成人看護学(5)(成人に特有な健康問題の特徴) [成人看護学]
3)生活ストレスに関連する健康障害
(1)ストレスの種類と生理的反応
・ ストレス因子による神経刺激は交感神経に伝えられ、交感神経はノルアドレナリンを放出、副腎髄質はアドレナリン、ノルアドレナリンを分泌します。
・ コーピングは人がその人独自の方法でストレスや脅威を緩和・あるいは除去しようとする試みの過程のことです。 コーピングには、ストレス状況を直接変化させようと働きかける問題焦点コーピングと、状況認識を変えることでストレス軽減を図る情動焦点コーピングとがあります。
(2)生活ストレスと健康障害
・ 2010年度の国民生活基礎調査によると、日常生活での悩みやストレスが「ある」と答えた人の割合は46.5%で、性別にみると、男42.4%、女50.3%と女が高くなっていて、男女とも40~49歳で最も高くなっていました。
・ 悩みやストレスの原因では、「自分の仕事」が30代から50代にかけて高いのですが、男女差があって男性でより高くなっています。 また、高齢になるほど「自分の病気や介護」が高くなっています。
・ 適応障害は、転校や転職が原因となっておこる不適応で、抑うつ、不安が強くなり、登校拒否や出社拒否などの原因となります。
・ アルコール依存も増えており、その結果、アルコール性精神病も増えています。
(3)ストレス関連疾患の発生状況
・ アルコール依存症患者は、中年男性ばかりでなく、女性、青少年、高齢者にも増加しています。
・ ストレスの関与が大きい疾患には、消化性潰瘍、気管支喘息、過敏性大腸炎、高血圧症などがあります。
・ 過労死は、脳血管疾患や循環器疾患での病死の他、過労自殺も労災で認定されるようになってきています。
[設問] 人が独自の方法でストレスや脅威を緩和あるいは除去しようとする試みの過程を何というか?
イ リラクゼーション
ロ コーピング
ハ 自律訓練法
ニ スパ 正解 (ロ)
成人看護学(4)(成人に特有な健康問題の特徴) [成人看護学]
2)職業に関連する健康障害
(1)就業条件・環境と病気
・ 労働安全衛生法により健康診断の規定が設けられていて、事業者は全労働者に対し、雇用時と1年以内に1回の定期一般健康診断を行わなければならないことになっています。 これは、定期健康診断と呼ばれます。
・ 2008年、この定期健康診断の項目が改正されました。腹囲の検査が追加され、血清総コレステロールがLDLコレステロールへ変更されました。 この背景には、脂質異常症や高血圧、糖尿病など脳・心臓疾患などにつながる所見を有する労働者が増加していることがあります。
・ 近年、「過労死」が増加傾向にあります。
・ VDT症候群
・ 厚生労働省では、連続したVDT作業による視覚負担や、長時間同一姿勢による負担の軽減を目的として 「VDT作業のための労働衛生上の指針について」 を1985年に制定しました。
・ また、職場における急速なIT化のため、VDT作業が一般化すると同時に、VDT機器が多様化し、作業者の心身の疲労が大きなものとなってきたため、2002年、新しい「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を発表しています。
・ 放射線業務従事者の放射線被ばく障害を防ぐため、電離放射線障害防止規則で、通常作業では5年間で100ミリシーベルト、1年間では50ミリシーベルトとされ、緊急作業では100ミリシーベルト、妊娠可能な女子の場合は3か月で5ミリシーベルト、妊娠中の女子では内部被ばくは1ミリシーベルト、腹部表面は2ミリシーベルトとされています。
(2)職業病の発生状況
・ 職業性疾病とは、ある特定の職業に従事することによって発生する疾病で、物理的・化学的作業環境により、または作業条件により発生するものです。 物理的要因によるものとしては高気圧障害、職業性難聴、振動病など、化学的要因によるものとしては塵肺、有毒ガス中毒など、作業条件によるものは頸肩腕障害、腰痛などがあります。
・ 塵肺健康診断において症状がみられる人の数は低下傾向を示しています。
・ 頸肩腕障害は、キーパンチャー、レジスターを使う人に多く発症するもので、しびれ、疼痛、こり、冷えなどの症状を呈します。
・ 過労死は中高年の男性に多く、女性には少なく、長時間残業、休日出勤、夜勤などの不規則勤務、精神的ストレスの増大などが重なって発症します。
・ 難聴は90〜100dB以上の騒音の持続で発症してきます。
[設問] 労働安全衛生法による定期一般健康診断はどの間隔で行われるか?
イ 3か月 ロ 半年 ハ 1年 ニ 3年 正解 (ハ)
[設問] コンピュータなどのモニターを使った作業でおきる職業に関連する健康障害を何というか?
イ 眼性疲労 ロ 緊張型頭痛 ハ 仮性近視 ニ VDT症候群 正解 (ニ)
[設問] 電離放射線障害防止規則での通常作業での被ばく限度は次のどれか?
イ 5年間で100ミリシーベルト
ロ 5年間で50ミリシーベルト
ハ 5年間で30ミリシーベルト
ニ 5年間で20ミリシーベルト 正解 (イ)
[設問] 職業病に関する文で正しいものを一つ選べ。
イ 職業性疾病とは、物理的・化学的作業環境により発生するものをいい、作業条件によるものは含まない。
ロ 塵肺健康診断において症状のみられる人の数は低下傾向を示している。
ハ 過労死は若年の女性に多い。
ニ キーパンチャーやレジスターを使う人にはVDT症候群が発生することが多い。
正解 (ロ)