基礎看護学(24)(看護の役割と機能を支える仕組み) [基礎看護学]
6.看護の役割と機能を支える仕組み
1) 看護活動の場
(1)地域における看護活動
(2)医療施設における看護活動
・ 医療の場とは、病院、診療所、助産所などで、そこでの看護活動における看護職の役割は、常に患者の近くにいて医師や他の専門職と連携して看護を提供することです。
・ 看護職の業務とは、法律により規定された範囲内で、かつ、看護倫理に基づいて看護職が実践することです。
・ 看護業務を行う資格と業務の範囲については、保健師助産師看護師法(保助看法)によって規定されています。
2) 継続看護
(1)施設内から在宅への継続
・ 病院や施設において、患者・入所者の病状・状態などの変化によって他の病棟や重症治療室、手術室などへ移行する場合にも看護の継続性が必須です。
・ 患者・入所者にとって必要な看護が移行先においても適切に提供されるよう、看護サマリーなどで情報を提供し看護を継続することが重要です。
・ 在宅医療の進展により医療機器を装着したまま、あるいは障害を持って在宅へ移行する場合は、特に継続看護が必要となります。
・ 看護サマリー(看護要約)などを用いて看護師は患者の情報を伝達し共有します。
(2)退院計画および退院指導
・ 退院計画および退院指導は、入院早期から退院後の生活を想定して計画的に進める必要があります。
・ 退院計画の立案は、家族側の介護要員数や時間などの介護力を勘案して行います。
(3)経時的変化に対する継続看護
・ 看護は1日24時間、365日継続して、看護サービスを継続するが、そのめには、看護チームのどの看護師が担当しても統一した看護ができるようにする情報伝達システムがあります。
・ 地域においても家族、訪問看護師、保健師、ホームヘルパーなど在宅ケアに関わる医療・福祉チームが連携し、継続したケアを提供します。
3)保健医療福祉の連携
(1)他職種の役割
・ 保健医療福祉の分野には、看護職以外の多くの職種がある。医師、歯科医師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、衛生検査技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士、臨床工学技士、義肢装具士、救急救命士、歯科衛生士、歯科技工士、管理栄養士、栄養士、調理師、社会福祉士、介護福祉士などがあります。
・ 主な保健・医療関係者の職種別構成は、看護師30.2%、保健師1.7%、助産師1.1%となっています(2000年厚生労働省統計情報部)。
(2)他職種との連携
・ 患者などの医療福祉サービスを受ける対象者にベストなケアを提供するには、保健医療福祉関係のあらゆる職種との連携が必要です。
・ 病院の機能分化も進み、医療機関の間での連携も重要性を増しています。
4)看護管理
(1)看護提供システム
・ チームナーシング
・ プライマリーナーシング
・ 機能別看護とは、患者を受け持つのでなく、検温、処置、与薬、注射などの業務を分担して受け持つ方式です。
(2)クリニカルパス
・ クリニカルパスは、作業工程管理の方法を医療に応用したものです。
・ クリニカルパスは、医療における診療計画・実施プロセスの標準化の手段で、医療の質を保障するために用いられます。
・ クリニカルパスは、インフォームドコンセントを得る過程でも利用されます。
(3)リーダーシップとメンバーシップ
・ リーダーシップとは、集団に目標達成を促すよう牽引あるいは影響を与える力です。
・ メンバーシップとは、チームのメンバーとして役割を果たすことです。
・ 特性理論とは、リーダーシップを発揮するためにリーダーに必要とされる特性を見いだそうとする理論です。
・ リーダーシップのスタイルは、独裁的リーダーシップ、協議的リーダーシップ、参加的リーダーシップ、民主的リーダーシップ、放任的リーダーシップがあります。
・ リーダーが持つべき能力は、専門的能力、対人的能力、概念化能力です。
・ 状況適応型リーダーシップとは、ハーシーとブランチャードが提唱したもので、メンバーの仕事に関する成熟度の度合いによるリーダーの関わり方を示唆するリーダーシップの方法です。
(4)自己管理・防止システム
・ 医療事故とは、医療に関わる場所で、医療の全過程において発生する人身事故の一切を包含し、廊下での転倒事故も含まれる。被害者は医療従事者も含まれる。医療の場で使われる「アクシデント」は医療事故と同義語です。
・ 医療過誤とは、医療事故の発生原因に医療機関や医療従事者の過失がある場合です。
・ インシデントとは、謝った医療行為などが患者に実施される前に発見されたもの、あるいは誤った医療行為などを実施したが、結果として患者に影響を及ぼすには至らなかったものをいいます。
・ インシデント・レポートは、ヒヤリ・ハット報告書と同義語です。
・ 医療安全を推進するために、都道府県毎に医療安全推進センターが設置されています。
・ 特定機能病院では、2003年から専任の医療安全管理者(リスクマネージャー)を置くことが義務づけられました。
[設問] 地域における看護活動は、地域で生活し、多様なライフスタイルや健康レベルにある人々を対象とするが、その目的を次の中から一つ選べ。
イ QOLの向上
ロ ADLの向上
ハ 疫学調査
ニ 疾病の予防 正解 (イ)
[設問] 看護業務を行う資格と業務の範囲を規定するのは次のどれか?
