成人看護学(46)(内部環境調節障害を持つ患者への看護) [成人看護学]
6)体温調節機能障害への看護
(1)熱中症、過高熱への対応
・ 熱中症は、高温多湿の環境によっておこる障害の総称で、熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病に分類されます。
・ 熱失神とは、高体温によって血管が拡張し、脱水が加わることで血圧が下がっておこる一過性の意識障害のことです。高体温といっても軽度で、生命に関わることはありません。
・ 熱けいれんの場合も体温上昇は軽度で、生命に関わることはありません。 多量の発汗のあとに、水分だけを補給したときに起ります。 涼しい環境に移し、約1%の食塩水を飲ませ、生理食塩水またはリンゲル液の輸液を行います。 筋けいれんにはナトリウム負荷を行い、有痛性けいれんには、鎮痛薬を用います。
・ 熱疲労とは、高温へ暴露されたために体温が上昇し、脱力、疲労感、めまいや悪心・嘔吐などを起こすものです。 しかし、体温は40℃を超えることはなく、意識障害もありません。
・ 熱射病とは、体温が40℃以上となって、興奮、幻覚、けいれん、意識障害などの神経症状が出現する病態です。 高体温のために多臓器障害をおこし、死亡につながることもあります。
・ 熱疲労、熱射病の場合、体表および体腔内の冷却、生理食塩水またはリンゲル液の大量輸液、肺動脈カテーテルによるモニタリング、腎血流の確保、脳保護などを行っていきます。
(2)低体温への対応
・ 低体温症は、深部体温(直腸温)が35℃以下になる状態をいい、死亡率が高い(20〜90%)重篤な疾患です。
・ 低体温を復温させる手段としては、保温法、体表加温法、体腔内加温法があります。
・ 保温法とは、温かい環境で、毛布などで覆い、熱放散による体温低下を防ぐ方法です。
・ 体腔内加温法とは、加温・加湿した空気の吸入、加温した輸液の投与、加温した液体による胃洗浄や腹膜灌流などで加温する方法です。
・ 35〜32℃の場合は、保温と体表加温で、32〜28℃の場合は体腔内加温で、28℃以下の時は人工心肺を用いた加温を行います。
・ 体表のマッサージなどで、末梢血管が拡張し、深部体温が低下するのをアフタードロップ、相対的な循環血液量の低下により低血圧になるのをリウオーミングショックといい、加温時におこりうる危険な状態です。 また、インスリンは30℃以下ではほとんど作用せず、体温の回復とともに急に効果が現れてくることがあるので、頻回に血糖をモニターする必
要があります。
[設問] 熱中症の中で、熱疲労ではみられず、熱射病で認められる症状は次のどれか? 一つ選べ。
イ 頭痛 ロ 脱力 ハ 昏睡 ニ 筋肉痛 ホ 発汗
正解 (ハ)
[設問] 低体温症の診断は、次のどれを指標としてなされるか?
イ 腋窩温35℃以下
ロ 直腸温35℃以下
ハ 腋窩温33℃以下
ニ 直腸温33℃以下 正解 (ロ)
[設問] 加温した液体によって胃洗浄や腹膜還流を行って加温する方法は何と呼ばれるのか?
イ 保温法 ロ 体表加温法 ハ 体腔内加温法 ニ 深部加温法
正解 (ハ)
[設問] 体表のマッサージなどの加温時におこるもので、末梢血管が拡張して深部体温が低下するのを何というか?
イ アフタードロップ
ロ リウオーミングショック(再加温ショック)
ハ リバウンドショック
ニ エンドトキシンショック 正解 (イ)
成人看護学(45)(内部環境調節障害を持つ患者への看護) [成人看護学]
5)体温調節機能の観察とアセスメント
(1)発熱・熱型と随伴症状の観察
・ 発熱は上昇期、極期、解熱期に分けられます。発熱の上昇期には、悪寒・戦慄、全身倦怠感、関節痛、呼吸増加、頻脈などがあります。極期には熱感があり、極期を過ぎると発汗します。
・ 41.5℃以上の高熱が続くと、意識障害をおこし、8〜10時間以上続く場合は生命の危機となります。 脳炎・髄膜炎の場合、発熱に激しい頭痛が随伴します。
(2)体温異常の原因と程度
・ 高体温の原因は、熱産生の過剰もしくは体熱放散の低下によっておこります。
・ 高体温状態は、39℃以下を第1相、40〜42.5℃を第2相、43℃以上を第3相といいますが、第2相では心血管系への負担が大きくなり、第3相では致死的となります。
・ 低体温は、熱産生の低下もしくは体熱放散の過剰によっておこります。
[設問] 発熱の解熱期のみられる症状所見を一つ選べ。
イ 悪寒 ロ 関節痛 ハ 熱感 ニ 頻脈 ホ 発汗
正解 (ホ)
[設問] 服を脱いだり着たりして体温調節するのは、何と呼ぶか?
イ 自律性体温調節
ロ 行動性体温調節
ハ 体動性体温調節
ニ 自家性体温調節 正解 (ロ)