成人看護学(27)(栄養摂取・代謝障害を持つ患者への看護) [成人看護学]
(4)腸切除術後の合併症予防と生活指導
(5)胆嚢摘出術後の合併症予防
・ 術後出血や胆汁漏出の早期発見のため、バイタルサインとともにドレーンからの排液量・性状を観察します。
・ 術後膵炎の早期発見のため、腹痛、悪心・嘔吐、発熱、血中アミラーゼの状態を観察します。
・ 腹腔鏡下胆嚢摘出では、気腹による深部静脈血栓をおこしやすいため、ホーフマンズ・サインを観察するとともに、弾性ストッキングの着用や下肢の運動を行います。
・ 脂肪の消化吸収障害により下痢が生じる場合は、低脂肪食にすることを説明します。
・ 結石形成を予防するため、規則正しい生活をすること、食事で脂肪をとりすぎないこと、アルコールを飲み過ぎないことを説明します。
(6)胆汁瘻の管理と指導
・ 総胆管切開術後にTチューブを留置して、胆汁のうっ滞や胆泥、遺残結石の排出を行います。
・ 排出される胆汁の量、色、粘稠性、胆砂の有無を観察します。 また、電解質バランスを観察しますが、場合によっては輸液とその管理が必要となります。
・ 腸液に胆汁が混じらないようにするために、脂肪を制限する必要があります。
・ Tチューブは、閉塞がおきないように固定を十分に行います。 胆汁を排液後貯めるバッグは、逆行性感染を防ぐためにTチューブ挿入部よりも下になるようにします。
・ Tチューブを付けたまま退院するときは、管理の方法を指導し、発熱や黄疸がみられた場合は、すぐに受診するように説明指導します。
[設問] 腸切除後の縫合不全は術後どれくらいでおこりやすいか?
イ 術直後
ロ 術後翌日~3日目
ハ 術後4日~1週間くらい
ニ 術後1週間~2週間後 正解 (ハ)
[設問] 術後イレウス予防策として適切なものはどれか? 二つ選べ。
イ 体位変換
ロ 術後安静
ハ 抗生剤の投与
ニ 早期離床
ホ 下剤の投与 正解 (イ、ニ)
[設問] 胆嚢摘出後の合併症とその対策・予防策の組み合わせで正しいものを一つ選べ。
イ 術後膵炎 --- ドレーンからの胆汁排出量と性状の観察
ロ 気腹による深部静脈血栓症 --- 血清アミラーゼの観察
ハ 下痢 --- 低脂肪食
ニ 結石形成 --- 弾性ストッキングの着用 正解 (ハ)
成人看護学(26)(栄養摂取・代謝障害を持つ患者への看護) [成人看護学]
3)消化・吸収障害の観察とアセスメント
(1)腹部の観察法
(2)心身・日常生活への影響
・ 下痢は、脱水や全身倦怠感をおこし、日常生活にも影響を及ぼす。
・ 便秘は、食欲の低下をまねき、痔核の誘因となります。
4)消化・吸収障害の主な看護
(1)IVHの管理
・ 挿入したカテーテルが上大静脈に位置していること、および気胸などの合併症の有無を確認するために、挿入後は胸部レントゲンを撮影します。
・ 点滴ルートの閉塞をヘパリンなどで予防します。 感染予防のためには、不必要な三方活栓の装着を避け、定期的なライン交換やカテーテル刺入部の消毒を行います。 また、感染の徴候である発熱などは早期に発見するよう心がけます。
・ 定期的な血糖測定、血液・尿検査、水分出納を行い、高浸透圧性・高血糖性非ケトン性昏睡、低血糖発作、電解質異常、ビタミン欠乏症の早期発見に努めます。
(2)消化管内視鏡・造影検査時の援助
・ 検査前日の21時以降は、飲食を禁止します。
・ 検査の数分前に消化管運動と胃液分泌を抑制するために抗コリン剤を筋注します。
・ 上部消化管内視鏡検査は、左側臥位で行います。
・ 上部消化管内視鏡検査後は、誤嚥防止のため咽頭麻酔効果が消失して飲食するよう指導します。
