人体の構造と機能 第54回(血液・造血器の構造と機能) [人体の構造と機能]
(2)胸線(きょうせん)
《構造》
・胸腺は胸骨の後ろ、縦隔の前部にあります。胸腺は内胚葉由来の器官です。
・胸腺は被膜と実質からなり、被膜は実質内に入りこんで、多くの小葉に胸腺を分けています。実質は、皮質と髄質からなります。
・胸腺は、子供のころは大きいのですが、思春期以降(思春期で30~40g)急激に退縮して脂肪化していきます。
[設問] 胸腺が退縮するのはどの時期からか? 下記より一つ選べ。
イ 生後まもなく ロ 思春期 ハ 成人して ニ 初老期
正解 (ロ)
《機能と生理》
・胸腺にある細胞は、リンパ球(T細胞)、細網細胞(上皮細胞)、マクロファージと樹状細胞で、リンパ球は皮質でつくられています。
・胎生期に骨髄など造血器官でできたリンパ芽球(リンパ球系幹細胞)が胸腺に入り、成熟・増殖してT細胞になると言われています。
・胸腺では、サイモシンというT細胞分化因子となるホルモンが分泌されています。
(3)脾臓(ひぞう)
《構造》
・脾臓は、左上腹部の横隔膜直下、後方にある重さ約150gの実質性臓器です。
・脾臓には、れんが色をした赤脾髄(せきひずい)と灰白色の白脾髄(はくひずい)があります。
・赤脾髄には、脾柱(線維性の被膜が入りこんだもの)の間質を満たす豊富な毛細血管があって、白脾髄にはリンパ球の集まりである胚中心(はいちゅうしん)があります。
《機能》
・赤脾髄には、老化した赤血球を処理する機能があり、細網細胞とマクロファージがその役割を担っています。
・白脾髄では、リンパ球(主にB細胞)、組織球がつくられています。
・脾臓は、血小板の貯蔵庫としての役割も持っています。
(4)リンパ組織
《構造》
A)リンパ小節
・リンパ小節は、消化管、呼吸器、泌尿器、生殖器の粘膜下層にあります。
・リンパ小節には、散在する孤立リンパ小節と虫垂などに集合した集合リンパ小節(バイエル板)があります。
B)リンパ節
・リンパ節(リンパ腺)は、線維性の被膜で包まれ、皮質と髄質に区別されます。
・リンパ節の皮質は、多くのリンパ小節(胚中心)があり、リンパ球、形質細胞、マクロファージを含んでいます。髄質は細網組織でできています。
・腋窩リンパ節は、乳腺からのリンパ液が流入しています。
・咽頭には、口蓋扁桃(こうがいへんとう)、咽頭扁桃、舌扁桃(ぜつへんとう)、耳管扁桃(じかんへんとう)という大きなリンパ節群があって、ワルダイエルの咽頭輪を形成しています。扁桃は、表面の粘膜上皮が内部に入り込んでいて、深いくぼみ(陰窩)があります。
《機能》
・リンパ小節の胚中心では、リンパ球がつくられています。
・リンパ節は、リンパの流れの途中にあって、異物や細菌が静脈へ循環する前に捕獲・排除する役割を担っています。
・扁桃(腺)は、口腔から入る異物、細菌に対する防御機構です。
これで、血液・造血器を終了します。次回からは泌尿器系です。
このブログに掲載している内容は、徐々に内容の充実を図るためときどき手を加えていきます。さらに問題・解答まで追加していく予定です。ご期待ください!
人体の構造と機能 第53回(血液・造血器の構造と機能) [人体の構造と機能]
6)造血に関する器官
(1)骨髄
A)赤色骨髄と黄色骨髄
・骨髄には、血管に富み造血が行われる赤色骨髄と、脂肪に置き換わっていて造血能のない黄色骨髄(脂肪髄)があります。
・胎生期(2~8カ月)には、血球は肝臓と脾臓でつくられますが、胎生の後半(6カ月頃)からは骨髄でつくられるようになります。新生児、乳児では、全身の骨髄で造血が行われますが、加齢とともに四肢の骨では黄色骨髄に変わり、やがては体幹の骨(胸骨、椎骨、腸骨、頭蓋骨)だけとなります。
B)造血幹(かん)細胞
・すべての血球は、骨髄中にある未分化の造血幹細胞(多能性幹細胞)から分化します。
・骨髄幹細胞は、種々の増殖因子(刺激因子)で、赤血球、白血球、血小板へと分化します。
C)造血刺激因子
・刺激因子としてよく知られているのは、腎臓から分泌され、骨髄球系幹細胞から赤芽球系幹細胞を分化させて赤血球をつくるエリスロポイエチンです。他に、コロニー刺激因子などもあります。
人体の構造と機能 第52回(血液・造血器の構造と機能) [人体の構造と機能]
E)液性免疫
・液性免疫は、B細胞から分化する形質細胞で産生される特異的抗体によるものです。
・抗原が抗体に結合すると、抗原は同化されて……補体が活性化され、同時にマクロファージなどの食細胞も活性化され、病原菌は破壊されます。
・B細胞の分裂は、ヘルパーT細胞から放出されるリンホカインによって促進され、形質細胞への分化が進み、抗体産生が促進されることになります。また、この機序はサプレッサーT細胞によって抑制されることになります。
・B細胞から分化するメモリーB細胞は、感染した病原体の抗原を長く記憶していて、同じ病原体の感染が再度起こると、即座に反応して抗体産生が促進されます。
・形質細胞が産生する抗体は、T字形またはY字形をしていて、4本のポリペプチド鎖からできています。そして、それには可変領域と定常領域があるのです。
・抗体は免疫グロブリンと言われ、IgG、IgA、IgM、IgE、IgDがあります。
・IgG抗体は、免疫グロブリンの中で最も多いもので、約75%を占めています。IgGは、感染後、約3週間で最大となります。この抗体は、胎盤を通過して、新生児を感染から守ることになります。
・IgA抗体は、免疫グロブリンの約17%を占めます。この抗体は、分泌型IgAとも呼ばれることがあり、粘液や体表面の分泌液にも含まれ、粘膜の表面の防御に関与しています。母乳にも含まれていて、新生児、乳児の感染防御に当たります。
・IgM抗体は、感染後もっともはやく出現するもので、IgG抗体ができると低下していきます。
・IgE抗体は、アレルギー反応や寄生虫疾患で発現します。
[設問] 感染症で、感染後最初に出現する抗体はどれか?
イ IgA ロ IgG ハ IgM ニ IgE ホ IgD
正解 (ハ)