散しないように、また便の後始末がしやすいようにトイレットペーパーを重ねて便器の底に敷いておきます。
・ 頻尿とは、1日の排尿回数が10回以上ある状態をいいます。
・ 頻尿は、膀胱の炎症、中枢性の疾患、老化などが原因となります。
・ 一般に摂取した水分量は、尿に40〜60%、便に4%、不感蒸泄に36%に割合で排泄されます。
・ 便意は、直腸内圧40〜50mmHgでおこります。
・ 便秘には、大腸の機能的障害によるものと器質的障害によるものがあります。
・ 症候性便秘の原因は、腸の癒着や腫瘍による閉塞機転によるものが多いのですが、腹腔内臓器の炎症による癒着、近接臓器の腫瘍による圧迫や、内分泌疾患、神経疾患などに起因することもあります。
(2)排泄物の観察
・ 排泄物のアセスメントは、量・性状・回数・間隔や排泄時の随伴症状などの観察データを参考にします。
・ 膀胱容量は約500mLですが、尿意は通常200〜300mLでおこります。
・ 健康成人の1日の尿生成量は、1000〜1500mLです。
・ 健康人の尿比重は、1.010〜1.030です。
・ 成人の排尿回数は、1日4〜6回です。
・ 成人の排便量は1日100〜250g程度です。
・ 成人の排便回数は、1日1〜2回です。
(3)自然な排泄を促す援助方法
・ 自然排尿を促す援助として、水音を聞かせる、微温湯を外陰部にかけます。臀部の膀胱神経叢のマッサージや温罨法などがあります。
・ 自然排便を促す援助として、十分な水分摂取と食物繊維を含む食事の摂取、腹部マッサージ、ウオッシュレットによる肛門刺激、腰背部への温罨法などがあります。
(4)床上排泄の援助方法
・ 床上排泄の患者の援助は、排泄パターンを知り、起床時、食事の前後、就眠前などに定期的に声をかけて、排泄の援助を依頼しやすくします。
・ 排泄時の体位は、腹圧がかかりやすいように上半身を挙上します。
・ 大部屋の場合は、特に臭気の除去や消音などの室内環境を調整する必要があります。
[設問] 排泄行動のアセスメントと援助方法について、正しい文を一つ選べ。
イ 排泄行動を自立させるための援助は、患者の意思を確認しながら、段階的に進める。
ロ 高齢者や長期臥床の患者の場合、自立を促すためにトイレまでの歩行に付き添うようなことは避ける。
ハ 排泄行動の自立度は、移動動作と排泄の後始末で評価する。
ニ 排泄には、年齢や性別、食事や水分摂取は影響するが、心理的ストレスの影響はほとんどない。
正解 (イ)
[設問] 成人では、一日尿量が何mL以上を多尿というか?
イ 3500mL ロ 3000mL ハ 2500mL ニ 2000mL
正解 (ハ)
[設問] 成人では、一日尿量が何mL以下を乏尿というか?
イ 800mL ロ 700mL ハ 600mL ニ 500mL
正解 (ニ)
[設問] 一般に摂取水分量の何%が尿として排泄されるのか?
イ 30%前後 ロ 35%前後 ハ 50%前後 ニ 65%前後 ホ 70%前後
正解 (ハ)
[設問] 便胃が起るのは、直腸内圧が何mmHgになったときか?
イ 10~20mmHg ロ 25~35mmHg ハ 40~50mmHg ニ 55~65mmHg
正解 (ハ)
[設問] 膀胱容量は成人の場合、どれくらいか?
イ 約350mL ロ 500mL ハ 650mL ニ 800mL
正解 (ロ)
[設問] 健康人の尿比重はどれくらいか?
イ 1.010~1.030
ロ 1.040~1.050
ハ 1.060~1.070
ニ 1.080~1.100 正解 (イ)
[設問] 成人の排便量は、一日どれくらいか?
