疾病の成り立ちと回復の促進 第36回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
C)循環器系に対する薬剤
a) 虚血性心疾患の治療薬
ア)硝酸薬(しょうさんやく)
・ 投与方法と代謝: 硝酸薬ニトログリセリンは舌下(ぜっか)投与されます。 経口投与すると門脈により肝臓に運ばれ速やかに脱ニトロ化されグリセリンに代謝され無効となります。 この場合、血中半減期は2〜8分と極めて短いものです。 テープ剤の形で皮膚から吸収させる方法もとられています。
・ 作用機序
・ 臨床効果: 狭心症の発作時の治療に有効。テープ剤では、狭心症の予防効果があり、また血圧上昇を抑える作用も持っています。
イ)β遮断薬: 心臓のβ受容体を遮断し、心拍数と収縮力を減少させ、心筋酸素消費量を抑える作用を持っています。 労作性狭心症(ろうさせいきょうしんしょう)に使われることが多いようです。
ウ)カルシウム拮抗薬
・ カルシウム拮抗薬の作用: 心筋のCa2+電流を抑制する作用を持っています。 冠動脈拡張作用、全身血管を拡張して血圧を下げる作用も強い薬剤群です。
・ カルシウム拮抗薬のいろいろ: ベラパミル、ニフェジピン、ジルチアゼム、フルナリジンなどが第1世代のカルシウム拮抗薬です。 ニカルジピン、ニソルジピンなどが第2世代のカルシウム拮抗薬で第1世代に比べて副作用が減り、効力が高くなっています。 アムロジンなどは第3世代のカルシウム拮抗薬で、作用発現が緩徐で作用時間が長くなります。
・ 臨床応用: 狭心症、高血圧症、冠動脈・脳動脈硬化症に有効です。
エ)その他の狭心症治療薬
・ ジピリダモール、ジラゼプ、トラピジル などがあります。
[設問] ニトログリセリンが舌下投与されるのはなぜか? 正しいものを一つ選べ。
イ 胃で吸収されにくいから
ロ 副作用として、消化器症状が出やすいため
ハ 胃腸で吸収されると門脈で肝臓に運ばれ、速やかに脱ニトロ化され無効となるため
ニ 嚥下障害の患者でも服用しやすい剤形につくられたため
正解 (ハ)
[設問] ニトログリセリンの投与で、最終的に血管拡張作用を持つのは次のどれか?
イ 二酸化炭素 ロ 酸素 ハ 一酸化窒素 ニ 一酸化炭素 ホ 二酸化窒素
正解 (ハ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第35回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
n) 筋弛緩薬
ア)中枢性筋弛緩薬: ベンゾジアゼピン系の薬剤、バクロフェンなどがあります。これらの薬剤は、中枢神経を抑制することによって筋弛緩をおこします。
イ) 神経筋接合部遮断薬:
・ 運動神経からの刺激が骨格筋側に伝わる部位である神経筋接合部(しんけいきんせつごうぶ)の伝達を遮断する薬剤が神経筋接合部遮断薬(しんけいきんせつごうぶしゃだんやく)となります。
・ 神経筋接合部のアセチルコリン受容体はニコチン受容体であり、ニコチン受容体に神経筋接合部遮断薬は結合します。
・ 薬剤としては、ツボクラリン、パンクロニウム、スキサメトニウムなどがあります。
o) 局所麻酔薬
ア)局所麻酔薬とは?
