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在宅看護論(16 )(在宅における医療管理を必要とする人と看護) [在宅看護論]

5)膀胱留置カテーテル

(1)療養者

膀胱カテーテル.png

(2)合併症の予防

・ 膀胱留置カテーテルの合併症には、主に尿路感染、結石、膀胱括約筋の脆弱化があり、予防のためには感染防止、尿を停滞させないこと、異常の早期発見、カテーテルの早期抜去を図ることが大切です。

・ 細菌感染を防ぐには、「尿道口」 「膀胱留置カテーテルと蓄尿バッグの接続部」 「蓄尿バッグの排液口」 の清潔保持に努めることが重要となります。

・ 蓄尿バッグは必ず膀胱より低い位置に吊るし、上行感染を防ぎます。

・ 尿は時間を決めて毎日捨て、1日の尿量を把握します。

・ 水分制限のない場合には1500mL以上の水分摂取を心がけ、1300mL以上の尿量を維持します。

・ カテーテルを折り曲げないように体位変換や移動、更衣後は確認を行います。

・ 血尿や発熱など感染の徴候、カテーテルの閉塞、抜去、尿漏れなどがある場合、速やかに医師へ報告します。

・ 全身状態が安定している、尿路感染や尿閉塞のリスクが低い、尿失禁による皮膚障害が生じない、排尿に対する自立の意思や意欲が療養者と家族にあるなどの状況が整った場合、膀胱留置カテーテルの早期抜去を検討します。

(3)指導と安全管理

・ 入浴はカテーテルに滅菌キャップをはめて行い、入浴後にキャップを外してカテーテルと導尿管との接続部の両方を消毒し、その後接続して清潔を保持するように説明します。

・ 清潔保持に努める必要がある細菌の侵入経路の処置や操作は、手洗いを十分に行ってから実施するように指導します。

カテーテルの折れ曲がり.png

・ 不適切なカテーテルの固定、尿漏れによる汚染、尿道口や膣口からの分泌物による汚染などのため、皮膚粘膜に異常を生じることがある。予防には毎日の陰部洗浄を行うよう指導します。

・ カテーテルが入ると、行動範囲が縮小することがあるので、カテーテルの仕組みを知ってもらい、通常の生活ではカテーテルが抜けることはないことを理解してもらう。

・ 違和感や疼痛がある場合は、固定の工夫や、外出時の蓄尿バッグを小さいものに変えるなどの工夫をします。

(4)医師との連携

・ 尿の量や、色調、混濁の有無の観察を行い、発熱、カテーテルの閉塞もも含めて、異常が発生した際は、速やかに医師に連絡・報告します。

・ 膀胱留置カテーテルに必要な物品(注射器や注射針、ガーゼなど)の不足が出ないように、早めに医師に依頼します。

・ 感染症の可能性のある分泌物、血液が付着したカテーテル、蓄尿バッグ、デイスポーザブル注射器は、医療廃棄物として処理してもらうように医師に依頼します。

6)在宅経管栄養・経腸栄養法

(1)療養者

・ 在宅経管栄養法は、療養者や家族が経管栄養について理解していることが重要なポイントとなります。

(2)栄養剤の種類と特徴

・ 栄養剤には、天然濃厚流動食、消化態栄養素、半消化態栄養素、成分栄養剤があり、腸管機能により選択する。

(3)栄養評価

・ ヘマトクリット、血清蛋白、血清アルブミンなどの血液データと体重を栄養の主な指標とします。

ちょいやば.png

(4)合併症の予防

・ チューブに関連する合併症に、薬剤や経管栄養剤の残渣によるチューブの閉塞や、不快感による自己抜去と、不十分な固定や咳嗽反射によるチューブ抜去があります。  これらの予防法として、経管栄養終了後速やかに温湯を流すこと、粒子の大きいものを注入しないこと、チューブの挿入方法と固定方法を工夫することなどで、閉塞と抜去を予防します。