イ 50~100g
ロ 100~250g
ハ 250~300g
ニ 300~450g 正解 (ロ)
[設問]
基礎看護学(13)(基本的日常生活援助技術) [基礎看護学]
4.基本的日常生活援助技術
1)環境を整える技術
(1)病室環境の調整
・ 人間が生命を維持し健康を回復するには生活環境を整えることが大切です。生活環境を構成する因子には、採光や照明、色彩、音、室内気候などがあります。
・ 室内気候を整えるには、温度、湿度、気流の調整が必要となります。
(2)病室の整備
・ 病床は清潔で障害物がなく安全であるとともに、プライバシーが保護され、精神的な安楽が得られるよう整える必要があります。
・ ベッドは患者の病気の種類や回復段階・生活の自立度などに応じて、マットレスの種類やベッドの高さ、必要なリネンなどを選択します。 転落の危険があるときは、ベッド柵を取り付けます。
・ ベッドは安全面と安楽面に配慮し、目的に応じ、クローズドベッドやオープンベッドにします。
2)食生活の援助技術
(1)健康な食生活
・ 豊かな食生活を送れば、身体的な健康が維持されるだけでなく、心理的にも安定します。
(2)栄養状態の評価
・ 栄養状態は、摂取する脂肪、蛋白質、糖質、ビタミン、ミネラルの量とそれらのバランスによって変化するものです。
・ 栄養状態の評価の方法は、身体計測、血液生化学的検査、食事調査が主なものであり、これらに環境要因や心理状態を加えて評価することになります。
・ 身体計測では、身長、体重、体脂肪率、骨格筋量を測定します。
・ 血液生化学的検査では、血清蛋白、窒素平衡、総リンパ球などが指標となります。
(3)摂食行動の評価と援助方法
・ 摂食行動の評価には、摂食能力の評価が必要です。
・ 食事援助方法の選択にあたっては、必要な栄養が安全においしく食べられるように、患者の摂食能力を観察・評価して、個々に応じた援助方法の選択を行います。
(4)病人の食事
・ 食事は、個人の嗜好を尊重することや調理方法、食事時間などへ配慮が必要です。
(5)経管栄養法
・ 経管栄養法は、経口的に食物や水分を摂取できない患者に、消化管内に挿入した管を用いて栄養物を注入する方法です。
・ 経管栄養法には、経鼻経管栄養法と瘻管栄養法があります。
・ 経鼻経管栄養法では誤挿入や誤嚥、長期挿入では併発症など問題が発生するので、長期になる場合は胃瘻や腸瘻などを造設する必要があります。
・ 注入食の温度は、胃や腸管への刺激を少なくするため、37〜38℃とし、注入速度は個々の状態によるが、一般的には100mL/30分に調節します。
・ 注入中の体位は、半座位またはセミファウラー位とし、逆流を防ぐようにします。
・ 経鼻栄養チューブを留置する場合、チューブ内の食物腐敗を防止するための温湯の注入や、使用物品の清潔な取り扱いなど、清潔面での管理を確実に行うことが大切です。
(6)経静脈栄養法
・ 経静脈栄養法は、経口的に栄養摂取ができない場合や栄養が不十分な場合などに、直接血管内に栄養を注入する方法です。
・ 中心静脈栄養法とは、中心静脈カテーテルから糖質、アミノ酸、電解質、ビタミンなどの栄養素を長期間確実に補給する方法です。
・ 正確に輸液を行うには、指示された滴下速度を調整し、管理することが必要となります。 また、カテーテル刺入に伴う感染を防止するため、薬剤の準備の際の無菌操作や刺入部位の観察や管理を適切に行う必要があります。
[設問] 病室環境の調整に関する文で正しいものを一つ選べ。
イ 病室環境は、住居とは違うので診療に便利なように調整されればよい。
ロ 室内気候は温度と湿度だけの調整にしぼる。
ハ 病床は清潔で障害物がなく、プライバシーが保護され、精神的な安楽が得られるように整える。
ニ ベッドはすべてオープンベッドにする。
正解 (ハ)
[設問] 経鼻での栄養チューブの挿入に際して参考となる鼻孔から胃噴門までの長さは次のどれか?