・ 意識をなくさせず、痛みだけを感じさせなくするものが局所麻酔(きょくしょますい)薬です。
イ)局所麻酔の様式のいろいろ
・ 表面麻酔: 粘膜の麻酔で使われる。粘膜表面に麻酔薬を塗布し感覚受容器を麻痺させます。
・ 浸潤麻酔(しんじゅんますい): 皮下注射でその周辺部の感覚神経を麻痺させます。
・ 伝達麻酔(でんたつますい): 感覚神経の周囲に注射して感覚神経の伝導を遮断します。
・ 硬膜外麻酔(こうまくがいますい): 脊髄の硬膜の外に注入して後根(こうこん)に作用させます。
・ 脊椎麻酔: 脊髄のくも膜下腔に注入して後根(こうこん)に作用させます。 腰椎部でのことが多いので、その場合腰椎麻酔(ようついますい)といいます。
ウ)局所麻酔薬のいろいろ
・ コカイン: 表面麻酔に使われる。眼科で点眼液として、耳鼻科で塗布薬として使われます。
・ プロカイン: 浸潤麻酔、腰椎麻酔に使われます。 誤って血管内に入ると中枢神経を興奮させ、けいれんをおこすことがあります。
・ リドカイン: プロカインより強力。表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔、腰椎麻酔のいずれにも使用可能です。
エ)局所麻酔薬の効果の出方
・ 効果は神経線維の無髄の細いものから発現していきます。 交感神経→感覚神経→運動神経の順で、感覚神経では、痛覚や温度覚が早期に、触覚や深部感覚は後期に効果は現れます。
オ)副作用
・ 交感神経が麻痺し、血管拡張がおこるためにショックがおこることがあります。
p) 解熱鎮痛抗炎症薬
ア)非ステロイド性抗炎症薬
・ アスピリン: 酸性抗炎症薬であり、体内でサリチル酸とアセチル基に分解し、サリチル酸として作用します。 また、シク
ロオキシゲナーゼ(COX)の活性部位であるセリン残基をアセチル化することにより、シクロオキシゲナーゼを阻害する作用も持っています。
・ インドメタシン: インドメタシンは最も強力なシクロオキシゲナーゼ阻害作用を持ち(アスピリンの薬20倍)、内服、坐薬、軟膏、パップ剤などとして使われます。
・ 塩基性抗炎症薬: チアラミドが塩基性抗炎症薬の代表。酸性抗炎症薬のような強い副作用はありません。
・ 解熱鎮痛薬: アミノピリン、スルピリンはピリン系解熱鎮痛薬といわれます。 アセトアミノフェンは非ピリン系解熱鎮痛薬であり、解熱鎮痛作用は強いが抗炎症作用は弱く、アスピリンが副作用のため使えない人、小児の短期間の解熱鎮痛薬のファーストチョイスとされます。
[設問] 麻酔薬の投与法と麻酔の種類の説明で正しいものを一つ選べ。
イ 粘膜表面に麻酔薬を塗布して感覚受容器を麻痺させるのは表面麻酔である。
ロ 感覚神経の周囲に麻酔薬を注射して神経伝導を遮断するのは浸潤麻酔である。
ハ 皮下へ麻酔薬を注射し周辺部の感覚神経を麻痺させるのは伝達麻酔である。
ニ 脊髄の硬膜の外に麻酔薬を注入して後根を麻痺させるのは脊椎麻酔である。
正解 (イ)
[設問] 表面麻酔に使われる麻酔薬を二つ選べ。
イ コカイン ロ リドカイン ハ プロカイン ニ 笑気 ホ ハロセン
正解 (イ、ロ)
[設問] 局所麻酔薬の効果の出方の正しい説明文を一つ選べ。
イ 効果は、有髄神経の径が大きいものから発現する。
ロ 感覚神経よりも交感神経の方が効果が早く出る。
ハ 感覚神経よりも運動神経の方が効果が早く出る。
ニ 感覚神経では、深部感覚が最も効果は早く出る。 正解 (ロ)
[設問] 局所麻酔薬によるショックは、以下のどれの麻痺によるものか?