イ 社会福祉法
ロ 保健師助産師看護師法
ハ 医療法
ニ 健康保険法 正解 (ロ)
[設問] どのライフステージにある人にも、その時に合った看護を適切に継続提供する概念を何というか?
イ 在宅看護
ロ 継続看護
ハ 訪問看護
ニ ホスピスケア 正解 (ロ)
[設問] 一人の看護師が患者を入院時から退院時まで一貫して担当する方式を何というか?
イ チームナーシング
ロ パートナーシップナーシング
ハ プライマリーナーシング
ニ 固定チームナーシング 正解 (ハ)
[設問] 元々作業工程管理の方法で、医療に応用され、医療における診療計画・実施プロセスの標準化の手段で、医療の質を保障するために用いられているのは次のどれか?
イ 看護計画
ロ 包括医療制度
ハ オーダリングシステム
ニ クリニカルパス 正解 (ニ)
[設問] 医療事故と同義語は次のどれか?
イ アクシデント
ロ インシデント
ハ ヒヤリハット
ニ リスク 正解 (イ)
基礎看護学(23)(診療に伴う技術) [基礎看護学]
(4)保温
・ 熱量の産生と放出のバランスがくずれた時、体温異常がおこります。
・ 温熱刺激により、末梢循環の改善がみられます。
・ やせた人、虚弱者などは低い温度に影響されて体熱を失いやすいので、保温に注意します。
・ 出血性ショックでは低体温になるので、患者の安静と保温に注意します。
・ 低体温では、心拍出量の低下、血圧下降、徐脈がみられます。
・ 低体温に対しては、寝具・寝衣の調節、室温の調節、温罨法、マッサージ、暖かい飲み物などによって体温の回復を図ります。
・ 悪寒のある発熱初期には、体表面からの放熱を防ぐ意味で保温を十分にします。
(5)罨法
・ 皮膚感覚の分布では、冷点の方が温点より密度が高くなっています。大腿部と胸部は特に温熱刺激に対して鈍感なので、温罨法の際には注意します。
・ 寒冷刺激によっておこる身体反応として、血管収縮と血流減少、組織代謝の低下がみられます。
・ 温熱刺激は、痛みの原因になる筋肉の緊張を緩和し、鎮痛・鎮静効果をもたらします。
・ 細菌感染や出血傾向がある場合は、炎症を増強したり血管を拡張するので、温罨法は避けます。
・ ゴム製の湯たんぽには60℃程度、金属製の湯たんぽには80℃程度の湯を用います。ゴム製の湯たんぽの場合、湯量は2/3程度とします。
・ 温罨法では、熱傷を避けるため、カバーを付けて身体から10cm以上離して貼用します。
・ 空気の入った氷枕は熱伝導の効率が悪いので、空気を抜きます。
・ 罨法の種類には湿性と乾性があり、湿性の方が熱伝導率がよいため、皮膚温との差をより強く感じます。
(6)心肺蘇生法
・ 舌根沈下予防のため、下顎挙上、頭部後屈、頤挙上して気道を確保します。
・ 努力様呼吸がみられる時は、口腔内の喀痰・分泌物の除去をしてから気道を確保します。
・ 救急時の脈拍の触知は、成人では頸動脈、1歳以上の小児では頸動脈か大腿動脈、乳幼児では上腕動脈が適しています。
・ 人工呼吸
