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基礎看護学(21)(診療に伴う技術) [基礎看護学]

3)薬剤についての知識と取り扱い

(1)薬剤の作用・投与量・投与法(薬物治療に伴って生じる生活への影響を含む)

(A)作用

・ 経口からの薬剤は、胃腸で分解され、小腸・胃から吸収されます。その後、門脈を経て肝臓に入り、一部そこで代謝されます。代謝されなかったものは大静脈に入り、組織へ分布し、主に腎臓から尿中に排泄されることになります。

・ 薬剤の作用には個人差があります。 これは、「吸収のされ方」「身体各部への分布量」「肝臓での代謝による活性喪失分」「尿・胆汁・汗・涙その他の排泄状況」に個人差があるからです。

(B)投与量

・ 投与量は、年齢・体重・病態・体質・耐性・排泄機能などの患者側の条件と与薬方法によって決まります。

・  薬物治療は患者の日常生活へ影響があるので、与薬前後の生活の変化をアセスメントする必要があります。

(C)投与法

・ 投与法には、経口、注射(皮内、皮下、筋肉内、静脈内)、塗布、点眼、吸入、経直腸などがあります。 注射の吸収速度は、静脈内→筋肉内→皮下→皮内の順です。

(2)薬剤の取り扱い

・ 薬剤は種類別に区別して整理します。

・ 毒薬、劇薬は他の薬物とは別な場所に保管し、麻薬は鍵のかかる場所に保管します。

・ 変質しやすい薬物は、冷蔵庫に保管します。

(3)与薬法

(A)経口与薬

・ カプセル薬は、食道などに貼り付いて粘膜潰瘍をおこすことがあるので、多めの水で服用させます。

・ 舌下錠は、口腔粘膜から吸収され、門脈を介さず大静脈系に入ることで薬効を発揮するので、飲み込まないよう指導します。

ニトロ舌下投与.png

・ 徐放薬は、小腸で吸収され血中濃度が一定に保たれることになっているので、噛み砕いたり、すりつぶしたりしてはいけません。

(B)注射

・ 皮内注射は、皮膚で抗原抗体反応をみる際に使われる。ツベルクリン反応や薬剤テストなどがあります。

・  皮下注射では刺入部位の皮膚をつまみ、皮膚面と10〜30℃の角度で刺入します。

・ 筋肉注射では、皮下組織と筋肉層の厚みを考慮し、筋層まで針が達するように刺入します。 薬液注入後は一部を除いて、吸収促進のためマッサージを行います。

注射経路.png

・ 抗癌剤は、血管外に漏れると組織の壊死をおこす危険性があるので、注射針の固定を確実に行います。

(C)塗布

・ 塗布、貼付薬は経皮吸収であり、角質層を透過するものと、毛穴などの付属器官を通るものの2つの経路で行われます。吸収率は個人によって異なります。

(D)点眼

・ 滅菌された製剤を用い、容器の先端が手や眼瞼結膜に触れないようにします。

(E)吸入

・ 薬液吸入は、座位または半座位で行い、薬液が気道に届くように腹式呼吸を行ってもらいます。 粒子が大きいものは口腔内に沈着する場合があるので、たまった薬液は吐き出すよう指導し、吸入後はうがいを促します。

