母性看護学(14)(周産期にある人々の看護) [母性看護学]
(2)出産様式
・ 自然の娩出力による自然分娩と人工的操作や介助を要する人工分娩(誘発・促進・鉗子・吸引・無痛分娩、帝王切開など)があります。
・ 陣痛時は産婦が自由で快適に分娩できるように、身体を自由に動かし娩出時も好きな体位をとるアクテイブバース・フリースタイル出産も取り入れられています。
・ 夫(家族)立ち会い分娩とは、サポーターとして夫や上の子供が分娩に付き添うことで、サポーターに準備教育をしておくことが望ましいでしょう。
・ 夫立ち会い分娩では、育児の主体者としての自覚を持って分娩に立ち会ってもらえるようにします。
・ 看護師は産婦を尊重し、ありのままの状況を受け止め、側に付き添い、温かく受容的な態度で接することが必要です。 また産婦の対処能力と自己効力感を高め、出産への主体性を増してもらうように関わっていきます。
(3)産痛の緩和
・ 薬物による無痛分娩には、薬物全身投与法と区域麻酔法(硬膜外麻酔など)があります。 現在無痛分娩の主流となっているのは、硬膜外麻酔法です。
(4)産婦と家族の心理
・ 分娩第1期は、分娩進行に伴う生理的不快症状があり、誰かに側にいてほしいと思う時期です。
・ 分娩第2期は外界からのいろいろな状況を受け入れにくい時期です。 その一方で分娩に直接関連した感覚的印象が鋭くなる時期でもあります。 また先の見えてきた安心感や児への期待から、出産に主体的になりやすい時期でもあります。
・ 分娩後はホルモンの劇的な変動により不安定になりやすくなります。 出産が挫折体験である場合、母親役割獲得への自信を喪失し、母性行動へネガティブな影響を与えることになります。 そんな場合、分娩を振り返ってもらい、肯定的に受け止めるように援助する必要があります。
[設問] 現在、無痛分娩の主流となっているのは、次のどれか?
イ 硬膜外麻酔法
ロ 全身麻酔法
ハ 会陰部神経麻酔法
ニ 脊椎麻酔法 正解 (イ)
母性看護学(13)(周産期にある人々の看護) [母性看護学]
2)産婦の看護
(1)分娩の経過と胎児の健康状態
・ 陣痛が10分おきに規則正しくおこるか、1時間に6回の陣痛がおこることをもって分娩開始とします。
・ 10分おきの陣痛が規則的にくるようになって、子宮口が全開大(10cm開大)するまでの間を分娩第1期といいます。初産婦で平均10〜12時間、経産婦で4〜6時間とされます。
・ 子宮口が全開大してから児娩出までを分娩第2期といいます。 これは、初産婦で約2〜3時間、経産婦で約1時間くらいです。
・ 児娩出から胎盤娩出までを分娩第3期といいます。 これは、だいたい10〜20分位とされます。
・ 分娩終了から2時間程を、分娩第4期または分娩後期といいます。
・ 産道は、骨産道と軟産道からなります。
・ 分娩時に児頭は産道の抵抗を受けて、骨重積などの変形(応形機能)がおこります。
・ 胎児の縦軸と子宮の縦軸の関係を胎位、児背と母体の関係を胎向、胎児の姿勢を胎勢といいます。
・ 回旋とは、児頭が最小周囲径で骨盤各部を通過するために行うもので、機転が第1〜第4まであります。
・ 胎盤娩出様式には、胎児面で娩出するシュルツエ式、母体面で娩出するダンカン式、混合式があります。
・ 分娩経過中、不安や恐怖から過換気症候群をおこす産婦がいます。
・ 胎児の状態把握のために、胎児心拍モニタリングを行います。 胎児心拍数基線の正常域は120〜160回/分で基線細変動と一過性頻脈がみられます。 また、一過性徐脈(早発・遅発・変動)の出現に注意する必要があります。
・ 分娩時の児頭への圧迫により先進部に発生し、縫合・泉門に関係なく境界不明瞭な腫瘤を産瘤といいます。 これは、頭血腫との鑑別が必要です。
・ 分娩進行に伴い、セルフケア行動が行き届かず、基本的ニードの不足が生じます。
[設問] 流産とは、妊娠何週未満の妊娠の中絶をいうか?