イ 運動神経
ロ 感覚神経
ハ 交感神経
ニ 副交感神経 正解 (ハ)
[設問] 小児でよく使われる解熱鎮痛薬は以下のどれか? 一つ選べ。
イ アミノピリン ロ スルピリン ハ アスピリン ニ インドメタシン ホ アセトアミノフェン
正解 (ホ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第34回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
k) 交感神経に作用する薬剤
ア)アドレナリン作動薬(交感神経興奮薬): カテコールアミンなど。
・ カテコールアミン: ノルアドレナリン、アドレナリン、ドパミン、ドブタミン、イソプロテレノールがあります。
・ ノルアドレナリン: 昇圧作用が強い薬剤です。 心拍出量や組織の血流が正常なときは有効です。 しかし、ショック時には無効です。
・ アドレナリン: β2受容体刺激作用が強いため気管支喘息に有用です。 また、ショックにも使用できます。
・ イソプロテレノール: β受容体刺激作用が強いため気管支喘息の発作時の吸入薬として用いられます。
・ ドパミン: ショックなどで昇圧効果がみられます。
・ その他のアドレナリン作動薬: フェニレフリン、クロニジン、ドブタミン、チラミン など
イ)交感神経遮断薬(抗アドレナリン薬)
・ α受容体遮断薬: α作用を持った交感神経興奮物質と競合的拮抗をします。 高血圧治療薬として利用されることが
多い薬剤です。
・ β受容体遮断薬: 心拍数を減少、収縮力を低下させて心拍出量を減少させるので、心筋の酸素需要が減少します。
不整脈治療薬や高血圧治療薬として使われます。 プロプラノロールは代表的なβブロッカーです。 βブロッカーは、気管支喘息、糖尿病性アシドーシス、高度の徐脈、心原性ショック、急性心不全などには禁忌になります。
・ 交感神経終末抑制薬: レセルピンは、アドレナリン作動性神経終末においてカテコールアミンを枯渇(こかつ)させます。
l) 副交感神経に作用する薬物
ア)副交感神経作動薬
・ コリン作動薬: アセチルコリン、メタコリン、ベタネコール、ムスカリン、ピロカルピンなどがあります。
・ コリンエステラーゼ阻害薬: フィゾスチグミン、ネオスチグミン、エドロフォニウム などがあります。
イ)抗コリン薬(副交感神経遮断薬)
・ アトロピンが代表的な抗コリン薬であり、アセチルコリンの結合する受容体(ニコチン受容体とムスカリン受容体の2種類)のうちムスカリン受容体に競合的に結合することで副交感神経を遮断します。 投与により頻脈、口渇、腸管機能の抑制などがおこります。 散瞳薬としても使われます。
m) 自律神経節に作用する薬物
ア)神経節興奮薬(刺激薬)
・ アセチルコリンと同じようにニコチン受容体と結合して自律神経節を興奮させる物質をいいます。
・ 代表的な神経節興奮薬がニコチンです。
・ ニコチンは血圧上昇、腸管運動の亢進をおこし、骨格筋では少量で収縮を促進し多量では後期に麻痺させます。
イ)自律神経節遮断薬
・ 自律神経節遮断薬はアセチルコリンが結合するニコチン受容体に先回りして結合して作用します。
・ 自律神経節は交感神経系も副交感神経もあるため、臓器では優位に支配している方の抑制効果が出ます。 消化管は副交感神経優位のため蠕動運動の減少が、心臓でも副交感神経が優位のため頻脈に、細動脈では交感神経系が優位ですので血圧は下降します。
[設問] 以下より交感神経興奮薬を一つ選べ。
イ アセチルコリン
ロ レセルピン
ハ プロプラノロール
ニ イソプロテレノ―ル 正解 (ニ)
[設問] 副交感神経作動薬で重症筋無力症の診断に使われるものはどれか?
イ アセチルコリン
ロ ピロカルピン
ハ エドロフォニウム
ニ アトロピン 正解 (ハ)
[設問] 散瞳薬として使われるのはどれか?