経管栄養.png

・ 瘻孔部からの感染を防ぐためには、清潔の保持や必要時の消毒と保護、チューブの位置調整を行います。

・ チューブの適切な管理(交換や洗浄)、注入中や注入後にファウラー位をとらせること、注入の間隔や速度を調整することで、上気道炎や肺炎を予防します。

(5)指導と安全管理

・ 経管栄養剤の温度や量、濃度、必要物品の準備と使用方法、洗浄と保管方法、挿入部の消毒方法について指導や手技の確認を行います。

・ 消化器や呼吸器の感染を予防するために、経管栄養の準備を行う際、手洗いをしっかりと行い、物品の洗浄や交換、口腔内の清潔を保つことを指導します。

・ 症状の観察ポイントを指導し、療養日誌をつけるように薦めます。

・ 毎月1回の定期受診に加え、状態の変化が生じた時や合併症やトラブルが生じた時には、すぐに医師の診察を受けるように指導します。

・ 胃瘻や空腸瘻チューブ設置した状態でもシャワーや入浴は可能であり瘻孔部からの感染の心配はないことを説明しておきます。

(6)医師との連携

・ トラブルが生じたときは医師の診察・指示を受けられるように体制を整えておきます。

・ チューブの種類や交換日、栄養剤の種類や量など指示内容を確認します。

・ 経管栄養法に必要な物品(パック、ボトル、チューブなど)は、不足がでないように早めに医師に依頼します。

・ 体内に留置したカテーテル類は医療廃棄物であり、処理は医師に依頼します。

[設問] 膀胱留置カテーテルの合併症にはどんなものがあるか? 最も起りやすいものを二つ選べ。

イ 尿路感染  ロ 膀胱結石  ハ 水腎症  ニ 糸球体腎炎  ホ 腎盂結石

                             正解 (

[設問] 在宅経管栄養について正しいものを一つ選べ。

イ 栄養チューブの閉塞を防ぐには、経管栄養終了後には温湯を流す、粒子の大きいものは避けるなどがある。

ロ 胃瘻造設者では、感染予防のため、入浴は避ける。

ハ 栄養チューブの抜管の原因は、わからないことが多い。

ニ 栄養評価は血液データのみで行う。

                      正解 (


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在宅看護論(15 )(在宅における医療管理を必要とする人と看護) [在宅看護論]

4)在宅人工呼吸法

(1)療養者

・ 肺線維症や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺疾患、筋ジストロフィーや筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経筋疾患で、医師によって在宅人工呼吸療法が必要を判断された患者が対象となります。

・ 非侵襲性陽圧換気(NPPV)は、インターフェイスを用いた自発呼吸の補助換気であるため、療養者に呼吸中枢の障害がなく、自発呼吸が保たれていることが絶対条件です。

・ 一般に、動脈血酸素分圧(PaO2)が50mmHg以下の場合、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)が70mmHg以上に蓄積する場合、酸素療法によって呼吸状態が改善しない時は人工呼吸法の適応となります。

酸素分圧.png

・ 睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、「閉塞型」「中枢型」「混合型」に分類され、閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の患者は、経鼻的持続陽圧呼吸療法の対象となります。

(2)人工呼吸器の構造と使い方

・ 在宅人工呼吸器療法には、気管切開後に気管内チューブ挿入による侵襲的陽圧換気(IPPV)と鼻マスクやフェイスマスクなどによる非侵襲的陽圧換気(NPPV)があります。

・ 人工呼吸器には、従量式(一定の送気量を設定)と従圧式(一定の気道内圧を設定)、従量式と従圧式の両機能を備えたものの3種類があり、在宅では携帯型人工呼吸器が普及しています。

