成人看護学(7)(健康の保持・増進、疾病の予防に向けた看護) [成人看護学]
4.健康の保持・増進、疾病の予防に向けた看護
1)生活習慣病の予防
(1)適正な日常生活習慣の指標
・ 健康日本21での基本的な考え方は、「1次予防」の重視と、生活の質を高め、実り豊かな満足できる生涯づくりを目指すことです。
・ 1次予防とは、生活習慣の見直し、環境改善などにより、病気の発生そのものを予防することです。
(2)定期健康診断システムと受診者
・ 成人期の健診は、平成19年までは 「老人保健法」 に基づき、ここの生活習慣病の早期発見、早期治療をするために行われてきましたが、平成20年からは「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づき、メタボリックシンドロームに着目し、生活習慣病を予防するための健診に変わっています。
・ 40歳以上74歳までの国保や社保の被保険者と被扶養者には特定健診を、75歳以上の被保険者には後期高齢者医療制度に基づく健康診査が行われます。 これらの法的根拠は高齢者医療確保法です。 特定健診の結果次第では、特定保健指導の必要度が記載されるようになっています。
・ 職場における健康づくりは、労働安全衛生法に基づいて行われ、一般健康診断が義務づけられています。
・ 健康診断の結果に基づいて、医療面では医療行為を必要とする 「要医療」 と医療は必要ないが観察指導を要す「要観察」 に分け、さらに生活面では 「要休業」 と業務を制限すべき 「要軽業」 と業務はそのままでよいが日常生活に制限を加えるべき「要注意」などの指導区分に従って指導を行います。
2)職業性疾患の予防
(1)適切な作業環境と労働条件
・ 職業性疾患の予防対策の基本は、作業環境管理、作業管理、健康管理、特定の職業疾病に対する対策などがあります。
・ 有害な業務に従事する労働者の健康障害の早期発見のために行われる健康診断を特殊健康診断といいます。
(2)職業病のアセスメントと対処
・ 職業病の原因には、物理的要因、化学的要因、作業条件などがあります。
・ 看護職は、職場巡視を行い職場の状況を十分知った上で職場内の健康を損なう有害要因を明確化し、対処を検討します。
3)ストレスの予防と緩和
(1)ストレス状況と要因のアセスメントと緩和・解決方法の指導
[設問] 生活習慣病の二次予防とはどれか?
イ 食事や運動などで健康的な生活習慣を心がける。
ロ 日頃から定期的に健診を受ける。
ハ 病気の再発防止に努める。
ニ リハビリテーションにより、機能回復を図る。 正解 (ロ)
[設問] 40歳以上の成人に対する住民健康診査は何によるか?
イ 老人保健法
ロ 労働安全衛生法
ハ 介護保険法
ニ 高齢者医療確保法 正解 (ニ)
[設問] 有害な業務に従事する労働者に対して行われる健康診断は何というか?
イ 臨時健康診断
ロ 特殊健康診断
ハ 定期健康診断
ニ 二次健康診断 正解 (ロ)
成人看護学(8) (救急救命時の看護)へ ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-06-21
成人看護学(6)(成人の特性や能力に応じたアプローチ) [成人看護学]
3.成人の特性や能力に応じたアプローチ
1)自立した存在
(1)セルフケア能力
・ オレムは、「セルフケアとは個人が生命、健康および安寧を維持する上で、自分自身のために積極的に行う実践である」と述べています。
・ セルフケアを可能にする条件・要因として 「セルフケアをやりたいという欲求を認識する力」 「セルフケアを行うための知識と技能」 「やりとげようとする動機づけ」 「決定し実行に移すこと」 「継続すること」 「状況を見極め判断する能力と柔軟に対応する能力」 「セルフケアをやる場合に自分と家族と地域生活の関連する面を調整する能力」 が挙げられます。
・ セルフケア行動への動機づけに関わる要因として 「保健信念の形成」 「保健感覚の形成」 「保健規範の形成」 があります。
(2)自己効力感
・ 自己効力感とは、心理学用語で、ある目標を達成するための能力が自分にはあるという感覚のことで、カナダ人心理学者バンデユーラが提唱したものです。
・ 自己効力感を生み出す源泉となるのは、「達成経験」 「代理体験」 「言語的説得」 「生理的情緒的高揚」 とされます。
2)独自の信念や行動パターンを持つ存在
(1)コンプライアンスの促進要因
・ コンプライアンスとは、患者が医療などの専門家から健康のために必要だと勧められた指示や指導に従うことを意味し、指示を守らないことをノンコンプライアンスといいます。
・ コンプライアンスの促進要因としては、「医療者による十分な説明と情報の提供」 「信頼関係の樹立」 「患者に合った実行可能な方法」 「経済的負担の軽減」 があります。
(2)成人教育の原理
・ ノールズは成人学習の特色を挙げていますが、それは「目的がはっきりしている」 「自己指導性がみられる」 「それまでの経験が学習資源となる」 「学習の準備状態、つまりレデイネスに達している」 「実用的なものを望む」 「動機は満足感を得ることである」 というものです。
3)家庭・職場で責任ある役割を担う存在
(1)役割葛藤、役割交代
・ 人間は、発達の段階に応じて役割の変化を体験し、適応していきます。そのことを役割交代といいます。
[設問] 心理学用語「自己効力感」を提唱したのはだれか?
