在宅看護論(5)(在宅看護の特徴) [在宅看護論]
2)病状・病態変化の予測と予防
(1)病状経過の予測
・ 寝たきりへの予防、合併症の悪化防止のために身体面のアセスメントを行います。
・ アセスメントのためには、身体の視診、触診、打診、聴診による観察を行い情報をとる必要があります。
・ 急変時には、バイタルサインのチェックが必要です。
・ 急変時の対応策も前もって整えておく必要があります。
(2)感染防止
3)生活の中で起こる問題の予測と予防
(1) 転倒防止
・ 転倒は、在宅でも施設入所でも、高齢者によくおこる事故で、死亡原因の上位を占めています。
・ 高齢者の転倒は、骨折や寝たきりにつながる大きな要因です。
・ 転倒による骨折は約10%に発生し、大腿骨頸部骨折、橈骨末端骨折、上腕骨頸部骨折、椎体圧迫骨折が多くみられます。
・ 高齢者の転倒の要因には、身体的要因と環境要因があり、予防のためのケアや指導は、身体的要因対策として 「筋力やバランス感覚を高める運動プログラムを行う」 「適切な衣類や履物の選択や動作方法の指導」 を、環境要因対策として「家の中のバリアフリー化を進める」 などを行うことが必要です。
(2)窒息の防止
・ 高齢者は咀嚼・嚥下機能の低下のため、食物などを誤嚥して、容易に窒息をおこします。
・ 特に脳血管疾患、パーキンソン病などの脳神経系の疾患があると、誤嚥をおこしやすくなります。
・ 高齢者の誤嚥・窒息の予防法としては、「食事時には十分覚醒させる」 「食前に嚥下体操を行う」 「対象者にあった食事の形態を選ぶ」 「誤嚥しにくい姿勢をとる」 などがあります。
・ 窒息がおきた際は、以下のような初期の応急処置が重要です。「意識・呼吸・循環状態の観察・判断」 「救急車を呼ぶ」「咳を続けさせる」 「異物を指で除けそうな時は速やかに除く」 「背部叩打法、上腹部圧迫法などを試す」 「掃除機での吸引」 「心肺蘇生法」
・ 乳児の場合、うつぶせ寝や布団・毛布での鼻塞ぎが多く、幼児の場合アメ玉やピーナツなどの豆類の誤嚥が多くみられます。
・ 乳幼児の場合、うつぶせ寝を避ける、ベッド内にタオルやぬいぐるみなどを置かない、誤嚥の原因となりやすいピーナツなどの豆類は与えないなどの予防策が必要です。
(3)熱傷の防止
・ 火災や熱傷の予防には、「調理中に袖口の広い衣服を着ない」 「台所に消化器を備えておく」 「火災報知器を設置する」 などがあり、高齢者とその家族への指導を行います。 自治体によっては、高齢者世帯または1人暮らしの高齢者に対して火災報知器、電磁調理器具、消化器などの貸与を行っています。
・ 健康に問題のある高齢者は、痛覚や温度覚が鈍っているため、熱湯に足をつけても気づかず、熱湯熱傷をおこしやすくなります。 湯沸かし器のお湯の設定温度を下げるなどの対策で予防する必要があります。
・ 高齢者は、電気あんかや湯たんぽ、懐炉などでの低温熱傷もおこしやすいので、長時間の使用をしないようにしてもらい、タオルを巻いて直接肌に当たらないように指導します。
・ 子供の熱傷は、ポットや炊飯器の蒸気、ストーブやアイロン、コンセントに触れる、電気あんかや湯たんぽによる低温熱傷、熱い食べ物や飲み物をひっくり返すなどの事故によっておこります。 子供の年齢に応じた予防対策が必要です。
[設問] 在宅療養患者でおこることのある疥癬の原因となるのはつぎのどれか?
イ ヒゼンダニ ロ ササラダニ ハ コナダニ ニ ニキビダニ
正解 (イ)
[設問] 高齢者の転倒でおきる骨折で寝たきりの原因となりやすいのは次のどれか? 一つ選べ。
イ 橈骨末端骨折 ロ 上腕骨頸部骨折 ハ 頭蓋骨骨折 ニ 大腿骨頸部骨折
正解 (ニ)
[設問] 誤嚥をおこしやすい高齢者の疾患は次のどれか?
イ 狭心症 ロ パーキンソン病 ハ 肺気腫 ニ 肝硬変
正解 (ロ)
[設問] 住宅火災での死者で多いのは次のどれか?