・ 上部消化管造影でバリウムを使用した場合は、下剤を使って排泄を促し、ガストログラフィンを使った場合は、下痢に傾きやすいことを患者に説明しておきます。
・ 内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査では、下剤を使って、排便、排ガスの処置をしておきます。
・ 下部消化管内視鏡・造影検査では、検査前に低残渣食の摂取やポリエチレングリコール電解質腸管洗浄液の内服があります。
(3)胃切除術の合併症予防と生活指導
・ 胃切除後の食事は、分割食とします。食事内容は、水分摂取から開始し、固形食が摂取できるように段階的に変更していきます。
・ ダンピング症候群を予防するためには、ゆっくり時間をかけて食事をします。1回の食事摂取量を少なくし、食後はセミファウラー位または仰臥位とします。
・ 逆流性食道炎を予防するために、食後はしばらくの間座位もしくは、セミファウラー位をとってもらいます。
・ 胃切除後は胃酸の分泌力が減少するため、殺菌力が低下し食中毒になりやすいので注意が必要です。
・ ビタミンB12と鉄の吸収障害がおこるので、それらの多い食品を摂取するように説明します。
[設問] 鎖骨下動脈からのIVHの合併症として多いものを一つ選べ。
イ 肺炎 ロ 逆流性食道炎 ハ 気胸 ニ 静脈炎
正解 (ハ)
[設問] 一般に上部消化管内視鏡検査では、検査前日何時以降の飲食を禁止するか?
イ 午後5時以降 ロ 午後7時以降 ハ 午後9時以降 ニ 午後12時以降
正解 (ハ)
[設問]上部消化管内視鏡検査時の患者の体位は次のどれか?
イ 仰臥位 ロ 左側臥位 ハ 右側臥位 ニ 腹臥位
正解 (ロ)
成人看護学(25)(栄養摂取・代謝障害を持つ患者への看護) [成人看護学]
(5)咀嚼・嚥下訓練
・ 経口摂取を開始するには、日中覚醒(JCSで1桁)し、全身状態が安定していることが条件となります。
・ 咀嚼・嚥下訓練には、食物を使う直接的訓練と使わない間接的訓練があります。
・ 患者と家族には、嚥下訓練の必要性と訓練方法を十分に説明し理解してもらいます。
・ 経口摂取訓練の時は、必ず吸引器を準備しておき、訓練の始めと終りには、必ず口腔ケアを行います。経口摂取訓練は、1食30分以内を目安とします。
・ 嚥下しやすく、誤嚥しにくい食物形態はゼラチンタイプです。
(6)嚥下障害部位に応じた摂取の援助
(7)経管・経腸栄養法の管理と指導
・ 経鼻的、あるいは空腸瘻、胃瘻を通したチューブを介して栄養成分を注入する方法を経腸栄養方法といいます。 また、口腔からチューブを挿入する間歇的経口管栄養法(IC法)があります。
・ チューブの固定で鼻翼に褥瘡をつくらないように固定し、絆創膏は毎日取り替えます。
・ 胃瘻・空腸瘻チューブの挿入部の皮膚の異常の有無を毎日観察します。
・ 患者・家族には経腸栄養法の意義について十分な説明を行い、理解と協力を得ます。
・ 注入後、逆流防止のため最低30分は座位またはベッドアップしておきます。
[設問] ベッド臥床の脳卒中患者の食介助について正しいものを一つ選べ。
イ 患者さんの患側に立って行う。
ロ 体幹は前に傾け、頸部は伸展させた体位がよい。
ハ 片麻痺がある場合、健側を下にした半側臥位で頸部を患側に向けた姿勢がよい。
ニ 口腔内の送りこみがよくない場合は、顔を下向きにした嚥下がよい。
正解 (ハ)
成人看護学(24)(栄養摂取・代謝障害を持つ患者への看護) [成人看護学]
(2)舌切除術後の生活指導
・ 舌部分切除術後は、術後の創部の腫脹が軽減すれば咀嚼・嚥下機能は回復するので、それまでは口腔内の清潔を保ち、2次感染の予防のためにうがいを頻回に行うよう指導します。 知覚鈍麻、知覚過敏、運動障害は治癒過程での瘢痕形成のためおこるものなので、しだいに改善することを患者によく説明します。
