人体の構造と機能 第62回(生殖器系の構造と機能) [人体の構造と機能]
2)生殖器系器官の構造と機能
(1)男性生殖器
《構造》
A)精巣
・精巣は結合組織の強い被膜で包まれ、長径が約4cm、短径が2~3cmで、1対で陰嚢(いんのう)に収納されています。
・精巣は胎生8カ月の頃に腹腔から下降して、胎生9カ月から出生前に鼠径管(そけいかん)から陰嚢に入ります。これを精巣下降と呼びます。
・精巣には、精子をつくる精細管があって、精細管周囲にはテストステロンを分泌するライジッヒ細胞があります。
・精細管は集合して精巣網をつくり、精巣上体につながっています。精細管の内壁は、精上皮からなり、精上皮は支持細胞(セルトリ細胞)と精母細胞、精娘細胞、精子細胞、精子からなっています。
B)精巣上体・精管・精嚢・前立腺・陰茎
・精巣の上にあり、精巣上体の中に折りたたまれる1本の長い管があり、精管につながっています。
・精管は精嚢上体からつながり、前立腺を貫いて尿道に合流しますが、その直前で精管から小さな袋状の精嚢が分岐しています。
・尿道は、陰茎の中を走っていますが、陰茎は硬い被膜で包まれた海綿体でできています。海綿体には、陰茎海綿体と尿道海綿体があります。
[設問] 精巣はいつごろ陰嚢に入るか? 次から選べ。
イ 胎生8カ月 ロ 胎生9か月 ハ 出生直後 ニ 生後1週間
正解(ロ)
[設問] 精細管周囲にあってテストステロンを分泌する細胞はつぎのどれか?
イ ライジッヒ細胞 ロ セルトリ細胞 ハ 精母細胞 ニ 精子細胞
正解(イ)
人体の構造と機能 第61回(生殖器系の構造と機能) [人体の構造と機能]
10.生殖器系の構造と機能
1)概念
・生殖を行う器官系です。
・女性と男性では、構造、機能ともに異なりますが、お互い補完的になっています。
・女性生殖器は、1対の卵巣と卵管、子宮、膣と続き、膣前庭(ちつぜんてい)に開いています。
・男性生殖器は、精巣(せいそう)あるいは睾丸(こうがん)、精巣上体(せいそうじょうたい)、精嚢(せいのう)、精管(せいかん)、前立腺、尿道などからなっています。
人体の構造と機能 第60回(泌尿器系の構造と機能) [人体の構造と機能]
(2)尿管・膀胱・尿道
《構造》
A)尿管(ureter)
・尿管は、腎盂からつながり、長さが約30cm、長径が4~7mmの管で尿管口(にょうかんこう)で膀胱に開口しています。尿管壁は、移行上皮である粘膜、筋層、外膜の3層構造になっています。
・尿管には、生理的狭窄部位があります。腎盂尿管移行部、総腸骨動脈との交叉部、尿管膀胱移行部の3箇所です。
B)膀胱(bladder)
・膀胱は、恥骨結合の後ろにある嚢状の器官で、内尿道口で尿道につながっています。内尿道口には膀胱括約筋があります。2つの尿管口と内尿道口を結ぶ三角は膀胱三角と呼ばれています。膀胱壁は粘膜、筋層、外膜の3層からなっています。
C)尿道(urethra)
・尿道とは内尿道口から外尿道口までをいいます。
・女性の尿道は、長さが3~4cmで、直線的に走って膣前庭(ちつぜんてい)に開いています。
・男性の尿道は、泌尿器と生殖器を兼ねています。男性の尿道は長さが16~18cmでS字状に走行し、前立腺部・隔膜部・海綿体部からなっています。前立腺部は、膀胱の内尿道口から前立腺を貫く部位で、射精管と前立腺管がつながっています。隔膜部は、尿生殖隔膜を貫く部位です。海綿体部は尿道海綿体から外尿道口までです。
《機能と生理》
・尿管は蠕動運動によって2~3cm/秒で尿を膀胱へ送ります。
・膀胱は、尿のない時は、内圧は0に近いのですが、尿が100mLくらいになると内圧は約10cmH2Oになります。さらに尿が150~300mLくらいになると内圧は10~20cmH2Oとなって、膀胱壁が伸展します。
[設問] 交感神経の支配を受け、弛緩することによって排尿に関与するのは次のどの筋か? 一つ選べ。
イ 排尿筋 ロ 膀胱括約筋(内尿道括約筋) ハ 尿道括約筋(外尿道括約筋) ニ 腹直筋
正解(ロ)
人体の構造と機能 第59回(泌尿器系の構造と機能) [人体の構造と機能]
D)ホルモンと尿生成
・バゾプレッシンは視床下部の視索上核(しさくじょうかく)、室傍核(しつぼうかく)で産生され、そこから伸びる神経線維末端のある下垂体後葉で分泌される抗利尿ホルモンです。バゾプレッシンは、集合管にある受容体に結合して、集合管の細胞膜の水と尿素などの透過性を促進し(再吸収の促進)、尿量を抑える役割を果たしています。
・腎臓から出るホルモンであるレニンは、アンギオテンシンを介して副腎ホルモンのアルドステロン分泌増加を促し、近位尿細管での水とNa+の再吸収を高め、逆に遠位尿細管でのK+、H+の分泌を高めます。
[設問] 抗利尿ホルモンであるバゾプレッシンは水と尿素の再吸収を促進して尿量を抑えるが、次のどこに作用するのか? 一つ選べ。
イ 集合管 ロ 近位尿細管 ハ ヘンレの係蹄 ニ 遠位尿細管
正解 (イ)
E)腎臓からのホルモン分泌
・腎臓は、レニン、エリスロポイエチン、プロスタグランジンなどのホルモンを分泌します。
・レニンは、糸球体傍細胞から分泌されています。輸入細動脈の血圧が低下するとレニンの分泌は増加して、輸入細動脈の血圧が上昇すると、レニンの分泌は低下します。
・エリスロポイエチンは、骨髄球系幹細胞から赤芽球系幹細胞を分化させて赤血球をつくります。
・プロスタグランディンは、輸入細動脈を拡張させて糸球体濾過率を上昇させます。そのほか、レニン分泌を促進して血圧を上げ、Na+と水の再吸収を抑制し、抗利尿ホルモンの作用と拮抗する作用を持っています。
[設問] 腎臓で分泌されるホルモンの組み合わせで、正しいものを一つ選べ。
イ エリスロポイエチン ・ アルドステロン ・ レニン
ロ テストステロン ・ アルドステロン ・ エストロゲン
ハ アルドステロン ・ サイロキシン ・ レニン
ニ レニン ・ エリスロポイエチン ・ プロスタグランディン
正解 (ニ)