イ 18週 ロ 20週 ハ 22週 ニ 24週
正解 (ハ)
[設問] 正期産とは、妊娠何週の出産をいうか?
イ 32~36週未満
ロ 37~42週未満
ハ 39~42週未満
ニ 40~44週未満 正解 (ロ)
[設問] 分娩開始とされるのは、次のどれか?
イ 陣痛が10分おきに規則正しくおこるか、1時間に6回の陣痛がみられる。
ロ 陣痛が20分おきに規則正しくおこるか、2時間に6回の陣痛がみられる。
ハ 陣痛が5分おきに規則正しくおこるか、1時間に10回の陣痛がみられる。
ニ 陣痛が15分おきに規則正しくおこるか、1時間に10回の陣痛がみられる。
正解 (イ)
[設問] 子宮口が全開大してから児娩出までを何というか?
イ 分娩第1期 ロ 分娩第2期 ハ 分娩第3期 ニ 分娩第4期
正解 (ロ)
[設問] 胎児の背と母体の関係を何というか?
イ 胎位 ロ 胎勢 ハ 胎向 ニ 胎性
正解 (ハ)
母性看護学(12)(周産期にある人々の看護) [母性看護学]
(2)妊婦の心理
・ 妊娠初期は気分の変動が著しく、アンビバレントな感情がおこりやすい状態となっています。
・ 妊娠中期はプロゲステロンの影響を受けて、自己陶酔的な状態となります。 また、胎動自覚・他者からの注目をより心地よく感じるようになります。
・ 妊娠後期は腹部増大に伴う身体的変化の影響により、気持が内向的になります。 また、出産への不安が集中する時期でもあります。
・ 妊娠期の心理・社会的特徴は、親役割獲得過程への準備期であり、母親役割モデルの有無や妊娠の受容もこれに関係してきます。
・ 胎動による胎児との愛着形成によって、母親としての自己像が形成されていきます。
・ 妊娠期は、受容的ニードが高まっています。
(3)妊娠と不快症状
・ マイナートラブルとは、ホルモン動態変化や子宮増大によって生じる種々の不快症状のことです。 それは、精神的因子に影響されることもあり、症状や感じ方、出現頻度には個人差があります。
・ 妊娠初期には、つわり・めまい・立ちくらみ・頻尿・便秘・乳房増大・帯下の増加がおこりやすくなります。
・ 妊娠中期には、湿疹や掻痒感がおこりやすくなります。
・ 妊娠末期は、頻尿・腰背部痛・浮腫・下肢けいれん・静脈瘤・痔・胸やけがおこりやすくなります。
(4)妊婦の日常生活とセルフケア
・ 全期間を通して便秘になりやすいので、食事や排便習慣など生活の工夫が必要となります。
・ 日常の家事は、正しい姿勢で疲労しない程度にします。 また転倒予防と腹圧をかけない工夫をします。
・ 妊婦に望ましい運動は、全身運動で有酸素運動かつ楽しいものがよいとされます。 それには、散歩、妊婦体操、妊婦水泳、マタニテイビクスなどがあります。 妊婦体操は妊娠12週頃から始めて、16週以降は習慣的に行うようにします。
・ 旅行は妊娠中期の安定した時期にはOKです。 旅行前には受診してもらい、同伴者をつけ、無理のない日程とします。 また、母子手帳と保険証を携帯するようにします。
・ 睡眠時間や休息は十分にとるようにします。 睡眠不足がおきた場合は昼寝で補うようにします。
・ 妊娠中は発汗・帯下の増量がおこるので清潔に努めます。 また、う歯と歯肉炎が発生しやすくなっていますので口腔の清潔をこころがける必要があり、妊娠中期には歯科を受診するとよいとされます。
・ 性交に通常制限はありませんが、感染予防などのためコンドーム使用が勧められます。 ただし流早産の兆候や既往がある場合、性交は控えるようにします。
・ 妊娠期の衣生活は、サイズ調整ができ吸湿性・通気性の良いものとします。
・ 勤労妊婦は、労働基準法・男女雇用機会均等法や健康保険法で就業や経済的支援が定められています。 これらは、妊婦自身の申請を必要とします。
(5)出産・育児の準備
・ 分娩・産褥・育児の必要物品は妊娠22週頃までに準備します。
・ 里帰り分娩の場合は、妊娠中期に、分娩する施設の受診をしておくことが望ましいでしょう。 また、妊娠経過の記録を紹介状として持参するようにします。
・ 分娩準備教育とは、分娩経過の理解、分娩への不安緩和、分娩の意欲を養うなど、妊婦の心身の準備を目的とするものです。