・ 舌亜全摘出術や舌全摘出術、皮弁による再建手術の場合は、残された機能を可能な限り補うために、入院中にリハビリテーションの指導を行い、退院後も自宅で積極的に本人が意欲をもって行えるように説明します。
・ 食事内容を考慮して、調理者へのアドバイスを行います。
・ 喫煙、飲酒を控え、口腔内の清潔保持が保てるように食後のうがいや歯磨きの指導を行います。
(3)喉頭・咽頭切除後の生活指導
・ 喉頭切除後の生活指導は、気管孔の管理が中心となります。 気管孔から異物が入らないように、また気管が乾燥しないように、気管孔に特製のガーゼのエプロンを装着するように指導していきます。
(4)食道再建術の合併症予防と生活指導
・ 咽頭、食道の欠損に対して、胃、空腸、皮膚などを用いた食道再建術が行われます。
[設問] 舌切除後の生活指導で正しいものを一つ選べ。
イ 舌部分切除後は、うがいは行わせない。
ロ 舌切除後にはリハビリテーションの必要はないことを説明する。
ハ 食事内容を考慮し、調理者へのアドバイスを行う。
ニ 喫煙、飲酒は控える必要はない。 正解 (ハ)
[設問] 食道再建術後の合併症として頻度の高いものはどれか? 一つ選べ。
イ イレウス ロ ダンピング症候群 ハ 心筋梗塞 ニ 肺合併症
正解 (ニ)
成人看護学(23)(栄養摂取・代謝障害を持つ患者への看護) [成人看護学]
13.栄養摂取・代謝障害をもつ患者への看護
1)咀嚼・嚥下障害の観察とアセスメント
(1)歯・舌・口腔・喉頭の観察
・ 歯の噛み合わせ、義歯の有無、歯肉の状態を観察し、咀嚼運動の評価を行います。
・ 舌の凹凸や舌苔、乾燥の有無を観察し、舌を突き出したときの偏倚の有無を観察しますが、偏倚する側の舌下神経の麻痺があることになります。
・ 口角からの流涎の有無、口角を横に開いた時の左右差などから顔面神経障害の有無がわかります。
・ 軟口蓋や口蓋垂の偏りをみて、口蓋垂が偏るカーテン徴候があれば、偏った側と反対側の舌咽神経の障害があることになります。
・ むせがみられる時は、嚥下の前・中・後のいずれの時期かをアセスメントします。
(2)嚥下テスト
・ スクリーニング嚥下検査には、反復唾液飲み込みテストと水飲みテストがあります。 反復唾液飲み込みテストでは、高齢者で30秒に空嚥下が3回以上できれば正常とされます。 水飲みテストでは、30mLの水を5秒以内に飲み込めたら正常と判定されます。
・ ビデオX線透視検査は、造影剤を含んだものを嚥下し、ビデオにX線上の嚥下運動を記録する検査ですが、患者が十分にリラックスできるように環境を整えます。
・ 誤嚥がひどい時やSpO2が90%以下となった時は、検査を中止します。
・ ビデオ内視鏡検査は、ファイバースコープを使って声門閉鎖機能、食塊の咽頭残留の状態を直視下に観察する検査です。
・ その他の検査として、嚥下圧測定検査や超音波エコー、フードテストななどがあります。
(3)咀嚼・嚥下障害の原因と程度
・ 嚥下障害には、静的障害と動的障害があります。 静的障害とは、炎症、腫瘍などによる通過障害で、動的障害とは、神経・筋疾患などによる機能的な運搬障害です。
・ 筋萎縮性側索硬化症などでみられる球麻痺では、液体より固形物の方が先に飲み込みにくくなるのに対し、多発性脳梗塞などでの仮性球麻痺では、液体の方が先に飲み込みにくくなります。
・ 一般的な嚥下障害の判定基準にフレミングの指数があり、10点以上が嚥下障害あり、2点以下はその可能性が低いと判定されます。
(4)心身・日常生活への影響
[設問] 患者が舌を突き出した時に左に偏倚(寄る)した。どの麻痺によるか?