(F)経直腸

・ 薬剤は直腸粘膜から吸収され、体循環に入ります。

(4)副作用とその徴候、禁忌

・ 副作用は、薬剤の吸収・分布・代謝・排泄に関する生体の条件や機能と、薬剤の用量・用法、薬剤の相互作用などが要因となります。

・  副作用の徴候は、主に中毒とアレルギー反応であり、前者は肝・腎機能障害として、後者は蕁麻疹などの皮膚反応、発熱、血管障害として現れます。

[設問] 注射の吸収速度の速い順を正しく記したものを選べ。

イ 静脈内→皮下→筋肉内→皮内

ロ 静脈内→筋肉内→皮下→皮内

ハ 静脈内→筋肉内→皮内→皮下

ニ 静脈内→皮内→筋肉内→皮下     正解 (

[設問] 薬剤の取り扱いについて正しいものを一つ選べ。

イ 薬剤は種類別に区別して整理する。

ロ 毒薬は他の薬剤とは別な場所に保管し、劇薬と麻薬は鍵のかかる場所に保管する。

ハ 毒薬、劇薬、麻薬はすべて鍵のかかる場所に保管する。

ニ すべての薬剤は変質を避けるため冷蔵庫保管とする。

                                   正解 (

[設問] ニトログリセリンを飲み込むのは、なぜだめなのか? 一つ選べ。

イ 胃液で変質するため

ロ 胃腸で吸収されて門脈系で肝臓に運ばれて、そこで脱ニトロ化されて無効となるため

ハ 胃腸では吸収されないため

ニ 副作用が強いため                   正解 (

[設問] 皮内注射の刺入角度は次のどれくらいか?

イ 0~15度

ロ 10~30度

ハ 45~60度

ニ 65~90度      正解 (

                       


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基礎看護学(20)(診療に伴う技術) [基礎看護学]

2)治療・処置

(1)治療・処置の看護師の役割と責任、患者の理解

しちょうの説明.png

(2)穿刺

・ 穿刺とは、先端の鋭い医療器具(針など)を身体に突き刺すことをいい、検査あるいは治療の目的で行われます。

・ 検査の場合は、採取した体液や細胞・組織の性状を調べる目的で行われます。

・ 治療の場合は、呼吸苦などの症状緩和を図るために体内に貯留した液体や気体を排除、あるいは薬液を注入したりする目的で行われます。 そして、穿刺は、全て無菌操作で行われます。患者の体位は、できるだけ安楽で緊張を緩和できものにします。

・ 急激な体動は、手技に伴う危険性(出血や感染)を増大させます。 そのため、動かないように声かけをして、必要に応じて支えるなど援助を行います。

・ 穿刺部位周辺の不必要な露出を避け、保温に努めます。

・ 局所麻酔薬による副作用が出ることがありますから、その早期発見に努め、実施前・中・後の患者の反応(ショックなど)を確かめます。

・ 胸腔穿刺

胸腔穿刺.png

・ 腹腔穿刺は、腹膜腔に穿刺し、貯留した腹水を採取あるいは排出するものです。

・ 穿刺部位としては、モンロー・リヒター線の中央かその外側が選択されます。

・ 腹水排除後、圧迫されていた臓器に血液が急に流入してショック症状をおこすことがあるので、それを念頭に置く必要があります。
  

(3)洗浄

・ 洗浄とは、汚れを取り除き清潔にすることですが、洗浄するための液体を外部から注入・排出させますので汚染の危険があります。 そのため、部位による操作方法の違いを充分に把握する必要があります。

・ 使用する液体の温度によっては、患者は不快に感じるので温度に気を付けます。

・ 胃洗浄では、胃酸があるため細菌は死滅しやすいとはいえ、抵抗力の弱い患者や手術においては無菌的に行う必要があります。 上半身をおこした体位で、嘔吐の防止に努めます。 胃管が確実に胃の中にあることを確認するため、注射器で空気10mLほどすばやく注入してみます。 そのとき上腹部にあてた聴診器で空気音が確認できれば胃管が胃の中にあることが確認されたことになります。 洗浄では、胃に注入した洗浄液の量と排出した量が同じであることを確認します。

・ 膀胱洗浄は無菌操作で行い、洗浄液の温度は37〜38℃にします。 洗浄を行うことで逆に細菌の侵入がおこりやすくなるので十分な注意が必要です。

・ 膀胱洗浄は、カテーテルの閉塞が疑われる時などに行われます。

(4)吸引

・ 吸引には、気道(鼻・口・気管)内の分泌物を除去して気道を確保する一時的吸引と、体腔内、臓器、結合識内に異常に貯留した滲出液、血液、空気を除去する持続吸引があります。