イ 25~35cm ロ 35~45cm ハ 45~55cm ニ 55~65cm
正解 (ハ)
[設問] 経鼻栄養チューブの挿入時の体位は通常どれか?
イ 半座位 ロ 端座位 ハ 起座位 ニ 側臥位
正解 (イ)
[設問] 中心静脈栄養でよく使われるのは、鎖骨下静脈以外ではどれか? 二つ選べ。
イ 大腿静脈 ロ 正中静脈 ハ 内頸静脈 ニ 上大静脈 ホ 下大静脈
正解 (イ、ハ)
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基礎看護学(12)(共通基本技術) [基礎看護学]
7)記録・報告
(1)記録・報告の目的
(2)記録の種類(POS、フォーカスチャーテイングを含む)
・ 医療法施行規則により、診療記録には、医師または歯科医師の作成する診療録の他、看護師など医師や歯科医師以外の医療従事者の作成する記録、検査記録も含みます。
・ 看護記録には「個々の患者について書かれる記録」と「日報や月報」などのように看護単位毎に総括的に書かれる記録があり、前者を看護記録といいます。
(3)記録・報告の条件
・ ケアを行った後は、できるだけ早い時点で記録するようにします。
・ 患者の行動や言葉を引用し、事実を正しく記録します。
・ 読みやすいように書きます。
・ 略語を使う時は、各施設のマニュアルに記載され認められている略語のみを使います。
・ 全ての記載に日付と時刻を記入します。
・ 記載者は定められた形式で署名を行います。
・ 訂正は、2本線を引き署名と日時を記載します。
・ 患者にレッテルを貼ったり、偏見による内容を記録しません。
・ 「〜と思われる」「〜のように見える」などあいまいな表現はしないようにします。
[設問] 医療法施行規則による診療記録について正しいものを一つ選べ。
イ 診療記録に含まれるのは、医師または歯科医師の作成する診療録のみである。
ロ 診療記録には検査記録は含まれない。
ハ 診療記録には看護記録は含まれない。
ニ 診療記録には、医師や歯科医師の作成する診療録以外に、それ以外の医療従事者の作成する記録や検査記録も含まれる。
正解 (ニ)
[設問] 看護記録についての説明で正しいものを一つ選べ。
イ ケアを行った後、できるだけ早い時点で記録するようにする。
ロ 患者の言葉は主観的なものなので、引用してはならない。
ハ 日付はすべての記載に記入するが、時刻は必ずしも記入の必要はない。
ニ 「----と思われる」などの表現も患者さんの立場を考慮して使う場合もある。
正解 (イ)
基礎看護学(11)(共通基本技術) [基礎看護学]
5)効率的で安楽な動きをつくり出す技術
(1)ボデイメカニクス
・ ボデイメカニクスとは、身体の構造や機能が効率的に動くような身体の構えや使い方のことです。
・ ボデイメカニクスは、患者の安全・安楽を確保するだけでなく、看護者の疲労や負担も軽くします。
・ ボデイメカニクスでは、姿勢や体位を整えることと、身体の重心を安定させることがポイントとなります。
・ 看護者は、作業時の背部や腰部への負担を少なくするため、作業面の高さや作業域を考慮した作業スペースを確保します。
・ 作業姿勢の安定性は、支持基底面積と身体の重心が関係しますから、支持基底面を広くとり、膝を曲げて重心を低くし、重心線が支持基底面内を通るような姿勢をとるようにします。
・ 患者移動の時は、患者の四肢を身体に沿わせ重心に近づけるようにします。