イ 左顔面神経麻痺
ロ 左舌咽神経麻痺
ハ 右舌咽神経麻痺
ニ 左舌下神経麻痺
ホ 右舌下神経麻痺 正解 (ニ)
[設問] 患者の口蓋垂の動きをみると、挙上が左に寄る。どの神経麻痺があるか?
イ 左迷走神経麻痺
ロ 左舌咽神経麻痺
ハ 右舌咽神経麻痺
ニ 左舌下神経麻痺
ホ 右舌下神経麻痺 正解 (ハ)
[設問] 高齢者の反復唾液飲み込みテストでは、30秒に何回以上空嚥下ができれば正常といえるか?
イ 10回 ロ 5回 ハ 3回 ニ 1回 正解 (ハ)
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成人看護学(22)(循環機能障害を持つ患者の看護) [成人看護学]
(5)降圧・利尿薬、抗不整脈薬、抗狭心症薬の服薬指導
・ 患者には、服薬時の注意を説明し、理解を促すことが重要です。
(6)抗凝固薬、抗血小板薬の服薬指導
・ 心弁膜症で人工弁置換術を行った場合、人工弁の周囲に血栓ができる可能性が高く、永続的に抗凝固薬を内服することになります。 薬の作用や内服時の諸注意は、患者自身が理解できるように行います。
(7)血圧コントロールの生活指導
・ 高血圧の患者に対する援助は、高血圧の誘因や原因をアセスメントし、患者が病態や治療に理解を示し血圧を目標レベルに維持できるような生活習慣を習得し、セルフケアを継続できるように指導していくことが重要です。
・ 指導の内容は、「血圧測定の必要性、方法」 「食事療法・減塩について」 「服薬指導」 「入浴方法」 「排便のコントロール」 「禁煙」 「緊急時の対処」 などです。
(8)虚血性心疾患の生活指導
(9)慢性心不全の看護
・ 慢性心不全では、急性増悪により生命に危険が及ぶ恐れがあります。 そのため、心不全の急性増悪の予防、増悪時の早期治療の必要性についての患者指導が重要となります。
・ 心不全の原因、病態、症状、増悪因子の理解を促す。 日常生活上の指導では、体重コントロール、飲水制限、減塩食、排便コントロール、服薬、症状発現時の対処方法などが挙げられます。
[設問] ワ―ファリン服用中の患者では、納豆やクロレラなどを避けるように指導するが、それはそれらの食品に何が含まれているからか?
イ ビタミンA ロ ビタミンB1 ハ ビタミンC ニ ビタミンE ホ ビタミンK
正解 (ホ)
成人看護学(21)(循環機能障害を持つ患者の看護) [成人看護学]
2)主な看護
(1)心臓カテーテル検査・心血管造影検査時の援助
・ 心臓カテーテル検査は観血的検査の1つです。局所麻酔下で、末梢動脈を穿刺あるいは切開して、カテーテルを逆行性に大動脈弁直上に到達させ、造影剤を注入して行われます。冠状動脈病変や心室、心房、弁の動きなどの評価をする目的で行われます。
(2)経皮的冠動脈形成術の看護
・ PTCA施行時の観察は、胸痛などの自覚症状の有無、バイタルサイン、心電図モニターによるSTの変化(虚血の状態)、不整脈、カテーテル挿入部の出血、血腫、足背動脈の触知、皮膚の色や温度差などが対象となります。
・ PTCA後は、急性冠梗塞をおこすことがあるため24時間全身モニタリングを行います。 退院後は、通常は6ヶ月後に造影検査を行い、再狭窄の有無の確認が必要です。
(3)ペースメーカー装着時の生活指導
・ 人工ペースメーカーによるペーシングには、ペースメーカーを体外に置く一時的ペーシングと、ペースメーカー本体を胸腔皮下に植え込む恒久的ペーシングがあります。
・ ペースメーカー装着後、最もおこりやすい問題は、ペースメーカー不全です。自覚症状、モニターの観察所見と合わせて異常の早期発見に努め、医師に相談するよう説明を行います。
・ ペースメーカー植え込み後は、電化製品、携帯電話の使用方法についての説明を行います。 医療機器で行われる電気治療やMRIは禁忌です。 CTでもペースメーカー本体にX線が連続的に照射されるとオーバーセンシングがおこり、ペーシング出力が一時的に抑制される場合があるので、本体にはX線照射をしないことになっています。
(4)開心術の看護