・ 気道内吸引

気道内吸引.png

・ 気管内吸引は無菌操作で行い、使用物品は、鼻・口腔内吸引の場合とは区別します。

・ 気管内吸引を施行する患者には、口腔内の細菌が気管に入らないよう、口腔内ケアは十分に行う必要があります。

・ 吸引瓶は排液量が70〜80%に達したら交換します。

・ 持続吸引法の種類にはウオターシール(水封)式吸引器・低圧持続吸引器があり、開始時の吸引圧は10cmH2O前後とします。

・ 吸引器は、体腔からのチューブとの連結部がゆるまないように密封状態にし、患者の身体が多少動かせるように、チューブと吸引用ゴム管の長さには余裕をもたせます。

(5)酸素吸入

・ 酸素療法の目的は、動脈血酸素分圧(PaO2)が60mmHg以下、SpO2 90%以下、または呼吸困難の状態にある患者に、圧縮酸素を吸入させて低酸素症の改善を図ることです。

・ 投与法には鼻腔カニューラ、フェイスマスク、酸素テントなどを使うものがあり、患者の状態によって選択します。

酸素ボンベ.png

・ 高濃度の酸素を長時間投与すると、鼻粘膜刺激症状、四肢の知覚異常などの中毒症状が現れることがあるので、注意が必要です。 また粘膜への刺激を防ぐため、投与量によっては酸素を加湿する必要があります。

・ 副作用として、高濃度の酸素吸入による肺障害、酸素中毒、酸素吸入による無呼吸、CO2ナルコーシスなどがあるので、慢性呼吸不全患者に対しては低酸素濃度から始める必要があります。

・ 長期間の高濃度酸素吸入は、肺実質の変化と呼吸機能低下をもたらします。

・ 酸素ボンベは火気厳禁であり、転倒など衝撃が加わらないように安全管理に注意します。

(6)包帯法と創傷の管理

・ 包帯法の目的は、創傷部を覆い保護する被覆、出血や浮腫を予防する圧迫、骨折や脱臼などの時の固定、衛生材料の支持、患部を矯正する牽引などです。

・ 包帯法の実施上の注意点は、包帯の目的に応じて材料を選択すること、感染がおこらないようにすること、不適切な巻き方で循環障害や運動障害をおこさせないこと、苦痛を与えないことです。

・ 巻軸包帯の巻き始めと巻き終わりは、環行帯を行い、包帯がずれないようにします。 また、包帯は循環障害をおこさないように末梢から中枢に向かって巻いていきます。

ほうたい法.png

・ 包帯法のいろいろ: 環行帯、螺旋帯、蛇行帯、折転帯、亀甲帯、麦穂帯

・ 創傷管理では、傷ついた皮膚の障害を改善させることが重要で、そのためには刺激要因を取り除き、皮膚の清潔、保湿、保護を行います。 なお皮膚障害には創傷被覆材を使用します。

[設問] 胸水のための胸腔穿刺では、一般的にどの部位から穿刺されるのか?

イ 第2~4肋間  ロ 第4~6肋間  ハ 第6~8肋間  ニ 第8~10肋間

                                   正解 (

[設問] 腹腔穿刺の目印となるモンロー・リヒター線は臍とどこを結んだ線か?

イ 左上前腸骨棘

ロ 胸骨の剣状突起

ハ 恥骨結合

ニ 左下前腸骨棘           正解 (

[設問] 膀胱洗浄の場合の、洗浄液の温度は次のどれがよいか?

イ 33~34℃  ロ 35~36℃  ハ 37~38℃  ニ 39~40℃

                     正解 (

[設問] 気管内吸引の場合の吸引圧は次のどれがよいか?

イ 100~150mmHg

ロ 200~250mmHg

ハ 250~300mmHg

ニ 300~350mmHg               正解 (

[設問] 気管内吸引の場合の一回あたりの吸引時間はどれがよいか?

イ 30秒前後  ロ 20秒前後  ハ 一分程度  ニ 15秒以内

                                正解 (

[設問] 肘関節や膝関節に適した包帯の巻き方は次のどれか?

イ 環行帯  ロ 螺旋帯  ハ 亀甲帯  ニ 麦穂帯

                               正解 (



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