イ アトロピン
ロ アセチルコリン
ハ レセルピン
ニ ドパミン 正解 (イ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第33回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
e) 全身麻酔薬
ア)吸入麻酔薬と静脈内麻酔薬
・ 吸入麻酔薬: 笑気(しょうき)は無臭のガス。その他の吸入麻酔薬は揮発性液体なので気化させて使います。 以前はハロタンが使われていましたが、最近ではエンフルラン、メトキシフルラン、イソフルラン、セボフルランなどがよく使われます。
・ 静脈内麻酔薬: バルビタール誘導体、ケタミン、ベンゾジアゼピン系薬剤、プロプフォル、エトミダートなどがあります
イ)麻酔深度
f) 抗てんかん薬
ア)小発作治療薬
・ エトスクシミド: 小発作第1選択薬
・ バルプロ酸: 小発作にも大発作にも有効
・ クロナゼパム: ベンゾジアゼピン系で最も抗けいれん作用が強い薬物です。
イ)大発作治療薬
・ フェニトイン: 抗けいれん作用は強いが、運動失調や精神症状をおこすことがあります。
・ カルバマゼピン: 複雑部分発作の第1選択薬
・ フェノバルビタール: 古くから使われ、安全性が高いことが利点です。
・ プリミドン: 代謝されてフェノバルビタールとなって作用します。
ウ)新規の治療薬
・ レべチラセタム: 部分発作に対する併用薬
・ ラモトリギン: 部分発作と全般発作の併用薬
・ ガバペンチン: 部分発作に対する併用薬
g) 麻薬性鎮痛薬と拮抗薬
ア)麻薬性鎮痛薬
・ 麻薬性鎮痛薬オピオイドは、意識をなくすことなく痛みを和らげるが、同時に多幸感が生じ、連用により習慣性をおこす1群の化合物です。
・ 代表的オピオイドは、アヘンから抽出されるモルヒネ、ヘロイン、コデインの三つです。
・ 麻薬性鎮痛薬は副作用として呼吸抑制があります。
・ 合成麻薬性鎮痛薬としては、ペンタゾシンがある。
イ)麻薬拮抗薬
・ ナロキソンやナルトレキソンは、麻薬拮抗作用があるので、急性麻薬中毒の呼吸抑制に有効です。
h) 中枢神経興奮薬
ア)カフェイン: キサンチン類の1つで合法的な中枢神経興奮薬です。1杯のコーヒーにやく100mg、カフェインが含まれており、1日6杯以上(600mg以上)で軽い身体的依存がおこります(無気力、頭痛など)。
イ) ニコチン: ニコチンは中枢神経興奮薬であり、依存を生じます。
ウ) コカイン: コカの葉に含まれる。コカの葉を噛んでも量が少なく、中毒にはなりません。 精製されてコカインとなります。
エ) メタンフェタミン: 覚醒剤として使われます。
i) 幻覚剤、その他
ア)LSD: 麦角(ばっかく)アルカロイドから合成される幻覚剤の1つです。
イ)大麻: 大麻成分のカンナビノイドにより、多幸感、幻覚をおこします。
j) アルコール
・ エタノールは中枢神経系を抑制します。
・ 一気飲みによる急性アルコール中毒は非常に危険です。
・ 慢性アルコール中毒により、禁断症状(きんだんしょうじょう)として振戦せん妄(しんせんせんもう)(意識混濁、振戦、幻覚)をおこし死に至ることもあります。
[設問] 通常の外科手術が行われる麻酔深度は、以下のどれか?
イ 意識不完全、痛覚低下
ロ 意識消失、見かけ上興奮
ハ 反射抑制、骨格筋弛緩
ニ 呼吸停止、血圧低下 正解 (ハ)
[設問] 本邦で複雑部分発作の第一選択薬として使われる抗てんかん薬はどれか?
イ カルバマゼピン ロ バルプロ酸 ハ フェニトイン ニ クロナゼパム
正解 (イ)
[設問] 合成麻薬性鎮痛薬は次のどれか?
イ モルヒネ ロ ヘロイン ハ コデイン ニ ペンタゾシン
正解 (ニ)
[設問] 急性麻薬中毒の呼吸抑制に有効なのは次のどれか?
イ ペンタゾシン ロ カルバマゼピン ハ クロナゼパム ニ ナロキソン
正解 (ニ)
[設問] 慢性アルコール中毒の禁断症状は次のどれか?