イ セリエ ロ バンデューラ ハ ノ―ルズ ニ マズロー
正解 (ロ)
[設問] 自己効力感を生みだす源泉の一つで、「誰かが何かを達成するのを観察する」のは次のどれか?
イ 達成体験 ロ 代理経験 ハ 言語的説得 ニ 生理的情緒的高揚 ホ 想像的体験
正解 (ロ)
[設問] 患者が医師の指示や指導に従わないことを何というか?
イ コンプライアンス ロ ノンコンプライアンス ハ コンペティション ニ インフォームドコンセント
正解 (ロ)
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成人看護学(5)(成人に特有な健康問題の特徴) [成人看護学]
3)生活ストレスに関連する健康障害
(1)ストレスの種類と生理的反応
・ ストレス因子による神経刺激は交感神経に伝えられ、交感神経はノルアドレナリンを放出、副腎髄質はアドレナリン、ノルアドレナリンを分泌します。
・ コーピングは人がその人独自の方法でストレスや脅威を緩和・あるいは除去しようとする試みの過程のことです。 コーピングには、ストレス状況を直接変化させようと働きかける問題焦点コーピングと、状況認識を変えることでストレス軽減を図る情動焦点コーピングとがあります。
(2)生活ストレスと健康障害
・ 2010年度の国民生活基礎調査によると、日常生活での悩みやストレスが「ある」と答えた人の割合は46.5%で、性別にみると、男42.4%、女50.3%と女が高くなっていて、男女とも40~49歳で最も高くなっていました。
・ 悩みやストレスの原因では、「自分の仕事」が30代から50代にかけて高いのですが、男女差があって男性でより高くなっています。 また、高齢になるほど「自分の病気や介護」が高くなっています。
・ 適応障害は、転校や転職が原因となっておこる不適応で、抑うつ、不安が強くなり、登校拒否や出社拒否などの原因となります。
・ アルコール依存も増えており、その結果、アルコール性精神病も増えています。
(3)ストレス関連疾患の発生状況
・ アルコール依存症患者は、中年男性ばかりでなく、女性、青少年、高齢者にも増加しています。
・ ストレスの関与が大きい疾患には、消化性潰瘍、気管支喘息、過敏性大腸炎、高血圧症などがあります。
・ 過労死は、脳血管疾患や循環器疾患での病死の他、過労自殺も労災で認定されるようになってきています。
[設問] 人が独自の方法でストレスや脅威を緩和あるいは除去しようとする試みの過程を何というか?