[設問] 経皮的冠動脈形成術(PTCA)の合併症とされるものを二つ選べ。
イ 急性冠動脈閉塞
ロ 肺炎
ハ 冠動脈穿孔
ニ 脳出血
ホ イレウス 正解 (イ、ハ)
成人看護学(20)(循環機能障害を持つ患者の看護) [成人看護学]
12.循環機能障害をもつ患者の看護
1)観察とアセスメント
(1)浮腫・うっ血の観察法
・ 心不全症状の有無を観察します。
・ 左心不全では、肺うっ血のため呼吸困難をきたし、呼吸音にラ音が聴取されます。 胸部X線検査ではうっ血の所見がみられ、血液ガス分析では呼吸性アシドーシスのデータがみられます。
・ 右心不全では、静脈圧の上昇、浮腫が生じます。 浮腫は主に下肢の脛骨下部や足背にみられ、指で押すと圧痕が残ります。 浮腫が高度になると身体の下部全体に広がり、肝臓のうっ血により肝腫大がおこります。 また、胸水貯留や腹水貯留もおこってきます。
(2)心電図の測定
・ 心電図の測定法には、12誘導法、ホルター心電図、心電図モニター誘導法がありますが、最も使われるのは12誘導法です。
(3)障害の原因
・ 心臓の障害の原因として、「先天性奇形」 「心臓弁膜症」 「冠状動脈の狭窄・閉塞」 「心筋の異常」 が挙げられます。
(4)心身・日常生活への影響
・ NYHAの心機能分類
[設問] 左心不全の症状・所見を一つ選べ。
イ 肝腫大 ロ ラ音の聴取 ハ 胸水貯留 ニ 腹水貯留
正解 (ロ)
[設問] 心電図12誘導で単極肢誘導と言われるのはどれか?
イ I ロ III ハ aVR ニ V3
正解 (ハ)
[設問] 「心疾患があり、身体活動が著しく制約されるもの」 はNYHA心機能分類の何度にあたるか?
イ I ロ II ハ III ニ IV
正解 (ハ)
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成人看護学(19)(呼吸機能障害を持つ患者の看護) [成人看護学]
(6)吸入量法、胸腔ドレナージ
(A)吸入療法
・ 吸入療法とは、呼吸器疾患の治療などの目的で、薬物などを口腔から送気させる方法をいいます。
・ エアロゾル吸入療法には、ジェットネブライザー、超音波ネブライザー、定量噴霧式吸入器、ドライパウダー吸入器などを使用します。
・ 吸入療法には、交感神経刺激薬、抗コリン薬、ステロイド薬、粘液溶解薬、抗アレルギー薬、抗生物質などが使われますから、それぞれの適用と吸入方法を患者に説明する必要があり、副作用と合併症に注意しなくてはなりません。
(B)胸腔ドレナージ
・ 胸水は一度に1000〜1500mL以上は排液しません。大量の排液はショック症状をきたすことがあるからです。
・ 胸腔ドレナージ後には肺の再膨張により胸膜伸展がおこり、疼痛が出現することがあるので、患者にあらかじめ説明しておく必要があります。
・ ドレーンの管理では、装置交換の際、必ずドレーンを鉗子などでクランプしておき空気が流入しないようにし、またドレーン部からの空気もれがないかを観察します。
(7)喘息発作時の対応と予防指導
・ 排痰の促進を図るため、腹式呼吸法、飲水と咳嗽法の活用などを指導しておきます。
・ 環境調整として、室内に空気清浄器を設置し、埃をたてないような工夫や、室温・湿度を適切に保ったりすることを指導していきます。
・ 予防的薬物投与については、医師と十分相談します。
(8)慢性呼吸不全の呼吸療法と生活指導
・ 呼吸法は、口すぼめ呼吸と腹式呼吸を指導します。
・ 禁煙の必要性を理解し禁煙実行が動機づけられるためには、家族と医療従事者の支援が必要です。
・ 薬物療法で使われる薬物の必要性、作用、容量、服用の仕方、副作用について十分説明し、理解が得られたかどうか確認します。
・ 食事はガスの発生しやすいものは、腹満をまねき呼吸困難を増悪させるので、避けるように指導します。
・ 急性増悪の原因となる感染を予防するため、手洗いやうがいの励行、インフルエンザの予防接種を勧めます。
[設問] 長時間作用性のβ2刺激薬や坑コリン薬の吸入が治療に使われる疾患は次のどれか?