イ 悪性症候群
ロ パニック障害
ハ 振戦せん妄
ニ 多幸症 正解 (ハ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第32回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
B)神経系に対する薬剤
a) 抗精神病薬(こうせいしんびょうやく)
・ 抗精神病薬は主に統合失調症(とうごうしっちょうしょう)でおこる幻覚、妄想などの陽性症状に有効です。
・ 抗精神病薬には、フェノチアジン系、チオキサンチン系、ブチロフェノン系などがあります。
・ 副作用として急性期には抗コリン作用(口渇、発汗の減少、尿閉、便秘、目のかすみ)、長期服用時に遅発性(ちはつせい)ジスキネジア(不随意運動の1種)、まれに重篤なものとして悪性症候群(あくせいしょうこうぐん)(高熱、筋強剛、血清CPKの上昇、昏睡、ときに死亡)があります。
b) パーキンソン病治療薬
ア)レボドーパ製剤
・ パーキンソン病で欠乏するドパミンの補充の目的で、前駆物質であるレボドーパ製剤が投与されます。
・ 副作用として、初期には消化器症状(嘔吐など)、後期には幻覚(げんかく)やジスキネジアなどがおこってきます。
・ 現在よく使用されるレボドーパ製剤には末梢組織で脱炭酸されないように、末梢性脱炭酸酵素阻害薬が配合されています。
イ)アマンタジン
・ ドパミン神経終末からのドパミンの遊離を促進する作用を持っています。
ウ)ドパミン受容体アゴニスト
・ ドパミンの作用する受容体を直接刺激する作用を持っています。
エ)中枢性抗コリン薬
・ パーキンソン病では、ドパミン系が弱くなってアセチルコリン系が優位となっているため、アセチルコリン系を抑制する作用が治療に使われます。
c) 抗うつ薬
・ 抗うつ薬としては、三環系(さんかんけい)抗うつ薬(イミプラミン、アミトリプチリン、クロミプラミンなど)、四環系(よんかんけい)抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み抑制薬)、やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み抑制薬)があります。
d) 躁病(そうびょう)治療薬
・ 炭酸リチウムが使われます。
e) 抗不安薬、催眠薬
・ 抗不安薬は不安を取り除き鎮静作用を持っています。
・ 催眠薬(さいみんやく)は眠気をおこし睡眠へと導く作用を持っています。
・ 代表的なものがベンゾジアゼピン系の薬物とバルビタール酸誘導体であり、GABAの神経伝達に作用します。
・ ベンゾジアゼピン系薬物: ジアゼパム、クロルジアゼポキシド、ニトラゼパム、フルニトラゼパム、トリアゾラムなどがあります。
・ 新しい抗不安薬: ブスピロン
[設問] 抗精神病薬でよくみられる副作用を二つ選べ。
イ 遅発性ジスキネジア
ロ 悪性症候群
ハ 起立性低血圧
ニ 躁症状
ホ 幻覚 正解 (イ、ロ)
[設問] パーキンソン病治療薬で、ドパミン神経終末からのドパミンの遊離促進作用を持つものはどれか?
イ レボド―パ製剤
ロ アマンタジン
ハ ドパミン受容体アゴニスト
ニ 抗コリン薬 正解 (ロ)
[設問] 躁病治療薬を一つ選べ。
イ イミプラミン ロ 炭酸リチウム ハ レボド―パ ニ ジアゼパム
正解 (ロ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第31回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
b)化学療法薬
ア) 抗菌薬
・ 微生物が産生する物質で抗菌作用を示すものを抗生物質、化学的に合成された抗菌作用を示す物質を合成抗菌薬といいます。
・ βラクタム系抗生物質: 構造中にβラクタムと呼ばれる4員環を持つものをいいます。また、この4員環が抗菌活性を担っているのです。
ペニシリン系 ベンジルペニシリン、メチシリン、アンピシリン など
セフェム系 第1世代: セファゾリンなど(グラム陽性菌に有効、 緑膿菌には無効)