イ リラクゼーション
ロ コーピング
ハ 自律訓練法
ニ スパ 正解 (ロ)
成人看護学(4)(成人に特有な健康問題の特徴) [成人看護学]
2)職業に関連する健康障害
(1)就業条件・環境と病気
・ 労働安全衛生法により健康診断の規定が設けられていて、事業者は全労働者に対し、雇用時と1年以内に1回の定期一般健康診断を行わなければならないことになっています。 これは、定期健康診断と呼ばれます。
・ 2008年、この定期健康診断の項目が改正されました。腹囲の検査が追加され、血清総コレステロールがLDLコレステロールへ変更されました。 この背景には、脂質異常症や高血圧、糖尿病など脳・心臓疾患などにつながる所見を有する労働者が増加していることがあります。
・ 近年、「過労死」が増加傾向にあります。
・ VDT症候群
・ 厚生労働省では、連続したVDT作業による視覚負担や、長時間同一姿勢による負担の軽減を目的として 「VDT作業のための労働衛生上の指針について」 を1985年に制定しました。
・ また、職場における急速なIT化のため、VDT作業が一般化すると同時に、VDT機器が多様化し、作業者の心身の疲労が大きなものとなってきたため、2002年、新しい「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を発表しています。
・ 放射線業務従事者の放射線被ばく障害を防ぐため、電離放射線障害防止規則で、通常作業では5年間で100ミリシーベルト、1年間では50ミリシーベルトとされ、緊急作業では100ミリシーベルト、妊娠可能な女子の場合は3か月で5ミリシーベルト、妊娠中の女子では内部被ばくは1ミリシーベルト、腹部表面は2ミリシーベルトとされています。
(2)職業病の発生状況
・ 職業性疾病とは、ある特定の職業に従事することによって発生する疾病で、物理的・化学的作業環境により、または作業条件により発生するものです。 物理的要因によるものとしては高気圧障害、職業性難聴、振動病など、化学的要因によるものとしては塵肺、有毒ガス中毒など、作業条件によるものは頸肩腕障害、腰痛などがあります。
・ 塵肺健康診断において症状がみられる人の数は低下傾向を示しています。
・ 頸肩腕障害は、キーパンチャー、レジスターを使う人に多く発症するもので、しびれ、疼痛、こり、冷えなどの症状を呈します。
・ 過労死は中高年の男性に多く、女性には少なく、長時間残業、休日出勤、夜勤などの不規則勤務、精神的ストレスの増大などが重なって発症します。
・ 難聴は90〜100dB以上の騒音の持続で発症してきます。
[設問] 労働安全衛生法による定期一般健康診断はどの間隔で行われるか?
イ 3か月 ロ 半年 ハ 1年 ニ 3年 正解 (ハ)
[設問] コンピュータなどのモニターを使った作業でおきる職業に関連する健康障害を何というか?
イ 眼性疲労 ロ 緊張型頭痛 ハ 仮性近視 ニ VDT症候群 正解 (ニ)
[設問] 電離放射線障害防止規則での通常作業での被ばく限度は次のどれか?
イ 5年間で100ミリシーベルト
ロ 5年間で50ミリシーベルト
ハ 5年間で30ミリシーベルト
ニ 5年間で20ミリシーベルト 正解 (イ)
[設問] 職業病に関する文で正しいものを一つ選べ。
イ 職業性疾病とは、物理的・化学的作業環境により発生するものをいい、作業条件によるものは含まない。
ロ 塵肺健康診断において症状のみられる人の数は低下傾向を示している。
ハ 過労死は若年の女性に多い。
ニ キーパンチャーやレジスターを使う人にはVDT症候群が発生することが多い。
正解 (ロ)
成人看護学(3)(成人に特有な健康問題の特徴) [成人看護学]
2.成人に特有な健康問題の特徴
1)生活習慣に関連する健康障害
(1)生活習慣病の形成と予後
・ 生活習慣病とは、従来 「成人病」 と呼ばれていた疾患が、食生活、運動習慣、休養、飲酒などの生活習慣に、その発症、進行が関与するという考えから、1996年に名称変更されたものです。
・ 生活習慣病には、糖尿病、肥満、高血圧症、癌、歯周病、アルコール性肝炎、高血圧症、動脈硬化などが含まれます。
・ 長期多用の喫煙は、肺癌、慢性気管支炎、肺気腫などの呼吸器疾患や心筋梗塞などの循環器疾患の原因となります。
・ 我が国の喫煙率は2011年の調査では20.1%で、男性で32.4%、女性で9.7%となり、男性は減少傾向にありますが、女性は漸増しています。
・ アルコールの消費量は年々増加しており、多量の飲酒は脂肪肝をおこし、アルコール性肝炎の原因となります。
・ 運動不足は筋力低下、肥満、腰椎症の原因となります。
(2)生活習慣病の発生状況
・ 癌、心臓病、脳血管疾患を合わせると死因の6割以上を占めます。
・ 喫煙男性は、非喫煙男性に比べ、肺癌などによる死亡危険率が4.5倍高くなります。
・ 悪性新生物は1981年以降、死因の第1位となっています。
・ 死因としては、胃癌は男女とも減少傾向にあり、肺癌、大腸癌が増加傾向にあります。
・ 心疾患は死因の第2位、脳血管疾患が第3位です。
[設問] 生活習慣病の組み合わせで正しいものを一つ選べ。
イ 関節リウマチ・糖尿病・高血圧症
ロ 糖尿病・高血圧症・歯周病
ハ 糖尿病・癌・ベーチェット病
ニ 糖尿病・高血圧症・川崎病 正解 (ロ)
[設問] 喫煙が原因となる疾患の組み合わせで正しいものを一つ選べ。
イ 肺癌・心筋梗塞・肺気腫
ロ 肺癌・もやもや病・肺気腫
ハ 肺気腫・糖尿病・肺癌
ニ 肺癌・クモ膜下出血・肺気腫 正解 (イ)
[設問] 近年の死因の第一位を占めるのはどれか?