・ 基本的な姿勢には、立位・座位・臥位があり、臥位には仰臥位、側臥位、腹臥位があります。エネルギー消費が少ない順序は、臥位、座位、立位の順です。
・ よい姿勢は、関節や筋肉・内臓などへの負担が少なく、エネルギー消費も少なく疲労が少なくなります。
6)観察技術
(1)身体面のアセスメント
・ 体温は、年齢や日差し、運動、食事、入浴、外気温などの影響を受けて変動します。成人の平熱の範囲は、36.0〜37.0℃未満とされています。
・ 体温の測定は、水銀体温計や電子体温計を用いて、腋窩・直腸・口腔などの部位で測定します。体温値の高い順は、直腸→口腔→腋窩となります。
・ 異常熱型には、高熱で1日の体温差が1℃以内の稽留熱(けいりゅうねつ)、1日の体温差が1℃以上の弛張熱(ちちょうねつ)、高熱と平熱が一定期間をおいて交互におこる間欠熱があります。
・ 脈拍は心臓の収縮によって血液が押し出される際に、体表近くの動脈で触知できる拍動です。
・ 脈拍数の正常値は、成人で60〜80回/分、学童で70〜90回/分、新生児で120〜140回/分の範囲です。
・ 血圧は血液が血管壁に作用する圧力であり、左心室の収縮時に受ける圧力を収縮期血圧(最高血圧、最大血圧)、拡張時を拡張期血圧(最低血圧、最小血圧)といいます。
・ 血圧は運動・食事・精神的興奮などによって変動することから、患者の状況を確認し、安静をとらせた後で測定することが必要です。
・ 呼吸は、生体が体内に酸素を取り入れ、代謝産物の二酸化炭素を体外へ排出することです。
・ 呼吸筋は随意筋であり、意識的に呼吸を変化させることが可能である。呼吸測定時、測定していることを患者に気づかれないようにします。
・ 呼吸数の正常値は、成人で15〜20回/分、学童で20〜30回/分、新生児で40〜55回/分の範囲であるが、個人差です。
・ 呼吸の異常
・ 意識レベル評価には、JCSの3−3−9度分類が広く用いられ、患者把握の指標となっています。
・ 身体計測は、発育状態や栄養状態を把握するために、身長・座高・体重・胸囲・腹囲などの体格と肺活量や握力などの体力を計測するものです。
(2)精神面のアセスメント
・ 人間は一時的あるいは不可逆的な健康障害をおこすと、病気や治療、生活などについて様々な不安や恐怖を抱きます。患者や家族のおかれた立場を理解し、精神状態について観察し評価することが必要です。
[設問] ボディメカニクスについて正しい説明文を一つ選べ。
イ ボディメカニクスを取り入れると、患者の安全や安楽にはよいが、看護者の負担は減らない。
ロ 作業姿勢を安定させるためには、支持面積を狭くする。
ハ 作業では重心を高くする。
ニ ボディメカニクスとは、身体の構造や機能が効率的に動くような身体の構えや使い方のことである。
正解 (ニ)
[設問] 一日の体温差が1℃以内の高熱を何というか?
イ 稽留熱 ロ 弛張熱 ハ 間欠熱 ニ 安定高熱 正解 (イ)
[設問] 新生児の脈拍の範囲で正しいものを選べ。
イ 80~90/分 ロ 90~100/分 ハ 100~120/分 ニ 120~140/分 ホ 140~160/分
正解 (ニ)
[設問] 成人の呼吸数の範囲はどれか?
イ 10~15/分 ロ 15~20/分 ハ 20~25/分 ニ 25~30/分
正解 (ロ)
[設問] 糖尿病性昏睡などでみられる連続する深い呼吸は何というか?
イ チェーンストークス呼吸
ロ ビオー呼吸
ハ クスマウル呼吸
ニ 過呼吸 正解 (ハ)
[設問] JCSの意識レベル評価で、大声または身体を揺さぶると開眼する意識レベルは次のどれか?