第2世代: セフォチアムなど(グラム陰性菌に対する抗菌力が高い、緑膿菌には無効)
第3世代: セフォタキシムなど(緑膿菌、セラチアにも有効)
第4世代: セフピロムなど(黄色ブドウ球菌や緑膿菌にも有効)
カルバパネム系 イミペネム など
モノバクタム系 アズトレオナム など
・ ホスホマイシン: 放線菌が産生するホスホエノールピルビン酸と類似の構造を持つ薬剤です。
・ グリコペプチド: バンコマイシンが代表的なもので、グラム陽性菌に対してのみ抗菌作用を持ちグラム陰性菌には無効。MRSAに対する第1選択薬となっています。
・ アミノグリコシド系抗生物質: アミカシン、ゲンタマイシンなどがあり、主にグラム陰性菌感染症に対して使われます。
・ テトラサイクリン系抗生物質: クロルテトラサイクリン、オシキテトラサイクリンなどがあり、広い抗菌作用を持ち、グラム陽性菌、グラム陰性菌に対して静菌的に作用します。
・ クロラムフェニコール: 毒性が強く、腸チフス、パラチフスなどの治療に限られています。
・ マクロライド系抗生物質: エリスロマイシン、ジョサマイシンなどと、ニューマクロライド系と呼ばれるクラリスロマイシン、ロキシスロマイシンなどがあります。
・ リンコマイシン、クリンダマイシン
・ 合成抗菌薬には、キノロン類とスルフォンアミド類(サルファ剤)、ST合剤(スルファメトキサゾールとトリメトプリムの合剤)があります。
イ)抗結核薬
・ 結核菌は癩菌(らいきん)とともに代表的な抗酸菌(こうさんきん)であり、他の細菌といろんな点で異なる細菌です。 抗結核薬は長期に投与されるため副作用の発現に注意が必要です。
・ 薬剤としては、イソニアジド(INH)、リファンピシン、エタンブトール、ストレプトマイシン、ピラジナミドがあります。
ウ)抗ウイルス薬
・ 抗ウイルス薬は、抗ウイルス作用と同時に投与される患者の生体細胞にも大きな影響があり、重篤な副作用をおこすことがあります。
・ 現在使われている抗ウイルス薬の多くは、核酸の合成を阻害する作用を持っています。
・ アマンタジン: インフルエンザAや風疹ウイルスに対して使われます。
・ アシクロビル: 単純ヘルペスウイルスや水痘ウイルスに対し有効です。
・ ガンシクロビル: サイトメガロウイルス感染症の治療・予防に使われます。
・ イドキシウリジン: 単純ヘルペス性角膜炎に使われます。
・ ビダラビン: 単純ヘルペス脳炎、免疫不全患者で発症した帯状疱疹、水痘に使われます。
・ ホスカルネット: ヘルペスウイルス、水痘ウイルス、HIVに抑制的に作用します。
・ リバビリン: C型慢性肝炎にインターフェロンα–2bとともに使われます。
・ オセルタミビル: インフルエンザA、B型ウイルスの両者に有効です。
・ インターフェロン: 抗ウイルス、免疫機能修飾、抗細胞増殖作用を持った強力なサイトカインです。 B、C型慢性肝炎などの治療に使われます。
・ レトロウイルス感染症治療薬: アジドチミジン、ジダノシン、ラミブジン、サニルブジン、ザルシタビン、アバカビルなどのヌクレオシド逆転写酵素阻害薬(ぎゃくてんしゃこうそそがいやく)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬などがあります。
エ)抗真菌薬
・ 深在性真菌症治療薬: アンホテリシンB、フルシトシン、グルセオフルビンなど
・ 表在性真菌症治療薬: ナイスタチンなど
[設問] 抗菌薬に関する以下の文で正しいものを一つ選べ。
イ 微生物が産生する物質で抗菌作用を示すものを抗生物質という。
ロ βラクタム系抗生物質には、ホスホマイシンも含まれる。
ハ アミノグルコシド系抗生物質には、クロルテトラサイクリンも含まれる。
ニ バンコマイシンはグラム陰性菌にのみ抗菌作用を持つ。
正解 (イ)
[設問] 以下より、抗結核剤を二つ選べ。
イ アンピシリン
ロ セファゾリン
ハ リファンピシン
ニ ストレプトマイシン
ホ エリスロマイシン 正解 (ハ、ニ)
[設問] サイトカインであり、B,C型慢性肝炎に使われるのはどれか?