イ 乳幼児 ロ 幼児 ハ 更年期の女性 ニ 高齢者
正解 (ニ)
在宅看護論(4)(在宅看護の特徴) [在宅看護論]
3. 在宅看護の特徴
1) 生活の自立支援
(1)役割の確立
(2)自己決定
・ 自己決定とは、療養者自身が自分で治療や療養、生活に関することについての意思決定を行うことです。 療養における自己決定には、自立への支援が欠かせません。
・ 自己決定を支える支援には、「公正な情報の提供と療養者・家族の理解の確認」 「意思決定に際しては、他から強制されることがないようにすること」 「状況の変化に応じて、意思決定内容の確認をする」 「療養者と家族の独立した意思決定の促しを行う」 ことなどが重要となります。
・ 自己決定されるものは、療養の方針、療養場所の選択、利用するサービスの内容、さらに医療処置管理の受療、延命治療の選択などがあげられます。
・ 療養者と家族との人間関係や介護力によっては、必ずしも自立的な意思決定がなされないことがあります。 特に療養場所の選択は家族が決定することが多くなるので、療養者の意向を尊重できるような家族調整が必要となります。
(3)セルフケア
・ セルフケアとは、生命、健康、安寧の維持を目的とし、自己の療養上に必要な行為を自分で行う能力のことです。 そして、その行為は意図的に行われ学習されるものです。
・ 家族の機能の中のヘルスケア機能とは、具体的には健康問題が生じた時に適切に対応することと、日常生活における保健習慣や健康なライフスタイルを維持向上させることです。
・ 要介護状態や医療依存度が高い療養者でも、なるべく残存機能を活用したセルフケアを確立するための援助を行う必要があります。
(4)自立支援
・ 要介護者の自立支援には、日常生活動作(ADL)や手段的日常生活活動(IADL:instrumental activity of daily living)の維持や回復は欠かせない援助となります。
・ 療養者の「できる活動」と「している活動」との違いを把握して、残された能力を最大限に発揮させ、日常生活が自立できるように援助していきます。
・ 日本家屋は、要介護者が療養生活を営む上では多くの障害があります。たとえば、段差、浴室やトイレの使いにくさ、廊下の狭さなど安全性、利便性に問題があります。 これらの問題を解決するため家屋改造の援助も重要な自立支援となります。
・ 要介護状態であっても、地域社会の一員として様々な活動に参加し、ある部分では自立した生活ができるよう支援していきます。
・ 支援の過程では、できるだけ形成されてきた人間関係、価値観、ライフスタイルを尊重していきます。
(5)物品の利用と工夫
・ 在宅看護には、施設内看護と異なり、設備、機材、スタッフも限られていますので、看護援助には工夫が必要となります。
・ 在宅看護では、かかりつけ医との連携を図り、医療処置に必要な衛生材料や薬剤などを療養者の居宅に配置しておくようにします。
・ 医療依存度の高い療養者の場合、医療機器の供給や管理について関係機関との調整をおこない、トラブル時の対応体制を明確にしておく必要があります。
・ 介護保険制度などでは、ベッドや車椅子などの福祉用具の貸与やポータブルトイレなどの購入費、てすりの設置などの住宅改善費の援助も受けられるので、それらのサービスを利用できるように援助します。
(6)権利擁護(アドボカシー)
・ 権利擁護は人々の人権を守るための活動であり、元々、アドボカシーは「権利」「擁護」「唱道」などと訳される言葉です。
・ 在宅看護の対象者は、自ら権利を守る能力に欠けていることが多く、家族や社会による権利擁護の支援も必要となります。
・ 権利擁護の対象の基本となるのは、療養方針と利用サービス選択の自己決定権です。
・ 看護者および関係者には、プライバシーの保護のため守秘義務があります。
・ 認知症や要介護の高齢者の権利を保護するために成年後見制度があります。 また、判断能力が一定以上ある人に対しては、生活支援員が金銭管理やサービスの利用援助を行う地域福祉権利援護事業も実施されています。
[設問] 療養者の自己決定が家族によってなされることが特に多いのは、次のどれか? 一つ選べ。
イ 療養の方針 ロ 療養場所 ハ 利用するサービスの内容 ニ 医療処置管理の受療
正解 (ロ)
在宅看護論(9) (在宅における生活支援の方法と技術)へ ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-06-04