・ 妊娠24週以降は、呼吸法・リラクゼーションの練習を行います。
・ バースプランとは、妊婦および家族の出産およびその後の育児を含めた過ごし方について、希望や要望を盛り込んだ計画書のことです。
・ 妊娠期に乳房の生理的変化や母乳哺育の利点欠点を説明して、積極的に母乳育児に取り組めるようにします。 乳房ケアに関しては、乳房変化に合わせた締め付けないブラジャーを着用してもらい、妊娠20週頃より乳頭の清潔保持に努めます。 妊娠36週以降は、乳管開通マッサージを行います。
(6)親役割の準備
・ 子供を育てることは母親のみが行うものでありません。 子育てとは、父親・母親ともに親になる過程を経ながら、子供の成長に関わっていくことです。 夫婦間の調整や親役割獲得、家族関係の再構成が課題となります。 父親役割・きょうだい役割・祖父母役割・夫婦間の調整・家族関係の再構成について話し合いを促すことも大切です。
・ 地域や施設での両親学級や祖父母学級などへの参加や、先輩父母との交流の機会を通して、親としての自覚を育てるようにします。
[設問] 妊娠中期に、胎動自覚や他者からの注目を心地よく感じるのは、何によるものか?
イ エストロゲン ロ プロゲステロン ハ 絨毛性ゴナドトロピン ニ 胎盤性ラクトーゲン
正解 (ロ)
[設問] 妊娠中におこる不快症状をまとめて何というか?
イ マイナートラブル
ロ マタニティブルー
ハ 妊娠中毒症
ニ 妊娠合併症 正解 (イ)
[設問] 妊婦の日常生活とセルフケアについて、正しいものを一つ選べ。
イ 妊娠中は下痢になりやすいので、食事には気をつける。
ロ 日常の家事は、全期間通じてしないようにする。
ハ 妊婦に望ましい運動は、全身を使う有酸素運動で、楽しいものがよい。
ニ 旅行は、妊娠初期にはかまわないが、中期以降が避ける。
正解 (ハ)
母性看護学(11)(周産期にある人々の看護) [母性看護学]
4.周産期にある人々の看護
1)妊婦の看護
(1)妊娠の経過と胎児の発育
・ 受精卵を胎内に保有している状態を妊娠といいます。
・ 妊娠の成立には、排卵 → 卵の卵管内進入 → 射精 → 精子の卵管内進入 → 卵管膨大部での受精 → 受精卵の子宮腔への移動 → 着床 という7つの段階が必要です。
・ 受精後8週までを胎芽、それ以降を胎児といいます。
・ 分娩予定日は、最終月経の初日を0日として、280日目をさします。 ネーゲレ概算法では最終月経初日に7日を加え、月から3を引くか9を加えることで算出できます。
・ 胎盤は妊娠16週頃に完成し、母児間の物質交換・ホルモン(絨毛性ゴナドトロピン・胎盤性ラクトーゲン・エストロゲン・プロゲステロン)産生を行います。
・ 羊水は無色透明・アルカリ性(pH7.0〜8.5)の液体で胎児循環を保つ役割を担っています。また、羊水の性状から、胎児の成熟度や病的状態を知ることができます。
・ 胎児は卵円孔・ボタロー管・アランチウス管で胎児循環を行っています。
・ 母体体重増加の限界は500g以内/週、2kg未満/月、妊娠期間を通しては9〜11kg未満となります。
・ 妊娠線とは、腹壁の弾性線維が切断されて皮膚にひび割れ状の線ができることです。
・ 妊娠性貧血とは、ヘモグロビン値11g/dL未満およびヘマトクリット値33%未満をいいます。
・ 胎動感は、妊娠18〜20週頃自覚されますが、経産婦の方が早期に自覚します。
・ 妊婦健康診査は妊娠23週までは4週間に1回、妊娠24〜35週までは2週間に1回、妊娠36週以降は1週間に1回となります。 診察内容は、胎児の大きさや羊水量の目安として腹囲・子宮底長を、妊娠中毒症のスクリーニングを目的として血圧・浮腫・尿蛋白測定、糖尿病の発見を目的に尿糖を検査します。 妊娠前半期と後半期に1回ずつ公費負担で受診できます。
・ 胎児の健康状態を調べる手段としてNST(ノンストレステスト)があります。 20分間に2回以上、15bpm以上で15秒以上続く一過性頻脈があれば、胎児の状態を良好と判断します。
[設問] 妊娠確徴といわれるものを二つ選べ。
イ 児心音の聴取
ロ つわり
ハ 腹部増大・突出
ニ 月経停止
ホ 胎動の確認 正解 (イ、ホ)
[設問] 免疫学的妊娠反応とは、何を検出するものか?