人工呼吸器.png

(3)気道内のケア

・ 吸引前には、肺音の聴取を行います。

・ 看護者は、介護者とともに吸引を行い、介護者の手技が正しいものかどうかを確認します。

・ 療養者のカフエアの固定は医師の指示に従います。過剰なエア注入はカフ内圧を上昇させ、気道の圧迫壊死をひきおこす危険性があるので注意が必要です。

・ 気管切開部の発赤・腫脹・肉芽や出血、膿の有無を観察し、消毒とガーゼ交換を1日1回し、汚染が強い時はその都度実施し、皮膚トラブルや感染を予防します。

・ 気管の上流にあたる口腔内のケアも重要です。

(4)指導と安全管理

・ 在宅人工呼吸療法の開始前には、療養者・家族の意志や受け入れ状況を確認します。

・ 非侵襲的陽圧換気(NPPV)では、療養者の顔に最適のインターフェイス(鼻マスク、フェイスマスク)を選択します。

・ トラブル発生時の対処方法、アンビューバッグによる用手換気法、病院や訪問看護ステーションなど関連機関への連絡方法について指導します。

・ 在宅訪問時には、訪問時と退室時に呼吸器の管理と点検を行います。アラーム設定内容、気道内圧や換気量、回路や回路破損、回路内の貯留水、設定酸素吸入濃度、加温加湿器の滅菌蒸留水量などのチェックを行います。

(5)QOLの向上

・ 枕やスポンジなどを利用して安楽なポジショニングを工夫します。

・ 自動・他動運動を行い、関節可動域の維持、関節拘縮・筋力低下の予防を図ります。

・ 療養者の状態を観察しながら、なるべく音楽やテレビを活用し、外出も行ってもらうよう指導します。

・ 発語ができない場合は、非言語的コミュニケーション手段として、ホワイトボードや透明文字盤、コンピュータなどを利用します。

文字盤.png

・ 在宅人工呼吸器装着中の患者の場合、精神的ストレスが強いので精神面でのケアが必要です。

(6)社会資源の活用

・ 在宅人工呼吸法は、1994年から医療保険適応となり、1998年には非侵襲的陽圧換気(NPPV)が医療保険適応となっています。

・ 在宅の筋萎縮性側索硬化症では、家族の負担軽減のためヘルパーによる痰の吸引が、2003年から認められるようになり、2005年からは遷延性意識障害や筋ジストロフィーなどの在宅療養患者でも可能となっています。

・ 人工呼吸療法が必要と判断された原疾患が特定疾患の場合は、特定疾患医療費公費負担制度が利用できます。

・ 慢性呼吸不全などの呼吸器疾患に起因する人工呼吸療法の療養者は、「呼吸器機能障害」 の身体障害者手帳の交付を受けることができ、脳血管障害に起因する呼吸器機能障害で人工呼吸療法が必要な療養者は、 「肢体不自由」と 「呼吸器機能障害」 の両方の手帳の交付を、障害の程度に応じて受けることができます。

・ 認定を受けると、障害の区分により医療費の助成だけでなく、吸引器やネブライザーなどは日常生活用具の給付、もしくは世帯所得に応じた一部負担で購入することができます。

・ 特定疾患による在宅人工呼吸療法の療養者への訪問看護は、在宅人工呼吸器使用特定疾患患者訪問看護治療研究事業も併用して活用できます。

[設問] 在宅人工呼吸法について正しい記述を一つ選べ。

イ 対象となるのに、医師の判断は必要でない。

ロ 非侵襲性陽圧換気(NPPV)を使う場合、呼吸中枢の障害がなく、自発呼吸が保たれていることが絶対条件となる。

ハ 動脈血酸素分圧が50mmHg以下、動脈血二酸化炭素分圧が70mmHg以上になれば、すぐに人工呼吸の適応となる。

ニ 意識がなくても、NPPVは適応となる。

                                            正解 (

[設問] 人工呼吸器使用患者の気道内のケアについて、正しいものを一つ選べ。

イ 吸引前には肺音の聴取を行う。

ロ カフのエアを入れ過ぎても、特に問題はない。

ハ 気管切開部のガーゼ交換は週一回行う。

ニ 気管切開を行っていれば、口腔内のケアは特に必要ない。 

                                正解 (


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