イ 2 ロ 20 ハ 30 ニ 100 正解 (ロ)
基礎看護学(10)(共通基本技術) [基礎看護学]
4)事故防止
(1)安全管理対策
・ 安全を脅かす要因としては、「人(患者・家族・医療従事者)」「環境」「医療器械・器具」「管理」によるものがあります。
・ 窓、ベランダ、階段やトイレなどでの事故がおきないように普段からの設備点検が必要です。
・ 病院内の酸素や爆発物気体の取り扱いには十分な注意が必要です。
・ 医用工学機器(ME機器)使用時には必ずアースをとるようにします。
・ 災害時の避難方法・避難経路・避難場所や連絡方法などを日頃から訓練しておき、医療従事者だけでなく患者・家族にも説明を徹底しておく必要があります。
(2)誤与薬・誤認の防止、転倒・転落の防止、人工呼吸器管理
・ 与薬薬剤を受け取る時は、ラベルを確認するとともに自分以外の医療従事者と声を出し合って確認(ダブルチェック)するようにします。
・ 転倒・転落は、ベッド柵を使用しなかった場合、または設置したベッド柵の乗り越え、床の汚染や濡れ、移動上の障害物、段差などでおこります。
・ 昼より夜間に転倒・転落はおこりやすくなります。夜間は足元を照明で明るくする工夫をし、足元が隠れ段差や床が見えなくなる衣類はできるだけ避けるようにします。
・ 転倒・転落を予防するためには、患者の身体の状態および病識について評価しておく必要があります。
・ 人工呼吸器使用前には、必ずホースやコードの接続確認・作動点検を行うようにします。
・ 人工呼吸器の回路は清潔に組み立て、加湿器には滅菌蒸留水を使います。
・ 人工呼吸器の回路・蒸留水は週に1度交換します。
・ 人工呼吸器使用中は、ホースなどの回路内の水分は定期的に排除するようにします。人工呼吸器装着中の患者の観察は、継続的に行う必要があります。
・ 人工呼吸器のアラームが鳴った場合は、その原因を観察・確認し、適切な対応をするようにします。
[設問] 安全管理対策として正しいものを一つ選べ。
イ 窓やベランダは必要ないが、階段やトイレなどでは事故がおきないように設備点検に念を入れる。
ロ 病院内の酸素や爆発物気体の取り扱いには十分な注意が必要である。
ハ 医用工学機器は安全にできているので、特にアースをとる必要はない。
ニ 災害時の避難経路、方法などは日頃から医療従事者は訓練するが、患者、患者家族までは行わなくてもよい。
正解 (ロ)
[設問] 転倒転落事故について正しい文を一つ選べ。
イ ベッドからの転落はベッド柵の使用を忘れなければ防ぐことができる。
ロ 転倒転落は、昼間におこりやすい。
ハ 転倒転落を防ぐには、床の汚染や濡れ、障害物、段差などをなくすことも必要である。
ニ 転倒転落は、患者の身体状態や病識には無関係である。
正解 (ハ)
[設問] 人工呼吸器のアラームが鳴る原因として多いものを二つ選べ。
イ チューブ類の接続のはずれや屈曲
ロ 停電
ハ 電源コンセントのはずれ
ニ 誤作動
ホ 患者の咳 正解 (イ、ホ)
基礎看護学(9)(共通基本技術) [基礎看護学]
2)人間の成長を促すための技術
(1)教育
・ 患者教育の目的は、患者自身が自己の病気や障害、今後の問題やその対処方法などについて正しい知識を習得し、その後の療養や生活をよりよいものにしてもらうためです。
・ 入院患者の患者教育には、入院時オリエンテーション、日常生活指導、退院時指導などがあります。
・ 教育を実践するにあたっては、教育内容を明確にし、相手に応じた表現方法を用いて、相手が望ましい状況をイメージできるように働きかけることが重要です。
(2)相談・指導
・ 指導活動の場としては、外来や病棟などの医療施設と、家庭や学校など生活の場があります。
・ 指導活動の方法には、個人を対象とした個別指導、集団を対象とする集団指導、それと訪問指導があります。