イ アシクロビル
ロ アマンタジン
ハ インターフェロン
ニ ビダラビン 正解 (ハ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第30回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
(2) いろいろな薬剤
A)病原微生物に対する薬剤
a) 消毒薬
ア)アルコール類: 微生物の蛋白を変性させることによって作用を示します。70%エタノールと90%イソプロピルアルコールが一般的に使われています。
イ)アルデヒド類: 微生物の蛋白を変性させることによって作用。 ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなどがあります。
ウ)ハロゲン化合物
・ ヨード: ヨードチンキ(ヨウ素、ヨウ化カリウムを含むエタノール液)は、健常な皮膚の消毒に効果的。 しかし、過敏症の人があり、皮膚炎をおこすことがあります。 また、ポビドンヨード(ポリビニルピロリドンとヨウ素の複合体)は皮膚の消毒、手術時の皮膚の消毒に使われます。
・ 塩素: 塩素は次亜塩素酸の形で抗微生物作用を示します。塩素は現在主に、水の消毒に使われています。
エ)酸
・ ホウ酸は局所刺激が少なく、粘膜や皮膚の防腐に用いられています。
・ 安息香酸は食品防腐剤に使われています。
オ)酸化剤
・ 過酸化水素や過マンガン酸カリウムは、発生する活性酸素による作用を持ち、創傷、潰瘍の殺菌、消毒のために使われます。
カ)重金属、水銀化合物
・ マーキュロクロムが有機水銀化合物であり、皮膚表面、創傷、潰瘍の消毒に使われます。
キ)フェノール類
・ フェノール類は蛋白質の変性作用により殺菌作用を示します。 しかし、組織刺激性が強いので、誘導体であるクレゾールが使われることが多いようです。 皮膚、器具、排泄物などの消毒に使われています。
ク)界面活性剤
・ 逆性石鹸として塩化ベンザルコニウムなどがあります。
ケ)色素類
・ アクリノールが化膿創の消毒に使われます。
コ)クロルヘキシジン
[設問] 発生する活性酸素による作用を利用して殺菌、消毒に使われるのはどれか?
イ ホウ酸 ロ 過酸化水素 ハ ヨードチンキ ニ エタノール
正解 (ロ)
[設問] 有機水銀化合物で、皮膚表面、創傷、潰瘍の消毒に使われるのはどれか?
イ ホウ酸 ロ 過酸化水素 ハ マーキュロクロム ニ エタノール
正解 (ハ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第29回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
J)薬剤の効果を左右する因子
・ 一般的因子: 体重、年齢、性差、肝機能と腎機能、他の薬剤との相互作用、服薬の徹底の度合
・ 偽薬(ぎやく)効果(プラセボ効果): 心理的要因で薬理作用のないもので効果がみられることをいいます。
・ 薬剤耐性: 薬剤を連用しているときに現れる薬効の低下
・ 薬物依存(やくぶついぞん): 薬剤を連用しているときにおこる習慣性が生じることがあります。 重症化した場合、薬剤を中止すると禁断症状(きんだんしょうじょう)が現れ、これを嗜癖(しへき)(耽溺)と呼びます。 習慣性と嗜癖を合わせて薬物依存と呼びます。
K)医薬品の開発
・ 新規の化合物の開発 → 前臨床試験(培養細胞、動物などを使った薬理作用をみる試験と安全性をみる試験があります)→ 第1相臨床試験(動物試験での効果がヒトでも現れるかどうかをみます)→ 第2相臨床試験(少数の患者で試験、薬効と副作用をみます)→ 第3相臨床試験(多数の患者群で対照薬との比較試験)→ 新薬として認可 → 発売後、第4相臨床試験(新たな薬物相互作用、まれな有害作用がないかどうかを調査)
[設問] 以下の文で正しいものを一つ選べ。
イ 偽薬効果とは、心理的要因で薬理作用のないものに効果がみられることをいう。
ロ 薬剤耐性とは、連用するうちに副作用がみられなくなることをいう。
ハ 薬物での禁断症状とは、長く飲まなかった薬剤を再度飲んで出る症状をいう。
ニ 薬物依存とは、薬物を連用していることをいう。
正解 (イ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第28回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