イ エストロゲン
ロ ヒト絨毛性ゴナドトロピン
ハ 胎盤性ラクトーゲン
ニ プロゲステロン 正解 (ロ)
[設問] 胎盤は妊娠何週ころに完成するか?
イ 5~6週 ロ 7~8週 ハ 9~10週 ニ 11~12週 ホ 15~16週
正解 (ホ)
[設問] 妊娠期間を通じての母体体重増加の上限はどれくらいとされるか?
イ 4~5kg ロ 6~8kg ハ 9~11kg ニ 12~14kg
正解 (ハ)
[設問] 胎動を自覚するのは、妊娠何週頃か?
イ 15~17週 ロ 18~20週 ハ 21~23週 ニ 24~26週
正解 (ロ)
母性看護学(19) (ハイリスクな状況にある人々の看護)へ ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-10-30
母性看護学(10)(女性のライフサイクル各期における看護) [母性看護学]
3)更年期にある人々の看護
(1)ホルモンの変化と閉経
・ 更年期とは、閉経に伴う卵巣機能変動によっておこる心身の変動に適応する時期のことです。 わが国の平均閉経年齢は約50歳で、その前後約10年間が更年期と考えられています。
・ この時期は望まない妊娠をしやすいので避妊指導を行います。
・ 更年期は身体的・社会的条件により特有の症状が現れやすい時期です。
・ 自律神経失調症状の基本治療は、ホルモン補充療法です。
・ 生殖能喪失と老化への不安、夫婦や親子関係の変化によって、うつ状態をおこしやすくなります。 薬物療法以外に、カウンセリングが行われることがあります。
・ エストロゲン減少による膣細菌叢変化で膣炎、また膣粘膜萎縮で性交痛・外陰掻痒感がおこりやすくなります。
・ エストロゲン減少による脂質代謝の低下と中性脂肪の増加から動脈硬化が進行します。 そのため、脳卒中や虚血性心疾患への罹患が増加します。
・ この時期は、腹圧性尿失禁がおこりやすくなります。 予防や治療としては、膀胱トレーニングと骨盤底筋群エクササイズが有効です。
・ 更年期における性器出血は、子宮筋腫・子宮頸癌などの場合もありますから、閉経前の月経不順と鑑するためし、受診を勧めるようにします。
(2)骨粗鬆症の予防
[設問] 女性の更年期とは、一般にいつ頃をいうのか?
イ 40歳代
ロ 50歳をはさんで10年くらい
ハ 50歳代
ニ 40歳から60歳まで
正解 (ロ)
[設問] 更年期に膣炎や膣粘膜萎縮、脂質代謝の異常がおこるのは、何によるのか?
イ プロゲステロンの減少
ロ 卵胞刺激ホルモンの減少
ハ 黄体化ホルモンの減少
ニ エストロゲンの減少
正解 (ニ)
母性看護学(9)(女性のライフサイクル各期における看護) [母性看護学]
(2)不妊治療と看護
・ 避妊しない性交を行っても妊娠しない不妊期間が2年間ある場合、不妊症といいます。
・ 不妊症は、排卵・排卵因子、男性因子、卵管・子宮因子の1つ以上に障害がある時におこります。
・ 不妊の原因は、男性因子と女性因子の2つに分けられますが、その割合はほぼ1/2であって、不妊治療は女性と男性を同時に行う必要があります。
・ 不妊を自覚した女性の心理的ストレスには、「妊娠できないという事実で自分自身を否定されたように感じる」 「性交の日程を指示されるなど、性生活が義務となってしまうため、夫婦関係に変化がおこる」 「周囲から子供ができない原因を追求される、治療を余儀なくされることがある」 「子供のいる場に加わることができない」 「治療のために仕事を休まなければいけない」 といったものがあります。
[設問] 避妊しない性交を行っている夫婦に何年不妊期間があれば不妊症というか?