イ 脳血管疾患
ロ 悪性新生物
ハ 心疾患
ニ 肺炎 正解 (ロ)
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成人看護学(2)(成人の特徴) [成人看護学]
2)現代の生活状況
(1)家族形態と機能
・ 家族とは夫婦を中核として、その近縁の血縁者が居住をともにしている小集団であり、その成員は心理的に強い絆で結ばれています。 近年は夫婦とその未婚の子供という核家族が家族形態の主流となっています。
・ 核家族化は年々進み、2011年の1世帯あたりの平均世帯人員は2.58人です。
・ 家族の形態は多様化し、その中で特に高齢者世帯の増加が目立っています。
・ 初婚の年齢は年々遅くなっていて、2010年は男30.5歳、女28.8歳となっています。
・ 生涯未婚率も上昇し、2010年には男性20.14%、女性10.61%に達しています。
(2)職業の種類と就業環境
・ 終身雇用システムや年功序列の賃金システムが崩壊しつつあります。
・ 1985年男女雇用機会均等法が制定され、さらに1997年の改正で、昇進・配置などでの女性差別の禁止も盛り込まれました。
・ 女性の就業形態としては、家事や育児に支障がないパートタイム労働が多く、子育てが終わってからの再就職も多くなっています。
・ 労働安全衛生法にもとずく労働者の心身両面にわたる健康保持推進措置をトータル・ヘルスプロモーション(THP)といいます。
(3)生活習慣・生活様式
・ 喫煙は男性では減少しているが、女性は横ばいであり、未成年者の喫煙が増加しています。
・ 飲酒習慣が男性では減少傾向にありますが、女性では増加しています。
・ 肥満者の割合は特に男性で増加し、30〜65歳の約3割が肥満になります。
・ 食生活では、脂肪と食塩の摂取が増加し、加工食品および外食も増加しています。 また、朝食抜き、偏食、不必要なダイエットが増えています。
・ ダイエットをきっかけに拒食症や過食症といった摂食障害をおこすことがあります。
・ 住居では気密性の高い住宅になったため、ダニの発生や閉鎖環境によるストレスが増えています。
・ 身体活動は減り、運動不足が進んでいます。
(4)人生や健康に関わる意識
・ 健康に対する意識は、健康や疾病に関連した日常行動や生活習慣の中に表れます。
・ 2000年から「21世紀における国民健康づくり運動」(健康日本21)が開始され、生活習慣や生活習慣病を9つの分野に分けて取り組んでいます。
・ 2003年、健康日本21を推進するため、健康増進法が施行されました。
・ 2012年、健康増進法は全面改正され、2013年4月から適用されています。 この基本的方針は、21世紀の我が国において少子高齢化や疾病構造の変化が進む中で、生活習慣および社会環境の改善を通じて、子供から高齢者まですべての国民がともに支え合いながら希望や生きがいを持ち、ライフステージ(乳幼児期、青壮年期、高齢期などの人の生涯における各段階をいう)に応じて、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会を実現し、その結果、社会保障制度が持続可能なものとなるよう、国民の健康増進の総合的な推進を図るための基本的事項を示し、平成25年度から平成34年度までの二十一世紀における第二次国民健康づくり運動(健康日本21第二次)を推進するものとされています。
・ 新たな健康増進法の目標は、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」 「主要な生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底」 「社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上」 「健康を支え、守るための社会環境の整備」 「栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙および歯・口腔の健康に関する生活習慣および社会環境の改善」 とされています。
[設問] 2011年の1世帯あたりの平均世帯人数は次のどれか?