F)薬剤の吸収経路
・ 舌下: ニトログリセリンなどは舌下投与され、口腔粘膜下の静脈は門脈を介せず、直接全身循環に入ります。
・ 腸: 経口投与された薬剤は腸粘膜のリン脂質二重層のバリアーを通り抜け、門脈から肝臓へ送られます。 ここでは、疎水性(親油性)物質または輸送系を利用できる薬剤のみが吸収されます。
・ 気道: 気道の線毛上皮細胞のリン脂質二重層バリアーがあるが、ガスや揮発性の吸入麻酔薬などは肺胞からすみやかに吸収されます。
・ 直腸: 直腸粘膜下の静脈叢から門脈を経ず、直接全身循環に入るので吸収効率のよい経路です。 各種坐薬がこの経路から吸収されることになります。
・ 皮膚: 局所作用を目的として軟膏剤やクリーム剤、全身作用を期待してニトリグリセリンのテープ剤や軟膏が、この経路から投与されます。
G)血液組織関門
・ 薬剤は毛細血管で組織間液に移行するが、この毛細血管が血液組織関門となります。 そのため、すべての物質がここを通り抜けられるわけではありません。
・ 脳や脊髄といった中枢神経では、毛細血管の内皮細胞に小孔がなく物質移送がより制限されたものとなっています。 これを血液脳関門といいます。 この血液脳関門を通過できる薬剤はごく限られたものとなります。
H)薬剤の代謝と排泄
・ 薬剤の代謝では、肝臓の酵素が最も重要な役割を演じています。 代謝されたものは、血液中か胆汁中に分泌されます。
・ 薬剤は代謝産物かそのままの形で、主に腎臓を介して排泄されます。 これを腎性排泄と呼びます。
I)薬剤の血中濃度
・ 薬剤の血中濃度が半減する時間を半減期といいます。
[設問] 門脈を経由する吸収経路は次のどれか? 一つ選べ。
イ 舌下 ロ 小腸 ハ 直腸 ニ 気道 正解 (ロ)
[設問] 薬物代謝で最も重要な役割を果たす臓器を一つ選べ。
イ 肺 ロ 腎臓 ハ 心臓 ニ 肝臓 正解 (ニ)
[設問] 血液組織関門となるのは次のどれか?
イ 大動脈 ロ 中小動脈 ハ 毛細血管 ニ 静脈 正解 (ハ)
疾病の成りたちと回復の促進 第27回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]
4)薬剤
(1) 薬剤による治療の概念
A)薬剤治療の目的
・ 薬剤の投与によって疾病の原因を除いたり、症状を緩和する目的で薬物治療は行われます。
B)薬剤の作用と効果
・ 薬剤の作用は生体の構成単位である細胞に働き、その機能を強めたり(促進、亢進、興奮)弱めたり(抑制、麻痺)します。その結果が効果ということになるのです。
・ 薬剤の投与により、生体の持つ機能を量的に変えることはできますが、質的に新たな機能を生じさせることはできません。
・ 薬剤の作用は、一定の量までは細胞の機能を促進しても、それを過ぎるとかえって抑制する場合もあります。
C)薬剤の作用機序
・ 薬剤が結合して効果を生じる部位を作用部位といいます。 作用部位の大半は生体細胞の受容体(じゅようたい)です。
・ 受容体を刺激するものを作動薬(さどうやく)(アゴニスト)、作動薬の作用を遮断するものを拮抗薬(きっこうやく)(アンタゴニスト)と呼びます。
D)薬剤の主作用と有害作用(副作用)
・ 薬剤の望ましい作用は主作用(しゅさよう)または薬効(やっこう)といいます。
・ 薬剤の有害な作用は、一般に副作用(ふくさよう)と呼ばれます。
・ 副作用の原因としては、量が多すぎる(過量(かりょう))、投与される人の感受性が何らかの要因で高まっている(感受性亢進(かんじゅせいこうしん))、遺伝的に感受性が高い(遺伝的素因)、薬剤の作用臓器に選択性がない(薬剤の特異性の欠如(とくいせいのけつじょ))などがあります。
E)薬剤アレルギー(薬剤過敏症)
[設問] 薬剤の作用に関する以下の文で、正しいものを一つ選べ。
イ 薬剤の投与により、生体に、質的に新たな機能を生じさせることができる。
ロ 薬剤は、投与量を増やせば増やすほど、細胞の機能を促進できる。
ハ 薬剤の作用部位である受容体を刺激するものを作動薬、作動薬の作用を遮断するものを拮抗薬という。
ニ 薬剤の作用は、望ましいものも有害なものも含めて薬効という。
正解 (ハ)
疾病の成り立ちと回復の促進 第56回(リハビリテーション)へ ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-05-10