イ 2年 ロ 3年 ハ 4年 ニ 5年
正解 (イ)
母性看護学(8)(女性のライフサイクル各期における看護) [母性看護学]
2)成熟期にある人々の看護
(1)家族計画の意義
・ 家族計画とは、子供を望む時に得る目的で、行う受胎計画のことです。
・ 受胎調節とは、子供を望む時に妊娠し、望まない時には避妊をして、受胎を調節することです。
・ 合意に基づかない性交や避妊失敗時には、中用量ピル投与による緊急避妊法を用いる必要があります。
・ 月経周期や基礎体温を記録することにより、排卵や受精可能な日を避けて性交する避妊法としてオギノ式、基礎体温法があります。 しかし、失敗率が高くて、有効な避妊法とはいえず、 むしろ妊娠したい時に用いる方法とされます。
・ 子宮内避妊具(IUD)とは、子宮腔内に挿入し、受精卵の着床を防ぐ避妊具のことで、避妊率は95〜98%と高いのですが、婦人科での検査や処置が必要となります。 過多月経、不正出血などがおこることがあり、子宮外妊娠をおこすことがあります。
・ 不妊手術とは、生殖腺を除去することなく、生殖を不能にする手術で、厚生労働省令をもって定められています。 女性では卵管結紮術、男性では両側精管結紮術があり、いずれも母体保護法に基づいて行われます。
[設問] 避妊率が最も高いものを選べ。
イ コンドーム
ロ 低用量ピル
ハ 子宮内避妊具
ニ 基礎体法 正解 (ロ)
母性看護学(7)(女性のライフサイクル各期における看護) [母性看護学]
3.女性のライフサイクル各期における看護
1)思春期にある人々の看護
(1)第2次性徴
・ 女性の第2次性徴発現としては、乳房の発育、恥毛発生があげられます。
・ 性機能の発達の特徴は、身長の発育のピークとほぼ同じ時期に、初経の発来があることです。
・ 第2次性徴の発現や初経の発来は、卵巣から分泌されるエストロゲンによるものです。
・ 初経発来から月経周期の確立までには長時間かかります。 そして、この期間は排卵を生じない無排卵性周期を示します。
・ 女性は、16歳頃に最終身長に達し、その約半年後に体重増加が著しくなります。 体脂肪の増加により、身体は丸みを帯び、女性らしい体型となってきます。
(2)心理的特徴
・ 思春期は、子供から大人に向かって発達する心理的過程であり、葛藤しながら自己受容をしていく時期です。
・ 第2次性徴によっておこる身体的成熟は、自己の身体や内面に関心をおこさせ、心理的な反応をおこします。 それらを通じ、親、友人、社会などからの影響を受けながら、自己像、性同一性、ボデイイメージをつくることが、発達課題の1つといえます。
・ 第2次性徴は、大人になる、成長するといった肯定的な感情と、恥ずかしい、不快である、めんどうくさいなどの否定的感情の両方を引き出し、思春期女子は、アンビバレントな精神状態におかれます。
・ 変化していく身体の受け入れ、親や他者からの評価や反応などがボデイイメージに影響します。 現代の 「やせ志向」 は無理なダイエットを助長し、ボデイイメージの歪みが生じています。
[設問] 同性の友人の体験を聞いて、自分が経験していないことで感じる圧力を何というか?
