SSブログ

疾病の成り立ちと回復の促進 第48回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]

I)代謝・栄養疾患治療薬

a) 高脂質血症治療薬

ア) リポ蛋白の構造と種類

・ 血清脂質にはコレステロール、コレステロールエステル、中性脂肪(主にトリグリセリド)、リン脂質、遊離脂肪酸があり、すべてリポ蛋白の形で存在します。

・ リポ蛋白は、比重により分けられ、HDL(高比重リポ蛋白)、LDL(低比重リポ蛋白)、IDL(中間型リポ蛋白)、VLDL(超低比重リポ蛋白)、カイロミクロンがあります。

・ カイロミクロンは食餌によって摂取した中性脂肪の輸送を行います。

・ LDLは主にコレステロールエステルを肝臓から末梢組織へ輸送しています。

・ HDLは主に末梢のコレステロールをコレステロールエステルの形で肝臓に運ぶ役割を担っています。

コレステロール.png

イ) 高脂血症治療薬

・ HMG-CoA還元酵素阻害薬: プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチンなどがあり(スタチン類)、肝臓でのコレステロール合成を抑制します。 LDL低下作用が強い薬剤群です。 副作用としては肝障害、ミオパチーなどがあります。

・ フィブラート系:クロフィブラート、べザフィブラート、フェノフィブラート、クリノフィブラートがあり、主に中性脂肪を減らします。

・ EPA製剤: 魚油から精製された脂肪酸エイコサペンタエン酸で、主に中性脂肪を減らします。

・ 小腸コレステロール吸収阻害薬: エゼチミブ。小腸壁での食事性コレステロールの吸収を阻害する作用を持っています。

・ 胆汁酸吸収阻害薬: コレスチラミン。LDL低下作用を持っています。

・ ニコチン酸誘導体: LDLとVLDLの低下、HDLの上昇作用を持っています。

b)痛風・抗尿酸血症治療薬

ア) コルヒチン

・ 痛風発作の予防効果がみられ、発作予兆期に使われます。 現在は関節炎発作治療のファーストチョイスではありません。

イ) 非ステロイド性抗炎症薬

・ アリール酢酸系: インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム、スリンダク

・ プロピオン酸系: ケトプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン

ウ) 尿酸排泄薬: 尿細管での尿酸再吸収を阻害して、排泄促進します。 ベンズブロマロン、プロベネシド、スルフィンピラゾンがあり、尿酸排泄低下型高尿酸血症の治療に使われます。

エ)尿酸生成抑制薬: アロプリノール、フェブキソスタットがあり、尿酸産生過剰型高尿酸血症の治療に使われます。

エ) 尿アルカリ化薬: pHが低いほど尿酸は尿に溶けにくくなるため、使われます。クエン酸カリウムとクエン酸ナトリウムなどがあります。尿酸排泄促進薬を使う場合は、併用する必要があります。

[設問] HMG‐CoA還元酵素阻害薬を選べ。

イ クロフィブラート

ロ コレスチラミン

ハ プラバスタチン

ニ エゼチミブ                  正解 (

[設問] コレステロール吸収を担う小腸コレステロールトランスポーターに結合し、コレステロールの吸収を阻害するものはどれか? 一つ選べ。

イ クロフィブラート

ロ コレスチラミン

ハ シンバスタチン

ニ エゼチミブ                 正解 (

[設問] 中性脂肪低下作用の強いものを一つ選べ。

イ フェノフィブラート

ロ プラバスタチン

ハ エゼチミブ

ニ シンバスタチン       正解 ()  

[設問] 痛風関節炎の治療にファーストチョイスとして使われるのはどれか? 一つ選べ。

イ コルヒチン

ロ 非ステロイド系抗炎症薬

ハ 尿酸排泄促進薬

ニ 尿酸生成抑制薬              正解 ()   


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び

疾病の成り立ちと回復の促進 第47回(薬剤) [疾病の成り立ちと回復の促進]

d)甲状腺機能異常治療薬

ア) 甲状腺機能低下症の治療薬

・ 甲状腺ホルモン: チロキシン(T4)

甲状腺機能低下症.png

イ) 甲状腺機能亢進症の治療薬

・ 抗甲状腺薬: 甲状腺ホルモンの生合成を抑制します。 チアマゾール、メチマゾール、プロピルチオウラシル。 副作用として無顆粒球症、蕁麻疹などが出ることがあります。

・ 無機ヨード

・ β遮断薬: 甲状腺機能亢進症に対する交感神経系の興奮による症状を改善します。

甲状腺機能亢進症.png

e) 性腺ホルモン

ア) GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)

・ 視床下部ホルモンの一つで、下垂体前葉からのゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)の分泌を調節しています。

・ ゴナドトロピン低分泌性性腺機能低下による不妊症の治療に自動間欠注入ポンプを使って、排卵促進をねらって投与されます。

イ) FSH(卵胞刺激ホルモン)

・ 男性でも卵胞刺激ホルモンと呼ばれます。 男性では、精巣のセルトリ細胞に作用し精子形成を促します。

・ 女性では卵胞の発育を促進します。

ウ) LH(黄体形成ホルモン)

・ 男性でも黄体形成ホルモンと呼ばれます。 男性では精巣間質にあるライディヒ細胞に働いてアンドロゲンの分泌を促します。

・ 女性では、卵胞を包む内莢膜細胞に作用してエストロゲンの分泌を刺激します。 排卵1日前のLH分泌のピークにより排卵を誘発します。 黄体形成後は黄体からのプロゲステロンを分泌させます。

・ ゴナドトロピン欠乏症による精子形成不全には、製剤のHCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン:LH)とHMG(下垂体性性腺刺激ホルモン:FSH)が使われます。

エ) 女性ホルモン

・ 女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)はホルモン性避妊、ホルモン補充療法、月経異常、流産防止に使われます。

オ) 経口避妊薬

ピル.png

・ 副作用として、静脈血栓症のリスクが増加します。

カ) アンドロゲン

・ テストステロンはジヒドロテストステロンに代謝されてアンドロゲン受容体に結合し作用します。 テストステロンは肝臓での代謝速度が速く、経口投与には不適です。

キ) 抗アンドロゲン薬

・ シプロテロンはテストステロンの競合的拮抗薬であり、前立腺肥大症や前立腺癌に対し、女性の男性化徴候に対して使われます。

[設問] 甲状腺機能低下症について正しい記述を一つ選べ。

イ 甲状腺機能低下症では、治療薬として甲状腺ホルモンが使われる。

ロ 甲状腺機能低下症では頻脈になる。

ハ チアマゾールは甲状腺機能低下症に使われる薬剤である。

ニ 甲状腺機能低下症では体重が減ることが多い。         正解 (

[設問] 経口避妊薬に含まれるものを二つ選べ。

イ アンドロゲン

ロ エストロゲン

ハ プロゲステロン

ニ 卵胞刺激ホルモン

ホ 黄体形成ホルモン        正解 (


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:資格・学び