・ 個別指導は個々に応じた説明、相談、指導で、秘密保持が必要とする場合に行われます。
・ 集団指導は、課題に共通性がある多人数の対象者に対して行われます。講義形式、意見交換を行う討議の形などがあります。
・ 訪問指導は、患者だけでなく介護を行う家族を含めた指導です。
・ 相談には信頼関係が大事で、相手の話を傾聴し相手を尊重することや、秘密を守ることが大切です。
3)安全を守るための技術
(1)感染コントロール
・ 感染予防の原則
・ 病原体を除去するには、汚れや微生物を取り除く手洗いや有害な微生物や病原体を死滅させる消毒法、すべての微生物を死滅させる滅菌法などがあります。
・ 手洗いは微生物の伝播を防ぐため、患者と接する前や汚染物に触れた時、手袋を除去した時などに直ちに行います。
・ 手洗いには、日常的手洗い、衛生的手洗い、手術時手洗いがあります。
・ 看護者自身が感染から身を守るには、血液や体液などに触れる可能性がある場合は、手袋やマスクなどの防護用具を使用し、使用後は防護用具を除去してただちに手洗いをするようにします。
・ 針刺し事故防止のため、リキャプの禁止や針廃棄容器の準備、リキャップ不要の注射針などを用いるようにします。
[設問] 患者教育について、正しく述べたものを一つ選べ。
イ 患者教育は、患者の病気や障害を、看護者自らが把握するために行う。
ロ 入院患者の患者教育には、入院時オリエンテーション、日常生活指導、退院時指導などがある。
ハ 患者教育は、教育内容は多少曖昧でも、看護者が熱意こめて行うことが大事である。
ニ 入院患者の患者教育は、入院の原因となった病気についての認識を深めることが中心となる。
正解 (ロ)
[設問] 看護における相談・指導に関して、以下より、正しい説明であるものを一つ選べ。
イ 看護における指導の場は、外来や病棟などの医療施設で行う必要がある。
ロ 個別指導では、特に秘密保持の必要はない。
ハ 集団指導は、課題に共通性がある時に行われる。
ニ 訪問指導も患者だけに対して行われることが多い。
正解 (ハ)
[設問] 感染予防の三原則における「侵入経路の遮断」に含まれるものを二つ選べ。
イ 手洗い ロ 無菌操作 ハ 消毒 ニ 栄養状態の管理 ホ 隔離
正解 (ロ、ホ)
基礎看護学(8)(共通基本技術) [基礎看護学]
3.共通基本技術
1)人間関係を成立し発展させるための技術
(1)コミュニケーション技術
・ コミュニケーションは、人間関係を成立させる基礎となるもので、相互関係で成り立っています。
・ コミュニケーションを構成する基本要素には、メッセージを伝えようとする送り手、伝えようとするメッセージ、メッセージを伝えるための具体的な手段、メッセージを受け取る受け手があります。
・ コミュニケーションに影響する因子には、受け止め方や感じ方、表現方法、その場の雰囲気、関係者の心理状態などがあります。
・ コミュニケーションを行うにあたっては、相手の身体的、心理的、および社会的背景などを理解しておく必要があります。
・ 看護者は、初対面の患者の不安や緊張を和らげるため、自分から声をかけたり、看護者の役割を説明したりするなどして、人間関係の成立に努める必要があります。
・ 人間関係を築いていくためには、静かで落ち着いた環境を整えることも大切です。
(2)カウンセリング技術
・ カウンセリングは、クライアントの心理的な問題に対して、問題を除去するのみでなく、人間としての発展や成長を援助するものです。
・ カウンセリングは、カウンセラーが一方的な働きかけをするのではなく、相互的な関係の中で行われるものです。
(3)グループワーク、グループダイナミクス
・ グループワークとは、グループダイナミクスを活用し、メンバーを援助する技術です。
・ 主なグループワークには、セルフヘルプグループや集団療法などがあります。