イ 肺癌 ロ COPD ハ 気管支喘息 ニ 間質性肺炎
正解 (ロ)
[設問] 胸水の排液の限度は次のどれか?
イ 300~500mL
ロ 500~700mL
ハ 700~1000mL
ニ 1000~1500mL 正解 (ニ)
[設問] 気管支喘息の発作予防の基本治療は次のどれか?
イ 吸入長時間作用型β2刺激薬
ロ 長時間作用型抗コリン薬
ハ 吸入ステロイド薬
ニ ステロイド内服薬 正解 (ニ)
成人看護学(18)(呼吸機能障害を持つ患者の看護) [成人看護学]
(3)肺切除術の看護
(4)胸腔鏡下手術の合併症予防
・ 創部の感染や離開を予防するために、指示された抗生剤の投与を行います。 また、シャワーや入浴の際には、創部に防水シートを貼り、汚染を防ぎます。
・ 肺炎予防のため、喀痰喀出が困難な場合は、加湿をして末梢気道を広げ、繊毛運動を促し、指示された量の去痰剤を投与します。
・ 術前からケロイド体質の目立つ患者には、術後抗ケロイド薬の内服を数ヶ月行います。
・ 術後はトロッカー孔周囲に高度に進展する皮下気腫ができることがありますから、観察は十分に行っていきます。
・ 10mm以上の大口径トロッカーを挿入した場合、肋間神経に損傷がおこり遅延性疼痛が発症することがあるので、その場合、指示された鎮痛薬を投与します。
(5)抗アレルギー薬、気管支拡張薬、副腎皮質ステロイド薬の服薬指導
(A)抗アレルギー薬
・ 気管支喘息の喘息発作を予防するために、抗アレルギー薬が投与されますが、予防薬なので定期的に吸入することが必要となります。
・ 抗アレルギー薬は、気管支拡張薬を吸入して5〜15分待ってから吸入し、その後は水で口をすすいでもらいます。
・ 抗アレルギー薬の副作用は、皮膚の発疹、嗄声、口内乾燥などがあり、吸入後に咳鳴や息苦しさが出たら医師に連絡する必要があります。
(B)気管支拡張薬
・ 気管支拡張吸入薬は発作時に使われます。
・ 副作用として、イライラ、動悸、悪心、不眠がおこりますから、症状が出たら、医師に連絡します。
(C)副腎皮質ステロイド薬
[設問] 肺切除術の術後合併症を避けるために有用なことを二つ選べ。
イ 術前から禁煙を守る。
ロ 体重増を図る。
ハ 腹式呼吸に慣れておく。
ニ 血圧を下げておく。
ホ 安静に努める。 正解 (イ、ハ)
[設問] 気管支拡張薬の副作用として出やすいものはどれか? 一つ選べ。
イ 動悸 ロ 眠気 ハ 徐脈 ニ 食欲亢進 ホ 下痢
正解 (イ)