イ 3.05人 ロ 2.75人 ハ 2.62人 ニ 2.58人 正解 (ニ)
[設問] 2010年の女性の初婚年齢は次のどれか?
イ 30.5歳 ロ 29.9歳 ハ 28.8歳 ニ 28.2歳 正解 (ハ)
[設問] 2010年の男性の生涯未婚率は次のどれか?
イ 20.14% ロ 17.32% ハ 12.45% ニ 10.61% 正解 (イ)
[設問] 労働安全衛生法に基づく労働者の心身両面にわたる健康保持推進措置を何というか?
イ トータルヘルスケア
ロ トータルヘルスプロモーション
ハ トータルヘルスデザイン
ニ トータルヘルスコンサルティング 正解 (ロ)
[設問] 次の文で正しいものを一つ選べ。
イ 喫煙は男性では増加傾向が続いている。
ロ 未成年の血縁は増加している。
ハ 飲酒習慣は男性では増加傾向が続いている。
ニ 飲酒習慣は女性では減少傾向が続いている。
正解 (ロ)
成人看護学(1)(成人の特徴) [成人看護学]
1. 成人の特徴
1)生涯発達の特徴
(1)身体の発達と衰退
・ 青年期の死亡原因の上位は不慮の事故と自殺です。
・ 30代から45歳くらいまでを壮年期といい、それ以降60歳くらいまでを中年期といいます。 また、壮年期、中年期を合わせて中年期、成人期と呼ぶ場合もあります。 60歳から65歳くらいまでを向老期といいます。
・ 視力は30歳くらいから低下し、40歳過ぎからは近くを見るための機能が落ち老眼となります。
・ 呼吸機能を示す肺活量は20歳頃ピークに達し、30歳以降急激に低下します。
(2)心理社会的発達
・ 中年期は社会的・市民的責任を最も大きく期待される時期です。
・ 多くは青年期に結婚し、壮年期では子育て、中年期で子供が成人する時期にあたります。
・ 壮年期では、生活行動様式と意識の多様性が現れます。
(3)性的自己の発達
・ 思春期では、第2次性徴が発現し、性器の発育や性機能の成熟がおこります。 女子では皮下脂肪が増加し、体全代に丸みが生じ、骨盤は拡大し、乳房は発達し、月経が始まります。
・ 壮年期以降、性機能は徐々に低下します。 女性では女性ホルモンの分泌が減少し、月経が停止し閉経となります。
・ 更年期とは、卵巣機能が衰退し始めてから停止する時期をいい、50〜51歳の閉経をはさんだ前後10年くらいの期間をいいます。
・ 更年期障害とは、更年期の女性におこる自律神経失調症を中心とするさまざまな症状からなる症候群のことです。
・ 生物学的な男女の区別とは別に、社会文化的につくられる男らしさ、女らしさをジェンダーといいます。
・ セクシュアリテイとは、生物学的な性だけでなく、心理・社会的側面も包括し、性を通して人間を全体的にとらえようというものです。
[設問] 向老期とは次のどれか?
イ 45~50歳 ロ 50~55歳 ハ 55~60歳 ニ 60~65歳
正解 (ニ)
[設問] 肺活量がピークに達するのは次のどれか?
イ 15歳 ロ 20歳 ハ 30歳 ニ 35歳 ホ 40歳 正解 (ロ)
[設問] EHエリクソンのいう「モラトリアム期間」とは次のどれか?
イ 13~20歳くらい
ロ 20~25歳くらい
ハ 25~30歳くらい
ニ 30~35歳くらい 正解 (イ)
[設問] 生物学的な男女の区別とは別に、社会文化的につくられる男らしさ、女らしさを何と呼ぶか?