・ グループワークが成立する要素には、「グループメンバー」「グループワーカー」「相互作用」「プログラム」「目標」の5つがあります。
・ グループワークの効果は、成員個々の相互作用によって知識や経験を共有し、一人一人ではできない問題解決や態度および行動変容などの成長・発達を促すものです。
・ グループダイナミクス(集団力動または集団力学)は、アメリカの心理学者レヴィンによって創始されたものです。
・ グループダイナミクスには、集団のダイナミックな性質、および集団が発生して、展開し、そして消滅する過程をも含まれます。 そして、集団の中にある法則を求め、集団の中の個人の人間関係や、集団と集団との関係、さらにもっと大きな制度的集団との相互関係についての知識へと発展させることを目指しています。 理論と実践を連結するユニークな方法論によって研究を進めていく学際的な(複数の学問分野に関わる)学問とされています。
[設問] コミュニケーション技術について、正しい説明文を一つ選べ。
イ コミュニケーションを構成する基本要素とは、メッセージを伝える送り手と受け手のことである。
ロ コミュニケーションの手段は、言語的コミュニケーションでなければならない。
ハ コミュニケーションを行うに際しては、相手のおかれた身体的、心理的、社会的背景を理解しておくことが必要である。
ニ 看護者は、あくまで受身の姿勢で、自分から声をかけたりすることはしない。
正解 (ハ)
[設問] カウンセリングについて、正しいものを一つ選べ。
イ カウンセラーは、クライアントに間違った点があれば、迷わず評価し、指摘していく。
ロ カウンセリングには、教え導く姿勢が不可欠である。
ハ カウンセラーにはクライアントの気持ちを知るため、積極的に耳を傾ける姿勢が必要である。
ニ カウンセラーは、客観性を保つため、クライアントと心情を分かち合うところまでは、深入りしすぎないように努める。
正解 (ハ)
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基礎看護学(7)(看護の展開) [基礎看護学]
4)期待される結果の明確化
(1)患者の具体的で、測定可能な行動を表現します。
・ 患者の、測定可能で達成度が観察できるような特定の行動を表す語句を用います。
例) 飲む、立つ、歩く、話す など
・ 行動の測定基準を設定します。
例) 飲む量や歩く距離 など
・ 誰が行うのか、何を行うのか、どのような状態で行うのか、いつまでに行うのか、どこまで達成するのかを明確に記述するようにします。
・ 行動毎に結果を設定します。
(2)設定上の留意点
・ 患者および家族、他の医療従事者と共同で、納得して共有できる結果を設定します。
・ 患者の状態の変化、目標達成上の問題が生じたら、その都度修正・変更を加えます。
5)実施
(1)手段の選択
・ 看護ケアは最適な方法を選定して実施したつもりでも、実施の途中でも、常に最適かどうかを再検討していく必要があります。
・ 安全、安楽で、患者に自立を促す、しかも経済性を考慮した方法を選択します。
(2)対象者への説明と了解
・ 計画された看護ケアは、患者の健康上の問題解決を目指して実施されるものですから、患者にケアの目的、方法、ケアを実施した結果どうなるかを説明し、了解を得た上で実施する必要があります。 この説明の際には、患者の理解力を
確認しながら、わかりやすい言葉を使って行うようにします。
(3)看護の実施と対象者の反応の確認
・ 実施中も、患者の状態や、言動や表情に現れる反応を観察しながら、情報収集も行っていきます。
・ 収集した情報を分析評価し、計画の修正や変更を行います。
・ 実施した看護ケア、患者の状態、患者の反応、看護者の判断、ケア計画の修正・変更などは記録しておきます。
6)評価
(1)目標達成の評価