イ ネガティブプレッシャー
ロ ピアプレッシャー
ハ ポジティブプレッシャー
ニ アロマプレッシャー 設問 (ロ)
母性看護学(11) (周産期にある人々の看護)へ ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-10-22
母性看護学(6)(人間の性と生殖) [母性看護学]
4)生殖をめぐる倫理
(1)出生前診断
・ 出生前診断の適応は、胎児の罹患や奇形の確率が出生前診断の危険率より高いことが基準となります。
・ 対象となるのは、母体が高年齢(35もしくは40歳以上)、染色体異常児の出産の既往がある、両親のいずれかが染色体異常の保因者、遺伝病の家族歴がある、X染色体連鎖遺伝子をもち性別診断が有効な診断法である、妊娠中に風疹などに罹患した者である場合などです。
・ 妊娠初期は、羊水細胞や絨毛細胞という胎児の細胞を採取し、染色体異常や遺伝病を診断することができます。
・ 妊娠中期以降は、超音波診断などにより、胎児の奇形や心臓や腎臓の機能も評価でき、胎児治療や出産直後の治療もできるようになってきています。
(2)不妊治療
・ 不妊治療の問題点は、「保険適応外のため治療が高額である」 「治療期間が長期化する傾向にある」 「薬物の副作用がある」 「他人の卵子や精子を使うと親子関係が複雑になる」 「日本の法律では一般的に認められていない治療もあり、海外で治療を受ける場合もある」 ということです。
(3)人工妊娠中絶
・ 妊娠女性の4人に1人が人工妊娠中絶を経験しています。
・ 2011年の人工妊娠中絶の数は約200,000件であり、最近は減少傾向がみられます。
・ 20代以下は未婚女性が多いのですが、30代以上は既婚女性が多くなります。
・ 人工妊娠中絶の時期は7週未満がほぼ半数を占めています。
(4)ハイリスク児の治療
・ ハイリスク児とは、何らかの医療が必要と予測される新生児のことで、出生前に予測される場合と、出生後に判明する場合があります。
・ 児の治療や予後について十分説明し、分娩の時期や治療方法など、両親が決定できるよう看護していく必要があります。
・ ハイリスク児は、出生後は入院が必要となるため母子分離がおこります。 面会時間の制限をなくし、母乳の活用、カンガルーケアの実施など、母子分離の障害を少なくする看護が必要となります。
[設問] 出生前診断の適応となるのは、次のどれか? 一つ選べ。
イ 染色体異常児の出産を妊婦が心配している。
ロ 妊娠中に風を引いた。
ハ 父親が35歳以上である。
ニ 母親が染色体異常の保因者である。
正解 (ニ)
[設問] 人工妊娠中絶について、正しい文を一つ選べ。
イ 近年、増加傾向にある。
ロ 40歳以上の高齢で、増加傾向がある。
ハ 中絶の時期は、15週以降が多い。
ニ 2011年の数は、約20万件である。
正解(ニ)
母性看護学(5)(人間の性と生殖) [母性看護学]
3)性行動
(1)セクシユアリテイ(性反応)
・ セクシユアリテイとは、動物的な性(セックス)と社会文化的な性(ジェンダー)を合わせて考えたものです。
・ 乳児期・幼児期のセクシユアリテイは、子供への保護者の合図や行動・反応によって大きな影響を受けます。
・ 小児期は、同性の保護者を同一視したり行動を模倣したりしながら性役割行動について学習します。
・ 小学校低学年の子供は、性に関する言葉を口にしたり、質問したりするなど、自分のセクシユアリテイに明らかな関心を示します。
・ 思春期の課題は、増大する性的エネルギーを自分でコントロールすること、自己のリプロダクテイブヘルスを守ること、ジェンダーアイデンテイテイの確立です。
・ 成人期は、生殖能力が最も高くなる時期です。
・ 成人期は、親密性、結束性を高め、性的パートナーを選択し関係を育む、そして親としての役割を果たすことが課題となります。
・ 更年期は、身体的な機能が変化し、自己のセクシュアリテイもその変化に適応させていくことが課題となります。
・ 老年期は、パートナーとの関係により、性行動をもち続けることもあります。
(2)性感染症
・ 性感染症とは、主に性行為に伴う接触によって、直接ヒトからヒトへ、皮膚や粘膜を通して微生物が感染しておこる疾患の総称です。
・ 感染経路は、性器、口唇、肛門、尿道口などでの接触であり、ウイルス、細菌、真菌、原虫、寄生虫などが感染病原体となります。
・ 月経周期が確立していない若い女性は、子宮頸管粘液の働きが不十分であり、性感染症に罹患しやすくなります。
・ 女性は、膣、子宮頸管、子宮内膜腔、卵管、腹腔と感染が拡大しやすく、不妊の原因となることもあります。
[設問] 性感染症について、正しいものを一つ選べ。
イ 必ず症状がみられる。
ロ 感染経路は、性器での接触に限られる。
ハ 月経周期が確立する前の若い女性は罹患しにくい。
ニ 不妊の原因となることがある。
正解 (ニ)