イ フェミニズム
ロ ジェンダー
ハ レイシズム
ニ セクシュアリズム 正解 (ロ)
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成人看護学(86) (性機能障害を持つ患者の看護)へ ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-08-27-1
在宅看護論(23)(在宅療養者の状態別看護) [在宅看護論]
在宅看護論(1) (在宅看護の対象者とその生活)へ ⇒ http://shiratorik-kango.blog.so-net.ne.jp/2013-05-29-1
5)生活自立困難者
(1)自立度のアセスメント
・ 日常生活動作(ADL)の他に、手段的日常生活動作(IADL)に関するアセスメントが重要です。
・ 療養者および家族の生活能力やセルフケア能力についてのアセスメントを行うとともに、住居や周辺地域などの環境にも目を向け、自立を阻害する要因がないかについてのアセスメントも行います。
・ 費用負担の面からサービス導入の困難さが生じている場合もあるので、経済面からのアセスメントも重要です。
・ 1人暮らしで家族の支援がない場合、家事の負担、緊急時の不安などがあることが多く、心理的側面からのアセスメントを行います。
(2)人間関係の調整
・ QOLを維持・向上させるためには、社会との交流が重要な要素となります。
・ 閉じこもりは、1人暮らしの高齢者の場合、認知症や寝たきりにつながることにもなります。
・ 家族に問題が生じている場合、家族関係の調整が必要となります。
・ 様々なサービスを利用している場合は、関係機関の連携・協同のためのチームづくりが求められます。
(3)社会資源の活用
・ 介護サービスの基盤強化のために介護保険法が一部改正され、介護予防・日常生活支援総合事業が創設されました。 これは、要介護認定において「要支援」と「非該当」を行き来するような高齢者に対して、切れ目のない総合的なサービスを提供することを可能とします。
在宅看護論(22)(在宅療養者の状態別看護) [在宅看護論]
4)ターミナル期の療養者
(1)症状コントロール
・ 末期癌患者が在宅療養するには、症状のコントロールができていることが重要です。
・ 末期癌の疼痛に対しては、麻薬や向精神薬が処方されることが多いので正しい使用方法、管理方法を熟知して、実践し、家族への指導を行います。
・ 末期癌の疼痛に対しては、痛みの強さ、性質、変化、生活への影響など、主観的な情報とともに、身体的アセスメントを十分に行い、家族からも情報を収集します。
・ 痛みの強さをスコア化して把握するために、フェイススケールなどを用いることもあります。
・ 麻薬を使う場合、副作用の発現に注意します。
・ 代替療法として、マッサージ、アロマセラピー、リラクゼーションなどの方法もあります。
(2)家族支援
・ 療養者だけでなく、家族もケアの対象として、残された期間を家族で充実して過ごせるよう援助します。
(3)チーム医療
・ 在宅でターミナル期を過ごす療養者や家族のニーズは、多様です。医師、看護師、薬剤師、ホームヘルパー、ボランテイアなどのチームで対応します。
・ 急変時や家族の意向が変わった時は、いつでも入院できるように体制を整えておきます。
・ 往診可能なかかりつけ医の確保は重要です。24時間いつでも相談ができ、必要時にケアが受けられる体制を整えておきます。
(4)自己決定への支援
・ 在宅でターミナル期を過ごすには、家族と療養者の希望があることが条件となります。そのためには、十分な説明と意思決定の支援が必要となります。
・ 積極的治療から緩和治療への転換には、医師との相談を十分に行った上で、療養者や家族の意思を尊重する必要があります。
・ 療養者と家族の意思に相違がある時は、両者の間で、中立の立場で働きかけ、意思の統一がみられるよう支援します。
・ 病状が悪化した時、心肺蘇生や人工呼吸器などの装着をするかどうかをあらかじめ意思表示しておくこと場合があります、その要望書をリビングウイルといいます。
(5)遺族への看護
・ 遺族が悲嘆のプロセスを理解し、悲嘆作業(グリーフワーク)を十分行うことができ、新しい出発ができるよう支援します。
・ 遺族は通常は、1〜2年で新しい家族として再生すると言われますが、十分な悲嘆作業が行われないと病的な悲嘆となります。 死別否認、抑うつ、自責、身体的症状の出現などが長期にわたる場合、専門家の支援が必要となります。
・ 遺族会や、地域のサポートグループなどを紹介する方法も考慮します。
[設問] ターミナル期の癌患者の症状コントロールについて正しいものを一つ選べ。
イ 末期癌患者が在宅療養をするのに、症状コントロールは重要ではない。
ロ 痛みに対しては麻薬や向精神病薬が処方されるが、家族での管理は難しいので、家族への指導は必要ない。
ハ 末期癌患者の疼痛は、主観的な情報とともに、身体的なアセスメントを十分に行い、家族からも情報を収集する。
ニ 代替療法のマッサージ、アロマセラピー、リラクゼーションなどは取り入れるべきではない。
正解 (ハ)
[設問] 病状が悪化した時、心肺蘇生や人工呼吸器などの装着をするかどうかをあらかじめ意思表示する要望書を何というか?