・ 実施した看護ケアによる設定目標の達成度を評価します。
・ 評価は患者の反応や状態、客観的情報(バイタルサイン、薬剤の種類や量、処置内容の内容)などから評価します。
・ 目標は完全に達成されたのか、部分的に達成されたのか、全く達成されなかったのかを評価し、ケア計画の継続、修正、終了のいずれかを判断します。
(2)看護過程展開の評価
・ 評価した結果、目標が達成されていない場合は、看護過程の全てのプロセスを振り返って再検討します。
(3)再評価
・ 変更・修正されたケア計画を再度実施し、継続しているケアも含め、患者の状態、反応から目標の達成状況を評価します。
[設問] 看護計画の目標達成の評価に関して、正しいものを二つ選べ。
イ 評価は、患者の反応、状態、客観的情報などから評価する。
ロ 評価は患者の満足度で行う。
ハ 目標の達成度は、完全か、部分的か、全く達成されなかったのかを評価し、ケア計画をこのまま継続するのか、修正するのか、終了するのかを判断する。
ニ 評価した結果、部分的にでも達成されていれば、そのままケア計画を最後まで実行してみる。
ホ 評価においては看護者の満足度を最優先する。
正解 (イ、ハ)
基礎看護学(6)(看護の展開) [基礎看護学]
2)目標設定
(1)優先順位の決定
(A)優先順位の決定指標
・ 複数の問題の中で、解決すべき緊急度を判断し、決定する。
(B)マズローの欲求の階層性の活用
・ マズローは欲求を5つの階層に区分し、上位の欲求が発動されるのは下位の欲求の充足が必要であるとしています。つまり、より下位の欲求が上位の欲求より優先されることになるわけです。 優先順位の決定に考慮すべき理論であるかもしれませんね。
(C)優先順位の諸課題
・ 患者の状態や反応の変化に応じ、優先順位は適宜修正すべきである。
(2)患者との問題解決の目標の共有
・ 目標は、患者のそのときの健康状態での到達可能なレベルに設定します。
・ 目標は、看護者と患者が合意したものである必要です。看護者が独断で決めるべきものではありません。
・ 目標設定を記載する場合、患者の行動を表し、かつ客観的に評価ができる用語を用います。
(3)目標とその達成時間の設定
・ 目標がいつまでにどのようになるか、達成できる期日または時間目標を設定します。
・ 1週間くらいで達成可能な短期目標と、3〜4週間くらいで達成可能な長期目標の両方を設定します。
3)計画
(1)行動計画の立案
・ 目標設定後、患者が目標を達成するために必要な援助を具体的に計画します。
・ 実施する看護ケアの記述は、簡潔明瞭で「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どのように」の内容を含むようにします。
・ 計画には導き出された問題の経過や変化が判断できる観察事項や直接的な治療や看護および患者への教育・指導内容が含まれます。
・ 患者の状態の変化に対応したケアを実施するために、計画を随時見直し、更新することが必要です。
[設問] 看護目標設定の優先順位の付け方で正しいものを一つ選べ。
イ 目の前にある短期的な問題より、長期的な問題の解決を優先する。
ロ 生命に危険が差し迫ってりる問題を最優先する。
ハ マズローの欲求の上位のものほど優先する。
ニ 生命に危険はないが生活に非常に支障をきたしている問題を最優先する。
正解 (ロ)
[設問] 患者の問題解決の目標に関して、正しいものを一つ選べ。
イ 目標は、患者のその時の健康状態で到達可能なレベルに設定する。
ロ 目標は理想を求めるものであって、必ずしも患者の健康状態などにとらわれるべきではない。
ハ 目標は、看護者が決めるべきものであり、必ずしも患者との合意は必要ではない。
ニ 目標設定を記載する場合、できるだけ看護者の熱意が感じられる主観的な用語を用いる。
正解 (イ)