・ 心臓マッサージの圧迫部位は、胸骨のした半分とします。 一方の手掌基部を置きもう一方の手を重ねて、毎分100回以上のスピードで、成人の場合胸骨が5cm以上沈むように垂直に押します。 加圧と除圧は等間隔で行い、胸骨から手を離さないようにします。
・ 患者が成人の場合、心臓マッサージ30回、人工呼吸2回の割合で繰り返します。 ただ、最近では、心臓マッサージのみでも同等以上の効果があると言われています。
・ 8歳未満の小児に対する心臓マッサージは片手で行います。 乳児に対する人工呼吸は、口と鼻を一緒に覆って行います。 二人で対処する場合は心臓マッサージ15回、人工呼吸2回の割合で、一人で対処する場合は成人と同じとします。また、小児の胸骨圧迫は胸の厚みの1/3までしっかりと行います。
・ 心臓マッサージは硬い平らな場所で行うようにします。
(7)止血法
・ 外傷などにより全血液量の1/3が休息に失われると、ショックに陥ります。
・ 一時的止血法には、創部を直接圧迫する「直接圧迫止血法」と主な動脈を圧迫して止血する「間接圧迫止血法」があります。
・ 止血法の第一選択は「直接圧迫止血法」で、次ぎに「間接圧迫止血法」を試みます。 四肢の場合、第三選択として創部より心臓よりを縛る止血帯法を試みます。
・ 永久止血法は、厳重な消毒のもと手術器具を用いて止血する方法です。
・ 重度外傷の動脈性出血の時は、出血量を最小限にとどめる迅速な応急止血が重要です。
・ 処置時には感染防止のため、直接血液に触れないようにします。
5)災害看護
(1)トリアージ
・ トリアージとは、災害発生時など多数の傷病者が発生した場合に、傷病の緊急度に応じて、適切な搬送や治療の優先順位を決定することをいいます。
・ トリアージを行う際には、色分けされたタグをかけて識別します。(下表)
・ トリアージの基準は、医療者の数、傷病者の数、搬送方法のバランスななどによって変わりうるもので、繰り返し行う必要があります。
・ トリアージは原則として一人で行うべきです。決定するものは、医師に限らず、看護師、救急救命士の場合もあります。
[設問] 低体温でみられる徴候の組み合わせを選べ。
イ 心拍出量の低下・血圧上昇・徐脈
ロ 心拍出量の低下・血圧低下・徐脈
ハ 心拍出量の増加・血圧低下・頻脈
ニ 心拍出量の増加・血圧上昇・頻脈 正解 (ロ)
[設問] 罨法について正しい記述を一つ選べ。
イ 皮膚感覚の分布は、冷点の方が温点より密度が低い。
ロ 温熱刺激は、筋緊張を緩和し、鎮痛・鎮静効果をもたらす。
ハ 細菌感染や出血傾向があっても、温罨法は避ける必要はない。
ニ 罨法では、湿性より乾性の方が熱伝導率がよいので、乾性では皮膚温との差を大きく感じる。
正解 (ロ)
[設問] 救急時の脈拍の触知は、乳児ではどこで行うのがよいか?
イ 頸動脈 ロ 大腿動脈 ハ 上腕動脈 ニ 橈骨動脈
正解 (ハ)
[設問] 心臓マッサージは毎分何回くらいで行うのがよいか?
イ 60回 ロ 80回 ハ 90回 ニ 100回以上
正解 (ニ)
[設問] トリアージにおいて、ただちに処置を行えば救命可能の状態の場合、タグの色はどれか?
イ 赤 ロ 黄 ハ 緑 ニ 黒 正解 (イ)