イ リビングウイル ロ 医療要望書 ハ 診療同意書 ニ 診療嘆願書
正解 (イ)
在宅看護論(21)(在宅療養者の状態別看護) [在宅看護論]
3)難病による療養者
(1)特定疾患
(2)難病対策要綱
・ 難病対策が始まるきっかけは、1955年から1965年にかけて大きな社会問題となったスモンに関する研究体制の整備だったのです。 そして、1972年に現在の厚生労働省が定めたのが「難病対策要綱」であり、それが現在までの難病対策の基礎となっています。
・ 現在進められている対策の5本の柱には、「調査研究の推進」 「医療施設などの整備」 「医療費の自己負担の軽減」 「地域における保健医療福祉の充実・連携」 「QOLの向上を目指した福祉施策の推進」 があります。
(3)急性増悪の早期発見と対応
・ 看護師は療養者の病状の観察を十分に行うとともに療養者や家族が病状の変化を把握できるように指導を行います。
・ 過労、ストレス、感染などが急性増悪因子となります。
・ 緊急の連絡体制や入院が可能な病院の確保など、医療体制を整えておく必要があります。
・ 筋萎縮性側索硬化症では、マスクによる非侵襲的な呼吸補助や気管切開、人工呼吸器による侵襲的な呼吸の補助が行われますが、痰の喀出、吸引などのケアが不可欠です。
・ パーキンソン病では、治療は薬物療法が中心であり、服薬指導、援助が重要となります。
・ 拡張型心筋症、肥大型心筋症などの心筋症では、心不全、不整脈、血栓や塞栓症による突然死もおこりえます。そのため、過度なストレスや運動は避けさせ、水分摂取のバランスに注意するなどの日常生活での援助が必要となります。
(4)自己決定への支援
・ 治療方法の決定に関して、十分な説明を受けた上で自己決定がなされるよう支援します。
・ 特に筋萎縮性側索硬化症では、人工呼吸器の装着が問題となり、装着により延命効果はみられますが、一方で家族の介護負担が長期化する。医師からの説明、在宅で受けられる看護や介護サービスについての説明を十分に受けた上で、意思決定が行われるように支援します。 意思決定は状況に応じて結論が変わる可能性があるので、その後も再確認などを行っていきます。
(5)社会資源の活用
・ 申請により特定疾患医療受給者証が交付され、医療費の自己負担が軽減されます。
・ 申請の窓口は、保健所です。 保健所では、難病の療養に関する相談・講演会などの開催や患者・家族会の支援、家庭訪問などの支援を保健師が行っています。
・ 難病患者等居宅生活支援事業は、1997年から開始され、ホームヘルプサービス事業、短期入所(ショートステイ)事業、日常生活用具給付事業などの支援事業があります。
・ 2003年から、都道府県毎に活動拠点となる「難病相談・支援センター」が順次設置されています。
[設問] 特定疾患治療研究事業の対象疾患となっているものを二つ選べ。
イ 日本脳炎 ロ 脳梗塞 ハ 筋萎縮性側索硬化症 ニ パーキンソン病 ホ 筋ジストロフィー
正解 (ハ、ニ)
[設問] 国の難病対策が始まるきっかけとなった疾病はどれか?
イ 脊髄小脳変性症 ロ スモン ハ ベーチェット病 ニ SLE ホ 水俣病
正解 (ロ)